【質問#93】独身寮から出るべきかどうか
※この記事は2017年1月21日に書かれた記事を加筆修正して復旧させたものです。
質問・悩み相談の回答です。
質問
有理さん、はじめまして。 私は素材メーカに務める29歳のエンジニアです。 今回相談させていただきたいことは生活環境(主に住環境)についてです。
私の勤める会社では独身寮が設けられており、実家から通える人以外は 大概は数年間寮に入り、結婚などを転機に出ていくことが多い状況です。 (古い寮で洗面、風呂トイレ等が共用の為、なじめない人は割とすぐ出ますが)
寮に住むメリットとして ・安い(1万円以下)
・職場に近い(呼び出されやすいという面ではデメリットですが私は通勤時間は基本無駄と感じるタイプ)
・共有エリアの掃除が不要(最低限の掃除家電は備え付けられており部屋で自由に使うことも可能)
・食堂があるので自炊不要(その分のお金はかかりますが)
デメリットとして
・寮規則がやや面倒(風呂の利用時間の制限など)
・徒歩圏内にスーパーや食事が出来るところがない(工場隣接なのでど田舎)
・人を呼べない(昔問題があったとか…共有スペースが多いのでこっそりとというのも…)
といったことを感じながら 「まぁ1万+食費で最低限生活できるならデメリットは許容範囲だな。引っ越しめんどくさいし」 という判断の下寮生活をしてきたのですが、今回会社方針が変更になり30歳を超える寮生は 一律で寮費を上げる、となったのです。
上がった寮費というのが地域で安めの1Kくらいなら十分借りれる額となり、 私にとって最大のメリットがイマイチ感じられなくなりました。
じゃあ寮を出て引っ越し先を探すか、となるかというと
・生活家電揃えるとそれなりの出費
・通勤時間が伸びる(自炊必要になるのでスーパーが近い等、市街の物件になる)
・ただただ引っ越しが面倒(金さえ払えば住み続けられるので焦るほどではない)
といった辺りが引っかかり、実行に移せていないのが現状です。
ぜひ有理さんに「寮出たほうが(残ったほうが)良いのでは?」「私なら出る(残る)」 といった意見をいただきたいと思い、相談をお送りさせていただきました。
ちなみに完全に余談ですが、昨年末に彼女に振られており、 新しい出会いを求めるなら一人暮らしか?という助平な考えもあります。 この点についても、良ければ有理さんのお考えを聞ければと思います。
最後になりますが、anopara記事いつも楽しみに読ませていただいています。 自分の持っていなかった視点に気付かせてもらえるのは楽しいことですね。
長くなってしまいましたが、よろしくお願いします。
回答
結論から申しますと、私なら出ます。
このご質問は、私の経験的にも合致する部分が多いな…と思いました。
私が今の会社に入ったのは、満員電車が嫌だからでした。今の会社は東京多摩地域にありますので、多摩だったら都心よりはマシだろうと考えて就職先を選んだのです。2つ目の理由は一般の物件を借り上げて提供する社宅システムがあったからでした。このシステムによって、家賃の3割負担で新築のアパートに住めるというメリットがありました。寮と違って通常のアパートなので面倒な規則などは皆無です。
ウキウキで入社説明会に出席した帰りの事でした。人事担当が「ちょっと寮も見学してもらおうかな」などと言います。
この時点で私は嫌な予感がしました。え、あなた借り上げの社宅って言ってましたよね?って。寮を見学する必要なくない?と思いました。だから率直にそう言いました。あくまでも見学だと人事担当は言っていたのです。そう念押しされた上で、我々は渋々その寮を見学しました。そこに待ち構えていたのは、本当によくしゃべる寮母さんでした。
「あのね、この共用エリアの利用時間はAM6:00~PM11:00になってるの!たまにそれ以降で洗濯機を動かす人がいるけど、そういうのダメだからね!新人さんには早くルールを覚えてもらいたいのですぐに注意しますから!」
「そしてね、あっちの棟は女子寮なの!女子寮に男性が入るのは厳禁ですから!前に入った人が居るんだけどね、結局見つかっちゃってすごく怒られたの!ね!絶対見つかりますから!行かないように!」
「あとは、うちの製品(※家電事業もやってる会社だった)以外を使うのは禁止ですから!見つけたら返品させます!以前、通販だったらばれないだろうと注文した人が居るんだけどね、全部見てますから!荷物も!見つけたら返品です!」
等々を笑顔のままで嬉しそうに喋るわ喋るわ。俺はボゲェ…と思った。ボゲェ…と声にならない声が出てきた。
で、そのおばちゃんが見学終わっても全然帰ろうとしない。我々は寮から出て駐車場みたいな所で「今日はありがとうございました〜」とか言って帰る雰囲気を醸し出してるのにまだまだ喋る。すると一緒に働いているもう一人の管理者的なおじさんがやってきて「おい、もういいだろ」と呆れた感じでおばちゃんを回収していった。そして人事担当と我々が寮の駐車場みたいなとこに残されたんだ。
人事担当曰く。
「ここに住みたい人~?」
誰も手を挙げなかった。
「ここに住みたくない人~?」
おい聞かなくてもいいだろそれ。
「でも…なぜ嫌なのかな?」
人事担当は赤ずきんちゃんが「お母さんの耳はなんでそんなに大きいのな?」って聞くみたいな、アタシってば好奇心旺盛な女児なんだけど、みんながどんなお気持ちなのか全然わかんない。だから教えて?みたいな調子で言った。それを聞くか。こいつ。今まであのオバババーンの話聞いてただろ。耳もぎ取ってやろうか。
まだまだ新入社員のためか委縮してなかなか言い出せなせない皆を横目に見つつ、しかし私は絶対にここが嫌だったので代表して主張を述べることにした。
「私たちはずっと、選考中に『一般のアパートを借り上げて社宅として提供』という条件を提示されてきましたので、そのつもりで居ます。この寮だと今見てきたように非常に規則が多いですね?ですから困惑しているというのが正直なところです。会社の製品だけしか買えないような強い制限だとは思ってませんでしたし、細々とした規則がある寮と借り上げた新築の社宅というのではあまりにも差が大きすぎます」
的な事を(たしかもうちょっとへりくだった言葉だったと思うけど)言ったところ、人事担当者は「うう~ん…。ちょっと予算的にね…こっちの方がね…よかったんだけどね…」などとモゴモゴ言ってましたけど、そんなん関係ねぇから。担当者が変わったから合意が履行されないとか国際社会じゃ通用しねぇから。わかってる?みたいな勢いで押し切った気がします。
その結果、交渉が通り当初の予定通り普通のアパート(やマンション)に入居ということになりました。
私のために用意された部屋は新築の綺麗なマンションにありました。エントランスはまるでホテルのようで、当時かなり珍しかった宅配ボックスも完備という、カッペ生まれカッペ育ち、秋田の山奥の山奥でGoogleマップ航空写真の解像度がしばらく南極以下であった、つまりGoogle的には南極以上に探査が進んでいない地域から飛び出してきた私は大層ビビりました。腰抜かした。
これが俺の棲家か!これから東京生活をエンジョイ、毎日がエブリディだぜ!と意気揚々とドアを開けた所、そこは4畳半ほどのスペースしかない部屋があった。テーブルを一つ置いて布団を敷いたらあとは床がうまるような狭さ。引っ越しの荷物の殆どは部屋に入らず、退去するときまで半分以上の段ボールが廊下に積み重なる有様でした。
これはもはや部屋ではない。隙間だ。率直にそう思いました。
しかもマンションの1階で南向きながらすぐ近くに背の高い建物があるため光も差さず、隣はエレベータシャフトが通っているがためにいびつな構造となっている。あれ?おかしいな…。これが初めての東京ライフ?こんなはずでは…。
ちなみに同期のアパートは普通に9畳くらいあるからもうご立腹ですよ、私は。何なんだと。あの部屋の割り当ては人事担当者によるあてつけだったのかもしれないが、もしそうならばはっきり言って私は私の権利だけではなくて同期全員の権利を代表して主張して権利を維持管理したにすぎないのであって、そこらへんどうなんだろうな。今思い出しても腹立つわ。
あと、件の小うるさいオババババハハハーンですが、やっぱり「自社製品以外禁止」などに代表される謎のルールはオババハハーンが独自に決めた規則らしく、自社製品以外を通販で買って受け取り拒否しそうになったところを注文した入居者が見つけて口論に発展、大事になったそうで。それからそのような規則は無くなったと聞く。その件と関係あるのかどうかも知らないが、結果としてオババハーンはフェードアウトして居なくなったとも聞いた。
「自社製品禁止」という規則については、その話が出るたび皆が口を揃えて言う。そもそも他社製品を知らないと他社に対して優位な製品を作ることは出来ないし、世の中のデファクトスタンダートとか技術の潮流ってのも学べないよねぇ。って。そのとおりだと思う。
それでも我社グループは要職についてる偉い人でも「あれれ?なんで我社のパソコン使ってないのかな?」とか他社製品を職場で見るたびに一々指摘したりするそうだ。そのせいでまた社内に「自社製品だけ使うこと」みたいなローカルルールが増えるらしい。さすが、あのバババーンを寮母として雇用するだけあるなと思った。
ともかく、そのオババババハハハーン事件から半年くらい経過したころ。なんだかんだで狭小マンションも3割負担で安いから我慢して3年くらいは住む予定だった。だけど当時、秋田に住んでて遠距離恋愛中だった彼女が東京に遊びに来た時、横浜中華街で「私はもはや遠距離恋愛は耐えられません。別れるか一緒に住むか(つまり結婚するか)いずれか一方を選択しなさい」と、要約するとそういうことをもう少し女子っぽい言葉で言ったので、ぼええ?個人的な意見ですが、君には職を見つけてから東京に来て欲しかったんだけど…と正直思ったのだけど、私はぶっちゃけ東京に来てから収入も得て毎日がエブリデイだったのに対し、彼女は秋田の実家で暮らしていて周りはみんな結婚してるから、こう、色々思うところがあったのでしょう。だからその返事に「来年から一緒に住むかぁ」と回答した時点でそれが半分プロポーズだったわけだよね。
両親への挨拶を済ませ、そのあとたまたま東京に来た時に二人でアパートを探しに行ったのだけど、家賃13万の新築アパートで積水ハウス施工の結構おしゃれな物件があり、「これいいねー、でも13万はちょっと高いよねー、仕事見つけるまではもうちょい安いところだよねー」という話で合意した。はずだった。
その後、私が一人で不動産屋をめぐり、築13年家賃7万円駅徒歩5分2LDKの好物件を見つけて興奮しつつ「これ良いよね!?」と遠距離恋愛中の彼女に報告したところ、「うん…いいね…」と浮かない返事。あれ?なんで?俺色々まわったけどこんなに良い物件無かったよ?と言うと、「やっぱ最初にね、積水見ちゃったから…。結婚して初めて住む家が古いと…。新築の家で、植木があってという部屋で新婚生活を営むという感覚で居たから…。夢に出てくるんだよね、積水のあの家が…。」とか言い出しおって、ぼえええ、マジかよ、夢に出てくるってなんだよ。っていうか家賃13万高いっていう認識で合意したじゃーん?おぬし東京きたら無職じゃーん?手取りが20万円代で家賃13万円だと半分くらい家賃で無くなるじゃーん?と思ったんだけど、言わなかった。我慢した。
そのあと、積水施工の築1年物件を見つけてそこを契約した。家賃は12万円で大して安くはならなかった。
住み始めてからなんやかんやあって車が必要だよね、という話になった。嫁さんはデミオに乗っていたが東京に出てくるにあたり売った。売ったけどやっぱ多摩あたりだと都心ほど電車が発達してるわけでもないし車は必要だよね、ってことになった。
そいで、車を買うにあたってまあ色々金もこれからかかるだろうし、中古車で良いよね、って話になった。だから私は色々調べまわり、中古で手ごろなインプレッサを見つけた。これ良いじゃん!走行5万kmで60万。程度も良いからバリバリ走るじゃん。これにしようやぁ。ってスバルに見に行った。
そしたら、当時の新型インプレッサが置いてあって、「あれ良いなぁ…」みたいな目で嫁さんが見ていた。まずい。これまずいパターンだ。俺は察した。積水の新築アパートが良いなぁ…のパターンだって思った。だから意識を60万円のインプレッサに戻そうとした。しかし時すでにお寿司。営業マンがニコニコ顔で「さっきのインプレッサの見積もりとぉ…あとこれ、そこに置いてある新型インプレッサ(中古)の見積もりなんですけどぉ…。いや、お二人でお話しされてらっしゃったので」等と言ってくる。これもうパターン入ってるよ。
それから帰って話し合ったところ、「私はデミオスポルトを新車で買ってずっと乗ってきた。秋田から出てくるときに泣く泣く手放した。わかる?寂しかったんだよ、私…。あのデミオを手放して中古車なんて…耐えられないっていうか」みたいな事を言い出す。予想した展開だ。あの新型インプレッサを見るときの君の目は昔のチワワ出てたアイフルのCMのアレとそっくりだったよ。
そこからどんどん要求スペックが上がってしまい、新型のプリウスを買った。新車で260万くらいだったはずだ。260万だけど…って嫁さんに話したら、「いいんじゃない?」って言ってた。「悩んでもしょうがないでしょ、こういうのは」、とも言ってた気がする。で、頭金で100万払ってその後のローンも俺が払った。
でもね、良いんですよ。別に。そういう人生の要所要所で気持ち良く金を払えるような度量の男でないとそもそも平和的な家庭は築けないとも思ってますしね。それにこないだは嫁さんの稼ぎで海外旅行も行きました。だから良いんですよ。別に。金なんて小さなことですからね。金を得る方法は山のようにありますが、新婚で新築で新車という時期を過ごした記憶は金で築き上げたことには違いないのだけど年取ってから金で買えるような記憶でもないですしね。だからいいんです。自分の人生はそんな感じで何かと金がかかる人生でしたね。もうちょっとコンパクトに生きるつもりだったんだけどな。
さて、何の話でしたっけ。質問でしたね。独身寮の話でしたね。
私ならばその独身寮を出ます。理由は、
- そもそも私の中での独身寮のイメージはババハハバハハーン的な管理人が出没するイメージ
- 人を連れてこれないのが嫌。独身で彼女が居ないのならなおさら嫌
- 金がかかっても自由が欲しい
- 人が嫌い。アパートですら嫌なのに風呂トイレキッチンなどを共有するのはかなりストレス
などです。つまりそもそも寮生活には向かない考え方をしています。一方で、今回の質問者様のように寮生活に向いた方がいらっしゃるのも事実です。これは単に性格の問題でしょう。
たとえば、件のババオハバハハバハバオババハーンが居た寮に私の大学時代の友達がなんだかんだあってたまたま入ったのですが、彼は「え?オババ?うーん、面倒だけど慣れじゃないかな」「規則とか俺あんまり気にならないんだよね」という感じでした。本当人によりけりですね。
ただ、その友達も言っていたんですが寮は「安いから」入ったってことなんですよね。人によってオババオバンオバンババオバンバーンナウト的な人や規則に対する受忍限度に差はあるのでしょうけど、「規則や小うるさい人が居ないのに越したことはない」って点では当然共通するでしょう。あとはその我慢の程度が「安さ」というメリットを上回るか下回るか、で判断することになるのではないでしょうか。
今回の質問者様の場合におかれましても、「安い」というメリットが無くなったからこそ今回お悩みが生じたというわけで、メリットが受忍限度と相殺しきれなくなってきたということなのだと思います。だから、長期的に見れば寮を出たほうが良いのは分かっているのだけど、短期的には家電を買うためにお金が必要だったり、引っ越し作業や不動産屋めぐりそのものがおっくうだったり…というような気持ちをもっているように私には感じられました。
あくまでも個人的な意見ですが、そういう家電を選んだり、物件を選んだりというのも楽しめるといいですよね。人生の中で冷蔵庫選んだりするシーンって意外と無いですから。そこで新しい発見や経験をできるんじゃないでしょうか。
彼女と別れて新たな出会いを求めているという点でももちろん、引っ越されることをお勧めします。どう考えても女の子を連れ込める部屋があった方が何かと利便性は高いでしょう。何かと、ね。何かと。利便性が、ね。あまり具体的には書きませんけどね。
規則でがんじがらめの寮から出て自由を謳歌しましょうよ。女の子もじゃんじゃん連れ込んでください。
そしてその結果、じゃんじゃん連れ込んだうちの一人とお近づきになり、みんなで一緒に居る時間よりも二人で一緒にいる時間の方が少しずつ増えてきて、そのうちお互いを意識し始め、二人はそれを恋と呼ぶようになるのでしょう。
そして二人で一緒の時間をアパートで過ごし、アパートで一緒にカレーを作り、鍋を囲み、二人でこたつに入ってお酒を飲み、しかしたまには喧嘩をして飛び出して行ったこともあったりするんでしょう。
そんな二人がかけがえのない時間を過ごしたアパートだって、いつかは引き払うときが来ます。その時にはきっと、「ああ、寮をでて、一歩を踏み出してよかったなあ」と思えるはずです。
アパートを出るときは、二人の恋が実を結び、お互いが世界に一つの大切な存在となったときですよね。二人は家族となって新たな人生を歩み始めます。両親へのあいさつをも済ませ、友達への報告もして、今度は二人で一緒に住むために不動産屋をめぐるときです。寮を出ました。アパートで新たな出会いがありました。今度は夫婦として住む家を探すのです。そして次に住むアパートだって一時的な住処で、いつかは子供が出来て家を買うかもしれません。そうやって人生も住処も新しく前に進んでいくわけですね。引っ越しは新たな旅立ちと言えるでしょう。今度も思い出を残せる良い物件があると良いですね。
そんなことを思いながら二人でやってきた不動産屋。担当者のお姉ちゃんが言いにくそうに「お二人は…結婚されるご予定はありますか?その…ご夫婦でないと嫌がるオーナさんは正直多いので」と言うわけです。そこで、ちょっと照れくさそうに「あ、そこは大丈夫です。来月に入籍する予定なので…」と答える彼女が可愛くて。
それを聞いた不動産のお姉ちゃんが「おめでとうございます!」なんて結構な大声で言うもんだからさらに顔を赤くしている。それを横目で見ながら、この人を選んでよかったなぁなんて思う訳ですね。それで提示された物件リストを見ながら、駅近で2LDK、7万円という物件を見つけて「これ良いんじゃない!?」と彼女に問いかけると、顔を赤くした彼女がモジモジしながらこう言うわけですよ。
「最初に積水の新築みちゃったから…。二人で最初に住む家が築17年7万円の部屋っていうのはちょっと…」
って。
以上、ご査収ください。