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日々 250613 金の話 金 金 金

原稿が終わった今、何も悩みがない。いや、細かい悩みは沢山あるんだけど、こう、生死に関わるような悩みがない。良いことだとは思う。

生死に関わるような悩みというのは、日常的には金ですね。金。金がないと本当に病む。俺が若い頃は、というジジイの話になってしまうのだけど、私が大学生のころは本当にキツかった。実家が農家で米は貰えたんだけど、逆に言うと米しか食べるものが無かった。私だけで無く周りもそういう学生が多かったように思う。友達はソースをご飯にかけて食べ、先輩から「のりの佃煮があれば半月はいけるよ」というアドバイスを受けた。当時書いていたブログに載せていたメールアドレスに知らない誰かからメールが届いて、「俺も学生の時はキツかった。もやしを食って凌げば良い。ほとんど何も食わなくても、水だけで半月はどうにかなる」という、山で遭難したんですか?みたいな助言も届いた。

そして今、その人と同じ事をやってるわけだね。

金がなかった時の気持ちは今でも残っている。トラウマというのかもしれない。メシがないのはキツい。金がかかる何かが将来的にやってくることが分かっているのに、それに対して手持ちが無いというのは本当に気が重くなる。

でもさすがに私くらいの年になるとある程度金銭的な余裕が出来てくるような気がする。20代、30代のころは定職について金を稼いでいても、たまにキャッシュフローが悪化するイベントがあったり、積み立てた資産を取り崩さないと乗り切れない場面があったり、クレジットカードの請求を決済後分割払いとかリボ払いにして乗切るとか、そういう小細工をしなければならないこともあった。けれども今はようやく余裕が出てきたように思う。

思えば20代後半から結婚したり、家を買ったり、車を買ったり、ずいぶんと浪費した。その後のインフレや消費税の上昇を考えるとあのときの判断に間違いは無かったと思う物の、しかし、短期的にはしんどいのは間違いなく予測出来ていたことであるし、実際しんどかった。

今は多少めしをおごるくらいの余裕は出てきたし、コミティアや文フリみたいなイベントで地方遠征するのもそんなに苦ではなくなった(体力的にはキツいけど)。

金に関しても最近色々と思うことがある。以降は居酒屋談義程度に聞いてほしい。

日本もアメリカも財政規律がゆるゆるで、日本国内に目を向けると、みんないかに損をしないか、いかにしてお金をもらうか、みたいな発想になる人が多いように思う。いつだったか自己責任おじさんが言っていたことはある程度正しく、本来は国なんてあてにしちゃいけないと思う。国をあてにしてはいけないというか、そもそも、自分以外の誰かをあてにしてはいけない、とすら私は思っている。他人をあてにすることは実はしんどい。他人は自分じゃないから、良くも悪くも自分が想定していた結果とは違う結果を持ち込んでくるし、予測できないことを織り込んで計画を立てるのは難しさもある。しかしながら人間であれば誰しもが手を取り合って協力していかないと、個々人で出来る枠は乗り越えられないので頑張るしか無いんだよね。

ちょっと話がずれてきた。ともかく、財政規律がゆるゆるだから日本のインフレはどんどん加速していくだろうと私は思っている。日銀はMMT論者ではないが、結果的にMMT論者がうれしくなるようなことを長らく行っている。MMTベースで言えば良好な経済成長と認められるインフレ率2%に制御すれば良いと言うが、本当にこれは「言うは易し」だ。日本のCPIは2025年4月時点で3.6%でG7の中でもっともインフレが進んでいるらしい。つまり、既にもう制御できてないとも言える。民間企業が長らく価格転嫁を嫌っていたという要因はあると思うが、しかし、根本的には財政規律がゆるゆるだった素地があるんじゃなかろうか。

MMT論者は物価上昇率2%で安定するようにマネーサプライを制御すれば良いという。けれども2%で安定させるのが難しいというのが既に今の時点で明らかだ。MMT論者に言わせれば「コントローラー俺に貸せ、おれがやったら2%で安定できる」と言うことなのかもしれないが。ここから徐々にジェンガみたいなギリギリの出口政策を進めていくしかないわけだ。日本の40年国債金利は3%くらいまでは戻ったけどちょっと前は4%間近だったわけで、これは本当に怖いことだと思う。

MMT論者は「家族にしている借金だから、自国通貨はなんぼでも刷れるから、インフレになったらやめればいいから」という論理を振りかざしているが、インフレは制御できないのは既に述べたとおりだし、いきなり買うのを辞めたら国債価格が暴落するだろうというのも金利を見てれば分かるだろう。簡単に言えば、「家族にしている借金だからなんぼ負債が膨れ上がってもオッケー」という世界観でみんなは生きていないのだ。「家族にしている借金は無いようなもん」という論理で借金を繰り返して散在している人が居たら絶対にコイツやばいな、と思うでしょう?どこか知らん家族の内で中心にやりとりされてる謎の債権を買おうと思いますか?思わないでしょ?国際的にもそうだということなんですよ。理論上はオッケーだけどそうは問屋が卸さねぇよ、という素朴な感覚は個人のレベルから国際間取引のレベルまで意外と共通でつながってるんですよ。

でもわかんないな。MMTってちょっと前はよく聞いたけど今全然聞かないもんな。もうみんな飽きたのかもしれない。

ともかく、上記のようなことを踏まえて個人としてどう生きるべきか?それはまあ積極投資がリスクであるように見えて実は防衛策だと思うんですよね。現金はインフレで目減りしてしまうけど、適切な資産にしておけばインフレ分をキャンセルできるかもしれない。あわよくばインフレ分を上回るリターンがあるかもしれない。あとは、ローンを組む予定があるのならば早めに組んでおいたほうがいいかもしれない。

でも投資は資産が減る可能性もあるのでちょっと……という反論は常にありますが、この論理の一番の誤謬は現金の価値が変わらないことを前提にしてるということなんですよね。インフレ局面で現金は安全資産とは言えないので。現金で持ってても他の資産で持ってても資産価値が目減りする可能性も増える可能性も全てあるということなんですよ。日本人の大好きなゼロリスクが経済の世界では存在しない。でも、額面の数字がそのまま変わらないから価値も変わっていないように見え、結果、現金保有はゼロリスクでいちばん安全だと思い込んでしまう。

で、こういうインフレ局面でもう米が高いとか言ってる場合じゃ無いと思うんですよ。いやまあ、米もCPIに寄与しているはずではあるんですが。米の価格が下がればCPIも下がると思うんですが。でも米を2000円で買えたからお得とか言ってる間に年3~4%弱ずつ生活は厳しくなるんですよ。仮に年収500万が継続する人がいたならば来年には購買力は480万円になってしまうかもしれない、というということですわ。

米が高くなったというニュースは連日見かけるけど、40年国債の利率が4%に迫ったことはほとんど報道されなかったからな。40年国債とか言われてもピンとこない人の方が多いから仕方がないとは思うけれども、あまりにも問題意識が低すぎるような気がする。以前から思ってるんだけど、理解するのが難しい事柄を難しいからという理由で遠ざけることや、間違っているが理解するのが易しい言説を正しいと思い込んでしまう現象、これ本当によくないと思うんだよな。

そういうことを考えているとなんかもう本当にしんどくなる。私は。金がないのは一番精神にくる。しんどい。冒頭で悩みが無いと書いたけどブログを書いてて悩みが増えた。本当にしんどい。しんどいわ。

そんなことを考えながら日々の創作でひねり出されるのはしょうもないにんじんくんとかいう漫画だったりする。それが唯一の救いなのかもしれない。

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