やり続ければなんとかなる2025
この記事は小説を書く人のエッセイ Advent Calendar 2025の6日目です。
私は「絵と文」を創作活動でやっており、SFと郷愁をテーマにしています。小説と漫画をかいています。
年末なので自分の1年の活動をまとめてみます。しかし残念なことに、最近は常時疲れていて考えをまとめる能力が回復しないので、まとめることを放棄したうえで思いついたことをそのままつらつらと書いて行ってみます。
疲れた
とにかく2025年は疲れた年でした。色々と本を作りました。列挙してみたいと思います。
- しあわせになるために/すみよさのアンチ
- にんじんくん1
- 絵と文1.5
- ハピネス文学フリマ ZINE
- 未完
- ハピネス姥捨山 真夏のホラー特集
- ハピネス姥捨山 文学フリマ福岡 さらば夏の日
- にんじんくん1 (本物)
8冊作ったみたいです。月刊誌か?
もちろんそれぞれがボリュームがある本ではなくて一人あたり4ページくらいしかないコピー本だったりもするんですが、それでもまあよく作ったなと思います。イベントに参加することを決めるとテンションが上がって新しい本を作りたくなるんですよね。その結果、短いスケジュールで作業することになるので完成度も落ちていきます。よくない。(ただ、私の本は少なくとも私自身が買いたいと思うことを基準に作ってるので、手を抜いてるわけではないです)
それぞれの本について思い出を語っていきたいと思います。
しあわせになるために/すみよさのアンチ


チーム「ハピネス姥捨山」の初めての作品でした。適さんとのネーム交換で仕上げた漫画。ネーム交換というのは、お互いに漫画のネーム(ラフ、下書きの下書きのようなもの)を描いたあとでそれを交換して作画して仕上げるというものです。原作と作画が交換されてる、みたいなイメージがわかりやすいと思う。
去年の12月いっぱいかけてネームをかき、そこからお互いに描いたネームを交換して作画しました。なんかもう二人とも結構病んでた記憶があります。
漫画作りはメンタルに来る。単純に作業工数がかかりすぎる。私の場合だと30ページ描くのに130時間くらいかかります。この数字はClipStudioというソフトで計測した時間ですが、作業中に操作していない時間が一定時間続くと計測が止まります。作業効率80%とすると実作業時間は160時間くらいあると思います。
当然、その間仕事もしているわけですし、残業もおそらく30時間くらいはあります。その上で1ヶ月で追加で160時間残業をするようなもので、合計190時間残業。そんなもんしたら病むに決まってます。漫画は健康に悪い!やめましょう!
適さんから拝受しましたネームは女子高生百合でした。自分だったら描かないテーマ。私が適さんに送ったネームはSFで車が沢山出てくる漫画で、これも難しい背景ばかりだったので申し訳なかったです。
あとは、この作品を出したイベント(COMITIA151)からお品書きをhacoさんに作って頂くようになりました。おしながき一覧を末尾に貼っておこうかと思います。
この本の売れる勢いはそれまでの本の中でも圧倒的に高く、今考えるとこのときから私のイベント参加での流れというか勢いがなんか違ってきたかな、と思います。
にんじんくん1

九州コミティアで新刊を出したく、なんか新刊作ったれ、と思って急遽作った本です。これも適さんが1ページ漫画を描いてくれました。少部数しか刷ってないです。
『にんじんくん』はとにかく楽に漫画を描きたいと思って製作コストの小さいキャラクターを追求したつもりだったのですが、なんだかんだと背景を描き込んだりして時間がかかります。
そんな単に製作工数削減のためだけに生まれたにんじんくんですが、面白いという話をよく頂けるので今でも作り続けています。
絵と文1.5
これもTAMAコミに出る時に新刊欲し~と思って急遽作った本でした。Affinity Publisherで作りました。横書き左とじのエッセイ+イラスト集です。


TAMAコミは私の自宅からバイクで15分くらいのところにある場所が会場なのですごく行きやすいです。多分、今後は毎回出ると思います。場所も広くて良い。TAMAコミに来たら打ち上げ行きましょう。
このときは3~4人で行って沖縄料理をたらふく食べた記憶があります。
ハピネス文学フリマ ZINE

これかなり面白い本でした。会社っぽいシャチハタハンコを作ったり、契約書っぽい製本で作りました。社印も押してあります。このためにわざわざハンコを作りました。エッセイ+漫画本です。適さんと二人で作って封筒に入れた本で、適さんの本は写真に写ってないですがハードカバーですごかったです。
私は肉を食うエッセイと豆腐の漫画を描きました。
これを作る時が今年で一番病んでたと思います。8ページくらいだったんですがなんかその8ページくらいが全然描けなくてしんどかった。適さんもしんどかったようで、当日の朝に製本して糊がまだ乾いていない新刊をビッグサイトまで届けてくれて、そしてそのまますぐ帰っていきました。ギリギリの状態でギリギリで仕上がった本。このイベントで完売しました。もう作者の手元にも無いです。
未完
「漫画の下書き集」という実験的な本です。

私が映画のメイキングなどを見るのが好きなので漫画でもそういうものを見たいな、とおもって作ってみました。
この本は表紙がよく褒められます。私自身も好きです。が、もっと好きな絵は他にもあります。ただ世間的な(?)評価はこの絵が圧倒的に良かったように思います。なぜでしょうか?ちょっと私にもわかりません。
これに関しては売るのが難しい本でした。下書きと構想しか載ってない本なので…。表紙に惹かれて手に取るが中身を見て買うのを止める、というパターンが最も多かった本でした。実験的だと思って作ったので想定してたことではありますが。むしろ、もっと売れないと思っていたのですが、メイキングを見るのが好きな人はそれなりにいるみたいです。メイキング好きですねー、と言っていた人も何人か目にしました。
『キョンシーに優しく』という本の下書きが中心で載っているのですが、『キョンシーに優しく』と二冊セットで買ってくださる人が最近は多い気がします。
ハピネス姥捨山 真夏のホラー特集
ハピネス姥捨山が私、適さん、お肉ミートさんの三人になって初めて作った本です。
私は『キョンシーvs宇宙人』という漫画と『赦報』というホラー小説を書きました。なんと!!!!今年書いた小説はこれだけでした。ほとんど漫画を描く人だったのに「小説を書く人のエッセイアドカレ」に参加したわけでございます。
今年一番作業時間がかかったのがこの本だったと思います。「コンビニにあるような漫画本」をイメージして作りました。120ページのボリューム。すごい。
『赦報』は7千字くらいの小説です。すごく短くてサクッと読めちゃいます。後述したいと思いますが、個人的にはかなり手応えの感じる作品となりました。普段小説をよまない方が読んでくださった上に「映画をみた後のような読後感」と感想を沢山送ってくれたのがすごく嬉しかったです。
ハピネス姥捨山 文学フリマ福岡 さらば夏の日

文学フリマ福岡に持って行ったコピー本です。
ちょっと暗い雰囲気のあるエッセイとイラストを描いています。これは短いながらも内容が濃くてすごく良い本に仕上がったんじゃないかなと思います。適さんのエッセイも素晴らしく良いです。適さんはエッセイの才能があると思います。しずいんをぜひ見てみてください。
にんじんくん1 (本物)

以前出した『にんじんくん1』の内容がやや薄かったのでもう少しボリュームを増やして作った本です。当初からその計画だったのではあったのですが、内容が重複している本をもう一回出すのはどうかな…とは思いました。
今年一番の勢いで売れた本がこれでした。ギャグは強い。
小説を書く人、という観点で見た場合の今年の活動
既に述べたように今年書いたのは『赦報』だけだったんですが、これは今まで私が書いてきた小説とはだいぶ違った物になった気がしています。よりキャッチーで読みやすく、しかし深読みや考察ができる奥行きも確保できたかなと思いました。「本当に怖がらせるホラー」というコンセプトで書きましたが、それが意図したとおり伝わったかなと思う感想を複数頂きました。
最近は、この筆者の考えみたいなものが制作意図通りに伝わるようになってきた感じがあります。
今年は全然小説を書いてこなかったのに、なぜこういうことが出来るようになったのだろう?と自分なりに分析しましたが、おそらく漫画を描いた経験が小説に生かされているような気がします。
漫画って描くのが難しいんですよね。イラストとシナリオを作る能力があっても漫画って出来上がらなくて、漫画特有のそれよりも一段高い(=習得するのに時間がかかる)能力が必要だと思っています。漫画を描き始めたとき、セリフもストーリーも絵も構図も背景も、一コマ描いていくたびになんて自分は下手くそなんだと打ちのめされたのを覚えています。
漫画を描いているときは、これどういう状況か伝わるのか?意味分かるのか?と、そればかり考えています。面白い・面白くないじゃなくて、そもそもその前段として話の意味が伝わるかどうか?という点が怪しくなってきます。町中の風景だと思って描いたものが、人によってはトイレに見えたりするんじゃないか?という「解釈の違い」とかいうレベルじゃなくてそもそも表現として崩壊しているのではないか、という恐怖と戦い続けています。
なので、読者のために可能な限り分かりやすく丁寧な表現を心がけていたのですが、小説でもそれが生かされたのかなと。『赦報』という小説を書いているときもかなり「意味が伝わるかどうか」を重要視したと思います。
と、ここまで書くと中には「平易な表現ばかり使うと深みがなくなるんじゃないか」「読みやすさを最優先するとつまらない作品になりそう」と思われる方も居るんじゃないかとおもうのですが(おそらくちょっと前の私だったらそう思っていたと思います)、決してそんなことはなく、読みやすいことと深みのあることは直行する概念なので両立させた作品は作れるんじゃないかと思っています。もちろん、難解で何度も読まないと理解出来ない作品を作りたいんだ!という目的があればそれはそれで自由にやっていただくのがよろしいかと思いますが…。
やってればなんとかなる
私が本を書いて売るという活動を始めてから2年半くらい経ったと思うのですが、「やってればなんとかなる」が身に染みついてきたなと感じました。何の分野でも続けてれば強くなってくるんですよね。
私もいい年こいたおっさんになってきたので、ようやく人生が分かってきたような気がしてきています。仕事で成果を出すのもこういう創作活動で成果を出すのもすごく似ている。やってみて、ダメなところを改善し続けて。それを止めなければ一定程度の成果を出せるんじゃないかと、そんな気持ちになります。
そしてこれもいい年こいてるから分かるんですが、みんな途中でやめちゃうんですよね。勿体ないことに。私はどんな分野でも、がむしゃらに頑張ってやり続ければ、それに見合った成果はきっちりと出ると信じています。止めなければ成果はいつか目に見えるところに勝手にやってくるのを自分の人生で何度も経験しました。途中まで頑張ったのにやめちゃうのが一番もったいない。
昔からゆるく創作の世界には片足を突っ込んでいましたが、みんな私生活が忙しくて創作活動をやめてしまうんです。まあ、仕方ないことなのでしょう。私も一度は創作活動を止めましたし。
偉そうなこと書いてしまいましたが、多少ならば偉そうな事を言ってもいいかなと思えるくらいの成果が出たのが今年の活動結果だったように思います。しかしまあ、上には上が居るんですけれども。
付け加えると、必ずしも成果というのは商業的に成功するとか、わかりやすい仕事の実績を得るとか、そういうことに限りません。好きで創作活動をやり続けて、作品のクオリティが上がり自らが満足できるものが完成する。それも成果の一つでしょう。
来年の抱負
来年はもっと小説を書きたいです。本当は私は文章のほうが得意だと思っています。一方で漫画は難しい。難しいことを習得するのは面白いので今年はかなり漫画にハマって漫画を描いてしまいました。
実は、漫画と小説をシームレスにつないだ本を作りたくて、それがうまくいくかどうか分かりませんが来年は実験的に取り組んでみたいです。
あとはもうちょっと無理のないスケジュールで制作をすすめていきたい…。
絵
最後になんとなく、今年描いた絵で目についたものを載せていこうかなと思います。
以下の絵は『真夏のホラー特集』で描いた『キョンシーvs宇宙人』のコンセプトアートみたいなものです。最初はアクションをたくさん入れたいなと思っていたんですが、時間的な制約でアクションシーンは大幅に削ることになりました。
包丁を持って人類にとって未知のテクノロジーを有した宇宙人と戦うみたいなシーンを描きたかったんですが。

以下は丸毛さんの新刊の表紙のために描いた絵です。

うおおお、#文学フリマ東京 新刊あります😆✨
— 丸毛鈴 (@maruke_suzu) November 20, 2025
氷河期世代×テキストサイトからSNSまでインターネットの25年
短編集『天国なんてどこにもなくても』
よろしくお願いします!
最高の装画・装丁は有理まことさん!
「丸毛鈴の結婚と生活」そ-27 でお待ちきております#文学フリマ東京41 pic.twitter.com/pES0rjV4X1
丸毛さんからは相当なお褒めのお言葉と感謝のお言葉を頂き、描いて良かったなと思いました。他の人からも良いと言われましたし、文学フリマの会場でも「この表紙を見て来ました」と買いに来てくれた方が居たそうです。
でも描いているときは相当に悩みました。自分の創作物ならば気楽なのですが、他の人の作品の一部になると思うと相当なプレッシャーでしたね。いつも出来ていることが全然出来ず、途中で何度も描き直しを重ねて仕上げました。自分が良いと思ったものを作り上げるのと、他の人から希望を受けて作品を仕上げるのとではやることが全く別ですね。長距離トラック運転手とタクシードライバーくらいやることが違うように思います。skebとかやってる人たちはすごいな…と思いました。
今後も頼まれれば描くと思います。ただ、お金をもらって広く依頼を受ける(ことを試みる)みたいなことはやらないと思います。今回も特にお金をもらっていません(私が不要ですと言った)。知り合いに頼まれたら描く、くらいですかね…。
特に創作活動で儲けたいとは思っていないのですが、同人活動であろうと利益がでなければ存続できないために同人誌の値段を著しく下げるのは業界にとって良いことと思っておらず、ある程度事業として成り立ちそうな値付けをするポリシーでやっています。一方で、こうした二者間の依頼に関しては私が大量に描いて売るわけでもないから無料でいいか…(お金が発生すると逆にプレッシャーがかかるという事情もある)という感じになっております。私が無料で受けまくれば影響は出るかもですが、そんなことはないので。
以下は『にんじんくん1(本物)』の表紙の一部なんですが、実際に表紙に使ったイラストとちょっとだけ違っています。

暇だったら間違い探ししてください。
以下は文学フリマ40の告知のために描いた絵です。

Twitterに貼っただけでしたが、ちゃんと印刷して卓上に掲示しておくとかしたほうが良かったですね。卓上のポスターって結構見てもらえる印象があります。昔はA0くらいのでっかいタペストリーを後ろに掲げてたんですが、これはやめました。荷物が増える割にあってもなくても売上に大差なかったので…。
それよりも個人的な所感では卓上のポスターのほうが興味を持ってもらえます。たぶん、ブースの前まで来るとでっかく掲示しているものはデカすぎて全体が視界の注目エリアに収まらないんでしょうね。

上の絵は今年のはじめくらいに描きました。下書きなしで描く練習をした絵ですね。下書きなしが一番早く描けるので定期的に練習していますが、まだ会得できていません。

上は『ハピネス姥捨山 真夏のホラー特集』の裏表紙です。コンビニに売ってる漫画をイメージした想定なのでこんな感じになりました。本の内容とは全然関係ないことが書かれています。これを作っていたときが一番楽しかったです。とにかく時間がなくて、4日くらい急いで作った記憶があります。

上は裏表紙の裏です。こういう怪しい広告も載っています。これも描いているとき楽しかったですね。ニュアンスが難しいんですが「作り込んだギャグ」を描いているときが一番自由に感じます。
今年のイベントのおしながき一覧
COMITIA151
これはおしながきを整備する時間が無かったのでギャグ路線に寄せて工数削減しました。なんでギャグじゃない内容の本なのにおしながきをギャグ路線で作るんでしょうか?

以降はhacoさんに作ってもらいました。
九州コミティア9

TAMAコミ10

上の黒いほうがとてもかっこいいです。好き。
文学フリマ東京40
コミティア152
コミティア153

TAMAコミ11

実は上のものはSNS未掲載のおしながきです。2つある候補デザインのうち、最終決定したものとは違ったほうを載せてしまいました。
文学フリマ福岡11
文学フリマ東京41 & コミティア154
おわり
今年、10個もイベントに出てたのか…。長々と今年の活動について書きました。来年も創作活動頑張りましょう。