クリエイター、デザイナー、学生に贈る最強のバックアップ手法

なんかSNS見てると定期的にクリエイターやデザイナーの方が「データ飛びました。死んだ」みたいなことを言っているのを目にします。卒論を書く時期になっても定期的に学生のみなさんが「Wordデータ壊れた。開けなくなった」とか言っているのを目にしますね。

私が記憶に残ってる中で一番驚いたのが、「麻酔科医ハナ」

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という漫画があるんですけれど、この巻末で作者の方が「半年分の作業データが消えて単行本発売が遅れた」とか言っているんです。半年分のデータってやばいですよ。年収の半分、すなわち数百万円をどっかに落としてくるのと同じことですからね。商業誌連載の漫画家でもバックアップに対しては無頓着(?)な人がいるのだな…。よし、ここはAdobeも使えるプログラマの私が最強のバックアップ手法について解説してやろうじゃないか!!!と思って書きました。参考になれば幸いです。

ちなみに私は大事なデータが消えてショックを受けたという経験は記憶にないです。多分高校生くらいのときには何度かやっていたかもしれませんが。

ファイルコピー、外付けHDDやUSBメモリはバックアップとして貧弱

大事なデータが消えないように外付けHDDやUSBメモリにも定期的にコピーしておくのは誰しも経験があると思いますが、バックアップ方法としてはちょっと貧弱です。なぜならば、

  • USBメモリは小さいので紛失や水没の可能性が高い
  • 外付けHDDは衝撃に弱く故障しやすい
  • 手作業でコピーするのでバックアップするという行為自体が疎かになる

という理由があります。やらないよりはやったほうがマシなのは確実ですが、最近ではもっとマシな方法がありますので、次から解説していきます。

1.クラウド

一番目に考えるべきオプションはクラウドですね。まともなクラウドサービスを使っていれば、データが消し飛ぶということはほぼ無いと言っていいでしょう。少なくともUSBメモリや外付けHDDにバックアップするよりもずっと安全です。

私が強くおすすめするのはGoogle ドライブですね。GoogleアカウントはスマホやPCを持っている人ならばほぼ全員が持っているでしょう。iPhoneユーザーでiPhone / Macしか使わないという人はもしかしたら持ってないのかも知れませんが、まぁ作ろうと思ったらすぐ作って連携できるので…。

Google ドライブをおすすめする理由は、

  • 思い立ったらすぐ使い始められる
  • 無料枠がデカイ(15GB)
  • 履歴機能がある
  • OSとの統合

履歴機能があるというのは、

こんな感じで変更した都度履歴が残り、任意の時点のデータを復旧できる機能が含まれているということです。ですから、間違ってデータを上書きしてしまって元の状態に戻せない!!…という状況も回避出来るわけですね。

OSとの統合というのは、WindowsではGoogleの「バックアップと同期」ツールをダウンロードすれば通常のフォルダと同じ使い方でバックアップが自動で行われるということです(AndroidでもMacでも、同様のことは出来ます)。これを使えばバックアップをするという操作すら要りません。

クラウドは初期容量を使っている分は無料ですので、あまりお金をかけれない学生には特におすすめです。

2.NAS(ミラーリング)

NASはNetwork Attached Storageの略で、「なす」と読みます。その名の通りネットワーク越しにアクセスするデータ保管場所です。もうちょっとわかりやすい言い方をすると、家庭内のWifiや有線LANを通じてアクセスできる外付けHDDがあるという感じです。NASは見た目は外付けHDDに似ていますが、USBではなくてLAN越しにアクセスを行います。例えばWindowsであればネットワークドライブとしてNASに接続することになります。

外付けHDDと何が違うのかというと、ネットワーク越しにアクセスするので家庭内のあらゆる機器から好きなときにアクセスできるという点、あとはミラーリングが出来る(ような製品が多い)という点が違います。

NASには沢山の製品がありますが、選ぶポイントはHDDが2つ以上搭載できて「ミラーリング」という機能が使えるものです。おそらく、HDDが2つ以上搭載できればほぼ間違いなくミラーリングは使用できると思います。またミラーリングではなくて「RAID 1」と書いてるかもしれませんが、どちらも同じ意味です。

じゃあそのミラーリングって何なのというと、ミラーリングはその名の通り一つの同じデータを2つのHDDに自動的に保管しています。このため、片方のHDDが壊れたとしてもデータはもう片方に残っているので安全に復旧できるというのが嬉しいところです。HDDが壊れたとしても、壊れた方のHDDを交換すればまた自動的にミラーリングが進んで元の状態に戻ります。使う方からは一つのHDDしか見えませんが、実は裏では2つのHDDに同時に書き込んでいる…という仕組みになっているわけですね。

ちなみにクラウドも利用者からは見えないだけで同様のことは行っており、事故でデータを失うリスクはおそらくNASよりも低いです。ではなぜNASを使うかというと、NASは大容量のデータを扱いやすいからです。

特に動画編集や写真なんかをやっている人は、ファイル容量が数百GBくらいになるのはもはや普通の話なので、それらのデータをすべてクラウドにおいて都度ダウンロード/アップロードするというのはしんどいでしょう。私はデジタル一眼で写真撮影もよくやりますが、最近のカメラは解像度が非常に高いのでファイルサイズも非常に大きくなり、気づくとデータが何百GBにもなっています。

それをクラウドストレージに保管するのは結構コストがかかります。たとえばGoogleドライブだと1TBで月間1300円かかります。そもそもクラウドに数百GBのファイルをアップロードするだけでも大変な作業です。たとえ光回線だったとしても、多くのプロバイダは1日に10GB程度のアップロード制限があるのがほとんどです。

でもNASならば大容量のHDDを買えばあとは月間コストは電気代しかかかりませんし、データ転送量の制限を気にする必要もありません。

ただ、NASはいくらミラーリングが出来ると言っても、物理的に家が火事になる、地震で崩壊する、落雷等によって両方のHDDが物理的に同時に破壊されるなどのリスクには対処できないので、理想を言えばクラウドストレージと一緒に使用したほうが良いです。

ちなみに、NASはSynologyやQNAPといったメーカーの製品を強くおすすめします。私はこのSynologyのDS216jという製品を使用しています。

これまで沢山のNASを使ってきましたが、バッファロー、IOデータといった日本ブランドの製品は機能が貧弱で使い方もわかりにくかったです。SynologyやQNAPは名前こそあまり知られていませんがソフトが非常に良くできており、初心者から上級者まであらゆる人が簡単に使える素晴らしい製品と思いました。PC関連の知識がなくても、Synology/QNAPならきっと設定できると思います。

ちなみにこのDS216jはHDDが別売りです。HDD別売りでこの値段は正直ちょっと高いと感じる方も多いと思いますが、値段以上の価値があります。

3.差分バックアップ

クラウド、NASまで導入しても防げないことが一つあります。それは「データを間違って消してしまう」「データを間違って上書きしてしまう」です。一応クラウドストレージでもNASでもゴミ箱機能(や復元機能)は付いているものはほとんどですが、それでもたまにやらかしてしまうのが人間というものです。(※Googleドライブの場合は履歴機能があるので上書きに関しては対処できますが)

NAS製品の中には、差分バックアップ機能がついているものがあります。差分バックアップというのはその名の通り、前の状態と違っている部分を見つけてそこだけバックアップしていく方式で、好きなときに任意の時点のデータを復元することができます。これにより、ファイルを消したり上書きしてしまった場合でも前にバックアップした時点のデータにすぐに復旧してくれます。

私の使っているSynologyのNASだとHyper Backupという機能で、NASに接続したUSB接続の外付けHDDなどに差分バックアップが行なえます。MacだとTime machineになります。バックアップ先には外付けHDDやNASが指定できます。Windowsの場合は「ファイル履歴」機能になります。この場合も同様に外付けHDDもしくはNASがバックアップ先として使用できます。

4.構成管理ツール(SVN)

ここまででクラウドもNASも差分バックアップもすべて実施したとしましょう。でも場合によってはまだ改善の余地があります。それは頻繁に「過去のとある時点に戻りたい」という要求があるときです。

例えば、Webデザインでもなんでもそうだと思いますが、顧客とやり取りを重ねてデザインを確定していく過程において、「やっぱ昔のが良かった。前のやつでいいや」と言われることってありますよね?そういうときにもう上書いちゃってるよ!元に戻す方が大変だよ!!…ってなったことありません?そういうのを解消するのが構成管理ツール(SVN)というものです。

構成管理ツールというのは、データがいつの時点でどう変わったのか、どのデータを元にしてどのように分岐してきたか…を管理するためのプログラマ向けのツールです。ここではSVN(Subversion)を紹介します。

…と思ったのですが、すでにそういう記事があったのでそれを紹介します。

もうファイル管理で困らない! デザイナーのためのSubversion/TortoiseSVN入門

これは簡単に言えば、任意の時点でコメントをつけてフォルダの中の状態を保存し、あとで任意の時点の状態に復元できるツールです。

作っているものが大きくなってくると、データって一つのファイルにまとめられないですよね。たとえばAdobeなんかはイラレやらフォトショップのデータはAEとかPremiereから参照されますし、3Dモデリングするにもテクスチャのデータはモデリングデータと一緒に管理しなければならないことが多いでしょう。

一つのファイルなら「キャラクター_A案_20180201.psd」などと別名でコピーしておけば良いかもしれませんが、データが多くなってくるとフォルダごとこれをやるのってしんどくなってきますよね。そこで、SVNです。SVNならばフォルダを右クリックしてコミット(現在の状態をコメントをつけて保存)やログを見ながら任意の時点に復元という操作が行えます。

大量のファイルを抱えたAEプロジェクトを顧客の鶴の一声「あの時見せてもらったやつに戻してよ」…で戻すのはしんどいですが、SVNを使っていれば難なくできちゃいます。

また、SVNは複数人で同一のファイルを管理するときにとっても便利です。現在の状態はNAS(などのサーバー)に保管されるので、複数人で同一のファイルや多数のファイルが含まれたフォルダを編集するときもちゃんとログが保持され、だれがいつどのファイルを編集したのかが一目瞭然になります。また、最新の状態に追従するのも簡単なので「最新版のファイルがどれか分からなくなった!」ということもありません。もし、最新の状態に追従するときに自分が編集していたファイルと同じファイルを誰かが編集していたとしても、それを検知して警告を出してくれたりします。このサーバーをインターネット経由でもアクセス出来るようにしておけば、誰がどのパソコンで作業していたとしても、一貫して最新のデータをベースに作業を再開でき、かつ間違ってファイルを上書きしてしまったとしても履歴が完全に保管されているので安全に戻せるという至れり尽くせりなツールです。

プログラマはみんなこれを使っています1が、「複数人で同時に作業する」ということが起こり得るならばプログラに限らず誰もが使用すべきツールと思います。

ちなみに、SVNはバックアップツールではないので別途履歴データをバックアップする方法が必要です。また、導入は知識が無いと大変だったりします。ただ、SynologyのNASを使用していれば管理画面からアプリを入れるだけで使い始められ、さらにミラーリングで自動でバックアップもできるので、やはりここでもSynologyを使用することをおすすめします。

(補足)バックアップメディア

さらに欲を言えば光学メディア等の外部メディアに定期的にバックアップをとっておくとなお良いのですが、最近は光学メディアもバイトあたりの単価があまり安くないのでバックアップ先としてはあまり適切でないかな…という感じです。逆にHDDのバイト単価がかなり安くなったので、やるとしたら外付けHDDに保管ということになるでしょうか。

僕の考えた最強のバックアップ構成

最強ではないですが現状の私のバックアップ構成は下記のような感じです。

基本的に消えたら困るものはそもそもローカルに保存しません。最初からNASに保存します。NASはWindowsであればネットワークドライブとしてマウントしておきます。ネットワークドライブとして接続しておけば、いわゆる「Dドライブ」みたいな使い勝手で使うことができます。LAN内は1GBps/11acのネットワーク速度なので、どちらかというとNASの計算性能がボトルネックになります。有線接続ならば80MB/s、Wifiでも10MB/sくらいは出るので、動画編集以外では困りません。動画編集の場合は仕方ないのでローカルに保存します。

NASのデータは外付けHDDに毎日差分バックアップを取ります。これで、もしヘマをしてデータを手動で消してしまっても、最悪1日の作業分を無駄にするという被害で済みます。もっとこまめにバックアップを取る必要性のあるもの(例えばプログラムのソースコードなど)は、可能ならばGitHub/BitBucketといったクラウドサービスにも保管しておきます。GitHub/BitBucketはプログラムのソースコードを公開して複数人で開発するためのサービスです。無料で使用できますが、大容量のデータを扱うことは想定しておらず、アップロードすると怒られます。

写真データはGoogleフォトにもアップロードしています。Googleフォトは多少解像度を落とすと使用容量を消費せずにいくらでも保管できます。これは、Googleが機械学習(人工知能みたいなもの)の入力データとしてユーザーがアップロードした写真を使用したいがためにそのようになっています。さらに、自然言語で検索できる(例えば「夕焼け」とか)ので管理面でも役に立ちます。

多少解像度が落ちるのでオリジナルデータと比較すると劣化してしまいますが、それでも使用しない手はありません。最悪、私の家が吹き飛んでも多少解像度が劣化した写真が残るという保証を無料で得られるならば十分すぎるメリットがあります。

Googleドライブにはその他、絶対に消えたら困るものをいくつかアップロードしています。無料枠で15GBあるので、特に消えたら困るようなものをバックアップしています。ブログのデータなど…。

NASとUSBで接続した最大4つのHDDが入るボックスを接続し、これに差分バックアップを取っています。このボックスには「消えてもいいが共有しておきたいデータ」というものも含まれています。

NASのデータで特に消えたら困るデータの幾つかは、余っているHDDにもバックアップしています。が、これは正直面倒な作業なのであんまり真面目にやっていませんし、「役に立ったらラッキー」程度の代物です。

私の環境で防げないリスクとしては、家ごと吹き飛んだとき(地震、火事)や落雷などです。落雷に関してはブレーカーに加えてサージ付きコンセントを使用していますが、完全にこれらのリスクを除去するためにはクラウドサービスに保存するのがベストと思います。
ただ、NASに溜め込んでいるデータは全部で3TBほどあり、これをクラウドストレージで代替するとなると月数千円オーダーのコストがかかるのでちょっと悩ましいところです。

月イチで外付けHDDにNASのデータ全てをバックアップして耐火金庫にでも入れておけば良いのかもしれませんが、流石に面倒なのでここは妥協しています。家が吹き飛んだら諦めよう…というスタンスです。

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もし上記のようなことをやりたいが、設定まで含めると面倒なので提案から設置まで全部やって欲しい…という方がいましたら、連絡貰えれば対応します。(本業では無いので正直モチベーションは高くないですが…)。

見ず知らずのやる気のないブロガーでもいいからお願いしたいという奇特な方がいらっしゃいましたら連絡ください。もし条件等が折り合い実際に仕事になったらちゃんとやる気を出して責任を持って作業します。

まとめ

  • 何もバックアップ手段を講じていない人はすぐにでもGoogleドライブを使用しましょう
  • 写真や動画など大容量のファイルを沢山使う人、バックアップデータが増えてきた人はNASを導入しましょう
  • NASを買ったらできれば更に外付けHDDを買い足して差分バックアップを取りましょう
  • データを元に戻したいことが沢山ある場合や複数人で作業する場合は構成管理ツールを使用しましょう

  1. 正確に言うとSVNは構成管理ツールの一つなので、プログラマみんながSVNを使っているわけではありません。同様のツールはたくさんあるので、SVNでない構成管理ツールを使っている人もたくさんいます。