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V-Strom 1050 XT を売って X-ADV を買った

そういうことです。

V-Strom 1050 XT

とにかくでかいバイクが欲しくて買った。デカくて先進安全装備が沢山付いててかっこいいやつ。最初、このクチバシがあるデザインは好きじゃなくて絶対にこのバイクだけは買わないな…と思っていたけど、見ているうちにすごくかっこよく思えてきてこれにした。

6軸IMU、クルーズコントロール、ヒルスタートアシストなどなどが付いている。クイックシフターは付いていない。現行モデルだと付いているらしい。

買ってから家族も何度も乗せた。上の写真もヘルメットが付いていますね。子供向けの小さなサイズがこれしかなかったから買ったと記憶している。

非常に楽しい体験をもたらしてくれるバイクだったし、大事にしていたバイクなので手放したく無かったが色々な理由があって手放すに至った。

一番大きな理由は持て余すこと。これはかなりデカいバイクだ。タンク容量も21Lくらいあった気がするから、満タンまで入れると300kg近くなるのではないか。そしてトップヘビーでかなり取り回しが悪い。私の身長だと少し厚底のバイク用シューズを履けば両足がべったり着くのだが、それでもつらい。

そして取り回しが辛いと都内の駐輪場が相当に辛い。そもそも大型の駐輪場が少ない上、大型OKだとしてもこのバイクだと停めるのがだいぶキツいケースがままある。だから、どこかに行こうと思うと入念に駐輪場を探し、Google Mapのストリートビューで入り口などを見て入れそうかどうかを検討する必要がある。そんなことをやっていると「我慢して電車で行くか…」という結論になってしまいがちだ。

そんなことを繰り返しているとどんどん乗らなくなってしまう。ライフスタイルが変わって余り外出しなくなったからというのもあるけど、去年はおそらく300kmくらいしか乗っていないと思う。その事実が決断の一つだ。

走り始めればとても快適かつ軽快なバイクである。田舎に住んでいたら間違いなくこのバイクに乗り続けていただろうと思う。

二つ目の理由は怪我をしたことだ。

去年の年始にT字路を右折する車に続いていったところ、前の車が急ブレーキを踏んだ。横断歩道を渡る自転車を見落としたらしかった。私からは死角でこの自転車は見えなかった。

バイクが車体を傾けて曲がっている時にブレーキを踏むとどうなるか?倒れるしかない。バイクは曲がっている最中に急ブレーキをかけれない乗り物である。一瞬でそのまま進むかブレーキをかけて倒れるかを選ばないといけない。そこで私はブレーキをかけ、バイクを倒し…… 倒さなかった。なんとか踏ん張って耐えた。

ただ、耐えたときに手首を捻ってしまった。私の右手に300kg近い荷重がかかったのだから仕方ない。

最初は大丈夫だったんだけど徐々に痛くなってきて、二日目に手首の痛みに耐えながら漫画を書いていたところ、通話していた知人から「絶対に病院に行った方がいいですよ」と言われて病院に行ったらこんなことになってしまった。

TFCC損傷というらしい。TFCCというのは、トリチウム・フュージョンリアクター・コア・コンパートメントの略で、すごく格好いい名前だと思った。このパーツを損傷してしまったため、私の手首からTFCCを取り出して交換し、元々入っていた奴は綺麗な箱に入れて記念に飾っておこうと思っていた。だが、そういうことではないらしかった。

TFCCというのは複雑な手首の骨の隙間にある三角形領域にある繊維・軟骨の集合体らしく、これが損傷すると治癒に非常にながい時間がかかるらしい。

だいぶこれは辛かったのだが半年くらいで軽快した。しかし、いまもたまに痛むことがある。

しばらく経って整体に行ったときにこれを説明したら「骨折したんですね~」と言われたので「骨折の範疇なんですか?」と問うと、「軟骨の損傷だからジャンル的には骨折で良いと思いますよ」と言われた。

そこに至って私はようやくバイクに乗って骨折の怪我を負ったのだという理解に至り、危ない目にあったなという認識を持ったのだった。

そして、この馬鹿でかいバイクを大して飛ばせもしない、飛ばせるような所に旅行に行く暇もない妻帯者が持っているのは、持て余すというやつじゃないか?という思いを強くした。

売るという選択について

V-Stromを手元に置いておくか、下取りに出すべきか、答えは決まっていた。下取りに出すことにした。

その理由は結局手元に置いたところであまり乗らないし、乗らないまま劣化させるのも勿体ないと思ったから。だったら、売った方がまだマシだろうと思う。

私にとって機械というのは家族の一種であるという思いが昔からあり、その点で抵抗があった。売った結果、馬鹿みたいな人間が買って無茶苦茶なことをして転かして壊すんじゃないかとか想像するとバイクが可哀想になるが、それが嫌であれば自分で乗るしかない。

しかしそれが種々の理由によりしんどいので乗り換えた訳であるし、売ったバイクについてどうこう言える立場でもない。

結局の所家族のようなものだ、と言っておきながら売るという時点で家族の扱いをしていない。例えば子供が新たに生まれたからといって先にいた子供を売ったりしないし、新しい猫を迎えたからといって先住猫を野に放したりしない。しかしバイクや車はそうする。

すげーデカいガレージがあれば綺麗に保管しておいてもいいのだけど、とも思う。けれども私はすげーデカいガレージは持っていない。

そうした思いがあって、新しく買ったバイク(後述するがX-ADVというバイクをかった)を買った喜びと、V-Stromを売った喜びが相互に打ち消し合って虚無の感情になっている。

V-Stromの思い出は沢山有るが、一番印象深いものを挙げるならば山陰道を走っていたときのことだろう。

東京を朝8時に出て福岡まで走っている最中、山陽道が事故通行止めだったので渋々山陰道を走ったのだが、山陰道があんなにカーブが多くて過酷だと思わなかった。日中だったらむしろ楽しかったと思うのだが夜は明かりが少ないし、バイクのライトは照射範囲が狭いので必死になって運転していた。

その時に当時勤めていた会社から電話がかかってきて、インカムで応答した。

「ちょっと今バイクを運転してるんです」

と言ったが、それに対する返答は

「ああ、そうですか。それでですね、ここでエラーが出てて…」

というものだった。

それで朝8時から夜10時までバイクを運転したあとでホテルについて一番最初にやったことはパソコンを広げて仕事をすることであった。このときに転職しようと思ったのだった。

このときに電話していた相手の方はもしかしたらこのサイトを見ているかもしれないんだけど、もし見ていたら私が辞めた理由の一つは言ってなかったけどそういうことです、ということでひとつ、ご査収ください。

次期車種選定要件

ここからは車・バイクが好きじゃないと分からない話かもしれない。

色々考えた経過はあるんだけど、ホンダのDCT採用車にしようと思った。NT1100かNC750XかX-ADVか。Rebelは除外。もともとクルーザーがあんまり好きじゃないのと、Rebelという名前がちょっと…。rebelとは権力や慣習に対する反逆(者)・反抗(者)という意味だが、もう40歳すぎたおっさんがそんなパンクロッカーみたいなことをやってても……へへへ…という気後れもある。

NT1100は実車をみるとやはりかなりデカく、これだとやはり結局持て余すのでは、という疑念が拭えずやめた。NC750Xはとても良かった。なんと試乗もさせて貰えた。

車の試乗は店の人が一緒に乗れるし、よっぽど下手くそじゃない限りは事故る危険性は低いのだけど、バイクというのはやはり運転が難しい乗り物であって、よく転かす。私も自分のバイクを人に貸して3m走って転かされたこともある。慣れないバイクだと転かしやすい。

だから、試乗をやってる店舗というのは少ないのだけど、今回買う前に試乗できてとてもよかった。

NC750X……というかDCT車は凄く不思議なバイクだった。左手にいつもある所にクラッチがない。止まる度にエンストするんじゃないかと一瞬思ってしまう。ただ、5分も乗っているとすぐに慣れてしまい、楽だなという気持ちのほうが強かった。

X-ADVは試乗車はなかったのでまたがっただけだ。

NC750XとX-ADV、どちらも魅力的なバイクであったが、結局X-ADVを購入した。

公式サイトからの引用になるが、こんな感じのバイクだ。

NC750Xとは兄弟車の関係にある。NC750Xはこんな感じのバイクだ。

NC750X / X-ADV のエンジンは低回転トルクを大きくする方向に舵を切ったバイクだ。街乗り重視なのではないかと思う。750ccの排気量に対して馬力は58馬力とかなり控えめ。一方でトルクは4750rpmで69N・mを発揮する。余談だけど私はトルクをSI単位で覚えているのに未だに出力は馬力で覚えてしまっている。早くkWに慣れたい。ということでここに書いておく。58馬力は43kWらしい。

比較するために今まで乗った私のバイクの馬力とトルクと最大出力・トルク発生回転数を書いておこう。

車種名 エンジン型式 最大出力 最大トルク
KTM 390 Duke 水冷単気筒 399cc 32 kW @9000 rpm 37 N・m @7,000 rpm
SUZUKI V-Strom 1050 XT 水冷V型2気筒 1,036cc 78 kW @8,500 rpm 99 N・m @6,000 rpm
HONDA X-ADV 水冷直列2気筒 745cc 43 kW @6,750 rpm 69 N・m @4,750 rpm

こうして見るといかにX-ADVが低回転重視かというのが分かる。街乗りに最適化しているとも言えるかもしれない。

リッタークラスの回せば回した分だけ得られるトルクも好きではあったのだけど、実運用上で発揮するトルクの積分が一番大きくなるのはX-ADV、みたいな感じになるだろう。普通に走ってる分には変わらない、ということになるかもしれない。

NC750Xを運転していると、やはりリッター車に比べると非力だなと思う。ただ、それは相対的な評価であって、必要十分なトルクであると思う。特にスポーツモードにしたときで街中でトルクが不足していると思うことはまず無いだろう。高速走行は分からないが、レースをするわけでも無いし、追い越しや巡航が出来れば十分ではある。

さて、X-ADVとNC750Xは兄弟車だ。つまり、中身はほとんど同じであるが概観・機能の差だけがあるのだが、NC750Xが106万円に対してX-ADVは148万円とかなりの開きがある。X-ADVの機能的な差異としては

  • ブレーキがラジアルマウント
  • 倒立フォーク
  • スポークホイール(チューブレス)
  • クルーズコントロール
  • スマートキー
  • 自動ウィンカーキャンセル

というあたりがある。

いずれも着いていた方が個人的には嬉しい。スポークホイールも好きだし、クルーズコントロールもよく利用する装備ではある。

スマートキーと自動ウィンカーキャンセルは非常に嬉しい。今回のバイクのテーマは「乗り出すことに躊躇しないこと」「楽に乗ること」としている。車はほとんどがスマートキーでそれに慣れているというのもあるし、鍵をポケットから出すという行為もバイク用の手袋をしていると案外面倒な行為だ。キーホルダーを付けていると風になびいてかちゃかちゃと動くので傷が付かないか気にかかる。そういった種々の煩わしさがないのは良い。

自動ウィンカーキャンセルはどこまで正しく反応するか分からないが、無いよりはあったほうが良い。これも車に比べると煩わしいことの一つだ。ウインカーの位置はバイクによって統一されている訳ではないので、私のようにホンダの原付とスズキのバイクを交互に乗っているといつまで経ってもウインカーとクラクションの位置を迷ってしまう。

あと、個人的に大きな違いなのが給油口の位置だ。NC750Xはタンデムシートの下に給油口があり、タンデムシート上に荷物を載せていると一度それを降ろさないといけない。私は長距離運転をするとき必ずタンデムシートに荷物を載せるため、給油の度に荷物を降ろすのはかなり辛いな…と思っていた。

X-ADVとNC750Xで一番大きな違いは乗車スタイルだろう。NC750Xは通常のバイクと同じような姿勢で乗るが、X-ADVはどちらかというとビッグスクーターの仲間であって、ブレーキも左手にブレーキレバーが存在する。ここが大きな違いだ。

ニーグリップできないことがX-ADVを選ぶことでやや躊躇したが、最終的にはそれよりも大きなメリットがあると判断した。

それは足の置き場所である。X-ADVはビッグスクーターのように足を前へ投げ出す姿勢、水平のフットレストに足を置く姿勢、そしてなんとフットペグを装着できるので、通常のバイクに近い姿勢でも乗れるのである。

この三種の姿勢を選べるというのは個人的にとても強い。バイクで長距離を走っていると同一姿勢をとり続けることが個人的には一番辛かったからだ。

一番最初に乗った390Dukeから乗り換えた理由はそれだった。高速道路でのパワー不足や軽すぎることによる不安定さというのもあるが、一番は姿勢が辛かったからだ。V-Stromでは姿勢の点ではだいぶ楽になったが、しかしさすがに何百キロも走ると姿勢が辛くなった。

この点、3カ所も足を置く位置を選べるのであれば長距離時もだいぶ楽になりそうだと思っている。

スクーターと同様の操作感という点についても、普段乗っている原付と基本的には同一であるので慣れの点で良いと思う。まだマニュアルを運転し続ける自信はあるけれども、まだ頑固なジジイでないうちに早いこと機械に任せられるところは任せた方がいい、と思う。

と、ここまで書いて、バイクの免許を取る前はスズキの SKYWAVE 650 というビッグスクーターに乗りたいと考えていたことを思い出した。当時はビッグスクーターが人気のジャンルだった。一回、リッター車に乗ってから750ccくらいのバイクに乗りたいなと思っていて、最終的に SKYWAVE 650 あたりが良いのでは、と考えていた。

今はビッグスクーターは非常に不人気だし、昔も人気な一方で旧来のバイク好きからは批判的な意見が多かったが、個人的にはこれもアリだよなとずっと思っていた。今、最終的にビッグスクーターみたいなバイクにたどり着いたのは面白いと思う。

ちなみに、最終的に買うバイクはGOLDWINGと決めている。クルーザーが嫌いと書いたが、GOLDWINGは別腹である。

そういえば、X-ADVは乗っているのがおっさんばかり、みたいな話も目にした。実際、HONDA Dreamsの店舗でも乗っている人は還暦ライダーみたいな人たちが多かった。

これについてはこの車種がおっさんに好まれるというよりは、単純に車体価格が高いからじゃないかと思っている。148万円という価格はリッター車よりも高い。V-Stromよりも高い。同じくDCTでリッター車でアフリカツインと同じエンジンのRebel 1100よりも高い。私も初めて見たときに驚いた。確かに装備が優秀というのはあるが、しかしそれでも個人的な感覚では、130万円くらいが適正価格ではないかと思っていた。

若者は金が無いので高いバイクを買えない、しかしおっさんは買える。だから結果としておっさんしかない。そういうことじゃないかと思う。

実際、X-ADVは非常に人気車で中古車が新車よりも高いこともままあると聞く。実際、かっこいいからね。

初めてX-ADVを見たのは神楽坂に焼肉を食いに行ったときだと思うのだが、そこでX-ADVが路駐してあった。すげーかっこいいと思ったのが最初の印象だった。最初は外車だと思ったがあとでホンダのバイクだと知って驚いた。デザインはイタリアのチームが行ったとのことなので、実質外車みたいなものかもしれないが…。

私は若いとき、おっさんが金のパワーで高いものを買うのが嫌だった。大して使いこなせもしないくせに良いものを持っているのが不条理だと思っていた。そして今、私がそういうおっさんになっている。

自分が一番嫌いなタイプだったおっさんに今なってみてどういう気持ちか。

「金を使うのはとても気持ちが良い」これに尽きる。

私の父は「我慢して金を使わないんじゃなくて沢山稼いで好きなものを買え」と言っていた。それが正義だと思う。良いものを買うのは働いているおっさんのご褒美というわけだ。そういうわけで私はその権利を行使した。

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