加湿器はスチーム式を買え

というのを思ったので書く。

この記事の続きと言えるかもしれない。6年前にハイブリッド式加湿器を買ったが、6年運用しての結論は「スチーム式が良い」だった。

超音波式はダメ

まずいかなる場合でも選んではいけないのは超音波式です。

加湿器のレジオネラに注意しましょう 大阪健康安全基盤研究所

超音波式加湿器は超音波で霧状にした水を室内に噴霧する仕組みの加湿器。ただ水を細かくして放出しているだけなので、気化されているわけではない。水は放出されたのち、洗濯物が乾くのと同じく室温で蒸発して水蒸気になる。

室温で水のタンクを放置しているので加湿器は基本的に菌が繁殖しやすい。このため、レジオネラ属菌が繁殖し、菌を含んだ水が噴霧されそこから感染、レジオネラ症の発症という健康被害が出ている。人も死んでいる。

ちゃんと洗ってメンテナンスすれば雑菌は繁殖しないはずであるが、菌は目に見えないので確認が困難であるし、「洗うのを忘れたら健康被害が発生しますよ」という商品を運用するのは私はリスクが高いと思う。だからおすすめしない。

その他にも純粋な水だけではなく水道水内のすべての成分を噴霧するので、場合によっては水道水内の成分(水垢のようなもの)が加湿器周辺に析出してしまうということもあるらしい。そこまでして超音波式を選ぶメリットは無いので全然おすすめできない。

気化式・ハイブリッド式

気化式やハイブリッド式というのは、ようするに濡れたタオルを内部で乾かすというプロセスを連続して行い続けるような仕組みになっている。濡れたタオルの代わりになる吸水性の素材にファンから送風を行い、連続して気化させつづける。この方法では蒸発していくのは水だけで、かつ水しぶきも発生しないので超音波式のデメリットは発生しない。

ハイブリッド式とは、送風ファンの前後に電熱線を配置し、温風を湿った素材に当て続けることで水の蒸発を加速する仕組みを備えたものである。洗濯物にドライヤーなどで温風を当て、早く乾かすのに似ている。

なぜハイブリッド式のようなものが作られたかというと、単純に室温の風を湿った素材に当て続けるだけでは大して加湿できないからだ。洗濯物の室内干しが大して乾かないのと同じ。

気化式の最大のメリットは低消費電力であるということだが、加湿速度が不足していると結局電熱線で温風を当てないといけない。すると、この時の単位電力あたりの加湿量は後述するスチーム式とほぼ同じになる。

ちなみに空気清浄機やエアコンに付随する加湿器も気化式・ハイブリッド式とほぼ同等の仕組みを備えていると考えてよい。基本原理は同じ。

スチーム式

タンクの水を少しずつ沸騰させて加湿する。鍋ややかんでお湯を沸かして水蒸気を発生させるのに等しい。

加湿能力が高く、製品自体も安価で、さらにメンテナンスが容易であるというメリットが挙げられる。半面、電気代が高くなる。

何を選ぶべきか?

これまでに述べたメリットとデメリットを考慮すると、ハイブリッド式がベストではないかと思うだろう。思わない?私は思った。だから6年前にハイブリッド式の加湿器を買った。

が、これは間違いだった。ハイブリッド式はメンテナンスが非常に苦痛だ。

ボディ内部を連続して空気が通過し、かつ加湿されているためカビの温床となっている。加湿器からカビの胞子をまき散らしているようなものだ。1~2シーズンでこのくらいの汚さとなる。

これを掃除するには全部ばらして分解清掃するしかない。

でも普通の人は加湿器を分解して清掃しようなんて思わないだろう。だから、1~2シーズン使ったらあとは捨てて買い替えるしかない。これは非常にもったいないし、コストも高くつく。

一方で、スチーム式は非常に構造が単純だ。これまで5~6個のスチーム式加湿器を運用してきたが、すべての製品で加湿に必要なパーツのほぼすべてが蓋をあけると露出している。タンクと蒸発皿しかないので当然である。

スチーム式のメンテナンスは、水道水のカルシウム分が析出してきたらそれを拭いて取る、取れなくなったらクエン酸を入れて運転し、そのあとで洗浄する。これだけだ。(クエン酸を入れるのがNGな製品もあるので、詳しくは取扱説明書を参照)高級な製品でも、ごく小さな送風ファンが追加されてる程度なので、エアフィルタのホコリを落とす程度、数秒で済む。

また、構造が単純なので製品本体価格も安いものが多い。

でもね、でもね。スチーム式の製品が良いですよと言っても、皆さん買い渋ることが多いんですよ、経験上。それは電気代です。

スチーム式加湿器の電気代

気化式の加湿器の電気代は、大体~20W程度の商品が多いです。一方でスチーム式加湿器は200~300Wの製品が多い。桁が違う。スチーム式一台で気化式10台が運用できる計算ですよ、と言われるとめちゃくちゃ電気代がかかるような感覚に陥るでしょう。

しかしそれは半分誤りです。なぜかというと、電力会社から請求するのは電力に対してではなく電力量に対してだからです。つまり、使っている時間を論じないと電気代の比較はできないのです。

では使っている時間はどうなるかというと、スチーム式加湿器のほうが圧倒的に短くなることが予想されます。何故かというとスチーム式加湿器のほうが圧倒的に加湿能力が高いからです[1]。その部屋で必要としている水分量を気化するのにかかった電気代で比較しなくては意味がありません。

というわけで比較しましょう。比較は結構簡単です。

加湿器にかかる電気代とは、「水の気化熱と同等の熱量を得るために必要な電力」から導き出されます。

結局、水を気化するためには潜熱(気化熱)分を外部から与えられる必要があるのです。これは物理なので、どんな製品でもこの前提を覆すことは不可能です。熱を与えなければ水は気化しないのです。

え、でも気化式は空気を湿った素材に当てて水を気化させるんでしょ?熱与えてねぇじゃん、と思われるかもしれませんが、その場合は空気中の熱を奪って気化しています。なのでヒーターを持たない気化式の加湿器の吐出口から出てくる空気は室温よりもやや冷たいです。冷風扇と同じ原理ですね。

言い換えると、気化式は使えば使うほど室温を下げてしまうので、加湿量を維持し続けるには室温を温め続けなければなりません(加湿器を運用するのは普通、冬ですからね)。言い換えるならば、水を気化させるための熱源を加湿器内部に持たないだけであって、外部から室内を加熱する暖房設備は必要なのです。加熱しなければ室温は下がり相対湿度は上がっていくので単位時間当たりの加湿量はどんどん下がっていきます。また、実際の部屋は人間が住むわけですから、快適な室温を維持するためにも暖房はつけ続ける必要があります。

つまり、「1日に必要な加湿量を得るために必要な電気代」が加湿器の電気代にかかわる一番大きなファクターです。

以上を踏まえた上で、それを計算しましょう。

しました。これです。じゃん。

色々と前提を置いています。

まず、室温は25℃であったとします。電気代は一律23円/kWhだったとします。一日に必要な加湿量は1Lだったとします。これは個人的な経験からは独り暮らしサイズの部屋では明らかに過大で、一軒家だとちょうどいいか、やや足りないといった印象です。時期と外気の乾燥具合にもよるので何とも言えませんが。まあ、1L(1kg)とします。

気化式、ハイブリッド式を運用する部屋の暖房は普通のエアコンだったとします。エアコンのCOP(効率)は5だったとします。投入した電気エネルギーの5倍の熱をヒートポンプから得て室内に放出します。ハイブリッド式では加湿量の半分を電熱線からの熱で気化させるものとします。

気化式、ハイブリッド式は20Wのモーターを有し、1日に4時間運転して1.84円の電気代が発生するものとします。ちなみにモーターが消費した電力は最終的には全部熱になるのでその分を気化熱から引くべきかとも思いましたが、面倒くさいので止めました。多分大差ないですが、これを考慮した場合、ハイブリッド式と気化式の電気代は今回の計算結果よりもさらにちょっと安くなるはずです。

結果、なんやかんや計算して、月間の電気代は

スチーム式: 433円
ハイブリッド式: 291円
気化式の場合: 149円

となりました。

「嘘だっ!!!!!!!!パナソニックのホームページには気化式のひと月の電気代が53円って書いてた!!!!!!!!」と、鬼に故郷を滅ぼされたかのごとくお怒りになる方もいらっしゃると思いますが、それは色々置いている前提が違うからです。一番大きな違いは、前述したとおり気化式加湿器では室温を奪っているのでその分余計に暖房器具が頑張って消費電力が増しているという分を考慮していない点だと思われます。

「嘘だっ!!!!!!!!スチーム式使ってたけど電気代はこんなもんじゃすまなかった!千円単位で増えてた!!!!!!!!」と、親兄弟を連続殺人鬼に皆殺しにされたかのごとくお怒りになる方もいらっしゃると思いますが、それはおそらく加湿しすぎだったか、もしくは部屋の気密性が悪すぎて加湿が追い付かなかったからでしょう。特にスチーム式の加湿器の連続運転はおすすめしません。あまり加湿すると部屋がカビます。設定湿度で止まる製品にするか、もしくは湿度計を見てマニュアルで入り切りするとか、タイマーと併用するなどしましょう。

ともかく、正しく使えばスチーム式であっても気化式とそこまで大差あるわけではないというのが分かると思います。スチーム式は気化式の倍以上の金額ではありますが、結局は数百円の差ですからね。大した事なくね?と思います。

それに、加えて、ですよ。前述したようにハイブリッド式や気化式の加湿器では内部に発生したカビは分解掃除するしかないという欠点があります。分解掃除する技術が無ければ買い替えるしかありません。一方でスチーム式の加湿器は基本的に壊れやすい部分が無く、メンテナンスも容易なのでかなり長期間運用できます。

それをひっくるめて、せいぜい月間数百円、1シーズンで1000円弱の運用コストの差額で、スチーム式に見合うメリットがハイブリッド式や気化式にありますか?カビ臭くなって掃除できずに買い換えたらその時点で消費電力分の金額なんて吹っ飛びますよ。

それでももしハイブリッド式や気化式にメリットがあると思うならば買えばいいと思います。運用は個々の家庭で違ってくるでしょうから一概には言えません。しかしそれでも、第一選択肢としてスチーム式を考慮するのが良いのではないか、と私は言い切って良いと(少なくとも今は)考えています。

ハードオフでスチーム式加湿器を買え

さらによりお勧めなのが、ハードオフとかセカンドストリート、ブックオフなどの中古家電製品を取り扱う店でスチーム式加湿器を買うことです。しつこく言っているようにスチーム式加湿器はメンテナンスしやすく、製品寿命も長いです。なので中古品ではずれを引くということが少ないです。逆にハイブリッド式や気化式の加湿器を中古で買うのはあまりお勧めしません。内部がカビてるかもしれないからです。

中古のスチーム式加湿器は、数店舗回れば高確率で見つかりますし、値段も2000円前後、安くて1000円程度のものが結構みつかります。それらを買って運用するのが結果的に一番安く済むと思います。

まとめ

要するにハードオフ最強ってことですよ。