ふと、「フロッピーディスクでWindows共有が使えるソフトがあった気がするな・・・」などと思い出し、探してみるとそれはFD-Sambaというプロジェクトで、そのページは今でも残っていることが判明した。
な、な、懐かしい!信じられない!くっそ懐かしい!
当時、私は中古のノートPCを弄繰り回していたのだが、CD-ROMドライブの調子がよろしくなく、OSをインストールすることができずにいた。当時私は自称「スーパーツール」と呼んでいたフロッピーディスクを大事に使っておった。これにはMS-DOSが入っていて、CD-ROMドライバを読み込んでドライブ番号を割り当てたのち、「FS」というファイラを起動するようなものだった。MS-DOSにはファイラ(エクスプローラに相当するアプリ)が無かった。これはCD-ROM中のファイルをコピーしたり、CD-ROM中セットアップアプリを起動したりするのにとても重要なツールであった。
で、そのスーパーツールもCD-ROMを使えなければ無用の長物で、どうやってOS入れたらいいかなあ・・・と途方に暮れていた。ちなみに、今のPCのようにUSBメモリor USB CD-ROMドライブから起動するというような機能は無い。HDDか、フロッピーか。その二つだけであった。
そんでまずはMS-DOSでLANを扱えないか、LAN経由でファイルコピーできないかを調べた。これは結論から言えばできるのだが、余りにも手間がかかるのであきらめた。そいで次に検討したのが、冒頭に紹介した1FD-Sambaであった。私が本格的にLinuxを使い始めたのはこれが契機だった気がする。
1FD-Sambaとはその名の通り、一つのフロッピーディスク上にSambaが動くシステムを乗せてしまったものである。SambaとはWindowsファイル共有プロトコル(SMB)を扱うためのソフトだ。フロッピーディスクを入れてノートPCの電源を入れれば、WindowsからノートPCのドライブが見えてしまう。MS製のプラットフォームではこんなことは考えられなかった。衝撃であった。
この頃は1FD-Linuxというのが流行っていた気がする。ほかにも似たようなプロジェクトがいくつもあった。
そういったシステムには必ずと言っていいほどBusyBoxが乗っていた。これはLinuxの基本的なコマンド群を一つのバイナリで代替するもので、一番の利点はファイルサイズがとても小さいということである。現在の最新版のファイルサイズはなんと90KB(busybox-1.22.0)である。
それから時代が移り変わり、フロッピーディスクドライブがPCに搭載されることはまず無くなった。その昔FDが担っていた「OSインストールのための基本的なOSを起動させる」という役割は、DVD/Blu-RayドライブもしくはUSBメモリが担うことになった。
こうした大容量ドライブではBusyBoxを使うメリットも薄い。HDDにOSをインストールした状態とほとんど変わらないレベルの環境が光学ドライブから起動する環境で得られてしまうのである。
そういう経緯があるので、私も久しくBusyBoxを見なかったのであったが、去年にXperia ArcのRootを取ったとき、BusyBoxがインストールされているのを発見した。Rootを取るツールが管理者権限を取ると同時にBusyBoxをインストールしたのである。それを見て私は古い友人に会ったような気分になった。ちなみに、BusyBoxは組み込み用途では今もよく使われているようだ。
今思い返すと、当時のPCというのは自分でドライバを読み込ませてあげたりなんだりかんだりと手のかかる分、自分がこの計算機を動かしているんだという実感があった。今のPC(OS)はこういう専門的な部分はすべて自動的にやってしまってユーザーが触る機会というのはまず無い。もちろんシステムとしてはそうであるべきだが、そういう部分に触る楽しさも失われてしまったことは間違いない。
そういう層がRaspberry PiやArduinoを買っていじくりまわしたり、AndroidでRootをがんばって取ってみたり、ということをしてるんだろう。