マナー講師が嫌いな理由

そもそも「マナー」ってなんなんだっけ?というのを調べてみると、態度、礼儀、礼儀作法などと書いてある。

しかしながら日本における「マナー」とは礼儀「作法」に極端に偏っており、手段が目的化して複雑な「作法」を知っていることによってマウントを取り合うとか、その「作法」を知っているか否かくらいは新社会人には教え込んどけ、的な言論を流して世の中にマナー講師、ビジネスマナー講座的なビジネスチャンスを発生させようという流れに繋がっていて、本来気持ちよく仕事をできるか否かは完全におろそかにされてる辺りが私は地獄であるよな、と思う。

私はまずビジネスシーンや人とのコミュニケーションにおいて大事なのは「態度」「礼儀」であって、「作法」はその次であると思うんだよね。にもかかわらず、作法さえ守ってれば万事オッケーみたいになってない?そうじゃない?エレベーターの乗る位置とかソファの座る位置とか完璧に覚えてるけどいつもブスっとしてて横柄な態度を取る人と、いつもニコニコしてて謙虚だけどエレベーターとかドアノックとか作法全然わかりません、みたいな人のどちらに好印象を抱くかというと後者じゃない?お辞儀の角度、ノックの回数、エレベータの立ち位置でその人の印象って決まらなくない?

だったから、「マナー」を守ることによって本来達成したかったことを教えるならば「自分の機嫌のとり方を覚えましょう」「人前でブスっとした顔をするのはやめましょう」「芸人みたいに相手の欠点をあげつらって笑いを取れるのはせいぜい高校生くらいまでなんでいい加減止めましょう」とかいうのを教えるべきじゃない?お辞儀の角度とか誰が得するの?と個人的には思うんですよ。

面接でノックは3回以上だとか4回以上だとか、いや2回が正義だとか議論してる暇があったら堂々として自信に満ちた喋り方ができるように鏡見たり動画を撮りながら練習して変な癖とかを直していったほうがよっぽどためになると思うんだけど、「面接対策講座」みたいなやつでそういうことを主張している人って一人も見たことが無いんだよね。

というわけでまず私は「マナー」というものに非常に懐疑的な態度であるというのが一つ。

それに加えて、今までに仕事やプライベートで出会ったマナー講師連中が全然好印象的じゃなかったことが特に「マナー講師が嫌い」な理由なんだよね。

なんかね、「私は社会人としてのあるべき姿を教えてやってる」みたいな上から目線が全方向でにじみ出てるんですよ。丁寧な言葉づかいで相手に不快感を与えるってむしろ中々のテクニックなんじゃないかな、と個人的には思ってるんだけど。

これは完全に想像なんですが、たぶんあの人達は「未熟な新社会人に対してマナーを教えてやってる」という立場を担い続けてきたが故に、そしてマナーに関してはそんじょそこらのやつには負けないくらいの知識があるでよ、という自負もあって、結果として職業病として無意識に相手を下に見てしまうんじゃないですかね。

これは私がひねくれている考えであって、同じ講座を受講していた人は特に気にならなかったのかもしれないと思い、毎回周囲の人にどうだった?と聞くと、大体感じ悪かったよねー、上から目線でムカつく、と言っているので私の感覚が極端におかしいわけでもないと思う。少なくとも私が出会ってきた講師に関してはそれが事実である。

講座形式で物事を教えるという行為に上下関係が生じてしまうのは仕方ないにしても、はっきり言って新入社員であろうと何であろうと相手に「こいつ失礼なやつだな」と不快感を抱かせてる時点でマナーを語る資格なくない?と思うんですよね。いや、我々にも生意気なところはあったかもしれないけどさ、マナー講師ならばお前らちょっと生意気なところがあるから注意しとけよということをオブラートに包みつつもはっきり言うべきだとも思うんですよ。そのくらい出来るよね?私はマナー講師じゃないけどオブラートに包んで相手を不快感にさせずにしかし「お前調子のんなよ」と伝える自信はあるよ(それは指摘じゃなくて皮肉だ、と言われそうだけど)。

今どきはもう何故あるのか意味がわからないような謎マナーもたくさん聞きますし、マナーが要求される本来の目的を思い出し、生産性向上のためにも一度ここいらでマナー講師自身が「過剰なマナー作法は押し付けがましいので逆に失礼」とか言ってリセットしてくれませんかね。

こないだもTwitterで「ハンコはお辞儀しているように斜めに押せ」というマナーらしき何かを目にしました。

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大体この記事に書いてあるとおりなんですが、私なんかは逆にハンコが曲がって押されているのでだらしない印象を持ちますし、大企業に在籍している人からも一部の企業のローカルルールではないかと指摘されています。私もTwitterで投票を試してみたところ、「仕事では指摘されたことがない」という回答が9割でした。

サンプル数や集計方法的にこれをもって世間の9割が仕事ではそんなマナーを適用しないと言い切ることはできませんが、しかしこのマナーを知らない人、もしくは知っているが実務ではやってない人が多数派、くらいは言っていいんじゃないかと思うんですよね。

殆どの人が知らない、もしくは知っててもやらない、そのマナーを実践して無くても特に不快感を与えることが無い、というマナーならばそんなものはやらない方がいいのは明らかです。

唯一、こういう謎マナーを守ってない人が叱られることがあるとすれば、それは「マナーを守れ!」と怒られる場合のみではないでしょうか。しかしよく考えていただきたいのですが、マナーを破ることで相手が確実に不快感を抱くという場合を除けば、マナーを守ってないことで叱られる道理などないのです。もっと簡単に言うとマナーを破ることで相手が確実に不快感を抱くという場合でないのに怒ってくるのはマナー講師もしくはマナー大好き人間だけですよ。

マナーが必要な理由は「相手に不快感を与えず気持ちよく仕事(やその他の何か)をするため」なんです。マナーという決まりごとを守っていないから怒るなんてのは自分で怒るタイミングを創出してしまっているわけで、これは本末転倒ではないでしょうか?「どうでもいいマナーを守れと人に強制しない」というマナーの方が重要だと思うわ。ルールを守るために新しい謎なルールを生み出し、それをいかに完璧に覚えているかで越にひたり、マウントを取るってどんな罰ゲームなんですかね?

これが、例えば長い列に割り込んでくる人が「マナーを守れ!」と怒られるのは別ですよ。それは列に並んでる全員が不快感を抱きますからね。少なくとも日本では。だから長い列に割り込むのはやめよう、というのは日本においては(そしておそらく殆どの国においても)守るべきマナーと言えるでしょう。

だから、個人的にはビジネスマナーでも少なくとも7割の人が「うんうん、まぁそうだよね」と納得できるあたりを基準にマナー化していただきたいと思うんですよ。それで言うと、例えばタクシーの乗る位置なんかは、たしかに後部座席真ん中とかはしんどいので端を偉い人に譲るとかいうのは理解できますし、エレベーターでも偉い人を奥に載せて下っ端が行き先階を把握してボタンの操作をするために前に乗る、もらった名刺はくれた人の前では大事に扱うふりをする、くらいまではいいと思うんですよ。しかしながらノックの回数とかハンコの傾きとか酒の注ぎ方とか出されたお茶やペットボトルの水を飲むだの飲まないだのとかは、もうマナー化せずにそのシーンごとに適切なふるまいをするための余地を残しておいてほしいんだよね。何でもかんでもマナー化するとそれが世間での正解になってしまうじゃん。

そういうわけで、ぜひともマナー講師の方々に置かれましては本記事で述べたようなことも少しは考慮して頂いて、仕事で不快な態度を取ってくるやつが一人でも減るような有意義な講習その他を開いて頂けたらと思う次第でございます。よろしく。