【質問#104】車の安全装備とコストの問題について

質問・悩み相談の回答です。

質問

こんにちは!最近クルマ関係の記事がなくて少しさみしい通りすがりです。
さて、今回尋ねますは、最近流行りの自動運転にもつながる車の安全装備について、デス。

自分は「便利だけど、まぁたまに楽しいかな?」くらいの車が好きなので、正直「安全装備とか邪魔、要らん、なんで下手くそのために俺が金払わなアカンのや」って言っている人らのことがよくわからんのです。
確かに車はだいぶお高いです。昔に対して色々足した結果、なんか昔の感覚だとよくわからんくらい高いらしいですね?
でも保険料も割りとシャレにならないと思うんですよ。20歳で保険に入ったとき、毎月1万5千とかアホみたいな値段しましたし?無くてもなんとか出来なくはないですが、田舎の公共交通はマジでアカン。
安全装備装着した車が結果的に事故率低下、保険料が下がってくればメリットもあると思うのですが。
というか安全装備が働くような、そういう無茶は公道では避けてほしいのですが。
どうも自分は三十路代のくせに意見が若者寄りと言うか、モータースポーツに趣向できないタイプの人間のようで。(見るのは良いけどやる気は出ない)
運転に対する向上心はあまりないし、安全装備はソレで結構と思います。ただ実際30km/hまでしか保証できない装備を「自動ブレーキできます!」と誤解させるメーカには言いたいことはありますが…。
とは言えメーカも正直に言えないのは辛いところ。ソレもわかります。
例えばCMでド正直に、よそ見運転をしていた状態で自動ブレーキが働いて過失致死に至るレベルの事故が骨折程度に回避できた、と言った内容を放送するのは多分に勇気がいる。なにせ車の安全性の根本を否定しかねないわけで。
でも1 or 0で考えれば生きてりゃ双方儲けもんじゃないですか。

ここで問題なのは「予防安全にいくら払えるか」だと思うのです。考え方自体は保険と一緒ですよね?
さて、このコストなのですが…ぶっちゃけ拡販されないことには下がりません。技術も向上しません。
自動運転とかいくらの機器を積むのだろうか。その昔10万円PCとかSOTECかよと笑っていた自体が懐かしいですねぇ(遠い目)
それはさておき、周りには「下手くそのためにしょうがなく」と思っている人が多く、その辺コスパ教の信者らしいwithpopさん的にどうなんでしょうと思った次第であります。
よろしくお願いします。

回答

これは非常に奥が深い問題で、断定的な回答はおそらく誰にも用意できないでしょう。ですから、以下は私の個人的な意見として回答します。

ここで問題なのは「予防安全にいくら払えるか」だと思うのです。考え方自体は保険と一緒ですよね?

そのとおりです。よって、個々人によって高いと捉えるか安いと捉えるかは人それぞれだと思います。

それはさておき、周りには「下手くそのためにしょうがなく」と思っている人が多く、その辺コスパ教の信者らしいwithpopさん的にどうなんでしょうと思った次第であります。

私としては現状の安全装備の価格は妥当と思っています。

結論は以上ですが、以下詳しく書いていきます。車好きの質問者様であればご存知とは思いますが、そもそも昨今の安全装備の搭載というのは最近になって突然始まったわけではなく、自動車業界(官民含め)は一貫して交通死傷事故の減少に取り組んでいるという流れの延長であると認識すべきと思います。

昔に対して色々足した結果、なんか昔の感覚だとよくわからんくらい高いらしいですね?

この点も個人事かとおもいますが、高くなった要因は安全装備(エアバッグや衝突時に生存空間を確保する設計や歩行者衝突安全ボンネットなど)の充実もそうですし、材料費の高騰や安全基準・環境基準の改定によってより高価な材料を使ったり、製造工程、技術開発でコストがかかっているということもあります。特に先進安全装備、予防安全装備と呼ばれる近代的な安全装備については法的にクリアせねばならない基準というのはまだ無いですが、この流れではいずれ法的にクリアせねばならないベースラインというのが定義されると私は思っています。(実際、新車への搭載義務付けが検討されているようです→自動ブレーキ義務化を検討 国交省、高齢運転の事故対策 | 朝日新聞

対して、昔の車、たとえば私が前乗っていたS13シルビアなんかは一番下のグレードで新車価格が162万、上位のK'sグレードでもハイキャスが付いていなければ203万円だったようで、たしかに今の車に比べると安いです。感覚的にはこの時代から+100万円くらいは上乗せされているような気がします。では、その100万円で我々が何を得たのかというと交通事故死亡者数の減少です。

image from 全日本交通安全協会

このグラフから分かるように、交通事故の死亡者数は平成元年以降、単調に減少しています。S13シルビアの発売日がちょうど元年くらいですから、それから車両価格がざっくりと平均+100万くらい1上がっているとすると、平均の車両価格が100万円上がって代わりに得た対価がこのような実績と言えるかもしれません。

ざっくり、元年から死者数が5000人くらい減ってますから、「平均の車体価格が平均200円上がるのをみんなで我慢すれば年間の死亡者数が一人減る」と算出することが出来ます(見積もりは適当オブ適当です)。命の値段はあちこちで哲学的な問いを生みますが、結局その高い安いは状況と文化と政治情勢によりけりです。でも私は現代日本においてこの価格は非常に安いと思います。これが私が安全装備のために車体価格が上がるのもやむ無しと思える理由です。

どうも自分は三十路代のくせに意見が若者寄りと言うか、モータースポーツに趣向できないタイプの人間のようで。(見るのは良いけどやる気は出ない)

私もどちらかと言うとそういうタイプなんじゃないかと思っていますが、安全性の向上に伴って車体の剛性や安定性が高くなったのは車を運転するのを楽しむ側としても良かったのではないかと思います。例えば、昔の車って例えば高速道路走るときなんかは結構怖かったですよね?

とはいえ、だからといってメーカーが提示した価格がどんどん釣り上がっていくのも良い傾向ではない、これも同意できます。私も田舎出身ですから、車とは趣味や贅沢品ではなく生活必需品です。生活必需品のコスト、つまり車そのもののコストとその維持費(保険など)が安全のために無制限に高くなっていいかと、それも違うでしょう。つまり

安全装備装着した車が結果的に事故率低下、保険料が下がってくればメリットもあると思うのですが。

さて、このコストなのですが…ぶっちゃけ拡販されないことには下がりません。技術も向上しません。

これだと思います。

先進安全装備搭載車による保険料の減額は保険会社やその他官庁などが主導して、10%前後の割引率になるとの情報があります。

「先進安全自動車割引」とは | 保険比較

ゴールド免許による割引は大体10%前後のところが多いようなので、有料ドライバーと同等の事故率低減効果があるという感じでしょうか。

そしてコスト自体も最近はだいぶ安くなってきているようで、トヨタのToyota Safety Sense Cは5万円前後で搭載できるみたいです。

以上のような業界全体の潮流、安全性の向上による死亡事故数の現象、実際のコスト、保険料割引の動きなどをまとめると、私は今の先進安全装備のコストパフォーマンスは十分に高いと思いました。ただ、大体どんな対象でもそうですが、「パフォーマンス」を何に置くかによって評価が変わってきてしまうんですよね…。当たり前ではあるんですけど。

最後に、

それはさておき、周りには「下手くそのためにしょうがなく」と思っている人が多く

この点ですが、私はその質問者様の周りにいる人には賛同できません。HAL9000も言ってますし工学の概論的な教科書を見ても必ず載ってますが、人間は必ずミスをします。二種免許を持っている大型バス運転手でもタクシー運転手でも事故は起こします。

人間の失敗をいかに予防し、リカバーするかというのは戦後の乗り物の開発と運用における最重要課題の一つであったと言っても過言ではありません。安全装備は運転が下手な人のためにあるのではなく、人間みんなのためにあります。予防安全装備が発動する頻度は人それぞれかもしれませんが、誰しもが予防安全装備における恩恵を受け、ひいては、自動車社会全体にそれが広がります。この意義を軽視すべきではないと思います。

ただ、その人たちのお気持ちも分からんでもないですが、そう思ってしまう場合は「先進装備が普及することによって運転が下手な人が自分の車に追突してくる危険性が下がっている」と考え方を変えれば納得できるのではないでしょうか。


  1. セダンやクーペの人気が無くなり高級志向へ走らざるを得なかったという事情もありますし、FitとかVitzとか現代でも売れ線の車種はいまだ150万円くらいで買えると考えれば、そもそも車両価格はそこまで上がっていないと言えるのかもしれません。だれかちゃんと比較してみてください。