夢日記 250708
中学のときの教室でみんなが前を向いて座っている。懐かしい顔が沢山ある。みんな、中学生よりは年を取っていそうだが、それでも高校生くらいに見えてとても若い。
私は教壇に立ってみんなを見ている。その当時、学級委員長をやっていたからだった。その日は卒業式で、私は最後の挨拶をしなければならないことになっている。中学生の自分ならば緊張した場面だと思うが、年を取ったので心に余裕がある。そればかりか、本当は自分は40歳であるということを考えると途端に面白くなってきた。それを考えるとどうしても面白くなって喋りながらついに笑ってしまう。
だから、私は本当は40歳だ。40歳の自分がいま、なぜか中学生のみんなの目の前に居るんだ。と正直に言う。当然信用されず、冗談だと思って笑われる。「それなら俺は将来どうなるんだ」と次々問われて答えていく…のだけど、もともと中学の時の友達とは疎遠になっているため、大まかにしか行き先を知らない。「東京で働いてるよ」「地元に残ったよ」くらいの曖昧なことしか言えない。
大人になるとみんな疎遠になるもんだ。特に結婚したり子供が出来たりすると。みんな秋田からは出て行くし。自分もそう。でも、東京でたまに昔の知り合いを集めて飲み会を開いてくれる人なんかもいて、そういう人はとてもありがたいね。だから、みんなもなるべくそうしてほしい。という趣旨のことを言う。
そうして話していて気づいたが、どこか違和感がある。皆が自分を見ていると思いきや、皆の目線はすこし左にズレている。私は「今教卓のところに立っているけど、みんな何処見てるの?」と問うと、私は廊下側の窓の外にいる、と言われる。よく分からないけれど、未来から来たこの時代に居るはずのない人だからそういうこともあるんだろう、と言った。
また、せっかくだから何か実のあることを言おうと思い、未来に起こるであろう事柄を伝えようと思って躊躇した。真っ先に思いついたのは東日本大震災。私がここでそれを伝えてしまったら、たとえそれが真実だとしても、やっていることは予言じみたことを流布して結果的にデマを広げている人と同じになるのではないか。
人死にが沢山出た事件というのも言うのを躊躇した。出来れば若い人たちには魅力的な未来を伝えておきたい。しかし、魅力的なことを思い出そうとしたがなかなか思い出せない。人が死ぬのは見たくないのだ。という考えに至って、思い出す。そういや、Mが居るのでは。
Mは16歳で亡くなった私の親友だった。足の付く浅い川で流されて亡くなった。その瞬間に何が起きたのか、だれも見てない。私もその日、川で一緒に遊ぶはずだった。学校から帰る途中で川で遊んでいるのを見かけ、いつまでここに居る?俺すぐ家に帰ってから準備してここに来るけど。と聞くと、Mは「わかんねぇ」とこっちの顔も見ずに答えた。それが最後の会話になってしまった。
Mとは中学も高校も同じだったので、Mが居るはず、と思った瞬間。自分の視点は教室の外に移動してみんなと目が合っていた。そして今まで自分が居たはずの教卓の隣にはMがいる。あっ、Mだ!Mがいる!!と私は駆け寄り抱き合って喜んだ。みんなにMが見えるか問うと、Mは見えないという。俺は未来からやってきて、Mはあの世から現世に戻ってきて、二人ともこの時代のこの教室に居るはずがない存在で、だから二人だけはお互いに見えるんだ!と思った。
Mはあまりにも変な格好をしていたので笑ってしまった。上半身が裸で、髪はオールバック。頭には白い鉢巻きをしていて、死に装束の三角の頭巾のようにも見えた。何となく、力士っぽいと思った。夢から覚めたあとに考えるとあまり力士っぽくはないが。でも、夢の中ではなんでそんな相撲取りみたいな格好してんの?と笑った。そして、Mも年を取っていた。自分と同い年か、もしくはもうちょっと老けているくらい。死んでからも年を取るのか?とは考えなかった。お互いに老けたな!と肩をたたいた。
鉢巻きには漢字のように見えるけれども読めない不思議な文字が書かれていて、それは死後の世界で神様からもらったものだと言う。死後の世界での活動が認められて神様がご褒美にくれた物だと、そのほかにも沢山の同じような不思議な文字が描かれたお札を見せてくれた。Mが座っているところの頭上には何故か白黒テレビがあって、戦後すぐくらいと思しき焼け野原になった光景がずっと流れていた。お前、別にこの時代を生きてないだろ、と言ったんだけど、それに関しては笑うだけで詳細はわからなかった。
Mとまた会えてうれしかったのでぼろぼろ泣いた。7月5日が命日だったので、会いに来てくれたのだと思った。新型コロナが蔓延する前までは毎年、7月はMの実家を訪ねたあとに墓参りをしていたのだが、ここ数年は出来てなかったので、向こうからわざわざ来てくれたのかもしれない。とも思った。
おわり。