【質問#142】エンジニアとしてのキャリアパスと転職について

質問・悩み相談の回答です。

質問

初めまして。
以前からブログは拝見させていただいておりましたが、今回初めて相談を投稿させていただきます。

当方、SIerに新卒入社し5年目となります。
おそらく同じ悩みの方は多いと思いますが、エンジニア志望にも関わらず社内ではマネジメント系のキャリアパスしか見えてこず、また普段行う業務もマネジメント寄りになってきているため、転職を検討しております。
つきまして、SIerからエンジニア職で転職をしたwithpop様に悩みの相談をさせてください。
(過去の記事を拝見する限り上記のような転職をされていると思いますが、認識違いあればご容赦ください。)

自分の直感では転職をしたい気持ちがありますが、理性では現職に留まったほうがよいのでは?と思い考えが堂々巡りしております。

直近ではエンジニア志望ではありますが、一生エンジニアでいると決めているわけではなく、将来はマネジメントを志望するかもしれません。
理想だけを語れば、現職でエンジニアとして経験を積み、将来マネジメントに舵を切るかどうか判断できればよいのですが、実際に現職に留まればエンジニアとして経験が浅いままにマネジメントのキャリアを積むことになると思われます。
自分の考えでは、マネジメントを担当するにしてもエンジニアの経験は重要であると思うため、上記のようなキャリアの積み方に疑問があります。
しかし、現在所属している会社はそれなりに規模が大きく、過程はともかく将来的に現職でマネジメントをするのは悪くないのでは?という考えもあります。

先日、転職エージェントと面談をして紹介された会社について調べてみると、現在所属している会社よりも大幅に規模は小さい会社でした。
企業規模だけで判断するのは誤っているとは思うのですが、やはり安定性は現職のほうがあるのかな、という考えもちらついてしまいます。
一方で妻子が居るわけでもないのに今から安定性を気にするのか?という考えもあります。

考え込んでいるうちに、そもそも自分は本当にエンジニアになりたいのか分からなくなってきます。
思い返すとソースコードを書いているときは楽しかった記憶もありますが、同時に人の書いた秘伝のタレのようなソースコードを解析しながら、もうこんな思いをしたくないと思った辛い記憶もあります。
プライベートを削ってコーディングをしているわけでもない自分が、現役バリバリのエンジニア達に混ざっていけるのかと。
上記のような考えが堂々巡りしているうち、2年弱ほど経過してしまいました。

スキルに自信がない自分は、(あえて悪い言い方をすれば)ストレスを感じながら現職にしがみついたほうがいいのでしょうか。
それとも、未知のストレスやリスクを負ってでも転職するべきなのでしょうか。

我ながらウジウジした長文の相談となってしまいました。。。
自分の人生を決めるのは自分ではありますが、上司でも転職エージェントでもない第三者の意見を聞いてみたく投稿させていただきます。
(我ながらウジウジしている自覚もあり)厳しいご意見でも構いませんので、ご回答いただければ幸いです。

回答

これはIT系に居たら多くの人が経験する悩みかと思います。私自身、未だに悩み続けています。

すこしだけ話が逸れますが、一つ確実に言えるのは、この業界で一人で戦って行くためには有名人になるしかないということです。何かの分野ですごく有名になり、自分が自分であることに対して付加価値を付けて仕事を取ってきたり、良い待遇で企業からオファーを受けるしか、一人だけで方法はないです。「有名人」というと、若干名前だけ売れてて中身が伴ってない感があるかもしれないですが、ITの分野では中身もそれなりに伴っていなければ、声だけでかくてもなかなか有名人になれないでしょう。(たまに、本当に声だけでかくて有名になってるんじゃないかと思ってしまう人もぶっちゃけ居ますが…。でも本当にそうかは実際に一緒に仕事をしてみないと多分わかんないんですよね)

私も短期間ではありましたがフリーランスをしていた経験等々もあり、それ以前の経験も含め、よく思うのは、有名ではない我々一般ピープルエンジニアはある程度数を揃えないと大きな仕事を成し遂げられないという当たり前のことです。そうですよね?リーナス・トーバルズだってLinuxカーネルを全部自分で書いてメンテしてるわけじゃないし、「私は他人の業績を自分のものにするのが上手い」みたいなことを言ってました。

日常的な感覚からいっても一人で実装できるコード量も一人で獲得できる案件も一人でまとめられる仕様もたかが知れてる、というのは誰の目にも明らかだと思います。だから、人はチームで働かなければ仕事は出来ないんです。

ともかく、大前提が仕事をするにはチームが必要ということです。

そしてチームの中ではそれぞれに役割が必要です。ホモジーニアスなチームというのは少なくとも私は聞いたことが無いです。

役割としては、

  • 仕事を取ってくる人
  • 取ってきた仕事を取りまとめる人
  • 取りまとめたものを実際に作る人
  • 作ったものの品質を確認する人

などが最低限あると思います。その他に、お金を取ってきたり管理したりする人や、労務全般を管理したりする人も必要です。

ここで大事なことは、だいたいどんな文化圏でも、

  • 仕事を取ってくる人
  • 取ってきた仕事を取りまとめる人

はどちらかというと年長者がそれをやることを期待されているということです。

これはなぜか?色々理由があると思いますが、

  • 取りまとめをして人に指示を下すのは年長者がやるほうが反発が少ない
  • 様々な知識を要求されるのである分野のスペシャリストよりは、色んな分野を知ってるゼネラリストの方が適している
  • 系統だった学問として確立されてない、経験や人脈等々に拠る所が大きい

という背景が考えられます。

一方で、「実際に作る人」「作ったものの品質を確認する人」などはその分野でのスペシャルな知識が必要とされるためにスペシャリストの方が向いているでしょう。

よく、「私はエンジニアとして一生食っていきたい、マネジメントなんてやりたくない」という人を目にします。今回の質問者の方もそうですね。ただ、私はこの言い方は非常に誤解を招くと思っております。なぜならば、エンジニアとはエンジニアリングをする人のことで、エンジニアリングという言葉は、人的リソースの配置やプロジェクトの計画法など、まさにソフトウェア工学(ソフトウェアエンジニアリング)の内容を包含しています。そしてそれらのことはこの界隈では「マネジメント」と呼びます。エンジニアリングはマネジメントを包含しています。

だから、正確には「プログラマとして食っていきたい」「フロントエンドエンジニアとして食っていきたい」「サーバサイドエンジニアとして食っていきたい」みたいに言うべきでしょう。でもそれらを全部ひっくるめたいい感じの言葉が無いのでみんな「エンジニアとして」、と言ってるんだと思いますが。「スペシャリスト」がもしかしたらそれに近いかも知れないですね。とりあえず本記事ではスペシャリスト、という言葉を使うことにします。

さて、働くためにはチームが必要で、チームの中にはゼネラリストが営業や取りまとめを行い、スペシャリストが実装やテストを行ったほうがよいと説明してきました。そして年齢を重ねた人のほうがゼネラリストとして活躍しやすいということも説明しました。

で、以上が正しいとするならば、年齢を重ねた人はゼネラリストとして営業や取りまとめの方に仕事を遷移させていくことは合理的だと思いませんか?合理的であるならば、年齢を重ねた人が私は永久にスペシャリストで居たいというのは、場合(所属している組織やチームの構成、考え方)によっては我侭であるとも言えるとも言えませんか?最適な人材配置に反して個人の意思を優先させるのですから。

それを我侭にさせないために、「ずっとスペシャリストで行けるキャリアパスもありますよ」という会社に転職したいんですよね。スペシャリストで居たい人は。

以上はよくよく考えてみれば当たり前のことだと思うのですが、考え込んでいると意外と忘れがちなのでまとめてみました。以上を踏まえて質問に解答していきます。

エンジニア志望にも関わらず社内ではマネジメント系のキャリアパスしか見えてこず、また普段行う業務もマネジメント寄りになってきているため、転職を検討しております

そういう方は沢山います。私もそうでした。自分が所属している会社のキャリアパスがマネジメント系しかなければ、現実的には転職するしかない(その理由は既に述べた通り)という点も同意です。

過去の記事を拝見する限り上記のような転職をされていると思いますが、認識違いあればご容赦ください

これに関しては、私自身も半分悩みつつ転職しているという感じです。多分答えが出るのはずっと後になってからだと思います。ただ、転職した時はどちらに転ぼうと今の会社にいるよりは転職したほうが良いとおもったのでそうしました。

直近ではエンジニア志望ではありますが、一生エンジニアでいると決めているわけではなく、将来はマネジメントを志望するかもしれません

人間の考えは変わります。20代のうちは一生スペシャリストで居たいと思っていても、歳を取ってからマネジメントをやりたいと思う人は私の周りやSNSを観測していてもよく目にします。そして、多くの組織ではそうなることを従業員に期待していると思います。

理想だけを語れば、現職でエンジニアとして経験を積み、将来マネジメントに舵を切るかどうか判断できればよいのですが、実際に現職に留まればエンジニアとして経験が浅いままにマネジメントのキャリアを積むことになると思われます。
自分の考えでは、マネジメントを担当するにしてもエンジニアの経験は重要であると思うため、上記のようなキャリアの積み方に疑問があります。

ということは今所属しておられる会社は上流工程がメインであるとか、実装は協力会社にお願いするとか外注するとかで、あまり技術的なスキルが身につかないということでしょうかね。

技術的な側面が弱いままにマネジメントのキャリアパスに突入するのが疑問、という点にも同意します。私も前職で技術面をあんまり知らない上司や客先を説得するのに苦労した経験が数多あり、相手を納得させるのに時間が取られてるって誰も幸せにならないよな、と思うことが多かったので。

先日、転職エージェントと面談をして紹介された会社について調べてみると、現在所属している会社よりも大幅に規模は小さい会社でした。
企業規模だけで判断するのは誤っているとは思うのですが、やはり安定性は現職のほうがあるのかな、という考えもちらついてしまいます。
一方で妻子が居るわけでもないのに今から安定性を気にするのか?という考えもあります。

このお悩みもよくわかります。

考え込んでいるうちに、そもそも自分は本当にエンジニアになりたいのか分からなくなってきます。
思い返すとソースコードを書いているときは楽しかった記憶もありますが、同時に人の書いた秘伝のタレのようなソースコードを解析しながら、もうこんな思いをしたくないと思った辛い記憶もあります。
プライベートを削ってコーディングをしているわけでもない自分が、現役バリバリのエンジニア達に混ざっていけるのかと。

このお悩みも非常によくわかります。特に若手は技術だけやってりゃ良いというポジションのひとが多いので、新しいことをどんどん覚えていくんですよね。そうすると年上である自分が相対的に劣ってるように思えてくる。ホットなキーワードを知っていてそれを触ったことがあるというのは目に見えてわかりやすい成果ですが、基礎を積んできたとか人脈があるとか経験豊富であるとかいう年長者の強みは可視化されにくいです。そういう理由もあるでしょう。

ただ、秘伝のタレみたいなコードを保守するのはどちらかというと特殊なケースなのでそんなに気にしなくても良いかなと思いますが。

プライベートを削ってバリバリコーディングしてる人もよく目に付きますし、時間をかけただけ成長するのも事実ですが、そういう人は声がでかかったりするのも世の常なので、それが平均値に近いという認識も危ないかな、とは思います。

ようするに、若手が脅威だと思うこと自体は慎重な方向に行動するために悪くない考えですが、必要以上に脅威と思う必要も無い、と個人的には思っています。

スキルに自信がない自分は、(あえて悪い言い方をすれば)ストレスを感じながら現職にしがみついたほうがいいのでしょうか。
それとも、未知のストレスやリスクを負ってでも転職するべきなのでしょうか。

これは私自身悩んでいると書きました。私自身でも答えが出ない問いなので、申し訳ありませんが他の人についてなんて答えを出せないです。

ただ、強いて言うとすれば、私ならば転職していると思います。つまり、私は転職したことを後悔していないと言い換えることもできます。

そう思った理由の一番大きなところは、会社と質問者様(あるいは私)の価値観のミスマッチです。

質問者様は(そして私もそうですが)マネジメントをやるにしても技術は身につけておきたいと思っています。しかしながら会社のキャリアパスはしっかりと技術を身に着けた後にマネジメントを勉強してくようにはなっていない。これはもう転職するに十分な理由かな、と個人的には思います。

それを阻む要因としては、「現職が安定しているから」というのがあります。質問者様の会社のことは分かりませんが、根拠がないもののそのお考えはおそらく正しいと思います。正しい、というのは現在得られる情報からそう判断するのが妥当という意味です。しかしながらその一方で、あのトヨタでさえ終身雇用は厳しいよぅ…とか言い始める時代なので、今後はしっかりとしたスキルを有して戦って行ける人材ではないと食っていけない格差社会になる可能性もあり、その可能性をどう評価するかというのは難しいところでしょう。

そして、何かを得るにはリスクが必要というのも事実です。転職したいというのはつまり今よりももっと良い人生を歩みたいという考えにほかならず、そしてそれは人生を左右する大きな行動なのでどうしてもリスクフリーというわけには行きません。つまり、行動すればリスクが伴うのはしょうがないし、とどまっていてもリスクかも知れない。

であれば、私ならば行動してみようかな、という気持ちになります。

…といろいろ書きましたが、おそらく質問者の方はここに私が書いたすべてのことを既に理解してらっしゃるようにも思います。転職に当たって考えるべき殆どの要素を考慮し、理解し、判断した上で、それでも意思決定が難しいということなのでしょう。特に質問者の方が優柔不断であるということでは決して無く、殆どの人がそうであるはずです。

こういう時はもう「えいやー」で行動するしか無いような気がしますね。偉人のエッセイや昔話みたいなものを見ていても、みんなあまり考えず要所要所で行動しているように思います。

過去の質問でも同様のことを何度か書いているのですが、とりあえず色んな会社を見て回るというのが良いのではないでしょうか。現在、すでにそうされているということでしたので、それを是非続けて頂ければ視野が広がり、決心がつくことと思います。こんまりさん風に言えば「ときめく」会社があるかどうかですかね。多少のリスクがあっても、この会社ならば入っても後悔しないな、と思う会社があれば決心がつくでしょう。逆に、悩みを抱えたまま「本当にこの会社で大丈夫だろうか…」という気持ちで転職してしまうと、良くないことが起こった時に後悔すると思います。