anopara

わしミリオタ、戦争が嫌い

タイトルの通り。

私はミリタリーオタクだ。第一次世界大戦から現代までの範囲で、兵器、戦略、戦術、戦史、用兵、技術などなど広く浅く知っている。一般的なミリオタのイメージというと、戦車とか戦闘機とか軍艦とか銃とかの名前に詳しいみたいな印象があるかもしれないが、私はあんまり兵器の名前とかは知らない。この銃は何?と言われてもよくわからない。M1ガーランド、M1カービン、MP5、MP40、トンプソン、PPSh、AK-47あたりは分かる。でもAK-74とAK-47と並べられたら区別がつかないと思う。戦闘機もミグとスホーイの違いはなんとなく分かるがSu-27以外は自信がない。戦車も分からない。だから、もしかしたらミリタリーオタクではないかも知れない。

戦史には興味がある。どこの国のどんな軍隊がどこで戦ったのか、何故そこで戦わなくてはならなかったのかとか、そういった背景を調べるのは好きだ。従軍手記やノンフィクション小説もよく見る。

大戦期の潜水艦や単座の艦上機とか、あんなもんによく乗る勇気があったなと思う。旧日本軍の特殊潜航艇の歴史などを調べると胃が痛くなってくる。まともに動かない船に乗って敵地のどまんなか、真珠湾やシドニー港に出撃していった人々はどんな気持ちだっただろうと思う。

戦争の最悪な所は誰も幸せにならないということである。定期的に特攻隊のドラマとか映画とかが登場するが、正直ああいうのも嫌いだ。特攻隊のような帰還を期待しない作戦のような極端なことを軍部が実施して、その犠牲によって現代日本で我々が幸せに暮らすことが出来るのだ、という論理は特攻隊という存在を美化してしまっていると思う。

爆弾を抱えて空母に突入したり特殊潜航艇に乗って敵地に潜入するような度胸があるならばそれをビジネスで活かしたほうが絶対に日本のためになったはずだ。戦車や戦艦や小銃は産業界に何ら再生産性を寄与してはくれない。

日本は過ちを犯して周辺諸国に多大なる迷惑をかけ、米軍も米軍で日本の一般市民に多大なる犠牲を与えるような戦い方を実施したものの、なんだかんだでソ連が実施するものよりは圧倒的にマシであろう米軍の占領統治があって、結果、民主主義国家という現代で一番まともなイデオロギーの陣営に仲間入りできてラッキーだった、というのが私の認識だ。その結果は決して特攻隊を含む日本軍の戦いで勝ち得たものではない。

それでもなぜ戦争に興味があるのかといえば、戦争はありとあらゆる工学の応用が含まれるからだ。数万人〜百万人オーダーの兵士を展開させて飯を食わせてすべてを破壊し戦わせるために、常にその時代の最先端の工学の知見が応用される。工学の粋が集まるところが人が死ぬ現場というのは大変な皮肉であるとは思う。

その当時の戦争の技術を調べることによって、工学という分野がどんな水準にあったのか、その時の最新の技術というのはどんなものであったのかを知ることが出来る。そしてまた、「脅威を無力化する」という目的に絞って合理的にデザインされた兵器に美しさを感じてしまうというのも、これもまた工学という一学問を修めた者であれば理解できてしまうのは仕方がないのではないか、と私は自己弁明している。

しかしながらそれでもなお、結局は戦争のことを知れば知るほど、戦争に対する嫌悪感が高まっていくのもまた当然である。ノンフィクション小説を読めばそこには残酷な世界が広がっており、一般市民や子どもたちが死んでいくエピソードもある。兵士一人ひとりだってロボットではなく人間なので、家族も友人も居る。人が一人死んだら現代社会では様々な儀式が執り行われ、色んなエネルギーを発散させて色んな人に色んな影響を与えるが、それが何度も何度も日常的に起きるのが戦争だ。

たぶん、ミリタリーオタクの殆どは戦争が嫌いなんだろうとは思う。誰も人が死んでいくところなんて見たくないはずだから。

それでもなお、現代では戦争が起こっている。人が死んでいる。本当にしんどいことである。最先端の工学技術は苦しんでいる人を幸せにするために使ったほうが良い。社会を豊かにする方向に使ったほうが良い。けれども人間というのは結局戦争をおっぱじめる生き物であるというのも事実だ。昔、「シド・マイヤーズ アルファ・ケンタウリ」というゲームで、出てくる登場人物の一人が「人は、時の始まりからずっと人を殺してきた」と述べており、たしかにそれはそうなんだよな、と思う。

考えてもみてほしい。あなたは何も悪いことをしていないのに、ある日突然敵対する勢力が喧嘩をふっかけてきて、頭の上に爆弾が落ちてきてあなたの大事な人が死んでいくのである。何の罪もないのに。今年の2月にロシアがウクライナを侵略し始めた時にウクライナの市民が語っていた言葉を私は一生忘れられないだろうと思う。「戦争が発生するときは、暗く淀んだ曇り空だと思っていました。しかし現実では、青空の下で人間が死んでいく」という言葉。ただ平穏に暮らしている人の命と生活と財産をめちゃくちゃに破壊してるのが戦争だ。

我々はこんなことを許してはならないと思う。だから、何故戦争が起こるのか、どうやったら戦争が防げるのか、いつからか私はそんなことをずっと自問自答したり、答えを探して戦争の本を読み漁ったりする。

トップページに戻る