家をこれから買おう/建てようと思った人にとってまず初めに悩むのは、頭金をいくら用意すべきか、という事であると思います。今回はこれについて考えてみようと思います。
まずはじめに断っておきたいのは、これから書くことは私がそう思っているだけであって、一般的な考え方でもなければ、何かの理論に基づいて保障された方法などでもないということです。私はファイナンシャルプランナーでもなければ、家づくりのプロでもありません。ただの素人です。こういう意見もあるよね、程度に見てください。
頭金は最低限で良い
頭金は多ければ多いほど当然良いです。しかしながら、頭金があればあるほど良いというのは、「金はあればあるほど良い」くらいの意味だと思います。普通は最低限の頭金があれば大丈夫だと思っています。それを順次説明していきましょう。
その前に話を単純化するため前提条件を設定します。
- 現在賃貸で暮らしている
- (少なくとも現段階では)買った家を売るつもりが無い
- 生涯に一軒だけ家を建てる
- 最終的には必ず戸建に住む。ずっと賃貸、という選択肢は無い
- 一括で払うお金は無いので住宅ローンを組む
いずれも、それほど特殊な条件ではないと思います。現在、アパートに住んでいるがそろそろ戸建を検討している、といった感じの場合でしょうか。この条件で頭金を貯めるパターンと貯めないパターンの2通りを考えてみます。
ここでは、お金を二つに分けて考えます。「ドブに捨てる金」と「資産になる金」の二つです。「ドブに捨てる金」は、金利や家賃など、払い続けても自分の資産にはならないお金です。「資産になる金」とはローンの支払いの元金分を意味します。
家賃を払うとは金をドブに捨て続けていることに等しい
「生涯に家を一軒だけ建てる」かつ「いずれは必ず戸建に住む」という前提であれば、はっきり言って賃貸に住むのは無駄です。家賃や駐車場代というのは、オーナーの懐に入る利益、アパート/賃貸マンションの建設費、管理会社や清掃業者に払う手間賃などで構成されています。さらには、殆どのケースで火災保険の加入が必要になると思いますが、これは他人の資産が焼失するというリスクまで背負っているということです。そして部屋を出るときはクリーニング代を請求されたり、難癖をつけられて敷金から修繕費を差し引かれたりするのです。
具体的なケースを考えましょう。
今すぐ家を買う | とりあえず貯金 | ||
ローン借り入れ | 3000 | 貯金額 | 2 |
ローン金利 | 0.015 | 家賃 | 8 |
月の支払い | 12 | 月の支払い | 12 |
単位:万円
いま、住宅費として12万円まで払えるとします。今すぐにローンを始めるのと、とりあえず貯金をするのと、この2パターンで1年後どのような状況になっているかExcelで計算しました。すると・・・。
金利分 | 元金分 | 残高 | 積算家賃 | 貯金 | |
2014年6月 | 3.75 | 8.25 | 2991.75 | 8 | 4 |
2014年7月 | 3.74 | 8.26 | 2983.49 | 16 | 8 |
2014年8月 | 3.73 | 8.27 | 2975.22 | 24 | 12 |
2014年9月 | 3.72 | 8.28 | 2966.94 | 32 | 16 |
2014年10月 | 3.71 | 8.29 | 2958.65 | 40 | 20 |
2014年11月 | 3.70 | 8.30 | 2950.35 | 48 | 24 |
2014年12月 | 3.69 | 8.31 | 2942.03 | 56 | 28 |
2015年1月 | 3.68 | 8.32 | 2933.71 | 64 | 32 |
2015年2月 | 3.67 | 8.33 | 2925.38 | 72 | 36 |
2015年3月 | 3.66 | 8.34 | 2917.03 | 80 | 40 |
2015年4月 | 3.65 | 8.35 | 2908.68 | 88 | 44 |
2015年5月 | 3.64 | 8.36 | 2900.32 | 96 | 48 |
2015年6月 | 3.63 | 8.37 | 2891.94 | 104 | 52 |
「金利分」は住宅ローンを今すぐ開始した場合の月々の支払いにおける金利部分です。「ドブに捨てる金」です。「元金分」は月々の支払いのうち、元金の返済に充てられる部分です。「残高」は住宅ローンの元金残高。「積算家賃」は賃貸に住み続けた場合の支払った家賃の積算、「貯金」は賃貸に住み続けて貯めた貯金です。
賃貸に住み続けると、一年後、毎月4万の貯金で52万たまります。しかし、住宅ローンを今すぐ開始した場合は、1年後にすでに元金を109万も返済しているのです。したがって、賃貸に住み続けると1年間で57万も損をしたということになります。つまり、貯金できているようでできていないとも言えます。
今すぐ住宅ローンを組んだ場合よりも短い期間でローンを払い終えるためには、少なくとも月々の元金分より多いお金を貯金しなければなりません。上記のケースで言えば、月々9万くらいは貯金しないと割に合いません。すると、月に17万円も住宅関連にお金を使うことになります。ボーナスをすべて貯金に回したとしても、この額を実現するのは苦しいのではないでしょうか。
このような結果になったのは、賃貸における「どぶに捨てる金」、すなわち家賃が非常に大きいためです。住宅ローンを開始しても金利分はドブに捨てられます。それを嫌ってなるべく頭金を貯めたほうがいい、と考える方もいらっしゃるでしょうが、現在賃貸に住んでいるならば、既に家賃として大金をどぶに捨てているのです。家賃と金利を比べたら、金利の方がずっと安い。これが今回の記事で最も伝えたいことです。
よくファイナンシャルプランナーなどが提示するのは、「頭金がゼロ円、100万円、500万円だと、ほら、金利と月々の支払いがこーんなに違うんですよお~!!」という数字が書かれた表ですが、この主張には100万や500万を貯金する過程が一切無視されているような気がしてなりません。そら、今現在ゼロ円であるのと500万円があるのとでは後者の方が良いに決まっています。じゃあ500万貯めろよ、というのは簡単ですが、もう少し踏み込んで現実的な道筋を提示してほしいと思うのです。
ちなみに、家を買うにしても司法書士の報酬、登記手続き、ローン手数料などの「どぶに捨てる金」が一時的にかなりかかるのですが、それは上記で計上していません。なぜならば、「いずれ家を建てる」という仮定では、この金額は頭金を貯めようと今すぐ家を買おうと必ず掛かるお金なので、両者に差が生まれないからです。
ローンの審査
あいわかった!!じゃあ今すぐ住宅展示場行ってくる!!・・・というのはそれでもちょっと早いかもしれません。
最近は「頭金ゼロプラン」などという広告も良く見ますが、頭金ゼロだと審査が厳しいです。「貯金もできないような奴に金は貸せない」というのが本音でしょう。しかし銀行も金を貸す商売なので、そうやって客を選り好みしていたら契約が取れません。なので、頭金ゼロでも良いですよ、とは言うものの、それなりに年収があって、それなりの企業に勤めていないと金は貸せない(=審査が厳しくなる)というふうになるわけですね。
したがって、普通はローンを組むにはそれなりの頭金、できれば、諸費用を払った上にある程度住宅本体にも当てれるくらいの額がひつようになってきます。冒頭で「頭金は最低限あればよい」と述べましたが、その最低限とはこのお金を意味します。
今すぐローンを組んだ方が得は得ですが、そもそも頭金が無いと銀行が融資してくれない。ではどの程度ならば良いのか。これは銀行や担当者によって考え方は様々でしょう。借入金額と想定金利から返済負担率を計算して25%以内かどうか(別記事で解説します)、ということで大体は分かるのですが、どうも銀行の融資担当者によっていくぶんかの裁量が認められているらしく、確実なことは言えません。
おすすめの方法
以上までで、「すぐにローンを組んだ方が得だが、頭金があまりにも少ないとローン審査が通らない可能性がある」ということを説明しました。以降では、私が考える家を買うまでのベストな道筋を説明します。
ローン相談に行く
まずは銀行にローンの相談をしに行きましょう。ローン相談であれば休日もほとんどの銀行が対応してくれます。ここで、自身の計画を説明し、あまりにも無謀なのか、それとも大丈夫なのか、融資してくれる人本人に判断してもらうというのが簡単です。大体どの銀行も丁寧に説明してくれますし、ノベルティをくれたりするので、まあ気軽に行ってみましょう。
ここでちょっと注意が必要なのは、仮審査はしない、ということです。ローン相談に行くと、「仮審査(事前審査)申込書」というのを渡してくると思いますが、これに記入すると銀行は個人信用情報機関に現在の債務状況や、事故履歴などを照会します。問題なのは、個人信用情報機関にこの「照会された」という情報も記録されてしまう事です。
この記録が多いと、銀行側は「何度も照会されているということは、ほかの銀行で何度も断られているという事なのかもしれない」と疑ってかかります。なので、仮審査はいよいよ借りるというときに、2つくらいの銀行に出すというのが良いでしょう。
また、ネットの情報を見ますと、この個人信用情報というのは個人で自分の信用情報を参照することも可能なので、「面白いので調べてみましょう」みたいな感じで照会しているサイトもあるのですが、同様の理由でこういうことをしてはいけません。ローンを組む予定が無いならば大丈夫ですが。
予算と計画を再検討する。欲張らない
この予算ではちょっと融資できない・・・と言われた場合、二つの方法があります。予算を縮小するか、頭金を貯めるか、です。当然ですが、融資額が小さければ小さいほど返済負担率が低くなるので銀行の審査は緩くなります。いや、最低この予算がないと私が望む家は建たない、となれば頭金を貯めるしかありません。
または別のケースで、現在支払っているローンがあれば、それを完済するということが必要になる場合もあります。
逆に、この予算よりももっとたくさん融資できる、と言われる場合もあります。銀行も商売ですから、払える金がある人にはたくさん融資しようとします。そういうときは「でっかい家を建ててくださいよ」などとおだててお金をいっぱい使わせようとしてきますが、それに乗せられてよりゴージャスな家を建てることのないよう気を付けましょう。と、このように書くといかにもバカっぽいですが、家を買うという計画をしている時はとにかくテンションが上がりがちで、冷静な判断ができないことがありますので、他人事と思わず十分に注意する必要があります。
ちなみに私の場合は、「現在の家賃+駐車場代を下回る予算」を大前提に決めました。その時住んでいたアパートでは駐車場代込で11.6万円でしたが、組んだローンはボーナス払い無しの月々10.3万円です。
また、ハウスメーカーによっては、こちらが決めた予算よりも大幅に高い契約を結ばせようとしてきました。たとえば、へーベルハウスの営業さんは「あなたの年収で、かつ住宅ローン控除があることを考えれば月々15.6万までは払える」などと言い、そのような見積もりを持ってきたりしました。こっちが11万以下って言ってるんだから11万以下に収まるような見積もりを持ってきてもらいたいものです。勝手に予算を変えないでほしい。
モチベーションを確保する
頭金を貯める場合はモチベーションを確保しましょう。「俺は今、家賃という名のもとに、大家が勝手に建てたアパートのローンを支払ってるんだ・・・」などと思うとすべてが嫌になってきます。モチベーションを保つために効果的なのは、好きなことを考えるもしくは復讐心に燃えるということです。「これだけ貯めればこれだけ良い家が建つ」もしくは、「先祖代々土地を持ってるというだけでぬくぬくと暮らしてるババアもしくはジジイに払う金は無い。さっさとこんなアパート出て行ってやる」と思いましょう。私はもちろん後者でした。大家にしてみれば居住する権利に対する正当な報酬をもらってるだけなのでいわれのない批判ではあるのですが、口に出さずに思ってるだけだったら何も問題ありません。
まとめ
今賃貸に住んでいて、いずれ家を買うのであれば、早めに買った方が得です。しかしながら貯蓄額によってはローン審査が通らないことがあるため、これを早期に確認し、ダメであれば具体的な計画を立てることが重要です。
最後に、繰り返しになりますが私は特にローンや家計のやりくりに詳しいわけではなく、私が考えていることを勝手にしゃべっているに過ぎません。あくまでも一つの意見としてとらえてください。