【エビ研】第4回 単に餌が足りてないのでは

過去の記事はこちら:

エビ研を結成しました
エビ研 〜10日目
エビ研〜もしかしたら最終回

概要

久しぶりの更新なので概要を。

ミナミヌマエビという陸封型、淡水の小型エビが居まして、これが水槽の中の見栄えの悪い苔(緑藻など)を食べてくれるのでアクアリウム界では重宝されています。体調も大きくて2~3cm程度と小さく、一生懸命に手を動かして水槽内の餌を食べる姿は可愛らしさもあります。

また、ミナミヌマエビは飼っていると容易に増えるエビであり、数十匹からスタートして一つの水槽で何百匹と増えたケースもネット上ではよく目にします。

ただ自分の環境ではどうやってもミナミヌマエビは増えず、1世代程度の繁殖で徐々に死滅していきます。この謎を解き明かし、エビを増やそうという趣旨で記事を書き始めました。

意外と研究が進んでない

前回までに別のエビ専用水槽を立ち上げて第1世代の繁殖までに成功したのですが、結局第1世代の稚エビも育たずに死滅してしまいました。それからその他のエビもポロポロと死滅し、結局水槽は撤去してました。水質はちゃんと定期的に測定していて管理していましたし、餌となる苔も大量に発生していたという状況でした。

そもそも、淡水アクアリウム(水草水槽)というのは世界的な人気がある趣味であるものの、意外と学術的な研究は無いんですよね。特に日本国内で見れる日本語の文献や情報は、個人の成功体験が秘伝のタレのように語り継がれているだけで、ちゃんと再現可能な形で形成されたノウハウは一部の企業の内部に秘匿されているように私は思います。

数年前からネット上のいろんなサイトを見てきましたが、少なくともネット上にまともな飼育情報はほぼ無いように思います。

では学術的な文献はどうかとGoogle Scholarなどでかなり前から検索してきていますが、ミナミヌマエビに関しては全般的な生活史の研究や、種の分布を調べているものが多く、水槽内での飼育に関連した研究はありませんでした。あまりにありふれた生物であり、かつビジネスとしてもそこまで金になる部分ではないからではないかと思います。

生活史としては以下あたり。

鹿児島県万之瀬川水系における淡水産エビ類の分布およびミナミヌマエビの生活史

「ミナミヌマエビには専用の餌は不要」?

で、私が非常に疑ってかかっているのは「ミナミヌマエビには専用の餌は不要」という情報です。

ネット上では「ミナミヌマエビは苔を食べているので専用の餌は不要」「食べ残しの餌を食べているので専用の餌は不要」などという情報があらゆるところで記述されています。

しかしながらその食料となる苔や食べ残しの餌が飼育しているエビの数に対して十分でなければ餌は必要なはずですが、それを測定すること無しにただ「不要」と断じているのはずっと疑問を持ってました。

また、

  • ある生物の餌が豊富なところにはその生物が増えるのは自然ではよく見かける光景
  • 苔が持っている栄養素だけでエビを維持できるのか
  • そもそもネット上の情報や一般的な飼育入門本で書かれている生体の給餌量は多すぎな傾向があり、餌の食べ残しが豊富なのでは

というあたりも餌不要論は間違いではという考えを補強しています。

さらに、これもよく見るのですが、「ミナミヌマエビは屋外では死なずに増える」という報告が多いこと。屋外

さらにさらに、私の経験上の話ですが、苔が繁栄している水槽にミナミヌマエビを数十匹投入すると、苔は2~3日で消えます。ということは明らかに 苔の発生量 < ミナミヌマエビが摂餌する苔の量 という関係が成り立ちます。満腹の生き物はそれ以上餌を食べなくなるのはごく普通の光景であってミナミヌマエビにもそれが当てはまると仮定すると、私のこれまでの環境での苔の発生量はミナミヌマエビの胃袋を満たすことができないということになります。

で、給餌量に関連した論文がないか検索したのですが、陸封型のエビの研究は見つかりませんでした。両側回遊性エビ(ヤマトヌマエビのように汽水域と淡水域を回遊するエビ)では下記の2件が見つかりました。

ヌマエビ科両側回遊性エビ類3種の幼生飼育にする飼育餌料および塩分の影響
淡水飼育条件下でのテナガエビ幼生の摂餌機会と生残の関係

この両側回遊性エビはゾエア期を挟んで成長するエビで、ミナミヌマエビに当てはめることは難しいのですが、気になる記載をひとつ見つけました。それは、後者の論文で

淡水で生活している甲殻類は高張浸透調節型であり(菊池1992),その調節にはエネルギーを必要とする(Pequeux1995)。淡水甲殻類は,イオン調節のためのエネルギー消費を少なくするために,体液の濃度を広塩性の種よりも少し下げる ことによって浸透イオン勾配を小さくし,イオンの流出や水の浸透を減少させている(菊池1992;Wheatly1993)。浸透調節に用いるエネルギーは餌から摂取し,好適塩分では浸透調節に用いるエネルギーが少ないが,それ以外の塩分ではエネルギーの大半を浸透調節に取られる(Cooper and Heinen1991)。
ヌマエビ科両側回遊性エビ類3種の幼生飼育にする飼育餌料および塩分の影響

と記述されていることです。「陸封型」のエビとはその名の通り、もともと海水中で生きていたエビが環境変動等によって陸に取り残され、淡水で生きれるよう適応した種でありますが、生きてるだけで浸透調節に多大なエネルギーを必要とするとは、お前も苦労してきたんやな…という気分になりました。というわけで益々「餌不要論」からは遠ざかったような気がします。

というわけで結論としては、今まで失敗していた理由は単に餌の不足だったのでは?という疑問に端を発し、

  • ミナミヌマエビはそれなりに多くの給餌量を必要とする
  • 慢性的にミナミヌマエビ以外の生体への給餌量が過多な水槽ではミナミヌマエビへも餌が行き渡り、多世代に渡って繁殖することがある
  • しかしながら適正な量の給餌をしている水槽ではミナミヌマエビへの給餌量は不足する傾向にある

という仮定が正しいかどうかを検証してみます。

今回の試み

最終的な目標は

  • ミナミヌマエビを多世代に渡って繁殖する再現可能な飼育方法を確立する

です。それを踏まえた上で、まずはミナミヌマエビの適正な給餌量を探ります。

といっても何をもって「適正な給餌量」を定義するかは難しいのですが…。本来であれば一番繁殖して数が増える量とか、一番寿命が伸びる量とかを定義したいのですが、それは計測自体が難しいので、とりあえず「半日かかって食べきる量」くらいを基準にしたいと思います。

現状

セットアップ直後にくらべるとかなり水草が茂ってきました。そろそろトリミングが必要です。ソイルでの水草水槽は簡単と聞いてましたが、本当に簡単ですね…。ぐいぐい水草が伸びていきます。

生体はミナミヌマエビ50匹、ファイヤーテトラ5匹、カージナルテトラ10匹が居ます。検証という目的上では独立してエビを飼育すべきですが、色々考えた結果そこまで手間をかけてられないのでゆるくやっていこうと思います。

この段階で餌を投入していっていますが、自分が想像していた量の5~6倍の量を投入してもエビは餌を12H程度で食べ尽くしています。ろ過は完全に立ち上がってるので、亜硝酸濃度はゼロ、硝酸塩は20mg/L以下を維持しています。エビ投入後1週間くらいの段階で死んだエビは今の所ゼロ。苔もエビによって食い尽くされており、ほとんど発生していません。この調子で様子を見ていきたいと思います。
それなりに最適と思われる量が判明したら重量を測り、写真でも載せたいと思います。