子供を育てるのに本当に3000万円もかかるのか試算してみる

Twitterで子供を産んだら育てるのに3000万円かかるということが話題になり、さらにそれは負債であるという論が流れてきた。

発端は下記の記事らしい。

子供を育て上げるのに3000万円!? | Allabout

子供は負債か

で、この記事だけなら昔からFPの類が主張してきた「子供一人あたり育てるのにこんなにかかるんですよ!!!(だから学資保険どうですか?)」といういつもの話だよね、で終わりなのだけど、誰かがこれもまたいつもどおり、「子供を育てるのにこんなにかかる!!!だから子供を産み育てられない国なんだ日本は!こんな日本に誰がした!ムカつく!子供を産んだら3000万円の負債をいきなり抱えるようなもんだ!!!」とか騒ぎ始めて話題になってる。

何かと行政のせい、企業のせいにする風潮は個人的には嫌いですね。なぜならばそんなことをしても意味ないからです。議論としては「国は」「行政は」「企業は」では抽象的すぎるし、個人のレベルではそうやって不平不満を言ってても何も改善されません。本当に解決したいならば、卒業までの22年で3000万の予算を捻出する算段をスプレッドシートか何かで始めないとならないし、もしくはもっと安く済ませる方法を考えたり、奨学金をもらうことを考えたりといったことが必要になるんですよ。

子供が負債だという考え方も同意しかねますね。人が生きるためにかかる諸々のコストを「負債」と表現し、負債が小さいほうが良いするならば、なるべく負債を小さくするために今すぐ死んだほうがマシという結論になってしまう。だから、昔2chのスレタイで「今なら墓地が無料!!今すぐ死ね!!!」というやつがあって笑いましたが、そういったギャグを真顔で言っているようにしか聞こえません。

いや、子供は教育費養育費に金がかかる上に自分では収入を得ないから負債なのだ。大人は違う。と言われるかも知れませんが、そしたら今度は自分で稼げる人は負債じゃないけど、子供や自分では働けない障害者その他は社会の負債だということになりませんか?そんな考えでいたら福祉が破綻しませんかね。それに、大人は稼ぐから負債じゃないという主張をするならば、子供も将来稼ぐ(資産価値が上がる)物件に対して投資してると言っても良いんじゃないですかね。

私が思うに、結局はこの話って3000万という金額だけが独り歩きしてるんですよ。

3000万!!!って字面だけみたら大変なことだと思うでしょ。Mac Book Proが最上位構成で30万円、ベンツEクラスワゴンが730万円、レクサスLS500hが1100万円、駅近マンションの手頃な物件が4000〜5000万円くらい、それが、子供一人3000万…。二人で6000万…。ひどい…。こんな日本に誰がした!!教育費完全無償化+貸与型奨学金無制限拡大しろ!!!とか思うわけでしょ。

でもよく考えてみて下さい。そもそも3000万という試算が正確なのかもわからないですし、3000万円をキャッシュ一括で支払うわけでもないし、クレジットカードや住宅ローンの返済のように支払額がびた一文まけてもらえず1ヶ月でも支払いが遅れたらアウトで個人信用情報機関に事故情報が載って社会不適合者の烙印を押されるとかいうわけでもないんですよ。商品を買うんじゃなくて生活をする上でかかる費用ですから、こんなもん生活レベルに応じていかようにも変えられます。だいたい、「3000万の負債!!」とか言った人、そしてそれに同意した人の中でそもそも3000万を22年間で払っていけるかどうかを計算した人ってどうせ殆どいないでしょ。3000万という字面だけでビビってんだよ。小動物の心臓だよ。もっとどーんと行こうや。

そして、3000万を年間で均したら136万、月間11.3万という数字を計算してみれば普通の人ならなんかこの試算っておかしいと思うはずなんですよ。子供一人に本当に年平均136万かかってるとしたら、子供3人居る家庭なんか年間408万(月間34万円)も払ってる計算になるんですよ。もちろんスケールメリットは出るでしょうが、たとえそれが半額になったとしても月17万円。そんな大金を子供につぎ込める余裕があるわけが無い。普通に考えて。と私は思う。たぶん、私がアパート借りてる大学生のときだって136万は使ってないですからね(授業料込で)。それは私が国公立大学でしかも授業料の減免が適用になっていたという事情もあるんですけど、いや、それ差し引いても年間平均136万は無い気がする。というのを実際に検証するのが今回の記事でございます。

3000万円の根拠

3000万円という数字の根拠はAIU保険が算出した見積もりらしいです。冒頭の記事もそれを引用して説明してるだけの記事になっております。

で、その算出結果の内訳は下記のとおりです。


image from allabout

ここで色々疑問が出てきますね。

  • 小学校、中学校は義務教育なのにこんなにかかるの?
  • 子供のお小遣い469万って多すぎない?
  • 「私的所有代」ってなんだ

そんでこの見積もりが妥当かどうか個人的に判断したく検索したところ、以下の論文が出典のようでした。

現代子育て経済考--22年間の子育てに必要な費用総額 (特集 教育支援施策と教育費用) -- (教育費の実態) | CiNii

「企業福祉」(産労総合研究所発行)に掲載されたものらしいです。

で、これ2001年に発表されたものらしく、17年前の算出結果を用いて論じるのはそもそもどうなんだって気になってきますね。

加えてネットで検索するとベネッセ、その他保険比較サービスを提供している会社、子育て情報を提供しているサイトなどでの引用が多かったです。私は基本的に保険会社の営業やFPの言うことは話半分に聞くようにしています。もちろん彼らが提示する金額も根拠はあるのでしょうけど、結論は「子供は金がかかるから学資保険を」みたいな方向に持っていきたいに決まってるので、金がかかる方で試算を行うでしょう。

それを追求したかったのですが、残念ながらこの資料はネットでは見れませんでした。

試算してみる

では手に入る別の資料を元に子供にかかる費用を試算してみましょう。

色々な統計結果を参照してそれっぽい値を算出しましたが、たとえば塾の費用、被服費、交通費、大学は何処に行かせるか、下宿かアパートか自宅通いかなどによって全然値が変わってくるので、3パターンに分けて算出しました。

1パターン目は竹コースです。これは、そこそこ塾に通わせたり、そこそこ子供を遊びに連れて行ったりそこそこ本やおもちゃなどを買ってあげ、そこそこのお小遣いをあげてそれなりの大学に通わせた場合の試算です。「そこそこ」とか「それなり」という根拠は、各種統計や調査結果の平均額を中心に採用しているという意味です。

2パターン目は梅コースです。これは、節約に節約を重ねた上で大学は奨学金を借り、さらに4年間子供がバイトで稼いだ額を子供の生活費等に充てた場合です。

3パターン目は松コースです。これは、結構子供にお金をかけてあげた場合の試算で、平均よりも良い生活をさせた場合(大体平均の2割増しくらい)です。高校、大学は私立に入れます。

以上3パターンでの、子供を22歳(大学卒業まで)育てた結果はこちら。

梅コース: 580万円
竹コース: 1735万円
松コース: 2878万円

やっぱり3000万は行かないですね。

以降ではそれぞれに付いてどのような想定をしたかを書いていきます。

竹コースの詳細

まずは中間の竹です。竹コースはすべて公立校に通わせた想定です。幼稚園〜高校までにかかる教育関連費用はすべて文科省調査の平均額を使用し、生活費は厚労省の国民生活基礎調査から推測した値を当てはめています。ちなみに教育関連費用で計上している金額には、塾に通わせる費用や家で勉強させるための文具や本の類、給食費なんかも入っています。

出産費用と乳幼児期の育児費用は私の経験とネットで検索してヒットしたいくつかのブログをみて判断しています(ここは全体からすると非常に小さいので適当な推量でも影響は少ないと思われます)。

お小遣いに関しては信頼できるデータが無かったので適当に決めています。竹コースでは

小学生月額 ¥4,000
中学生月額 ¥10,000
高校生月額 ¥15,000
大学生月額 ¥0 (別途仕送りは計上している)

としてみました。個人的にはこの額はかなり多いように思いますがどうでしょう。

また、児童手当や出産育児一時金の分を総計から引いています。大学では奨学金は借りず、バイトはしない(もしくは子供がバイトして稼いだ額を子供の生活費や授業料には充てない)想定です。

それぞれの時期での月あたり負担額は下記のとおりです。

〜3歳 ¥28,190
幼稚園 ¥46,830
小学校 ¥54,194
中学校 ¥67,214
高校 ¥74,906
大学 ¥124,950

〜3歳の費用が生活実感よりも高い感じがしますが、これは食費、被服費、医療費などの18歳までの平均額を月額の生活費として採用しているためです。

梅コースの詳細

竹をベースに、節約して減らせそうなところを減らし、大学以降では奨学金を月5万円借り、子供に生活費の一部をバイトで月5万円稼がせる想定です。

節約に関しては食費、被服費などを厚労省の国民生活基礎調査平均額から2〜3割引いています。また、小中高の学校外活動費も1/2〜1/3にカットしています。大学は最も安くなるパターンである自宅通いの公立大としています。

竹コースと比べると1000万円以上減っているわけですが、ここで大きく効いているのは

バイト&奨学金: 480万円
自宅通い公立大への変更: 160万円
食費節約: 120万円
お小遣い&私的所有代減額: 70万円

あたりです。

それぞれの時期での月あたり負担額は下記のとおりです。

〜3歳 ¥11,067
幼稚園 ¥25,292
小学校 ¥28,919
中学校 ¥34,992
高校 ¥53,211
大学 -¥8,433

大学時代での数字がマイナスになっているのは、奨学金とバイト代でペイ出来ているという意味です。

梅コースは最低限かかる費用みたいな感じというのを想定して算出しています。最低、ここまで子供にかける費用は減らせると思いますので、あとは個々の家庭で家計が許す分だけ子供にお金をかけてあげて下さい、みたいな考えで算出しました。

松コースの詳細

竹をベースに、高校を私立、大学を私立&アパート・下宿という想定にした上で、生活費を2割増しに設定した上、子供のお小遣いを増やした想定です。

それぞれの時期での月あたり負担額は下記のとおりです。

〜3歳 ¥66,347
幼稚園 ¥73,043
小学校 ¥80,406
中学校 ¥93,427
高校 ¥150,228
大学 ¥199,208

データ

下記です。適当に値を変えて計算してみて下さい。あと、ちゃんとチェックしてないので何処か間違ってる可能性もあります。

データ(Excel)

考察

考察と言うか感想と言うか。

  • そもそも子供一人あたりにかかる平均費用を計算するという試み自体、意味があるのか疑問に感じた。おそらく統計をとっても(取れたとしたら)、分散がとても大きいデータになるだろうと思われる。
  • だからやっぱりこの記事での算出結果も同様にあまり当てにせず、上記のデータをダウンロードして自分なりに試算してみたほうが良いと思います
  • 月額に均すと、贅沢をしなければ子供が二人いたとしても高校までは月額〜10万ちょいくらいで済むことが分かる。一人でキツかったとしても共働きなら十分に払っていける額だと個人的には思う
  • やはり大学時代の負担が非常に大きい。あまり金がかからない幼少期のうちに早めに大学入学を見越して貯金を進めるのが良いと思う。また、幼少期から大学入学までは10年以上開きができるので、資産運用と相性が良い
  • 私立は小学校が一番高い。中、高と進むに連れて安くなる傾向がある
  • 逆に公立校は小学校が一番安い
  • 小学校が6年ということも鑑みると私立小学校に入れるのはかなり家計負担を圧迫すると予想できる
  • もし小学校を私立で入れるならば、後述する大学時代へ向けての貯蓄額を含めて予算確保できるか確認したほうが良い
  • 子供一人3千万かけたらそれなりに裕福な子育てが出来るような気がする。ただ首都圏だと普通に近い…かも?
  • AIUの試算は学校に関する費用はそこまで文科省やJASSOが発表する調査結果と乖離がないものの、生活費が国民生活統計と比較するとかなり高い気がする。特にお小遣い
  • 調査の過程でよく学資保険の類がヒットした。現在の学資保険は10歳まで頑張って短期で払い込んでも払戻率108%程度みたい。5年前くらいは113%とか普通にあったのだけど。10年積み立てて108%を高いと見るか安いと見るかは人それぞれだが、年利で言うと1%切ってると思われるので私ならやらない。

また、当初のAIUが算出した結果に関する疑問について、私なりの結論は下記の通り。

小学校、中学校は義務教育なのにこんなにかかるの?

いずれの試算も家庭内での学習に使う本や教材、塾に通う費用などが含まれているため。ただ、AIUの算出結果と文科省の調査結果はある程度似てはいるので、不当に大きな額を盛っているというわけでも無さそう。

子供のお小遣い469万って多すぎない?

どう考えても多すぎると思う。月平均で均すと1.77万円。さらにこの額は大学生時代の仕送り等とは別に計上されているっぽい。世間のお小遣いの平均値で信頼できる情報が無かったので判断が難しいものの、これは個人的には多すぎる額だと思う。

「私的所有代」ってなんだ

おそらく子供が使用する自転車、家具、部屋などにかかる費用と思われるが、詳しくは不明。そもそも文科省の調査では交通費、家庭内学習費・物品費・図書費など諸々を含めた費用を込みにしているため、厳密には今回の試算では0円とすべきだったかも知れない。今回は予算計上していないところでざっくりこのくらいの額は何かに使うだろうという曖昧な想定で曖昧な額を計上し、安全側(予算がかかる側)に寄せてみた。お好みで0円で計上してほしい。

大学に向けての貯蓄

調査結果を見ると子育て費用の山場は大学時代にあることが分かります。

国立で下宿/アパートという条件だと年間171.4万円かかる(JASSO/H26)計算なので、月だと14.28万円となる。家計の中から月額14.28万円を捻出できるかというとこれは平均的な家庭ではなかなか厳しいんじゃないかな、と思います。子供が二人居て二人共同時に大学に入る期間があったらさらに2倍ですからね。したがって、大学入学を見越した貯蓄は必要であるという前提に立っておいたほうが無難でしょう。

月当たりいくら位大学入学に向けて貯金しなければならないかを示したシートを上記のデータを固めたzipの中に入れておいたので計算して見て下さい。

例えば月5万しかかけれないのなら、子供が小さいうちからこのくらいの額を貯金しなければならないことになります。

奨学金を月4.5万借りる前提だと、自宅通いならば貯蓄が無くてもなんとかやっていけます。

自宅通い、国公立大という条件であっても、奨学金無し、子供がバイトしない(バイトしたお金を一切自分の生活費や学費に充てない)という条件だと、月々10万弱の費予算が確保できないと貯金は必要になります。

また、上記貯蓄必要額の他に、小中高に通っている間も教育費用が上乗せされることや、子供が2人以上居る場合は単純計算で倍の貯蓄が必要になるということも忘れてはなりません。この貯蓄額をそれぞれのライフステージで確保できず、かつ大学に進学させたいのならば、奨学金、アルバイトなどを検討すべきと思われます。

まとめ

  • AIUの子供一人あたり平均3000万という数字はやっぱり盛っていると思われます。特にお小遣いやその他生活費などがむやみに高い気がします
  • ただし3000万という数字はありえないというわけでもなく、首都圏で私立校にちょっと通わせたら達する程度の額と思われます
  • この記事の数値もそのまま信用するのではなくて、是非上記のデータを使って自分で算出してみてください
  • 子供一人あたりにかかる総額を見てびっくり&絶望するのではなくて、月々のキャッシュフローに注目しましょう
  • 大学ではまとまった資金が必要になるので、子供を大学まで通わせたいのなら計画的に予算を確保しておく必要があります
  • 公立校に入れるならば、小学〜高校あたりまでは一人あたり月々5〜10万円の予算(大学時代にかかる費用の貯蓄込み)を確保しておくことが安全圏と思われます
  • 私立に入れるならば、私立に入れている間は一人あたり月々20万円弱(大学時代にかかる費用の貯蓄込み)くらいの予算は見ておいたほうが良いと思われます
  • 生活費や学校外の活動費は個々の家庭によって差が激しいので、上記Excelシートをベースに自分で計算してみることを強くおすすめします
  • 貯金できる特に大きなチャンスは子供が小学生に入るまでです。できればここの段階での保育費用は抑えておきたいものです
  • 私立に入れても月々10万円ちょっとというキャッシュフローならば、共働きであれば子供最低1人くらいは立派に育てられるような気がします
  • 奨学金の効果は非常に大きいです。予算が確保できないならば第一の選択肢として検討すべきと思います