大型バイク選び4 定量的評価

今回は定量的評価を試みる。

これは以前から考えていたことで、バイク選びだけでなく汎用的に適用可能な手法である。

我々が複数の選択肢から一番良いものを選ぶ、という意思決定の場面において、それを定量的に評価したいという思いは常にある。ここでは特に、複数の商品のうち、最適な商品を選ぶという状況に注目する。

最適な商品を選ぶために、商品に対する主観的な良さ(スコア) B を定義し、数値化したい。

ここで、スコア B の次元をどうすべきか長い間悩んでいた。通貨(JPY)もしくは、基準スコア(例えば1回の外食をすることで得られる体験の価値など)を1とした無次元量で表すか、どちらかになるだろうなと思っていた。

結論から言うと最終的にはスコアBの次元は通貨として表記したが、後述する理由によりどちらを採用しても同じ結果になる。

また、定量的な評価をするのに物理量ではなく変動的な価値を基準とするのは問題があるのではと思われるが、今回の試みは単に意思決定マトリクスの延長手法のようなものであるから一般の科学で要求されるような厳格さは必要とされないし、そもそもの定義が主観であるのでそのあたりは妥協するものとする。

ここで、スコア B は以下のように定義した。

B = その商品を購入することによる年間の価値創出値 [JPY]

ではその年間の価値創出値とはなんなのかというのは一旦置いといて、最終的に求めたいのは以下のCBRである。

コスト価値比(CBR: Cost Benefit Ratio) = B / 年間コスト[JPY]

年間コスト = ( 購入費用[JPY] / 耐用年数、あるいは効果の持続期間 )

このCBR: Cost Benefit Ratioという概念はこのブログで論じてきた「コスパ論」への一つの回答となる。この点については別記事で書きます。

CBRとはつまりなんなのか?それはつまり次のようにまとめられる。

CBRが高ければ、出費に対してより豊かな体験をもたらしてくれるということになる。逆にCBRが低ければ、出費に対する体験の価値は低くなる。

ある商品を取得する対価として支払うことができる予算は貧乏人でも金持ちでも無限ではなく限度がある。なので、どんな収入階層の人であってもCBRが高くなる商品を購入すべきである、というのが私の基本的な主張になります。

じゃあ具体的にCBRを計算してみましょう。じゃん。以下です。

バイク調査スプレッドシート

まず「価値創出値の算出」シートを参照ください。ここでは、様々な製品、サービス、体験の 一般的な金額 と、その減価償却費用を示してあります。

「海外旅行の減価償却費用ってなんじゃい」と思われるかもしれませんが、ここで言う減価償却費用とは上式「年間コスト」における「耐用年数、あるいは効果の持続期間」のことです。つまりこれが年間の価値創出値 B に等しいだろうという過程の元でこの理論は成り立っています。

なぜそんな事が言えるかと言うと、「一般的な金額」というのがミソです。その商品やサービスの一般的な価格、中央値というのは「その商品やサービスと値段が釣り合ってるだろう」と見込めるからです。あまりにも安い商品はその商品に対して特にこだわりの無い人が買うでしょうし、あまりにも高い商品は逆になにかこだわりがあるからそれを買うのでしょう。そうではなくて、中央値付近というのはおそらくは「値段と得られる利益が釣り合ってるから」とみなせるはず、と思うわけですね。

で、上記表では係数がかかってますね。この係数が何なのかと言うと、その人がそれぞれの商品・サービスそのものについて平均値と比べてどれだけ魅力を感じるかというものを示しています。つまりここで趣味や主観を導入しているわけです。例えば冷蔵庫は低めに設定していますが、これは私は特段冷蔵庫について思い入れがない、安くてデカけりゃなんでもいい程度に思っているので普通の人よりも冷蔵庫に対する思い入れが無いはずです。その補正項として0.8を掛けてるわけです。

以上のようにしていろんな商品の年間の価値創出値Bを求めました。このリストから、今回のバイク購入となるベンチマークとすべき商品、すなわち現在所有しているKTM 390 Dukeの年間の価値創出値を推定していきます。

といってもえいやーで決めるだけです。車よりは低く、キャンプよりは高いだろうなということで20万円と推定しました。KTM 390 Dukeを1年間所有することで20万円分の体験価値が発生します!ということになります。繰り返しになりますが、これは推定に推定を重ねた主観的な値なので少なくとも科学ではありません。あくまでも意思決定手法の一つと考えてください。

で、続いてバイクのシートを見てください。

こちらではスペックと評価項目(直感的良さ、かっこよさ、所有満足度、メーターのかっこよさ、安全性、先進性、街乗りの楽さ、遠出の楽さ、パワー、トルク、タンデム、防風性)が列挙されています。それぞれの評価項目は390 Dukeを基準とした主観的評価ですが、パワーやトルクなど数値で比較できるところは390 Dukeを基準に正規化して評価しています。

それでこの評価点にも自分が重視する所、しない所のウェイトを掛けて足し合わせます。これがそのバイクの評価点となるわけですね。そして、KTM 390 Dukeの年間創出価値は20万円と見積もっているので、これをベースに全てのバイクの年間価値創出をスコア比で算出します。これが各々のバイクの年間価値創出値 B です。

そしてこの B を各バイクの年間コスト(減価償却費+維持費)で割れば…じゃん!目的だったCBRが算出できました。

CBRがもし1を切っている値になったら、そのバイクは買ったら損をするという意味になります。ここは主観で決めた係数と価値創出値が基準になっているので、私の場合は全ての選択肢で1を超えましたが、人によっては1を切る値になるかもしれません(気になったらシート上で計算してみてね)。

ただ今回は新規購入ではなくて390 Dukeからの買い替えになります。390 DukeのCBRを超えないと「今のバイクに乗っているほうが安上がりでかつ幸せ」ということになりますからね。ということで、390 DukeのCBRを1として正規化します。

こうして最終的に算出されたのが「正規化コスト価値比」の列で、こいつが1を超えていなければ390 Dukeから乗り換えするメリットはない、と判断できます。

個々の選択肢を見ていきましょう。

一番正規化コスト価値比が高いのはV-Strom 650 XTですね。他の選択肢と比べて圧倒的に車体価格が安く、かつ私自身が気に入っていて高評価をつけている結果になります。逆にVERSYS 1000 SEとVFR800Xは1を切っていますので、390 Dukeからは乗り換えるメリットが無いという結論になります。VERSYSは車体価格が高いですし、VFR800Xも高い割に私自身が気に入っているところがあんまり無いからこういう結果になったのだと思います。

ちなみに一番左のカラムで新と書いているのは新車、古と書いているのは中古車となっております。中古車の値段は自宅近辺で実際に見かけた金額を記入しています。

中古車のほうが購入費用が安いので年間の価値創出値も大きくなると思っていたのですが、中古車は新車と比べて耐用年数が短いのでそんなこともなかったですね。適当に中古車は耐用年数を-3年と-1年にしています。

ただ、リセールを含めて考えるとまたこの試算は変わってくると思います。中古車のほうが値下がりは緩やかになるはずなので。今回は計算が複雑になるためリセールバリューを考えない(つまり乗り潰す)という前提で計算しています。これは自分がそうしようと思っていることも理由です。

いずれにせよ、おそらく今回は中古車を選ばないと思います。単純に弾数が殆ど無いし、1万km超走っていてもほとんど値段が下がっていないため。

スコアが高いところを見ていくと、

  • TRACER 900 GT
  • TRACER 9 GT
  • V-Strom 650 XT
  • V-Strom 1050 XT

あたりとなりますかね。TRACERとV-Stromの一騎打ち。

今回、この表を作成して得られた結論としては、VFR800XやVERSYS、Africa Twinなどの選択肢は除外できたということになると思います。これら、中でも特にVERSYSに関しては払えなくはない金額であって、かつあらゆる装備がてんこ盛りなので後で困らないという点で「多少ローン期間を長めにして買っちゃおうかな」という気持ちも多少はありました。しかし、スコアを算出したことでこれらはきっぱり決別できました。欲張ってちょっと背伸びした製品を買ってこれまで浪費を行ってきたので、そのあたりは厳に慎みたいと思います。

さて、最後に残った4種のうち、TRACER 9 GTとV-Strom 1050 XTは価格がほぼ同程度となりそうです。おそらく諸費用込みで150万弱。V-Stromは結構値下げされてることが多いのでTRACER 9 GTのほうが高くなるかな?

V-Strom 650 XTはコスパが最強です。100万円切ってますからね。ただIMUが載ってないのがすごく気になってます。トラコンは付いているものの、IMUが付いていない。IMUが付かないということはカーブ時の制御があんまりうまいこと働かないのではないか、かつ、単独事故でコケるのってカーブが多いのであって、そういったミスをテクノロジーで拾ってあげないと「死なないで家族のもとに帰る」というミッションに影響があるのでは、などというあたりがとても気になってます。他の車両と絡む事故のことは一旦置いといて(考慮しなくても良いとは言ってない)、単独事故を防ぐのはかなり重要だと思うんですよ。警視庁のサイトを見ると右直事故よりも多いですからね。

ではバイクの単独事故はどうやって起こるかというと、カーブを曲がりきれないとか、カーブでコケることがほとんどだと思うんですよね。YouTubeなどで事故映像を見てても単独事故は擁護できない馬鹿な運転をしているか(ウィリーして一回転とか)、カーブでコケてるかのほぼ2択。するってーと、カーブでの高度な制御が可能になるIMUはヒューマンエラー防止のためにぜひとも付けておきたいなと思うわけなんです。

IMUが必要となるとTRACER 900 GTも除外されるんですよね。TRACER 900 GTは安くてハイパフォーマンスで見た目も気に入ってるので有力候補なんですが…。悩ましい。

一方でもう一つ思うのは、特にアドベンチャーである必要も無いかなと思ってきてます。アドベンチャーが好ましいと思っていたのはパニアケースを付けてもかっこ悪くならない、タンデムシートがでかい(結構タンデムするから)という2つの理由だったんですが、よく考えたらこの2つの前提って別に無くてもいいかな、とも思ってきました。

パニアに関しては、リアボックスとリュックでかなりの荷物を運べるという点。タンデムシートに関しては、タンデムする頻度は結構あるものの、タンデムで長距離ツーリングすることはまず無いため、そこまでタンデム時の快適性は重視する要素でもないかなと思い直したという点。

するってーとどうなるかと言うと、NINJA 1000 SXが候補に上がってくるわけですわ。NINJA 1000 SX、値段を考えるとめちゃ高性能かつ多機能なんですよね。値段はおそらくV-Strom 1050 XT / TRACER 9 GT と同価格帯。YouTubeなどで動画を見ていてもすごく走っていて気持ち良さそう。

ただNINJA 1000 SXで一番気になってるところは、シートが低すぎるという点。長距離で膝が辛そう。390 Dukeの一番辛いところがこの「膝が曲がりすぎて辛い」なので、シートが低いというのは個人的には避けたい。あと、乗車ポジションもちょっときつい。ツアラーだからセパハンでも姿勢はそんなにきつくないという意見が多いように感じるけど、いや、自分には結構キツかった。慣れれば違うのかも知れんけどね。

というあたりで悩んでます。今のとこ。