2022年3月11日の日記

「プーチンはおかしくなった。狂ったと言われるが、今までこうして不合理な理由で他国を侵略してきた国家指導者はたくさんいるわけで、安易にプーチンがおかしいとか言ってはプーチンの真の狙いや事の本質を見過ごしてしまうのでは」という趣旨の主張をされている方がいた。私はそうは思わない。実際、おかしいとしか思えない。私がいろんな方面で聞きかじった知識をまとめて自分の言葉で書いてみる。

国家指導者の頭の中は誰にもわからない。それはプーチンに限ったことではない。人間は他人の頭の中を覗くのは不可能であるというごく当然の原理である。今回のウクライナ侵攻でもたびたび専門家に対して自称専門家なる人たちが「お前は専門家なのにプーチンの考えがわからんのか。俺はわかるぞ」と酔っ払った面倒くさいクソオヤジみたいに絡んでいる。しかし人の頭の中を可視化するマシンでも実用化されない限り、他人の本心を探ることなど不可能であるから「わからない」という態度を取ることが誠実なのである。

であるから、軍事・政治の世界では目的を実現する能力や確認された事実と、人間の頭の中の考えを切り分けて考える。

例えば今回もそうであったが、「国境に軍隊を集結させているのは演習のためですよ」という説明がなされていた。すると、今回は侵攻前から演習には通常登場しないような部隊(極東の部隊や野戦病院を構築する部隊)の大規模な移動が観測された。この事実からプーチンの頭の中を推察するしかない。ロシアは今まで何度もウクライナ周辺に軍隊を集結させて演習を繰り返しているが、今回は集まっている部隊が異なる。そして集まっている部隊は実際に侵攻が可能となる程度の大規模な部隊が集結している、というのは去年の年末からすでにわかっていた。あと12月半ばには侵攻可能な兵力があつまる。1月には侵攻可能な兵力があつまる。実際に侵攻が始まるとしたら地面が凍結して車両が移動しやすくなる2月ではないか。そういう予測がなされていた。

プーチンがいくら演習だなんだ、と言えど、ロシア軍が大規模な戦闘行動をすることが可能な戦力を集積していることは事実なので、侵攻の可能性は捨てきれない。しかし、今回もブラフかもしれない。ただ、ここまでの部隊が集結したからには警戒を厳にせねばなるまい。そういうふうに解釈される。

そして考えられるのはどのように攻略するか、だ。集積された部隊の軍量と位置と装備からどのような作戦がなされるか、を予想する。装備の能力や各国の基本的な戦略方針(軍事ドクトリン)からいくつかの侵攻パターンが考え出される。

今回のケースでも、私が侵攻前に見かけて記憶に残っているのは海外の有識者が書いていたことで、その人は小規模なものから大規模なものまで5つくらいのパターンを考えていた。東部ドンバス地域の一部に軍隊を進駐させるパターン、そこから小規模な攻勢を仕掛けるパターン、さらに進行してドニエプル川東岸まで進行するパターン、海岸線に上陸して海と陸を切り離すパターン、全面的な侵攻、みたいな感じだったと思う(うろ覚え)。どの専門家も似たような見立てを書いており、比較的多かったものは「ドニエプル川以東を占領」という予測であったように思う。これはあつまっている装備と部隊、そしてウクライナに展開するウクライナ軍の抵抗、それと過去の戦争からの経験を総合するとそうなる、というわけだ。

実際はベラルーシから、ドンバスから、ハリコフ方面から、クリミア半島から、と全面侵攻であった。それで専門家の多くは驚いた。それは「専門家も予想できなかったから」ではない。全面侵攻は一番最悪のケースとして考えていたが、現実的にはウクライナ全土を占領・維持するような兵力はロシアも持っておらず、全面侵攻など不可能であるとされたからだった。

目的を完遂する能力が明らかに欠けており、「隠し玉」もない(商用民間衛星・情報収集衛星で大規模な軍の動きは今の時代では隠蔽することはできない)。であれば、目的を完遂することが明らかに不可能な軍事行動など取れるわけがない。ロシアの立場で考えて、全く合理性がない。そう皆が考えていたからこその、驚きであった。

侵攻の理由として「非ナチ化、ロシア系住民の虐殺の阻止と自国民の保護、ウクライナの非武装中立化」を挙げたのも全く不合理であった。ユダヤ系の人間が大統領を務めているウクライナがナチ的であるとは誰もが首をかしげるところだ。ドンバス地域でも国際的な査察団が監視しているが虐殺は報告されていない。ウクライナの非武装中立化に関しては意味不明だ。どの国も領土と国民と財産を守るために自国を防衛する軍隊を創設・維持する権利がある。

侵攻が始まってからは、今度は「ウクライナは旧ソ連の核兵器技術を保持していて今も秘密裏に核兵器を開発している」などと主張し、原子力発電所を制圧し始めた。直後にIAEAが「核開発の証拠は見つかっていない」と反論した。ウクライナがソ連の核兵器を引き渡す直前、世論は「引き渡しはやめるべきだ」という考えが主流だった。それでも引き渡したのは核兵器を自国で維持管理していく技術力と経済力がウクライナになかったからだ。

停戦条件としてプーチンが「折れるつもりはない」と提示した条件は「ドンバス地域2共和国とクリミア半島にそれぞれ主権が存在することの確認、ウクライナの中立化とNATOに加盟しないこと」であった。最初に言っていた非ナチ化だの虐殺の阻止だのはいつの間にか消え去ってしまった。

軍事的な側面でも、ロシアはなぜか圧倒的優位であるはずの航空戦力を積極投入せず、航空支援が貧弱なまま作戦を続けた。補給路を確保できず、軍用車両の車列は何十キロにも伸びた。

開戦後2日で戦勝報告が政府系のメディアから誤配信された。その他の情報も複合して考えると、どうもロシア軍部はそれなりに綿密な作戦を立てていたにも関わらず、直前になって2日程度でキエフを占領してゼレンスキー他首脳陣を捕らえる算段であったらしいことが明らかになりつつあるが、どの専門家も開戦後2日でキエフ占領は無理であっただろうという予測をしている。米英が主導して始めたイラク戦争(イラクの自由作戦)ですらバグダッド陥落まで20日ほどかかっている(地図で見るとわかるが、イラクとウクライナは同程度の大きさだ。地形やインフラの整備事情は異なるだろうが、それでも米軍に比べてロシア軍が装備の質や量で劣っていることにも注目すれば、2日でキエフ占領は無謀だろうというのは素人でも察しがつく)。

以上、出てきた情報すべてがロシア軍の「雑な」侵略を物語っている。

しかし、実際は雑に見えるのであるがプーチンはなにか裏の考えがあるのではないか?そう考えることは最もである。であるから、政治学者や軍事の専門家が得られた情報からこの戦争がどのような落とし所になるかをずっと探っている。それを予想し先回りして民主主義陣営の有利になるよう交渉をすすめる準備をしておかなければならないのだから。それでも、ロシアに利があるような落とし所は見えてこない。落とし所まで下手くそだと言っている有識者もみかけた。

その一方でマクロンは「3年前のプーチンとは別人だ」と述べ、長時間の会談でなんどもプーチンの事実と反する独自の歴史解釈を聞かせられる。その他の国の政府高官でも「プーチンは変わった」という。

プーチンがやっていることには合理性がない。ロシアの利益になる落とし所が見えてこない。目的がわからない。無茶苦茶な目標を立ててゴリ押ししようとしている。一体、彼は何を考えているんだ?得られた事実から世界の有識者が皆考えるが答えは出ない。

であれば、もう頭がおかしくなってしまったのではないか、という考えに至っても仕方がない。

と、ここまで書いてようやく冒頭の話に戻るが、

「安易にプーチンがおかしいとか言ってはプーチンの真の狙いや事の本質を見過ごしてしまうのでは」

に対する私なりの回答(というか私が調べてきた事柄をまとめた内容)は、

「むしろ本質がなんなのかを見極めようと全世界が現段階までに得られた情報を駆使してプーチンの狙いや頭の中を探るべしと考えを巡らせているが、今の所、『頭がおかしくなった』が可能性の高い答えとして挙げざるを得ないほど、わけがわからない」

ということなのだろう。つまり、考えるのを諦めて放棄して「頭がおかしくなったんだろう」と言っているわけではない。冷静に情報を集めて分析した結果、説明がつく結論の一つとして「頭がおかしくなってしまった」が挙げられる、ということである。

ちなみに念の為に書いておくが、ここで言う「頭がおかしい」とは具体的には「思考、思想が著しく偏っている」という程度の意味であって、何らかの精神病を疾患しているのでは、という推察ではない。精神病であるか否かを判定できるのは精神科医だけである。

以降は素人のおっさんの雑な語りだ。

私の考えを述べるならば、やっぱりプーチンはいわゆる「ネトウヨ」のようになってしまったのだと思う。久しぶりに実家に帰ったら母親がYouTubeで見た陰謀論を信じるようになってしまっていた、そんなオチではないか。論文を書いて本にしてアパホテルに並べてもらえば良かった、という笑い話をしている方がおられたが、本当にそんな感じになってしまったのだと思う。しかしプーチンは権力者として君臨するために政治を頑張りすぎたのではないか。その結果、周囲はイエスマンで固められ、プーチンの目的が実現可能であるというストーリーを書くことが周辺の人間の仕事になる。別にこれは特殊なことではない。日本の大企業などでも、どこでも見られる光景だ。国家指導者とその周辺がそのような関係になるのは信じがたい事実、というわけでもない(私にとっては)。

それでウクライナは偉大なるロシアの一部であるべきというプーチンのストーリーが実現可能であるという「お話」を周辺の人間が書いた。それを見たら当然、プーチンはウクライナを含めた偉大なるロシアを再構成することが可能なのだという確信を強めるだろう。そしてウクライナ侵攻計画が軍上層部に達せられ軍部は侵攻計画を描いたが、これも種々の事情(格下相手としか戦争してこなかったのでなめていた、士気が低かった、補給がまずかった、などなどの推測がなされている)でうまく行っていない。

そういうことなのではないか。

一番重要なのはやはり、今後どうなるのだろうかという推測だ。

結局、米国もドイツも積極介入はしたくなさそうに見える。かといってたとえ武器の供与があったとしても、ウクライナ独力での防衛は難しいだろうというのが大方の見立てだ。すると、何かしらロシアに花を持たせて戦争をやめてもらうしかないのではないか。これは民主主義陣営にとっては苦々しい結果であるが、しかしこのまま安全なところからサッカーの試合を見ているようなノリでウクライナに頑張れ、頑張れと泥沼の市街戦を繰り広げてもらうよう祈るというのはあまりにも意地が悪い、非人道的、非道徳的であると思う。

であるから、私は去年の11月だか12月だかの段階で「NATOがロシアに対抗してウクライナに軍隊をいま駐留させないならば、そもそもNATOパートナー国だとかいう期待を持たせるようなことを言うべきではなかった」と言っていた。Twitterのログをたどれば多分出てくるはずだ。開戦後にウクライナに他国の軍隊が入るのと開戦前に入るのとでは全く意味が違う。開戦前にNATOが少数であってもウクライナ国内に展開している、その事実が大きな抑止力になったはずだ。そう思う。なぜそうならなかったのか(あるいは私の考えが大きく間違っているのか)、そのあたりの理由はわからないが、今更過去にああすればよかったとか、だから私は言っていた、とかいう話をしても仕方がない。

ウクライナ国民は徐々に追い詰められていく。子供が死んでいく。大統領はそれを見ている。ウクライナが民主主義陣営の最前線で孤軍奮闘しいる、それが世界の共通理解であるのに民主主義陣営は効果的で実効性と即効性のある策を何も取れない。だれもリスクを取りたがらない。現状の安全保障の仕組みが機能していない。だから大統領はNATOに、世界に怒りを向けている。それは常識的な考えを持っていれば痛々しいほどによくわかる。しかしどうにもできない。ロシアとの軍事衝突を恐れている。核兵器は非情に抑止力を発揮してしまっている。それが現実だ。クソみたいな現実だ。クソみたいな人間社会だ。人間はクソだ。だから俺はお前らもみんな嫌いだったのさ。無人島に地下室をほって暮らしたい。


一気にテンションの違う話になるが、近々、友達と二人でYouTube配信を始める予定でいる。

その友達とは中学以来の私の友達であって、私にパソコンを教えたのも、インターネットを教えたのも、車を教えたのも、嫁さんと付き合う前に送るメールの文面を考えてもらったのも、彼である。私が一番好きだった自分は高校生のときであったと思っている。高校生の時、私はなーんにも難しいことを考えず、下ネタばかり考えて人を笑わせることを最優先していた。あの頃の自分が一番明るくて良かったと思う。

友達は営業職で私よりもずっと喋りはうまい。人に気に入られるのが得意であって彼を嫌いだという人は私は聞いたことがない。どこに行っても誰にでも好かれる、そんな人だ。そんな旧友と一緒に配信すればおそらく面白いことが今まで以上に相乗効果で喋れるだろうと思い、半年以上前から一緒に配信をしようと誘っていたのだが、ようやく了承をもらった。

と、書くとあまりにも高い期待を持たれそうだからここらへんに留めておく。

とりあえず二人で配信を近々始めることができる予定なのでよかったら観てやってほしい。内容としては、おっさん二人が酒を飲みながら東北(秋田)弁を喋る、というものになるとおもう。それが果たして面白いのか?はわからない。やってみないとわからない。だからやってみる。というわけ。よろしく。