【追検証】「年収1000万からは税金がきついよね〜」という話は *フリーランスの場合* どうなのか

前回の記事

「年収1000万からは税金がきついよね〜」という話は実際どうなのか

がちょいバズったので続けてフリーランスの場合にどうか?というのを算出してみたいと思います。

ちなみに今回は フリーランスではない 読者を主に想定して書いてます。

検証方法

売上高の10%, 20%, 30%, 40%, 60%を経費計上した場合の手取り額、支払う税金・社会保険などの合計を算出しました。個人事業税は無し、配偶者や扶養の控除も無しです。

消費税の扱いは悩みましたが除外しました。

青色申告、65万円控除が適用された場合で算出します。

使用した計算式はこちらです。

個人事業主 税金/社会保険料計算シュミレーション

結果

まずは売上高の10%, 20%, 30%, 40%, 60%を経費計上した場合の結果を見ましょう。

青の点線が給与所得の場合の手取り額です。対して「手取り」がフリーランスの手取りなわけですが、見てください。全てのケースで給与所得の場合、つまり、サラリーマンの方が手取りは多いですね?まじか。サラリーマンは最強やったんや!!フリーランスがどうの副業がどうの言っとるけど結局の所勤め人が大正義、最強、情強やったんや!!!!!神様仏様ありがとう!!!

と思った人はちょっとまってくださいね。

「経費」「手取り」ってなんだ

フリーランス、より厳密にいうと個人事業主の「手取り」とは何でしょうか?これが非常に難しい。「事業経費」は文字通り「事業で必要な費用」なのでこれは手取りではないと解釈するのが自然と思います。そのように解釈すると上記のような「手取り」額が導き出されます。

しかしながら実際のところ、殆どの個人事業主はこの経費という取扱が事業に起因して発生した費用なのか、実生活で必要だった費用なのか、これはかなり曖昧になっているでしょう。

例えばYouTuberが買ったビデオカメラ、これは事業経費になりえますが、しかし実生活でもビデオカメラは使えますよね?こういう場合は「按分比率」を決めなければなりません。たとえ30万円のビデオカメラのうち、10%しか事業に使ってなかったら30万円の10%、3万円分しか経費計上はできないのです。じゃあその10%って何よ?というと、それは事業者が使ってる時間だったりの根拠より決めてるわけです。あとは自宅の一部を事業所として使ってるなら建物の面積比率だったりとかね。

一方で「いや私生活用のカメラはあるのでこれは完全事業用で使用するカメラだ」と按分せずに100%経費計上することもあるでしょう。

そのへんって正直、事業者のさじ加減で決まってるところが多いと思うんですよね。本当に私生活だけで使ってるかどうかなんて本人にしかわからないでしょう。

私生活で発生した費用を経費計上するということは脱税ですが、実際やってる人は多いと思います。例えば飲み会は営業経費として計上できますが、皆から割り勘の現金を集めクレカで支払い領収書を貰って経費計上した、とかね。

で、上記のような諸々の行為がセーフなのかアウトなのかというのは、 税務調査が入った時に答え合わせをする わけで、それまでは実はわからないんですよ。しかも税務調査って税務署職員がノリで(?)こいつのところに行くとか行かないとか決めてるわけで、いつ来るのかもしくは来ないのか、なんてのは全然わからないんですよね。

確定申告のときは「書類を受け取りました」っていうチェックをするだけで、諸々の税務処理が適切かどうかまでは見てないんです。で、アウトのものがあるとどうなるかというと数年後の答え合わせで修正申告をして追徴課税という形で税金を収めます。このときの税金は1.x倍という係数がかかってニンニクアブラカラメマシマシみたいなことになって「税金が払えねぇ、100万円単位の税金なんて無理。死んでしまう」と大変なことになります。でもフリーランス界隈ではたまに聞く風物詩ではあります(季節関係ないけど)。

そんで事業をやりつつそんな面倒くさいことやリスクまで負ってられないので普通は税理士に頼んで諸々をやってもらうわけですね。

だからサラリーマンがフリーランスになって節税して得をするためにはなるべく経費計上しなければならないわけですが、しかしながら不要なものをバンバン購入してはそれは単なる無駄使いなわけで、そこらへんを上手くやりくりする必要があるわけですね。極端な例だと赤字にすれば税金はゼロになりますが、赤字にするためにYouTuberが稼いだ金全部をカメラとかマイクとかに注ぎ込んだら生活できませんからね。生活費がゼロということですから。

独立するのだからサラリーマンよりは得したい

では、いくらほど経費計上すれば少なくともサラリーマンよりは払う税金を少なくできるのでしょうか?それを比較するグラフがこれです。じゃん。

これを見ると「あれ…?サラリーマンが一番税金払ってる…?」というように見えますね。いや、でもよく見てください。年収1000万円まではちょっと様子が違いますね?拡大してみましょう。

年収800万くらいまでに着目すると、売上の20%の経費を計上してもサラリーマンよりも税金は多く払っています。そして約1500万円までは売上高の10%程度の経費計上ではサラリーマンの方が税金を支払っていないということになります。

だから、すごく雑なことを言うと 売上高の20%くらい経費計上しないとサラリーマンよりも税金を多く払うことになる ということですし、逆に言うと フリーになって20%以上の経費計上ができればサラリーマンよりも節税できそう ということになります。さらにその使用した「経費」とは「事業に必要な費用」なので、これが必ずしも私生活を潤すものではない、というか、私生活を潤すもの(潤す部分)は経費にしてはいけないのです。いやー、難しいですね。

個人事業主とか確定申告とかやったことない人はよく「経費にできるからウマイよね〜」みたいな事を言うのですが、経費っていうのは「タダで何か物を買える」というわけではないんですよね。たとえプライベートで使用する高価な物品を100%事業経費計上で買ったとしても(しつこいですがこれは駄目ですよ)、その高価な物品の取得費用の所得税率掛け分、ざっくり言うと20〜40%程度分しか得しないのです。

しかも「売上高の20%くらい経費計上」とか気軽に書きましたがこれは私がやった限りでは 至難の業 です。例えば売上高が800万円だったとしたら160万円を経費にしなければならないわけですからね。1年間に160万円も「事業に必要な何か」を買えますか?これ結構しんどいぞ。

特にIT系エンジニアの場合は殆ど元手がかからないです。毎年100万円のパソコンを買い、周辺機器を買い、サーバー代その他を支払い、ちまちまと飲み会の領収書を足していっても160万に届くか届かないかじゃないでしょうかね。しかも100万円の固定資産が出来たらそれは1年ですべて経費計上できるわけではなく、償却期間で分散して減価償却していかないといけないですし。減価償却というのはつまり、パソコンの耐用年数が国税庁の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表」で4年と決まってるので4年かけて取得対価を経費計上しなさいと決まってます。だから100万円全額を買った年に経費計上はできません。

サラリーマンの最大の武器「給与所得控除」

ちなみに所得税率はサラリーマンも個人事業主も同じなのですが、ではなぜサラリーマンは苦労せずにこんなに税金が安いのかというと、「給与所得控除」があるからですね。

給与所得控除 国税庁

この金額が所得から引かれ、残った金額に所得税率がかかります。なんでこんなことになっているかと言うと、自営業者が仕入れ等々で控除できるのでそれに対応してサラリーマンも仕事に必要な経費を引けるようにしよう、そしてそれは計算が面倒だから概算で「このくらい普通使うやろ」という金額を引いてあげよう、という理論らしいです。よく知らんけど。

でもなあ、私がここで声を大にして言いたいのはこんなに仕事に対して金つぎ込んでるサラリーマンなんか居るわけ無いだろ!!ってことなんですよ。

たとえば上の表を見ますと年収500万円の人は収入の20%+44万円とありますので計算すると144万円にもなるんですが、年収500万の人が年間144万円も自分の仕事に対して金使うわけないでしょ?いや、居るかもしれんけどそんな人ごく小数でしょ?大体仕事で必要な物品は会社支給が当然、そうでない会社はブラックっていうのが世間の一般的な常識ですよね?あまりにも実体とかけ離れてると思う。

でも現代日本でここを問い詰めたら「じゃあ個人事業主でも給与所得控除に見合うくらい控除額を拡大しようやぁ」とは 絶対に ならず、「じゃあ公平にサラリーマンの給与所得控除を減らそうやぁ」って話になって不幸な人が増えるだけなのでみんな我慢してるんだと個人的には思いますね。これほんと許せんわ。

とまあでも現実そうなってるんで今の所はそれに従うほかなく、結局は前の記事に書いた通り、「フリーランスがサラリーマン以上に節税するには少なくとも給与所得控除以上に経費計上しないといけない」という話になるわけであって、更に言えば経費計上は経費なので事業に必要な何かに使ったはずであり、であるならばやっぱり経費と言いつつ私生活に全振りできる給与所得控除のほうが有利というのは揺るぎないと思うんだよなぁ。

要するにまとめるとフリーランスになれば節税しまくってウハウハかというと、そういう甘い世界でもないよねってことなんですよね。少なくとも私の経験からはそう思う。得られる金を最大化できるのは個人事業主だが、多くの場合サラリーマンの方が得、みたいな…。一方で、知り合いの税理士などは「ずっと赤字で申告して税金を1円も払うな」などとのたまっており、本当にそういうことが可能なのかな…?そういうことをしていて税務調査が来た時にまともに戦ってくれるのかな…?というのは個人的には謎です。よく分からんね。

だから前回の記事でも書いたのだけど、

「えっ、ITエンジニアで給与所得控除以上の経費計上を!??できらぁ!!」

という人が居たら教えて欲しい。個人的には税理士に頼んだって無理じゃないかなと思う。だって実際使わない限りは経費にならんし。

私は多分常識的な範囲でまともに税金を払っているので、これだったらサラリーマンの方が絶対に得だわと思い、勤め人に戻りました。青色申告は続けてますが。

その他の節税策と人生設計

フリーランスでよく節税策として語られるものに

  • 専従者控除
  • 小規模企業共済
  • 経営セーフティ共済
  • 国民年金基金
  • 確定拠出年金

などが挙げられます。専従者控除は自分の嫁さんなどを自分の事業の従業員として扱い、支払った対価を費用計上できる方法です。が、これをやると配偶者控除が受けられなかったりしますし、発生した経費相応の稼働があるかどうかも税務調査では確認されるはずですし、実際に配偶者の拘束時間も発生してくるわけで、言うほど簡単にできるものではない気もしますね。そもそも現代においては配偶者を得るほうが大変と言えるのかも知れないね。

小規模企業共済や経営セーフティ共済はそれぞれ退職金・保険に近く、掛け金を支払い廃業時に払ったお金がいくらか戻ってくるとかいうものになります。ただどちらも「廃業時に戻ってくる」という類のものなので使いづらいんですよね。まぁ資金繰りがまずくなった場合にお金を借りれるとかいうメリットもあるのですが(というかそれがメインなのですが)。

普通、収入って若い時は少なくて年取ってから増えるわけですが、金が必要な時期がそれに上手く連動してるかというとそういうわけでもないんですよね。特に子供の有無、子供に金がかかる時(大学入学のときなど)に自分が何歳かなどで大きく必要な生活費の山は変わってきます(詳しくはこちらの記事)。

そういう時に日常生活の資金の必要性に応じて気軽に引き出したりできるお金じゃないのがちょい面倒ですよね。まぁ廃業してまた開業届出せばいいだけと言えばそれはそうなんですが。

国民年金基金、確定拠出年金なんかはさらにお金の引き出しが面倒というか、実質年金をもらうまでは引き出すことが不可能です。私は若くて遊べる時に金を使いたい、つまり遅くとも30〜50歳ちょいくらいのときに一番贅沢したい(もしくは子供に金をかけたい)と思っていて、ジジイになってから金があっても正直あんまり嬉しくないんですよね。老後の貯蓄のためにちまちま貯金する額をこういうものに転換することで実質的に可処分所得が増えるという効果はあるかもしれんけどね。

要するに何が言いたいかっていうと、上記のような代表的かつ大きい経費削減策は「稼いだその瞬間に使える可処分所得が増えて今の生活が潤おう」というものとはちょっと違うんですよね。どちらかというと将来楽するために今辛抱するために貯金するみたいな、そういう考えと近い概念です。一方で私なんかは将来金が無かったら将来その時稼げばいいや、今最大限贅沢したい、みたいな思想の持ち主なんで相性が悪いですよね。兼業農家でもうすぐ70歳なのに冬は出稼ぎでユンボを運転してる私の父親はその昔、「我慢して生きるな、欲しい物ややりたいことがあるんだったら金を稼いで実現しろ」1と言っていたのですが、あれは今考えても真理だと思うわ。

でまあ、一方で日本の税制ってやっぱり「ずっと勤め人やってて無駄使いせず、ジジイババアになったときのためにちょっとずつ貯金していく生き方をする子がいちばん賢いんやで」って頭を撫でてる姿が目に浮かぶような内容になってる気がします。それに自分の人生観が合致してたら良いと思うんですがね。

私は動けるうちは動きたい、快適で駐車場が3台ついている戸建て(4000万円)に住み、北欧産のかっこいいストーブ(6万円)を買ってキャンプしたい、でかいバイク(150万円)に乗りたい、でかいバイク(150万円)で色んな所(交通宿泊費10万円)にバリバリ行ってバリバリ伝説(プライスレス)したい、車もかっこいいやつ(700万円)に乗りたい、行く先々(交通宿泊費10〜60万円)で最高の子供の写真(プライスレス)を取るために今最高のカメラ(40万円)と最高のレンズ(40万円)が必要で、子供(4歳および7歳)が女子高生くらい(16歳および19歳くらい)になって親に歯向かうようになってから良い写真があったってだめなんや、俺が若くて子供も幼いうちにしときたいんや、って考えなんで、そういう人に日本の税制はあんまり優しくはないですね。

でもAmazonみたいに意地でも税金払わねぇ、税金払うくらいなら死ぬ、みたいなことを日本でやってる所・人も居るわけで、そういう人は偉いと思うわ。偉い。本当偉いよ。抜け駆けだ、ずるいなどと思わずにそういう人に教えを乞うて私は今この瞬間を大事に生きていきたいね。

ちなみにこないだ「新しいマウンテンバイクが欲しいな」とつぶやいた所、妻氏に「あなたはその前に新しいカメラを欲しいと言っていましたね?その前はレンズでしたね?その前はボルボだ車だと言ってましたね?大型免許を取って大型バイクをとも言ってましたね?それを踏まえてください。その上で、まだ新しいマウンテンバイクなどと言うのですか?」と、心底あなたの思考が理解できない、もはや人間とは思えない、みたいな顔で言われまして、あれは本当に怖かったですね…。戦時中におはじきをサクマドロップスに見立てて舐めながら死んでいった幼子の霊とかが一時的に憑依したものと思われます。

皆様方におかれましては、フルィーランスのIT系エンジニャヤアーなどになって節税しながらリミョートでオシャンーなカフェーなどから仕事をしつつ年収は倍増、SNSでもヒョロワー10万人のインフルエンシャーに、Wikipediaに自分の名前の項目ができる!!テレビで取材される!!!毎日がエブリデイ!!!!みたいな非現実的でくそダサい夢を見ず、もっと地に足つけた現実的な人生設計をするとともに、この記事含めネット上のクソみたいな記事の記述に右往左往せず、本当に生きたい生き方、生きるべき生き方を自分のオツムで考え模索して後悔の無い生き方をして頂ければと切に思います。

じゃあそんな感じであとはよろしく。ばい〜。


  1. ちなみに父はギャンブルも無駄使いも一切しない人間でしたが、父がギャンブルしまくりな人だったら説得力のない言葉だったと思います