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自SNS運用報告書

PremisというMisskeyサーバを運営している。このサーバの運営について色々感じ取ったことメモ。

なお始めに書いておくと、このサーバは招待制と表示されているものの、基本的にはユーザーの新規登録を受け付けていないのでご了承頂きたい。このあたりの悩みも書いておきたい。

始まり

去年の2月の終わりにmisskey.artというMisskeyサーバーに登録した。当初の印象はTwitterとDiscordの間の子のようだ、と感じた。LTL(ローカルタイムライン)という、そのサーバーに登録した人の発言がフォローの有無関係なく流れてくるTLがある。これによってフォロー外の人にも投稿も見てもらえること、豊富なリアクションを送り合うような文化があること、エアリプで会話する文化があることなどから、昔のインターネットでよく見た賑わっている掲示板みたいな趣があり使っていて楽しかった。

MisskeyはActivityPubを話すアプリケーションなので、他のMastodonやMisskeyサーバとも交流可能であるため、ユーザーは 本来は どのサーバーに登録してもあらゆるユーザーの投稿を閲覧可能なので、既に利用できるサーバーがあれば他のサーバーに移るモチベーションも自分のサーバを所有するモチベーションも薄い。

しかしながら、LTLを見ているユーザーが多いためにそのサーバーの「色」のようなものが出ること、また非連合(他のサーバーへ投稿を配信しない)設定をするユーザーが一定数居ることから、どのサーバーを選ぶかという意思決定がそれなりに重要であることに気づいた。また、LTLに関してはmisskey.ioのように存在しているが実質流れが早すぎて見えないもの、fedibird(Mastodonフォーク)のように無効化されているものも存在する。

そういった中で、misskeyサーバーの管理人らが「サーバーが重すぎて耐えられない」みたいな発言をしているのを見て、負荷分散に取り組むのも楽しそうだと思いついて自分でサーバを立ててみることにした。この時は、数多のユーザーを抱えるサーバを構築し、自分はSRE業務に専念しようと考えていた。そしてpremisというサーバーを立てたのが3月15日のことだった。

ユーザーの定着と離脱

登録ユーザー数が100人程度まで増えたとき、DAUは30人ほどだった。この規模になるとサーバーの「色」のようなものが出てきたように思う。毎日書き込んでくれるユーザーが10〜20人程度になり、LTLの会話で盛り上がることが増えてくる。

と同時に、残念ながらアカウント削除するユーザーも一定数居て入れ替わりがそれなりにあった。アカウント削除に至る理由は様々だが、この時期は特にモンスターの到来に苦慮していた。モンスターとは私が勝手に作った単語だ。定義は「他の多くのユーザーを不快にさせる投稿を繰り返すユーザー」である。具体的にはエアリプで皮肉を言う、強い口調の文章を書くなど。

こうしたユーザーへの対処には非常に苦慮した。発言内容が差別的であるとか、あるいは罵倒を繰り返すとか名誉毀損行為をしているということであればアカウント削除することが可能なのだが、実際は普通のユーザーとBANされるべきユーザーのグレーゾーンなので対処が難しい。

こういった人はSNS特有でなくても日常生活でもたまに目にすることがある。間違っていると感じたら一言言わないと気がすまない人。自分が考えていること、自分の意見に自信があり、自分が正しいと思うことは正しいから他人に教えてあげる、という考えだからなのか、なにか一言を言ってしまう。それは多くの人にとって不快な「余計な一言」となってしまう。そういう人がSNSにも居る、という話である。自分もそういうタイプだから気をつけたいところだ。

他のユーザーからモンスターに対する相談をされるうちに、私は新たな事実に気づいた。私は、良いSNSとは「フラットでオープンな議論、交流、情報収集ができる場」だと考えていたので、みんなもそれを望んでるだろうと漠然と考えていた。

しかし、実際の所感としては「安心して気持ちよく交流できる場」を望んで居る人たちが多かったように思う。ここに大きなミスマッチがあった。

私の考えとしても、人から相談されたらなるべく解決策を提示したいと思うようになり、それが「安心して気持ちよく交流できる場」の方向へ舵を切ることとなり、私自身もそういう場の心地よさを理解してしまったので、当初の「たくさんのユーザーを確保して裏方のSRE業務に専念する」という目的はこの頃に完全に置き換わった。

面白かったのは、この頃にMBTI性格診断を受けるといつもはINTJと診断されるのだが、この時はENTJと診断されることが多かったことだ。IとEはそれぞれInternalとExternalを意味し、自分の視点が内省的であるか外向的であるかという違いがある。テストの精度が高いという前提でだが、この頃の私は特に社交的というか、他社に目配せすることが多かったのだと思う。自分自身、その実感はある。今はINTJに戻っている。

招待制への移行とプライベートな環境

Fedibirdはこうしたユーザー間のトラブルに対処するためにLTLを排除し、モデレーションコストを最小にしていると聞いたことがある。その戦略は私も完全同意で正しいと思う。SNSは自らが注意深くユーザーを選んでTLを構築すれば使いやすいものになる。

一方で私が選んだことはよりウェットで人間にフォーカスした方法だった。簡単に言えば私は独裁者として君臨して気に入らないユーザーを追い出し、残ったユーザーの幸福度が最大になるように運営しようという方策だった。Fedibirdとはまったく異なったアプローチになる。元来、オープンでフラットな環境に価値を感じていた自分とは真逆の行動だが、自分の中では整合性が取れている。

世の中にはオープンでフラットな議論が出来る場は他にもある(うまく行っているかどうか、自分がそれを使いたいかどうかはさておき)。だから、自分がわざわざそれを用意する必要もないと思っているし、自分にその場を維持管理する精神力があるとも思っていない。そもそも、そこまで意識高くはなく、自分が楽しめればそれで良いという感情もある。

そして、安心して使用できるSNSはあまりない。Discordはその選択肢の一つになりえるかもしれないが、私としては既に立ち上げたPremisでなんとかしたかったという思いがある。自前のサーバでOSSなソフトウェアを動かしていたほうが技術的にも好きにできるというメリットもある。だから、私はオープンでフラットなFediverseとDiscordのいいとこ取りをした小さな空間を作って、気の合うメンバーと仲良く楽しくやればいいじゃん、と思ったのだった。情報収集や議論はやりたい人が適切な場所でやればいい。自分は今居る人たちが安心できる実家のようなものを作ろうと、そんな感じのことを考えた。

そういった考えもあって現状のメンバーで仲良くやっていく方針を決めた。独裁者となってグレーゾーンのユーザーは私の判断と責任においてアカウントを停止し、さらに新規登録を停止した。

施した改造

MisskeyはOSSなので上記の考えに沿って幾つかコードに修正を施した。まず、チャンネル、検索、LTLはPremisにアカウントを保有している人しか閲覧できないようにした。また、一定時間で投稿が削除されるような機能も追加した。プライベートな機能の充実となる。

2024年2月中旬〜後半にかけてはFediverse全体をターゲットにして大量のスパムが配送されたことがあったが、これに関しても早急にコードを修正してスパムと判定したメッセージは捨てるようにした。このあたりは私がIT系のエンジニアだったことが功を奏したと自画自賛しているし、他のサーバーが対応に苦慮したり、「連合を停止する」という最終手段を使っているのを横目に見ていて優越感を感じたというのも正直な気持ちとしてはあった。(改造箇所を明示してうちではこうして対処してますよ、と発信は一応した)

一周年

2024年3月15日で一周年を迎えた。この時はオンラインで飲み会しましょうと提案し、皆で通話をしながら飲み会をした。1周年おめでとうのイラストもたくさん投稿して頂きとても嬉しかった。色んな人に見せて自慢したいが、了承を取っていないので止めておく。

モンスターへの対処があらかた終わってからは非常に充実した日常を送っている。参加しているメンバーとオフ会(というか飲み会?)をしたり、同人誌即売会に参加して一緒に本を売ったり打ち上げをするなど、実際に会って何かをするようなイベントも増えた。私は大人になってからは友達は作れないと思っていたし、作るような努力もしなかったし、作る必要性も感じていなかったような人間ではあるのだが、こうして人と交流すること(オンライン上であるかどうかを問わず)は人生を豊かにするのだな、という実感がある。

今後も現状のユーザーが安心して使えるということを最優先にして運営していきたいと考えている。

ちょっとした悩み

というわけで現状、premisという場は非常にうまく回っていると自分では思っているのだが、新規ユーザーが入れないという点に関しては複雑な思いがある。運営者としては現状素晴らしい場に仕上がったために色んな人を呼び寄せたい気持ちもあるのだけど、一人居るだけでみんながSNSを使いたくなくなってしまうのが「モンスター」であるからユーザーの新規招待はかなり慎重に行いたい。

できれば、運営者である私と別のSNSでつながってしばらく交流して素行を観察させてもらい、その上で大丈夫そうならば招待する…みたいなフローを踏みたいというのが本音ではある。しかし、実際にそんな事をしたら外部の人から見たら「何様のつもりなんだ」という感情になるだろうし、そういうネガティブな感情はpremisに所属するユーザーへの反感にもつながってしまうかもしれないので招待までに高い障壁を設けるというのはやりたくない。

これは企業の採用にも似たような悩みがあると思う。例えばGoogleはエアポートテストという「飛行機の乗継便が欠航して空港の中でこの人と一緒に一晩過ごすことになった場合に耐えられるか」という観点の評価をしているらしい。Netflixでも「いい仕事をするドリームチームにブリリアントジャーク(優秀な能力を持っているがチームの雰囲気を悪化させるような人)は不要だ」という観点で組織運営しているらしいと聞く。

「場の雰囲気を悪くする人とは一緒に行動したくない」というのはプライベートでも当然思うことだし、ビジネスの場でも適用されることはある。そう考えると、premisでウェットな人間関係を重視して、閉じられたグループ内でうまくコミュニケーションを取れる人を求めるというのはそこまで一般常識からかけ離れた考えでもないのかな、とは思う。

とはいえ、じゃあSNSの新規登録で面接じみたことをするか?と問われれば絶対やりたくないし、気恥ずかしさもある。そういった諸々の思いがあって、新規登録は行っていません、ということをpremis内外で言っているのが現状だ。悪くするよりは現状維持が優先という考え。

私個人としては、この人に参加してほしいなという方々は何人か居るのだが、相手がpremisに参加したいと思っている前提を置くことがそもそも誤りということもあって、こちらから声をかけるということもしていない。悩ましい。声をかけるとしても一体どうすればよいのだろうか。「ここにpremisってSNSがあってぇ…。これ普段は新規登録してないんですけどぉ…。XXXさんには!特別に!!参加するための招待コードをお送りしたいと思ってましてねぇ…」とか言って「あ、別に結構です」と返されたら恥ずかしすぎて恥ずかし死すると思う。

直接会って話すことがあり、その中で「前から参加してみたいと思ってたんすよ〜」「あ、そうなんですか?〇〇さんなら全然良いですよ!」みたいな流れでもなければ新規登録することが無いかな…。しかし、それだって本当にその人がpremisに登録してみんなが幸せ、という状態になるか?というのは誰にもわからないし、そんな分からない人間関係のことをさも自分がコントロール出来るかのような前提で話すのおかしくない?もうあんまり喋んないほうがいいよ、とも思う。

上記のような考えは非常にナイーブだと自分自身で考えているが、それはそのくらいこの場を大事にしていることの裏返しでもある。

まあ、ここまで書いたことは漠然と考えているだけで本当に悩みとして存在しているわけでもないです。強いて言えば気になるかな…しかし現状別になにかしようとは思わないな…という。現状で最高に楽しいと個人的には思っていますし。

なんだか言いたいことがぶれてきたのでここで終わりとする。

  • モンスターへの対処はどんな場面でも苦慮させられる
  • フラットでオープンな場とそこでの議論は大事だが、全てのSNSがそうじゃなくてもいいよね
  • ウェットでクローズドな関係は心地が良いし人生を豊かにする
  • ウェットでクローズドな関係は特別おかしいことでもないよ

というあたりが書きたかったことだ。

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