昔話

自分が最初に買ったCDはTHE MAD CAPSULE MARKETSの「HUMANITY」というやつだった。

HUMANITY
HUMANITY

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THE MAD CAPSULE MARKETS
ビクターエンタテインメント (1996-12-18)
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THE MAD CAPSULE MARKETSという名前は多分頭がおかしくなるようなドラッグの販売店みたいな意味だと思うんだけど mad や market という単語はそれにふさわしくないと思う。彼らの歌詞を見ても「YOURSELF LOOK!!テメェを見ろ!!」みたいなものがあったりとお世辞にも英語力があるとは言えないものだったが、まぁあの時代(90年始めくらい)のインディーズバンドはそのあたり緩かったし、だれも気にしてなかった。彼らの感情をそのまま表現したらそういうものになったということなんで、別にあれは英語では無かったんだろう。

MADはビジュアル系っぽい雰囲気を少し残したパンクロックバンドで、あの当時には珍しくサンプラーやシーケンサなどを使った楽曲も多かった。元来、電子音楽っぽいのも好きだったのでそういうあたりでもMADは未だに好きなバンドの一つだ。その他、聞いていたのは全部日本のインディーズロックバンドのみで、J-POPは全く聞いたこともなかった。あまりに好きすぎて当時は自分の聞いたCDを説明するサイトを運営していた。
その中で某バンドのことをめちゃくちゃにこき下ろしたら本人からメールがきてびっくりしたこともあった。

同時期に鳥肌実にハマった。何故か知らないが、「鳥肌実が秋田に来る!!鳥肌実 全国時局講演会開催!!」みたいなCMがその当時秋田で連日のように流れており、なんかやべーやつが居る!!と興奮した。なんで鳥肌実が連日CMで流れていたのか、未だに考えると違和感があるが良くわからない…。当時使い始めたネットで動画(当時はRealPlayerとかいう数十kbpsの酷いストリーミング映像だった)を探してみて鳥肌実にもハマった。

続けて知ったのが鳥肌実が映画に出演しているという話で、それが「けものがれ、俺らの猿と」というものだった。

けものがれ、俺らの猿と [DVD]
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これは2001年公開の映画で、原作は町田康、出演は永瀬正敏、小松方正など。で、この町田康はその筋では有名なパンクロックバンド、「INU」の町田町蔵であるとのことであった。監督はMVの監督歴も多い須永秀明であって、劇中で使用されている楽曲はNUMBER GIRL、bloodthirsty butchers、ASA-CHANG & 巡礼、ゆらゆら帝国などといったこれもその筋のファンからするとたまらない組み合わせであった。作品としての出来は、私の正直な感想ではかなり粗が目立ち、出ている俳優と比べてちぐはぐな自主制作映画感が漂う複雑なものだったが、しかし場面場面で見ると強烈な印象として残るシーンが多い。例えるならばなかなか目覚められない悪夢を見ていると言うか…。いずれにしても、私は好きな映画の一つだ。世間からの評価は絶対に高くないだろうけど。私の心には刺さった。

その流れで当然、町田康の原作小説「けものがれ、俺らの猿と」も読んだ。「屈辱ポンチ」に収録。

屈辱ポンチ (文春文庫)
屈辱ポンチ (文春文庫)

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町田 康
文藝春秋
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私は漫画は好きだったが小説を読んだことはあんまり無かった。おそらく人生で初めて自分の金で買った小説がこれだったと思う。そして衝撃を受けた。小説ってこれで良いんだ、と思った。芥川賞候補だった。(ちなみにその後、「きれぎれ」で芥川賞受賞)

その頃から私は文章を書くのが好きだった。と、同時に「自分が見た夢をベースにした何かを作りたい」とずっと考えていた。何か、とは、ゲームかアニメか漫画か小説のどれかであった。一人で完結させるのにもっとも敷居が低いのは小説であったが、私に文学というカテゴリの文章は書けないだろうとずっと思っていたが、こんな文体で許されるなら私にもかけるだろうと思ったのだった。私の中でそれまで小説とは、何か堅苦しくて辞書を調べないと読み方すらわからないような漢字を多用しなければならない、まったく面白くないもの、という認識であった。

とまた全然別の話で、友達の家に遊びに行った時に「適当に買った映画なんだけど全然おもしろくない」と言われて差し出されたDVDが気になった。それが「2010年」というものだった。

2010年 [Blu-ray]
2010年 [Blu-ray]

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ワーナー・ホーム・ビデオ (2010-04-21)
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これは「2001年宇宙の旅」の続編であり、私はもちろんその後「2001年宇宙の旅」も見て好きになったのだが、「2010年」もかなり好きだ。本作で私が度肝を抜かれたシーンが木星の衛星イオ上で宇宙遊泳を経て宇宙船ディスカバリー号に乗り込むシーンであって、ロシアの宇宙飛行士がその「高さ」に恐怖して過呼吸になる。その映像は昔の映画とは思えないほどにリアルで、本当に宇宙飛行士の恐怖が伝わってきたのだった。そしてその科学的に正しい描写にもとても興味が湧き、「2001年宇宙の旅」シリーズは小説4部作、映画2作品すべてを見た。

おそらく、この「けものがれ、俺らの猿と」と「2001年宇宙の旅」シリーズは同時期に読んだ作品であって、私がその後の人生に最も影響を受けた作品と言っても過言ではないと思う。

両者は全く方向性の違う作品であったがその面白さは共通していると思っていて、そういう作品が読みたいと思っている。具体的にはハードSFなんだけど焦点は一般市民の庶民的な問題や出来事に当たっており、大きな歴史の流れに翻弄される、みたいな…。「この世界の片隅に」はそれに近い。

で、誰も書いてくれないので自作したいということを去年から言ってるがなかなか進まない。という話。