私がスーパー大好きな「さよならポニーテール」の歌詞の素晴らしさについて解説する

書こう書こうとおもってて書かなかったので書く。

さよならポニーテール

というグループ名の人たちが居る。メンバーは9人?だったかな?メディアには一切登場せず詳細は謎、SNS等を中心に活動とある。

ジャケットは大抵可愛らしいイラスト。下記は初のベスト盤なので、聞きたい人はここから買うのが良いと思う。

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おっさんの心に響く歌詞

私はずっと90年代(パンク)ロックバンドが大好きで、ずっとそればかり聞いてきた。正直、さよならポニーテールにハマるとは思わなかった。一体何が良いのだろうか。私は色々考えたが、曲、歌、声、歌詞、どれも優れているが特に歌詞が良いから私はハマったんじゃないかな?と思った。

で、どの曲のどのフレーズが良いのか、どの歌詞がいいのかというのを細かく説明していきたい。

ナタリー

個人的にはこれが「さよならポニーテール」を代表する曲と言っていいんではないかな、と思う。ちなみにベスト盤1枚めの1曲めは「新世界交響楽」、2曲めは「ナタリー」なのでメンバーもこの辺りが代表をする曲と考えていることがなんとなく読み取れる。

ナタリーのPVはポプテピピックで一躍有名になったAC部が担当しているとのこと。ただしナタリーのPVをAC部が作成したのはそれよりもずっと前であった。まだそこまで知名度がなかったAC部に依頼したというセンスはとても良いと思う。なんか「ずっと前から知ってました」自慢みたいで嫌なんだけど、しかし本当のことなので書いておくと、私もポプテピピック以前からAC部の存在は知っていた。なんだったかな…。確か西友のネットCMを見て度肝を抜かれたんだよな。「未来はヤスイ」みたいなキャッチコピーのもので、しばらくYouTubeでも公式的にアップロードして見れていたんだけど、そのうち見れなくなってしまった。

その後、大友克洋氏、森本晃司氏などによって作られた短編アニメーションのSHORT PEACEの一部として「SHORT PEACE 月極蘭子のいちばん長い日」というゲームが作られた。これはキャラクターデザインがコザキユースケ氏、アニメーションの一部をAC部が担当したもので、未だにやりたいと思っているがプレイステーション3なるマシーンが私の家にはないし、最後にやったプレイステーションはねずみ色の地味なやつだし、買う気力も無いので諦めている。家にあっても邪魔だし…。ちなみにコザキユースケ氏もインターネットの黎明期から異彩を放っていたイラストレーターの一人で、私はしょっちゅうコザキ氏のWebサイトにあるお絵かき掲示板に書き込んでいた思い出。

というかSHORT PEACEにAC部が参加しているというのは事実な訳で、すごいよなー。欲を言えばPS3をやらないような層にも見せて欲しかった…。

という感じでどんどん話が逸れていったのでもとに戻す。ナタリーですね。

ナタリーはもう最初に始まるサビで良さが絶頂に達している。聞いた瞬間に心を掴まれる曲だ。その最初のフレーズは下記のようになっている。

ナタリー 風が大人のページめくり
いつか僕らの自由時間が終わる日まで
ナタリー

さよならポニーテール 「ナタリー」

ここで注目したいのは 自由時間 というフレーズで、これはたった4文字で小学、中学時代の強烈な懐かしい記憶を呼び起こすマジックワードだと思うんですよね。小学校の時、「特に何をしても構わない時間」を「自由時間」と称してましたよね。私はこの曲を聞くまでそんな言葉があったこと自体忘れてました。このチョイスは凄まじい。普通に飯食ってて生きててもこういう発想は絶対に出来ないと思う。

続く、

光散らばった街で
未来はまだ遠い気がして
ぼくらは今日を大袈裟に
生きることに夢中だったよ

さよならポニーテール 「ナタリー」

これも学生時代、あるいは幼少期を強く想起させるんですよね。歌詞全体を通して時制が過去であるというだけで明確には語られてないのですが、誰しもが小さい頃に体験した最大公約数みたいなのを直接的にではなく間接的に、しかし誰もが分かる形でガッチリ掴んでるんです。

子供の頃って1日1日が凄く長くて、1日も長くて、大人になることなんて遠く先の話だと思ってましたよね。非常に充実していた。「子供のときの1日ってめちゃ長かったよねー」を詩的に表現する上で、「未来はまだ遠い気がした」「今日を大げさに生きることに夢中だった」というそれぞれの一文はとても秀逸だと思います。

ナタリー
きみに恋した季節は夢
奔放に笑って傷付いて

さよならポニーテール 「ナタリー」

冒頭に続いて繰り返される2回めのサビがここに来るわけですが、ここで初めて恋という言葉が出てきます。この歌詞全体を通して伝わってくるのは幼少期の頃の懐かしい記憶、郷愁、そういったもので全体的には恋の歌というわけではないです。しかしながらサビの一節に「ナタリー」という女性名と共に恋という言葉を配置し、かつタイトルも「ナタリー」であることから、恋が主題であると考えるのが普通だと思います。しかしながら全体的には恋について語っているのはここだけ。

これはつまり、子供の頃の恋、つまり初恋というのはその恋心自体もそうなのですが、所謂思い出補正みたいなもので、そこ恋をしていた時期に存在していた学校、先生、友達、部活、遊んだ記憶、勉強、季節の移ろい、匂い、そういった諸々とセットで語られるからこそ初恋というのは尊くなるのであって、恋心自体で一個曲が仕上がるようになるまでの複雑な感情が生じるのってもうちょっと大人になってからだと思うんですよね。

と、解説するとそうかーと思われるかも知れませんが、大人になってから歌詞を考えてしまうとどうしても大人の発想になりがちです。子供の頃に存在していたはずの感情、記憶をよくそこまで保ち続けることができるなと思いますね。

更に言えば恋をした事自体が夢のようであり、その上で笑ったりしたことも傷ついたことも一緒に一つの思い出であるという表現もこれ非常に的確で、短い言葉でよくぞそこまで表現できるなと関心するばかりです。

その後も印象深い歌詞が続くのですが、ちょっとこの調子で解説していくと終わらないので止めます。

メッセージ

続いてはメッセージという曲。これも個人的には名曲であると思うのですが、しっかりとベスト盤にも収録されていました。

これについては以前にもその素晴らしさを解説したのですが、もう一度書いてみます。

私がすごいと思ったのは下記。

あなたを探し街を歩けば
まるで違う場所 全てが変わり
生き残った残酷さすら
あなたとならばきっと
乗り越えられたのに

j-lyric

この曲は早くに(たぶん)夫を亡くした女性の歌です。
結論を先に言うと、本当に大切な人を亡くした経験が無いとこういう歌詞って出てこないと思うんですよね。なぜそのように思うかと言うと、自分の経験とよくかぶるからです。

まず、

あなたを探し街を歩けば
まるで違う場所 全てが変わり

という箇所ですが、大事な人を失うとそもそもその事実を受け入れられないんですよね、人間って。だから、死んでしまったので街に探しに出ても当然出会うわけは無いんだけど、もしかしたら出会えるかも知れない、いつものように家に帰って着てくれるかも知れない。電話をすれば出てくれるかも知れない。分かってはいるけどそのように考えてしまうんです。

で、そのような気持ちで街を歩けばどうなります?死んでしまった夫と一緒に行ったような場所を自然と訪れてしまいますよね。もしかしたらここに居るかも知れないと。そうすると気づくわけです。過去訪れたはずの場所の記憶は常に二人であったと。二人で来ていて必ず視界には夫が入っていた。しかしながら現在の視界はすっかりと変わってしまっていて、あるはずだった大きな存在が抜け落ち、寂しさに打ちのめされるわけです。その結果、このように思います。

生き残った残酷さすら

生き残ったのは残酷であると。

そして続く表現が非常に秀逸です。

生き残った残酷さすら
あなたとならばきっと
乗り越えられたのに

この一節には矛盾があるんです。まず、「あなたとならば乗り越えられたのに」と思う悲しみの対象は「あなた」が死んだことそのものであって、そもそも「あなた」が死んでなくて一緒だったならば乗り越えるべき悲しみも存在しないんですよね。そのような矛盾が生じている理由は前節から続いている通り、「あなた」が死んでしまったというのが信じられないからであり、であるからこそ、「あなた」とならば乗り越えられたという、矛盾した前提を置いた仮定で語ってしまうのでしょう。

こういう一つ一つも、少なくとも実体験が無いと気づかないことだと思うんですよね。「ナタリー」と同じく、説明されればああそうか、そうだね。で終わってしまうのですが。

で、経験があるだけでもおそらく駄目で、こういった表現はやっぱり普通の生活してて普通の感覚で人生を過ごしていたら絶対に出来ないと思うんですよ。日頃から深く物事を追求して考えていて、その根源にある感情を難しい言葉を使わず、平易な言葉で最大限表現するってこれはもうやはり才能なんでしょうね。やろうと思ってできることだとは思えないです。

まるで映画のように

これは残念ながらベスト盤には収録されませんでした。残念。

「来るべき世界」に収録されています。

「来るべき世界」自体がベスト盤である「ROM」のちょっと前に発売されています。かつ、「来るべき世界」で目立つのは6曲目の「夜間飛行」という曲です。「まるで映画のように」はその次の7曲目です。個人的には歌詞に着目すると「まるで映画のように」の方が良く出来ていると思うのですが、しかし「夜間飛行」も曲と歌詞が良くマッチしていてベストとしてピックアップされるのに相応しい曲であるのは異論はないです。ただ、直近のアルバムから6曲目と7曲目を二つ持ってくるのが良いかどうかと言うと非常に難しいところで、私が曲を選ぶ立場だったとしても「夜間飛行」をどちらかというと選択するかなと思います。

そういう甲乙つけがたい曲ではあるのですが、特に今回は歌詞に注目しているので「まるで映画のように」について言及します。

余談ですが、アルバム「来るべき世界」の「空飛ぶ子熊、巡礼ス」のPVはTwitterでも度々目にする山田全自動氏が手がけています。

山田全自動氏は「80年代の古いテレビ番組やCMっぽい」映像を作るのが凄まじく上手でこれは興味が無くても一見する価値はあります。すごいです。VHS3倍録画していたころの記憶が走馬灯のようにフラッシュバックします。前述のAC部といい、センスが神がかっていると思いますね。ただいずれにしても一貫しているのは「懐かしさ」への純粋な追求であって、探したその先にAC部なり山田全自動氏が見つかったと言うだけで流行を追ってるとか言うわけでは決して無いんですよね。このあたり、ポリシーが見え隠れするようで個人的には非常に好感が持てます。

まーた話が逸れました。

「まるで映画のように」で私が魂を揺さぶられたフレーズがここです。

かつての都市に
木枯らしが吹いて
栄華を極めたシンボルタワー
眠るようにライト消し
きみはただ見ていたんだ

さよならポニーテール 「まるで映画のように」

かつての都市に木枯らしが吹き、栄華を極めたシンボルタワーが眠るように沈黙しているのを見つめている…。この世界観というかストーリー性、すばらしくないですか?私が例えば小説を書いていて同じ情景を説明しようとしたら、1000文字以上はゆうにかかるとおもう。

また脇道にそれますがブログで書いてなかった気がするので書きます。「猫の校舎」という夢の内容をベースにした小説を書いたので今すぐ読んでください。

猫の校舎 note

読みましたか?ちゃんと読んでくださいね?

さて、「ナタリー」でも「メッセージ」でもそうでしたが際立つのはやはり短い文章で情景を説明しようとする類稀なる才能だと思いますね。そもそも小説と歌詞って正反対の部分がちょっとあると私は思ってるんですよね。小説は字数の制約は普通ないですよね。しかしながら歌詞はあんまり長いと駄目なんでなるべく短く、かつ、韻を踏むようにメロディに合うようにと制約がいろいろあるわけです。つまり歌詞は必然的に文字数に対しての情報量を最大化させなければならないという制約が存在し、さらにそのためにはあらゆる人が普遍的に持っているであろう感情を想起させるようなキーワードを選んでいかなくてはならないわけで、だから必然的にエモくなるわけですよね。

特に私がここで強調したいのは 「栄華を極めたシンボルタワー」 、この一文です。言葉の選択が神がかっていると思いますね。最初私はこの曲を特に気にせず流して聞いて、特に何か思ったわけでもなく、2回めに聞いてこの歌詞に気づいた時に誇張なしに本当に鳥肌が立ちましたからね。「栄華を極めたシンボルタワー」、文字通りこの一文がこの曲全体の印象を決定的に支配していると思います。

続いて、

歓喜の声は遠ざかり
過去は急速に色褪せていく
そして群衆は濁流のように
盲目の大きなうねりになり
早回しの時計の針は
誰の涙も覚えちゃいない

さよならポニーテール 「まるで映画のように」

ここも素晴らしい言葉の選択ですね…。「群衆は濁流のように 盲目の大きなうねりになり」。凄くないですか?かつて栄華を極めた大都市、きらびやかなシンボルタワー、そして人々が放つ歓喜の声。しかしそれは過去のものとなり、いまや群衆は行くあてもなく右往左往して濁流のように流れていく。

さらには

そしてどんな偉大な出来事も
歴史の教科書たった一行
早回しの時計の針が
無口に進んでも紡がれていく
そんな思いも確かにあるんだ

さよならポニーテール 「まるで映画のように」

という諸行無常。栄光は忘れ去られ今や歴史の教科書にたった一行記されるのみになってしまった。そのやるせなさ、どうすることもなく見つめていることしか出来なかった世界の趨勢。そうして人々が忘れ去った時代があり、それがあっという間に過ぎ去ったとしても、それらは人々によって紡がれていくような気がする。と私は読みました。

どうです?この多くを語らずともその全体像が如実に現れている表現力。私は本当にこの歌詞だけから5〜6万字くらいの小説を書けると思います。いや、書こうかな、本当に。と思えるほど強いインスピレーションを生じさせるんですよね。これすごいですよ。すごいとしか言いようがない。

例えるならば1GBくらいあるファイルを圧縮しまくって200KBくらいまで縮め、それを頭の中に押し込んでるような、そんな感じです。

付け加えると、この曲は歌詞だけを見ると重々しい感じに見えるのですが曲調はカントリー風で明るく、そのギャップも個人的にはとても良いと思いますね。

その他

ここでは紹介しきれなかったですが、その他に私が印象深い曲としては

  • 壁をぶちこわせ!
  • ぼくらの季節
  • きみはともだち
  • 新世界交響楽
  • さよなら夏の少年

あたりだろうか。見逃してるかも知れないけど。

ついでに他のアーティストについても私が記憶に残っているものを挙げていくと、

  • THE MAD CAPSULE MARLETS 「HUMANITY」
  • あぶらだこ 「象の背」
  • あぶらだこ 「翌日」
  • くるり 「ピアノガール」
  • くるり 「カレーの歌」
  • くるり 「ランチ」
  • popcatcher 「Wait Wait Wait」
  • popcatcher 「Bye to the memory of TAMMY」
  • popcatcher 「Nothin'」
  • HUSKING BEE 「欠けボタンの浜」

あたりの歌詞が記憶に残ってる気がする。この辺についても気力があれば紹介したい。

好きな曲は沢山あるけど歌詞に着目するとあんまり無いな…。