近況 240302 転職
転職が決まりました。新しい会社で働き始めるのは6月からになります。
転職にあたって、転職希望者ないし採用担当者にとってなにか有益な情報としてまとめようと思っていました。しかし、そういうことをすると世間にとっては有意義になる代わりに同じ分だけ私の人生がつまらなくなっていくような気がするので、そういう記事を途中まで書いてはボツにしました。従いましてここには役に立たない雑な感想を述べる文章だけが残っています。
一言で述べるならば、疲れました。なにが疲れたのかこれからご説明いたしましょう。
選考の過程で様々な会社の様々な方々に様々な方面で色々と良くして頂きました。その切は本当にありがとうございました。
ただ「10社くらい受けて残るのは最終選考まで残るのは2社くらいやろ」と思って10社に応募したら7社も通ってしまい、しかも選考の途中で既にオファーが出るような雰囲気を感じ取っていたので、選考中も7社のうちからどう悩んでよいのかずっと考えていました。7社も通ったのは私の実力も多少はあるとは思いますが、主にITエンジニア(一定以上のスキルの人)の慢性的な不足だと思われます。
今回の転職に関しては、「仕事を楽しんで取り組めること」「事業内容に興味を持てること」を最重要視していましたが、当然ながらそれを満たした会社を選んで応募しているので当然ながら複数社の選択肢が残ってしまうとどう選んでよいか分からなくなってしまうわけです。逆に言うと「とりあえずで受けてみるか」みたいな受け方はしませんでした。選択肢が一つ増えるごとに面接とその準備にかかる労力は増えていく(転職活動にかけれる時間の総量が変わらなければ一社あたりに対応できる時間が少なくなる)ので…
しかしまあ、実際はたくさんのオファーが貰えるという話は基本的にはいい話で、だから多くの人はこれを読み「全部のオファー見て一番給与のよろしいところを選んだらええがな」という発想になりますよね?しかしね、そうじゃないんだよ、君。
これを実際にやるのは本当に辛いことですよ。選考の段階で何度も会話を重ねて優しい言葉をかけて頂けた人たちにお断りの言葉を言って回らないといけないわけですから。
私もなるべく、早期に絞り込んで選考辞退をしたりもしたのですが(選考のためにお互い貴重な時間を費やしているわけだから大事なことです)、やはりお断りのメールをするたびにしんどい思いになります。辞退の連絡をしても、多くの会社で引き止められました。これも自慢ではなくてね、本当に辛いことなんですよ。自分のために時間と労力を割いて仕事してくれた人たちが引き止めるのに対して、何度もお断りの返事をするのは…。
例えるならば、よく知っている相手から届いたラブレターへのお断りの返事を毎日毎日書いているような気分ですね。こういう表現はだいぶ気持ち悪いかもしれませんが、ね。ともかく、相手を悲しませたくない、残念に思わせたくないという気持ちもあれば、今後も問題のない関係を続けていくために波風立てないような断り方をしたいという打算的な考えも当然あります。相当に気を使う苦しい作業です。
私は「恩に報いよう」「失礼のないようにしよう」みたいな気持ちが強いのでこういう作業が本当に苦手で、お断りするくらいなら選考でばんばん落としてくれ、とすら考えていたところもあります。こっちから振るくらいなら振られる方がずっと楽、みたいなね。
幸いなのは、これは本当に恋愛ではなくてビジネスであるということです。相手方もお世辞を言うこともあれば、業務上の理由もあるがために、私を褒め、いい気分にさせ、入社させようということです。だから文面はウェットでもビジネスはドライだぜ、と思うことも出来ます。一方でその言葉を紡ぎ出しているのはChatGPTではなくて人間なわけで、本当にそうかは確かめようがないから、「ビジネスだから、本心はドライなのだ」と都合の良いように解釈することしかできません。また、私が送信したメールは生身の人間が読むわけです。そういった諸々の理由で湿度を0%まで感情をドライに出来るわけではないです。
中途採用についての情報をググると、前述したように「オファーが出てから承諾期限までは1~2週間が一般的なので、一気に複数社の選考を受けて、オファーが出る時期をまとめて選べるようにしましょう」と書かれています。なるほど、合理的な戦略だと思いますわ。私も、言われんでもそんなことは分かっているからそうしました。
でも、私はもう次(があるとすれば)は、そういう選考の受け方は止めようと思います。私の考え方はウェットで重いということなのかもしれませんが、程度の差こそあれ、「私は何にも考えずにサクサクお断りできますわ」って人は少数ではないでしょうかね。
ちなみに私の転職活動は2回目です。1回目は面倒臭がって1社ずつしか受けなかったのでこういう悩みは無かったです。ただ、修士で卒業してからの新卒採用では違うということを思い出しました。とある会社の最終のオファー面談で言われた一言に由来します。
「有理さんが二人居ればよかったですね」
人事の方がオファー面談でそう仰っていました。私は嘘をつくことが下手なのでどの面接でも「他社の選考状況はどうですか」と聞かれたらすべて正直に語っていました。だから、そのときも正直に御社と他の会社で悩んでいます、と言ったのですが、それに対しての言葉でした。
私は「二人居ればよかった」と言われて瞬間的に過去の記憶が蘇りました。新卒で入る会社を決めるとき、「自分が二人居ればよかった」と、まさにそう思っていたのです。新卒採用では二社から内定をもらいました。一社はカメラ・光学機器を製造するメーカー。もう一社は発送電を行う事業が中核の会社でした。いずれか一方を選ばなくてはならなかったのですが、両方とも非常に良い会社のように思えましたし、かつ選考の過程で社員の方々にとても良くして頂いたことが記憶に残っており、その恩に報いたいという気持ちが強かったために自分が二人居ればよかったな、と思ったのです。
新卒採用だと大学の後輩のためにも内定の辞退に関しては手書きの手紙で行い誠意を見せるべし、みたいな慣習がありますね。その手紙にも「私が二人居ればよかったなと非現実的なことを考えてしまうほどに悩んだ末の結論でした」、という趣旨の事を書きました。
これはやや文学的な表現で相手に伝わるかどうかはよくわからないですし、伝わったとしてもそこまで目一杯悩んだのだから許してくれ、と言いたい訳ではないんですが、まあそう見えるかもしれません。やっぱり私は嘘は苦手だし、思ったことをべらべらと喋ってしまうのでそういう言葉が自然に出てきてしまうというだけの話です。
しかも、今回の転職活動では二人どころか七人いる必要がありましたしね。
人間、出来ることと出来ないことがあります。私はそのあたりはドライに捉えるタイプであって、なんぼ人に褒められても「まあ、褒めておだてて人を動かすのは政治の基本だしな」などと思って真面目に言葉通り捉えようとしないし、その上で自分の能力の限界も知っているので「自分の両手両足が届く範囲で『よし』と思えるならばそれで良い」、を心情として生きています。
だから今回のケースでも分身の術で七人の侍になって遅れている日本のIT業界をたち直すために立ち上がるみたいなことは考えることもしないし夢にも思わないわけではありますが、一方で自分に優しくしてくれた人たちに報いたいというシンプルな気持ちから七人に分裂できればそのほうが良かったな、という結果的に同様の結論に達することもあるわけでして。
そんなことを考えつつ、新しい職場と会社と事業に期待しつつ、引き継ぎを頑張っております。最終的に内定承諾させて頂いた会社では選考途中でランチに呼ばれ社員の皆様方とご飯を食べながら話をしました。ランチ会は牛丼でした。私はお礼に八王子都まんじゅうというお菓子を持っていきました。ランチ後、コードを見せてもらいながら「こういう課題がある」と言われ一緒に軽く議論したりもしました。社内の雰囲気は「部室」という感じで、私もついつい、予定時間を30分もオーバーして長居してしまいました。ああいった形でみんなで仕事をしていくのは楽しみだなと感じています。なんかこう、「紅の豚」に出てくる「もりもり食ってビシバシ働こう」というセリフが頭の中に浮かびますね。