ロシアによるウクライナ侵略まとめ(2022) その2

続き。

  • 基本的には自分用のまとめとして書いているので、自分が気になるところしか記してないです
  • 私は軍事・政治には素人で、書いてあることは出典が明記されていない限りはすべて私の感想です
  • 真偽は確かめていません。真偽をはっきりさせるよりもその時に出ていた情報をまとめることを優先しています(後に混乱や誤った情報が流れていたという事を検証したい)
  • そういうわけなので本記事の私が書いた部分、及びTwitterで引用している速報は鵜呑みにしないでください

2月25日

フィンランド、スウェーデンなどがNATO加盟の方向に進んでいる。フィンランドは加盟の申請を準備したと。

実際に侵攻が始まったことがNATO加盟の方向に意思が傾いた要因だということもあるだろうが、ロシアが進行中の今に事を進めればロシアからいちゃもんを付けられない(ロシアは今それどころではない)という狙いもあったんじゃないだろうか。

侵攻前から言われていたことであったが、ロシアが圧力をかけ侵攻したことによってロシアの周辺諸国はより強く団結してしまった。プーチンの狙いである「ウクライナの中立化」とか「NATO加盟阻止」の根底にあるNATOに対する安全保障、という観点では当然逆効果の結果になっているわけで、かつ、そうなる結果が十分予測できていたのに実際に侵攻したのだから、やはり政治的な合理性に欠けている判断がなされているように見えるのであって、やはりこれは恐ろしいことだ。前回の記事に書いたとおり、現代の安全保障は国家指導者が合理的な判断をするという前提に基づいているから。

アメリカはグローバルホークとE-8で戦況を監視中らしい。グローバルホール(RQ-4)は無人偵察機。膨らんだ頭の中にパラボラアンテナが収められていて通信衛星経由で米国本土から操縦できる機体だ。E-8はボーイングの旅客機を改造して情報収集のための対地レーダーを搭載した機体。地上部隊を指揮・管制する能力を持つ。

おそらくはここで収集した情報をウクライナ軍に送り、ウクライナ軍の目となる役割を果たそうとしているのだと思われるが、でもどうやってウクライナ軍に情報を送っているのだろうか。もしかしたら公表していないだけで米軍はウクライナ軍に対しE-8やRQ-4とリンクできる装備(収集した情報をリアルタイムに知ることができる戦況情報表示装置)を供与しているのかもしれない。が、多分そういう装備は軍事機密を含んでいるはずなのでどうだろうか。供与したという情報は公表しないかもしれないし、軍事機密だからそもそも供与していない、という可能性もどちらも考えられる。ちょっと私にはどの程度機密性が高い装備なのかわからない。ただ、米軍では前線部隊でも装備しているような代物なので(というか前線部隊が見れないと意味がない)、軍事機密には違いないが絶対漏れてはならないトップシークレットが含まれるとかいう代物では無いはずだ。だからやっぱり供与しているのかも。いや、戦況情報表示くらいのリアルタイムで精度が高い情報を提供すると、それをロシアが知った場合、いまのプーチンならば参戦したとみなす、くらいは平気で言ってきそうなのでやっぱり渡してないのかも。よく分からん。あらゆる可能性が考えられる。

もし直接の情報リンクが無いとしたら、偵察機から米軍に情報が伝わり、そこから軍組織を通ってウクライナ軍への伝言ゲームになるはずで、そうするとリアルタイム性に欠けるので戦術的な情報としては役に立たないのではないかと思う。後続部隊がどれくらい居る、という情報は大規模な戦略としてはもちろん役に立つだろうから意味が無い、とは言っていない。

空中給油機に関してはE-8が使うのだろう。となると、E-8はかなり長時間滞空するはずで、パイロットは相当疲れるだろうな…。

ところで、この上記で示した航空機の位置を表示するサービスは「flightrader24」というサービスである。これは、地球上のあらゆる航空機(全部ではない)が今どこにいるか?をリアルタイムで表示してくれるサービスだ。これはどういう仕組みで動作し、なぜ軍用機がこのサービス上に表示されているのだろうか?

現代の航空機にはADS-Bという機械が装備されている。これは、自機がいまどこにいて、どのくらいの速度で飛んでいて、目的地がどこで、どこの組織に属しているか…などなどといった情報を電波に乗せてリアルタイムで周囲に知らせる(ADS-BのBはBroadcastである)ための装備である。これを用いて航空機がいまどういう状態であるか、を周囲の航空機や地上の管制に対して教えている。これによって航空機事故を未然に防ぎ、かつ、管制官は適切な管制(どの航路を通ってどの滑走路に着陸せよなどといった指令を送る)を行うことが出来る。

この電波は素人でも比較的安価な設備で受信することが可能で、flightrader24はそういった世界中の有志があつまって受信した情報をリアルタイムにアップロードすることで運営されている。

このADS-Bは軍用機にも搭載されている。ただ、電波を発するかどうか(どの情報を発信するか)はその装置の設定次第である。戦時には当然、自機の位置情報をわざわざ敵に教えてあげることなどしないので、この電波は発しないことが多い。しかしながら、米軍は空中給油機なり、偵察機なりを開戦前後に渡ってずっと見せ続けている(すべての軍用機でそうしている、というわけではおそらく無いだろう)。これはロシア軍に対して米軍のプレゼンスを見せつけているという効果があると同時に、アメリカは広く情報を公開しており、民間のデータでそれを検証できますよ、というメッセージをも含んでいるのかな、と思う。

アメリカ軍がロシア軍の動向を監視して警告する、そして民間の情報収集精製やflightrader24などといったサービスによってアメリカが発表したことが正しいことを検証できますよ、というオープンである姿勢を内外にアピールしているということなんだろう。これは雑に言えば情報の公開と秘匿というイデオロギーの戦争なのだと自分は解釈している。

情報をオープンにして、民間でそれを検証可能にして、その結果導き出された状況と政治的決断の整合性が取れている。これは情報化社会で自身の正当性を広くプロモーションするには最適で、理にかなった方法だと思う。

ロシア国内でも反戦デモが発生して逮捕者が出ているらしい。逮捕者は800人?8000人?などと書いていた気がする。詳しい数字は失念。

日本ではデモを行っても特に拘束されたりなどしないが(道交法などに違反すれば別)、そうではない国でこうしてデモに参加するのはそれなりに勇気が要るものだと思う。

「危機はコミュニケーション不足で起きるのではなく、ある国が確信的な現状変更意志を持っているから起こる」、これは大事なことだと思う。今回新たにわかったこと、ということではなくて、以前から言われてきたことが現実で起こったということはちゃんと記憶しておかねばなるまい。日本の近隣だと、台湾に対する中国の態度がそれにあたる。

この文脈で「戦争放棄を憲法の条文に持っておくだけでは意味がない」という議論が盛んになされている。それはもちろんそのとおりなのだが、だから「憲法を改正することが必要である」という議論に関しては以前から私は懐疑的だ。憲法の解釈変更で集団的自衛権の容認が出来たということを思い出すと、解釈の変更で対応できるうちは「9条の修正」という労力のかかる仕事をやらなければならない、というのはいまいち説得力に欠ける気がする。「解釈」ひとつで派兵できたり、出来なかったりすること自体、日本にとって都合が良いという見方もできる。派兵したいときは集団的自衛権、したくないときは集団的自衛権に該当しない、などと「解釈」を変えれば言い訳できる。本当にそういう事ができるかどうかは、私は憲法学者や政治家ではないのでよくわからないが。

ワイドショーなどでロシア側に立つ学者が解説しているという話を度々みかける。「中村逸郎」という先生の名前を見かける。氏がどんな人か知らない(興味もない)が、どこかの教授ということなのだろう。「いま、この状況で親ロシアの立場に立ったひとの名前は覚えておくべき」みたいな議論も見かけるが、個人的には別にそこまでする必要は無いと思う。その都度、その文脈での「正しさ」を随時考えれば良い。それは議論と人格を切り離すことにもつながるので。

当然なにかの誤認があるのだとおもわれるが、「キエフの亡霊」と呼ばれるウクライナ軍のMig-29がロシア軍機6機を撃墜した、との噂がある。戦場では戦果確認をはじめ、とにかく誤認が多く発生しうるものである。その他には「キエフ上空でドッグファイトが繰り広げられている」という映像が流れたが、これはどの戦闘機もウクライナ軍のMig戦闘機であったとのことでドッグファイトではなかった。

2月26日

「ウクライナ軍に頑張って欲しいが、都市で徹底抗戦してほしいかと言うと微妙な気分になる」ということを書いておられる方がいて、私も全く同感である。

航空戦力、機甲戦力で劣る軍隊がどうにか踏ん張るとなると、見通しが効かず隠れる場所も多い都市で戦うのが防衛側にとっては有利だ。したがって、戦線は自然と都市近郊で膠着してしまう。すると攻撃側が取れる戦術としては、真っ向から都市に突っ込んでいって戦いたくないので都市を包囲して補給を遮断しようと試みることになる。するとスターリングラードやレニングラードの防衛戦などがすぐに想起させられる。このあたりの流れは第二次世界大戦から劇的に状況が変わる何かがある、というわけではないはずだ(多分、自信がない)。ああ、一つ確実に変わったものがあるとすればそれは人命の扱いであって、現代の戦争であれば流石に市民が包囲されて避難もできず、飢餓になって人肉が売買されるという事態になる、とは思えない。たぶん。

ともかく、「ウクライナ軍、がんばれ」と言うことは、実質的には、そういう都市部で泥沼の戦いを繰り広げて粘れ、ということを意味する。だから、ウクライナ軍には頑張って欲しいのだが、あまり凄惨な戦いになってほしくないし、かといってじゃあロシアに早々と降伏してロシアの傀儡政権下で生活するのも仕方あるまい、とももちろん容易に言うことができず、難しいところだ。

SNSでは市民が戦う意味が分からない、などとのんきなことを言っている人がいたが、そのあたり(侵略国家によって支配される)の感覚がよく理解できてないんだろう。日本でも、自殺者が出る度に「まずは生きることを最優先しよう」などという類のことが囁かれるが、それと同じノリで侵略軍に屈服して生き延びよう、などと言う感覚が私には分からない。単に無知なのだろうな、と思う。

ウクライナは民主主義陣営の最前線で東側国家と戦っている。それなのに、武器は供与されるがマンパワーの援助はない。なぜこんなことになってしまったのか…。後世でのこのときの民主主義国家の動きはどのように評価されるのだろうか。現時点で我々はどのように考えているだろうか。それらを忘れないためにこの記事を残している。

プーチンが度々核使用をほのめかしており、全面核戦争、第三次世界大戦に発展するのではないかという憶測がSNS上で蔓延している(26日に始まったものではないが)。

プーチンの言っている核使用とはエスカレーション抑止のための核使用のことである、と複数の専門家やミリタリーアカウントが指摘している。エスカレーション抑止のための核使用というのは、お互いの領土を焦土と化すような全面核戦争に事態がエスカレートするのを防ぐために、小型の戦術核兵器を限定的に使用する(その対象が前線の敵部隊なのか、あるいは犠牲の少ない更地なのか、そのあたりはその時の状況や発射する側の考え方によって異なるのだろう)ことである。核兵器には大雑把に戦略核兵器、戦術核兵器と二種類の分類がある。より細かには飛距離に応じてICBMとかINFとか色々あるが私も詳しくないので割愛。戦略核兵器とは敵国の戦略目標(軍事施設や大都市、軍需工場など)を攻撃するための大出力な核兵器で、ICBM(大陸間弾道ミサイル)に複数の弾頭を搭載し、敵国領土でばらまく凶悪な兵器である。戦術核兵器とはそれらよりも射程が短く、出力も低く、標的は敵の軍隊そのものとなる。

ただ、出力が低いと言っても5キロトン〜数百キロトン(キロトンとは爆発時のエネルギーをTNT爆薬換算にしたときの重さ)はあり、広島に落とされたリトルボーイは10キロトン台という推定がなされていることから考えると、日本人としては色々考えるところがある。

エスカレーション抑止のための核使用については、私は小泉悠氏の「現代ロシアの軍事戦略」で知った。というか、私のロシア軍についての知識の殆どはこの本とその他数冊の小泉氏の著書である。特に「現代ロシアの軍事戦略」は新書なので読みやすいと思う。これがアフィリリンクなのでよろしければここから買ってみてほしい。

小泉悠氏については数年前から私は氏の活動内容や著書などを読ませて頂いているが、最近はこんな状況なので仕事が非常に忙しいみたいだ。Twitter上でも最近は疲れていてあまり仕事のこと(=ロシアのこと)を尋ねられたくないのか、「コスメ垢」とか「丸の内OL」などという名前を設定していて、話題も意図的にロシアとウクライナ以外の日常のことを選んで意識的に書いているように見える。元々、自身の事を24歳OLであるなどという冗談はよく言っていたが、ちょっと心配だ。「現代ロシアの軍事戦略」に関してはどうにかAmazonの短期売上、全ジャンルでの一位を取らせてあげたい、という話が一部で盛り上がっていたので、みなさんもご興味があれば買ってみてほしい。当ブログのことを気に入らなければアフィリンク経由でなくてもよい。ググればすぐに出てくる。

もう一つ思い出した。氏の以下の発言にしびれた。

全くそうなんですよね。

銀英伝のみだけでなく、こうして有名な創作作品のセリフを引用して何かを語った気になっている人は随所で見かける。そういう人たちはなにか関連があるものを記憶から引っ張り出して並べているだけなのだと私は解釈している。オヤジギャグを言っているのと同じ思考回路である。漫画とかアニメとか小説とかから引用して貼ってなにか語った気になるのは1ミリも自分の頭で考えていない。私はそう思ってる。もっと言うと、そこには引用する必然性がなく主従関係薄いので引用要件を満たさない可能性が高く、著作権法的にも問題があると思う。

話を戻す。エスカレーション抑止のための低出力核兵器の話はこちらでも読める:

新しい小型核の目的は「お釣りが出ないように高速配達」する抑止力

敵が低出力の小型核で攻撃してきた場合、核報復しなければなりません。しかし大出力の核兵器で報復してしまうと「お釣り」が出てしまいます。敵はお釣りを支払おうと再反撃してくるでしょう。これでは限定核戦争に止まらず全面核戦争にエスカレーションする恐れが生じてしまいます。
限定核戦争で止めるためにはお釣りが出ないように同規模の出力の小型核で報復して、手打ちを迫る必要があります。それも同程度の価値のある目標に対して可能な限り早く報復を行い、敵の行動を抑制する必要があります。

これを読んでみなさんはどう思うだろうか?日本の中で過ごしていると広島と長崎の惨劇は嫌と言うほど聞くので核兵器への忌避感は非常に強いと思う。「小型核だから」「エスカレーション抑止のためだから」などという理由で正当化できるわけがない、と思うのが標準的な日本人の感覚ではないだろうか。しかし、現代社会においてロシアはこういう感覚で核配備を進めているのである。アメリカも上記記事にあるように「お釣り」が来ないように同規模の核兵器を作って装備している。日本人の中でさえ日本が核武装すべきだと論じている人も居る。これらが現実である。私は、これらの行為はプルトニウムのデーモン・コアをドライバーでいじくり回すような危険なこと全人類を集めてその目の前でやっているようなものだと思う。

そんなことはやめろ、と誰しもが思うが、しかし核兵器が開発され戦略核が配備されてしまった以上、「やめろ」ではどうにもならなくなってしまった。あのときマンハッタン計画が無かったら…トリニティ核実験が無かったら…というifはいくらでも思いつくが、しかし核分裂反応という物理現象がこの世に存在する限りは、誰かがどこかで核兵器を開発しただろう。力を持てば使いたくなる人も居るだろう。だから、これは政治的にどうかというよりも、 人間はそもそも愚かで未熟である 、という話だと思っている。

現実的にはどうか。現在、核兵器は色んな国が所有している。誰かが率先して核兵器を廃棄したら、軍事バランスが崩れてしまう。絶妙なバランスの元、大国同士が結んだ核軍縮条約によって少しずつ核兵器の破棄が進んでいって「比較的」安全な世界になるよう願うくらいが一般市民のできることである。

ともかく、エスカレーション抑止のための核使用というのは上記引用にもあるように大国同士が真っ向から衝突するのを避けるためという意図が本来あるのだが、それをたかが経済制裁や武器の供与程度に反応してプーチンがちらつかせているので核使用のハードルがプーチンの中で一段と下がってしまったのではないか、という指摘をいくつか見かけた。エスカレーション抑止のために小さい核兵器を打ち込もうぜ、などという発想自体、嫌悪感の強いものだが今回のケースではそのハードルが更に下がってしまった感覚がある。

とにかく今回の戦争に関してはプーチンの頭の中がどうなっているのか全くわからない。たった一人の人間が訳のわからない論理で戦争をはじめ、核使用をちらつかせ、周囲の人間がそれを止めることができない。これは完全に独裁国家であると思う。まあ、2000年以降のほとんどの期間で大統領を務め、さらに自分で自分の任期を長くするために法律を改正しているくらいなので随分と前から独裁者であったのだろうとは思う。

2月27日

ゼレンスキー大統領は元々コメディアン出身で現在44歳であるという。40代で首都キエフに迫るロシア軍を相手に戦い自分は避難しないと宣言するのは立派だなと思う。ぜレンスキーがコメディアンだった時代の映像が流れてきたので見た。股間でピアノを演奏するというギャグで、股間はピアノで見えないようになっていて、小刻みに二人(相方?がいた)でジャンプしていた。興味があれば、ググればすぐに出てくると思う。YouTubeに載っている。見ているご婦人が笑い転げているのが印象的であった。

一つ男として付け加えておくことがあるならば、男はどういう状態であっても自分の股間のみを用いてピアノをひける程度に剛性が高い物体を股間には有していないと思われる(やったことはないが)ので、おそらくは股間に棒か何かを挟んでいるのだと思われる。映像で見るとそれでもピアノはうますぎる(下手な感じにはなっているものの)ので、単にスピーカーから録音した音を流しているだけで、それに合わせてジャンプしているだけかもしれない。

そういう考察をしたいわけでもないので、話を元に戻そう。

もうこの戦争を手っ取り早く止めるにはプーチンが暗殺されるかロシア軍がクーデターを起こすしかないよな、と思ってきた。ロシアの退役軍人会がプーチンの方針を批判しているというニュースもあったが、「そもそもそんな会があるのか?」という指摘もあり、怪しい。加えて、ロシア(ソ連)軍の士官は伝統的に職務忠実であるという話も複数見かけた。

まぁそういう背景を抜きにしてもクーデターはありえないでしょうね。漫画じゃあるまいし。事前から入念に準備していたならまだしも、開戦後数日でクーデターを起こせるほどの人員を秘密裏に、しかも戦時下に掌握できるわけがないように思います。

制空権は早々に取られるのでは、というのが開戦前の見方で多かったが、現在も防空能力はある程度継続しているらしい。ウクライナ軍の戦闘機が飛んでいるとか、対空ミサイルのシステムセットはまだ稼働しているみたいな情報を目にする。(ここで言う防空能力とは個人携行の対空兵器を除く)

そもそも「制空権」と書くとネットでは高確率で怒られが発生する。現代でも過去でも、完全に戦場の空域を制圧して自由に航空機が飛び回れる状況というのはほぼありえず、多くの戦場では敵味方の制空力の優劣が頻繁に入れ替わるということらしい。航空機は常に戦場の空に張り付いているわけにはいかないから、地上で塹壕や陣地に籠もってその地域を掌握するのとは全く違うということなのだろう。

防空システムとは、一般的には対空ミサイルを搭載した車両が戦場に展開して、そこに載っている人員がレーダーで敵戦闘機を見つけてミサイルを発射する…というものではなく、現実はもう少し複雑だ。以下の記事にロシア産S400の防空システムの図解がある。

「敵」から防空システム買うトルコ 国際政治は複雑怪奇

この記事にあるように、実際には目標を広域に捜索するレーダーがあって、攻撃を指揮する車両があって、実際の目標を追尾するレーダーがあって、実際にミサイルを発射する車両がある。これらのどれかが欠ければシステムとしては機能不全に陥る。実際にはこれらの他に、固定で自国領内に据え付けられたレーダーサイト(巨大なレーダーで自国空域を監視する地上の設備)とも連携しているはずだ(詳しくは知らないが、普通に考えてレーダーサイトの情報とリンクさせない理由は無いだろう)。

戦争が開始されるとまずは対レーダーミサイル(レイダーサイトが発する捜索レーダーを検知してレーダーの方角に向かい、レーダーを破壊する巡航ミサイル)を発射して敵国の防空システムを破壊するというのは教科書的な戦術であるので、当然ウクライナ側も(というか現代的な軍隊はどこでも)それを見越している。なので、システムのどこかが機能していなくても単体である程度の防空能力が発揮できるよう準備してあったから現在でも防空能力が発揮されているのではないだろうか、ということだ。

もともとロシア製SAM(SAM:対空ミサイル、ウクライナ軍が装備)は自律的運用が考慮されているとのこと。

ドイツが方針転換して対戦車兵器や対空兵器を供与するらしい。

Germany to supply Ukraine with anti-tank weapons, missiles - Scholz

ドイツは開戦前はヘルメットを2000個送るなどしていてウクライナを失望させていた。私もこのニュースをみた時にひどくがっかりした。田舎の市町村役場で地元の自転車通学してる中学生にヘルメットを買う、みたいな感じでやってるのか?

ただ、この対戦車兵器とはパンツァーファウストⅢで、これは無誘導のロケット弾らしい。

一方でアメリカが供与したのはジャベリンという対戦車ミサイルで、これはターゲットをロックオンしてボタンを押せばあとは誘導弾が勝手に戦車めがけて飛んでいき、直前で上空にホップアップして戦車の真上に当たるという兵器である。これは非常に高度な誘導方式を採用しており、Fire-and-forgetと呼ばれる。「撃ったらもう忘れていい」ということだ。通常は誘導弾であっても、当たるまでターゲットにレーザーをポイントし続けなければならないとか、レーダーを照射し続けなければならないとか、制限が大きい。撃ったあとすぐに逃げることができるので射手の生存性が高まる。射手の生存性が高まるということは、二発目を撃てるということである(何度も危険なことをしなければならない兵士は酷なことだが…)。

一方でパンツァーファウストⅢは無誘導ということであるから、確実に当たるところまで接近する必要がある。すると、射手が攻撃される危険性も必然的に高まる。そもそも、ジャベリンであってもゲームのようにポコポコとミサイルを撃って敵戦車を破壊できるという兵器ではない。戦車だってそんなに簡単にやられるわけにはいかない。現代の戦車には兵装と連動する望遠の赤外線カメラが装備されていて、数km先で対戦車ミサイルを構えている歩兵をも視認して攻撃できるという話であるから、Fire-and-forgetなミサイルであっても射手は死ぬ覚悟で待ち構えなくてはならないのだという話を聞いたこともある。

こういった無誘導な兵器を確実に当てるためには、何もないだだっ広い平原で待ち構えるよりも、障害物が多くて見通しがきかない市街地で戦った方が有利になる。つまり市街地で戦車が怪しい家屋を砲撃するとか、街のどまんなかで戦車が撃破され爆発炎上するとか、そういう嫌なことになる。何もないよりは無誘導であろうと対戦車兵器があったほうが良いのだろうが、何にしてもそうやってウクライナに頑張ってもらうということは、戦況が泥沼化して一般市民の命や財産がダメージを受けていくということに等しいので、考えれば考えるほど暗くなる。

ここまでウクライナ側、西側の視点で書いてきたが、ロシアの兵士だって全員が「ウクライナを討伐して親露政権を樹立させよう」と息巻いているわけではないだろうし(だから士気が低いと言われているのだろうし)、そういう人たちが同じ言語を話す人たちと戦って死んでいくのもこれもまた地獄である。世界中の人々が同じことを思っているだろうが、なぜこんなことになったのか、さっぱりわからない。さっぱりわからないのに、次々人が死んで、財産が破壊される。わけがわからない。

私自身の話になるが、なんというかここ数ヶ月はどんよりとした気分が続き、将来のことを考えると不安しか無い。そこにきてこのような情勢になっている。うちの子どもたちを見ていると、この子らが幸せに生きれる未来はあるのだろうかと不安になる。家族としてできることはやってあげられるが、世の中には個人の力ではどうにもならないこともある。つまり、私が家族を幸せにしてあげられる範囲にも限度がある。そういう事を考えながら身体が朽ち果てていく想像をしてしまう。