「NASは付けっぱなしだから電気代かかるし、壊れるし、クラウドのほうがやすいのでは?」

「YouTubeでNASについての動画を見て良いなと思った。しかしよく考えるとNASは付けっぱなしだから電気代かかるし、壊れるし、クラウドのほうが安いと思うのは俺だけ?」という雑なツイートを目にしたのでオタクらしく早口で解説していく。

これは単に愚痴みたいなアレですが、「安いと思うのは俺だけ?」と思うなら計算できる材料はネット上に転がってるんだから計算すりゃいいじゃんと思うんだよな。定期的にこういうの見るんだよ。疑問に思ったら調べりゃいいのに。

NASは電源付けっぱなしだから電気代が高い?

待機電力は〜10W程度、アクティブ時でも〜20W程度の製品が多いと思います。HDDの動作電力は動作時数W、待機時1W未満です。電気代を正確に計算するには多くの前提が必要だが、仮に1kW=20円として平均消費電力15Wだったとすると月間10.8kWで200円程度です。この額は私は特に高いと思いません。

NASは壊れる?

クラウドサービスに置いてもハードウェア故障とリプレースは定期的に発生するわけで、そのコストは利用者が支払っています。クラウドサービスならばハードウェアのリプレース費用を払わなくていいという議論は疑問です。

データ消失リスクに対しても、クラウドサービスでデータが飛んでしまった事例は定期的に目にしますし、昨今ではAIの誤判定により規約違反と認識された写真その他のファイルが消されたりするというパターンも見受けられます。古きGeocitiesなんかがそうですが、サービス終了によって資産が失われるリスクもあります。要するにクラウドだったら絶対にデータが消えないわけではないです。

クラウドサービスの方が安い?

そもそもサービスの利用額とハードウェアの購入費用を比較することが困難で、具体的な利用シーンを想定しないと高いとか安いとか論じることは出来ません。

一応試算してみましょうか。たとえばDropboxだと3TBが月2千円です。年間2.4万円。NAS本体が2万円、3TBのHDD1万円で2つあわせてRAID1構成にしたとしましょう。すると、NASの製品寿命がおよそ1.6年以上ならばNASの方が安いです。普通はNASとHDDの寿命が1.6年しかないなどということはなくもっと長いですから、NASのほうが安くなることは多いでしょう。しかしながら「2GB程度であればいい」という場合であればDropboxの無料プランで事足りるのでNASのほうがずっと高く付きます。

というか、おそらくNASを運用する利点は「安いから」ではないと思います。

NASの利点

  • 近代のNASはソフトウェアが充実しており、ファイルサーバー以外にもスマホアプリと連携して写真をデータベース化したり、メディアサーバーを構築したり、VPNを構築したり、監視カメラサーバー機能を有していたりと出来ることが多岐に渡ります。単純なストレージサービスのクラウドサービスと単純比較できません。
  • 既に述べたようにクラウドサービスだけでは絶対に消えてほしくないデータを安全に保管しておくことは不可能で、多層のバックアップが必要です。NASはその選択肢の一つです。
  • アクセス速度が違います。NASは物理的な位置も間にある回線速度もインターネットを経由するよりは近いし太いのでNASのほうが圧倒的に早いです。
  • NASはインターネットを経由しないのでネットワーク関連の問題に比較的強いです。よくあるのが、クラウドサービスを利用していてプロバイダの転送総量規制を受けるというやつですが、NASはその心配がありません。モバイルネットワーク回線しか持ってない場合も同様です。
  • 自分の要求する性能・機能を過不足無く実現しやすいです。(前述したようにあまりにも小規模な用途ではクラウドサービスのほうが楽だし安い)
  • 「低消費電力で常時起動していてsshログインできるマシン」を家の中にひとつ置いておくことが出来ます。これは分かる人にとってはめちゃ便利なことです
  • クラウドサービス事業者の都合による影響を受けません。具体的にはクラウドサービス自体の障害やクラッキングによる被害、アカウントの停止、事業者の都合によるファイル削除などです。規約を読めば分かりますが、クラウドサービス事業者はあなたの大事なデータが失われても大したことはしてくれません。
  • 履歴バックアップ(スナップショット、差分バックアップなどと言ったりもする。n日前の状態に戻すという機能、MacのTimeMachine的なもの)を構築できます。クラウドサービスで部分的に履歴バックアップに対応したもの(たとえば単一のファイル単位)はいくつかあります。この機能はヒューマンエラーによってファイルを削除してしまった場合の復旧対策としてはほぼ唯一ではないでしょうか

どんな人がNASを運用すると良いのか

私が思うに「NASが必要だな」と思ったときが導入のきっかけと思います。クラウドサービスでは容量が足りない、遅い、録画したテレビ番組を家の各部屋で見たい、なにかのミスで大事なファイルが消えてしまった、家庭内のネットワークで何かを構築したい、撮りためた写真や動画を管理したいなどなど。

NASが必要ない人というのは、例えば消えて困るファイルはスマホの中とスマホに紐付けられているGoogleやAppleのアカウントに付属する無料ストレージ(か、月額+数百円程度の追加ストレージ)で十分だという人などでしょうか。それで困ってない人がNASを導入してもあまり意味がなく、「高い金を払って導入したが使いこなせなかった」で終わると思います。

冒頭のようなツイートを書くような人もおそらくNASを購入しても幸せにならないパターンと思うので、多少割高でもクラウドサービスを使ったほうが良いかもしれません。