普通の床暖とは違う全館床暖房のメリット・デメリット

こういう記事を見ました。

なんか色々疑問を感じたので私の考えを改めて書いてみます。

高気密高断熱+全館床暖房と普通の床暖は別物

まずこの二つは別物と認識すべきです。前者が床暖房をメインの暖房として用いるのに対し、後者はメインの暖房は他にあり、それに加えて床暖を設置するという違いがあります。全館床暖房の目的は家全体を温めること、後者の目的はスポットで床が暖かくて快適なゾーンを作り出すことです。

全館床暖房の場合は高気密高断熱住宅と組み合わせますので、循環させる不凍液の温度はふつう30℃前後になります。この温度では特に床表面に暖かさを感じることはありません(暖かいと感じるまで温度を上げることも可能ですが)。暖かさを感じないというと語弊があるかもしれないので一応説明しておくと、輻射熱で体が温まるという効果はあるので体は暖かく感じます。一方で普通の床暖はその目的から床に触れた時に暖かさを感じさせないといけないですから、おそらく40℃以上の不凍液を流し、床表面が30℃後半くらいになるようなセッティングにしているはずです。

このように、達成したい目的も違いますし設定温度もかなり異なってきます。システム構造が似ているだけです。前記事の記述はおそらくスポットで暖かい場所を作るための床暖のことだと思われますが、ここまで書いたことを踏まえて前記事にあった諸々を考察したいと思います。

初期費用

高額初期費用が必要
わが家がリビング&ダイニングの床暖房設置に支払った費用は605,000円でした。家作り当初はキッチンまで床暖房を敷きつけるつもりでしたが、資金的にあきらめることになりました。
(中略)
この金額は決して安いものではありませんし、むしろ他の暖房器具と比べると高いと言わざるをえません。

初期費用が高額になるのはそのとおりです。
運用コストで初期費用をペイすることも難しいです。以前計算したのですが、記事が見つからないので改めて計算してみましょう。総務省統計局のデータから冬場(2016年11月〜2017年3月)の月平均の光熱費を算出してみたところ、下記のようになりました。

平均18,227円です。

対して、我が家の前シーズンの11月〜3月の電気代を計算してみました。太陽光発電の自家消費分を加味して出した金額なのであまり正確ではないですが…。すると、月平均1.7万円の支出でした。ちなみに実際に支払った電気代(太陽光発電の自家消費分を除いた額)は平均1.2万円でした。すると、年間5千円程度の低減効果しかないということになります。まぁ、暖房だけでなく冬のトータルの光熱費の比較の話ですが…。超どんぶり勘定なのであまりあてにはならないはずですが、すくなくとも、月1万円以上も得をするようなオーダーではないということは理解出来るかと思います。

ですから、「普通の暖房よりも安いから床暖にしよう」という考えは誤りとは言えます。そんな勘違いした理由で床暖を採用する人はいないと思いますけど…。

冬場の電気代は高くなるのか

さすけさんの記事によると、床暖房単独の電気代は地域差が大きいものの冬場の外気温が3℃程度の地域では月約1万円程度掛かることが分かります。(中略)
ただ、一条工務店のように日本トップレベルの高気密高断熱性能を持ち合わせていたとしても、電気代を気にしながら床暖房を使用しているということは事実のようです。

冬場の暖房費に1万円かかるって、そもそも高いんですかね。石油ファンヒーターとか使ってたら月1万円くらいは灯油を買うような…。だからそもそも冬の暖房代にいくらかかっているのか確かめてみました。前述のデータで平成18年の5月(おそらく暖房も冷房も使わない時期)の光熱費(電気、ガス、その他高熱)の合計を計算すると8.4千円でした。対して、先程算出した冬場の光熱費月平均額は1.8万円でした。ということは冬場の光熱費の増加分は1万円弱と推計できます。なんだよ、平均でも1万円くらいかかってるじゃん。

もちろん、給湯にかかる光熱費分をひっくるめて語っているので、暖房だけで1万円だと多分全国平均よりは高いとおもいますが、この「さすけさん」という方は一条工務店ブロガーの中では有名な人で、私もブログをよく読みましたが、この方は寒いのが嫌いで設定温度を高めにしているとおっしゃっていたので電気代も高めになっていると思われます。ちなみに私の家は先程述べたように月平均額で言えば平均以下です。

加えて言えば、一条工務店って「家は、性能。」がキャッチコピーのスペックマニア垂涎な感じの商品が多い(個人的感想)なので、一条が好きな人はデータを基礎に語るような人が多く(これも個人的感想)、電気代を気にするのは当然といえば当然な気もします。「電気代払いたくないなぁ…」というネガティブな「気にする」ではなくて、「おっ、Aという施策を試みたら電気代が下がったな。ということは最大の暖房効率に近づくのにAは有効だな」みたいな感じだと思いますよ。たぶん。

床暖房というと必ず一条工務店関係がヒットするのでちょっと参考にする例が悪い(?)のかなという気はします。

メンテナンス費用

床暖房の規模や劣化状況によってまちまちではありますが、10年で5万円程度のメンテナンス費用が掛かると想定しておいた方がいいと思われます。

エアコンやストーブも10年使ったら大体寿命になりますね。そしたら5万円以上はたぶん買い替えにかかるでしょう。床暖に限った話ではありません。

故障時の修繕費用

その額は少なく見積もっても30万円以上、規模・故障状況によっては100万円を超えることもあるそうです。

ホントかよ…。

そこまで被害が大きい修繕費用が発生するとは私は思えません。ここまでの費用となるとたぶん床を剥がすくらいの金額になると思いますが、不凍液を循環させるタイプの床暖ではたぶんポリエチレン管を使うことがほとんどです。一条の場合はメンテナンス用扉から各部を循環しまた戻ってくるまで継ぎ目がありません。不凍液漏れの危険があるからです。おそらく他のメーカーも同様と思われます。そしてポリエチレン管は最近は水道配管にも使われるような長寿命の素材で、おそらく住宅そのものの寿命に達するまで交換は不要なはずです。日が当たるところではないですし、埋設時はストレスがかかるようにもなってないので特に寿命が短くなるような要素があるとも思えません。

壊れることがあるとすれば不凍液を温めるヒートポンプ部分で、これは普通のエアコンの室外機と構造的にはほぼ同じものなので、エアコンの交換費用と大差ないと思われます。

床暖房のコスパは悪い?

床暖房単独でのコストパフォーマンス力が低い

床暖房が必要なほど冷え込む時期は予想以上に短かったのです。
床暖房は「すぐに温まらない」という性質や「電気代が高い」という性質があるため、どうしてもエアコンとの併用が必要になります。高い初期費用や電気代を支払ったとしても、こうした性質を考慮するとサポートとしての暖房器具という位置付けになってしまいます。

コスパ力って「頭痛が痛い」みたいな印象をうけるのですが、それはさておき。

この方はおそらく、私が冒頭に書いたような「全館床暖房」と「通常の床暖房」の区別が付いていないと思われます。この書き方だとどうも「床暖房は通常の暖房で暖房能力が不足する場合に使用するもの」みたいなことを言っているように感じますが、実際は通常の床暖房は床が暖かい快適なゾーンを設置するという事自体が目的です。室温の上昇は副次的な効果であり、それをメインの目的として使用するためには高気密高断熱住宅である必要があります。床暖房自体の暖房能力は低く、熱を逃さない工夫があるためです。

言い方を変えるとすれば、通常の床暖房は床に寝そべって「あったかいねー」と言うために使用するものであって、外が特別寒かろうが通常の冬の季節であろうが、使いたい時に使うものだと思います。

床暖房は乾燥しにくいと言われますが、全く乾燥しないわけではありません。さらに、床暖房とエアコンのダブル使用により、乾燥度合いはかなり進みます。
乾燥はウィルスの増殖にもつながるため、しっかりとした加湿器を購入する必要性もでてきます。

この暖房の種類による乾燥具合というのはよく聞くのですが、私には意味がちょっとよく分かりません。暖房が絶対湿度に影響を与えるケースは、室内で給排気を行う石油ファンヒーターが燃焼時に水分を放出するというケースくらいで、その他の暖房器具は水分に影響を与えません。部屋があたたまるにつれて相対湿度が下がるという話ならすべての暖房がそうです。たぶん、相対湿度が低くなった状態でさらに空気の強制循環が暖房器具によって発生すると乾燥を感じるという話なのだとは思いますが。

ですから、床暖を使ったから加湿器が必要ということはありません。冬場はそもそも乾燥するのであって、何らかの影響で空気中に水分がガンガン供給されるような環境でないかぎり加湿器があったほうが良いですよ、というそれだけの話です。

たぶん、この記事を書いた人はブログ内の加湿器について書いた別記事に誘導して直帰率を下げたいという広告収入的な事情があっあえてやや不正確な説明をしているのだと思いますが、そういうスタンスの記事の書き方は私は嫌いですね。まぁ山ほど同じことをしている人はいますけど。

床暖房があるとカーペット選びが大変

この子達、よく汚し、よく暴れるのですが、汚れや衝撃、安全性を考えると、カーペットは必須アイテムです。しかし、こうした子どもの衝撃対策を兼ね備えつつ、床暖房の効率も維持できるカーペットが意外と少ないのです。

これは大体同意しますが、導入検討時にすぐ気づくことですし、そこまで問題ないような…。というか、汚れや衝撃からの防御という観点で考えると床全面に設置しないと意味ないような気がしますが、どうなんでしょう。そもそもカーペットで衝撃対策という事自体の実現性が低いように私は感じます。限定的には効果はあるでしょうけど。

というか子供の事を考えて私は逆にカーペットを設置したくないんですよね。カーペットって掃除が大変で不潔になりがちですし、ダニの温床にもなるので。

見栄えのためにラグなどを置いときたいという話であれば、少なくとも全館床暖房の場合はスポットでラグを敷いたところで放熱性が悪くなっても全体に大きな影響があったことはないです。

赤ちゃんにとって危険がいっぱい?

赤ちゃんにとって危険がいっぱい
まず、赤ちゃんは寝ていても起きていても身体が床の近くに密着しています。当然、直接床に寝かせることはありませんが、気が付いたら移動していることだってあり得ます。また、エアコンやヒーターによる体感温度は大人も赤ちゃんもほぼ同じであるのに対し、床暖房は床に近い位置で過ごす赤ちゃんの方が暑くなっているのです。

そら温度分布でみれば床暖は床のほうが暖かくなる傾向がある(輻射熱による影響)と思われますが、危険は言い過ぎなんじゃ…。

少なくとも全館床暖房であれば危険ではありません。冒頭で説明したように、設定温度を30℃前後に設定するからです。

危険性があるとすれば、通常の床暖房で暖かさを感じるために設定温度を40℃超にしている場合ですね。このくらいまで温度を上げていると低温やけどの危険があるので、赤ちゃんが寝転がって布団からはみ出して床に密着し、低温やけどするという可能性がゼロではありません。ただ、そういう場合であっても、赤ちゃんが寝てても定期的に確認しましょうとかいう注意レベルの話で十分な気がしますけどね。危険がいっぱい、は言いすぎです。子供にとって危険!みたいな言い方は読者が惹きつけられやすいので読まれやすいんですが、こういう書き方も嫌いですね。個人的には。本当に危険と思ってるんだったら、ああそうですか、私は危険とは思いませんけど。で終わる話ですが。

(追記)読み返して思い出しましたが、そう言えば他社の住宅メーカーの営業で「床暖房は赤ちゃんが低温やけどをする可能性があるので危険ですよ、だから一条はやめたほうが良いです」と言ってる人がいました。自社製品を買わせるために通常の使用方法では危険性がほぼ無いことに対して買うのを控えたほうが良いとまで言うのは私は「嘘をついている」と言ってしまって良いような気がします。こういう無茶苦茶な説明をする営業が居るので勘違いも広がるんでしょうね。

床暖はカビるのか?

床暖房で部屋を暖めることで当然ながら外気温と温度差が発生します。特に、床裏にしっかりとした断熱処理が施されていないと非常に危険になります。当然リフォームの場合も、床暖房設置と断熱処理はセットで考えなければ、カビの発生により、身体・家自体にダメージを与えることになってしまいます。床暖房の上に布団を敷いて寝る場合も、カビが発生しやすい環境にありますので要注意です。

これはちょっと意味不明です。

冷房ならカビる可能性はあります。結露するからです。しかし、乾燥する冬場において周囲より暖かい部位が結露するというのは物理法則に反します。

戸建住宅における床下のカビの発生はよくある話ですが、これは主に夏場の通気性に起因する問題で、住宅構造に影響される話で暖房器具は関係ないです。

布団がカビるのは布団をたたまない・干さない(乾燥させない)からです。人間からはかなり湿気が放出されています。布団がカビる最大の原因はこの人間から放出される水分が布団に吸収され、それをそのままにしておくからです。毎日ちゃんと布団を畳み、たまに干したり布団乾燥機をかけたりするのが最大のカビ予防になります。

床暖房は布団を下から温めて多少は乾燥させる効果が望めるものの、湿気させることはありえません。

というか、「床暖房は乾燥しやすい」「床暖房だと布団はカビやすい」って矛盾してませんかね…。

私が考えるメリットとデメリット

以前にも書きましたが、また改めて考えてみたいと思います。ここで書いているのは、全館床暖房のメリットとデメリットです。

隅々までいつでも暖かい

風呂もトイレも暖かいです。冬場、風呂やトイレに入った瞬間「うわっ、寒い!死ぬほど寒い!」という状態になることがありません。家の中ならばどこでも常時暖かいです。これが最大のメリットです。そのために金をかけています。どこでも、いつでも暖かいことにお金をかけれるかどうかがポイントですね。

私は家の中で一番ストレスを感じるのが「暑い・寒い」という室温に起因する問題だと思っています。また、実家や前に住んでいたアパートがかなり寒かったので絶対に快適な家で過ごしたいという強い希望がありました。高気密高断熱住宅ならば暑い・寒いはどちらも解決できるので私の要望に最も適しています。

熱帯魚水槽のヒーターが要らない

常に23℃くらいの室温が保たれているので、冬場でも熱帯魚水槽のヒーターが要らないです。これに始めて気づいたときは衝撃でした。まぁ当たり前と言えば当たり前なんですけど。

ヒートショック防止

冬場、寒い風呂場で急に暑い風呂に入るなど、急激に気温が変わると体はヒートショックというストレスを受け、結果、心筋梗塞等々を引き起こして死に至ることがあるらしく、その件数は統計上交通事故死者数より多いのだとか。私は死んだら死んだでまぁ良いかな、と諦めが付きますが、「俺はまだ絶対死にたくない」という人にはメリットに感じるのではないでしょうか。という話を銀行の融資担当者が生命保険の話をしてきた時にしたところ、「まあご本人は良くても家族がいらっしゃいますし…」と苦笑いされました。いや、死んだら住宅ローンがチャラになるし、それなりに生活出来るんじゃないかな。と思いましたが不毛な議論になりそうなので止めました。

以降はデメリットです。

フローリングの素材が弱い

一条工務店特有の問題なのかもしれませんが、フローリングが弱く傷が付きやすい気がします。熱伝導が普通よりも良くなるような、ちょっと特別な素材が使われているのかもしれません。賃貸住宅のフローリングは居住者が変わるたびに交換するのが前提になってるような簡易的な素材が使われていたりしますが、感覚的にはそれよりは明らかに強いものの、気をつけないと傷が付くという印象です。大人だけが暮らすならまず問題ないですが、子供が居ると必ず傷が付くという感じでしょうか。ただ、床が傷だらけになるとかそういうレベルではないので実用上支障は無く、「気にし始めると気になってくる」という感じです。

眠くなる

あたたかすぎて眠くなることがあります。まぁ普段から眠くなることが多いので床暖が無くても寝い気がしますが…。

外の気温が分からない

寒い日だと起きた瞬間に分かったりするじゃないですか。布団から出て「今日寒いな…」って。そういうのを感じることが出来ないため、その日着ていく服装を決めるのに一度外に出る必要があります。季節の変わり目はちょっとこれが面倒くさい。

立ち上がりが遅い

床暖房を付けてから家全体が完全に温まるまで3日くらいかかるそうです。実感上もそんなもんです。真冬に完全に冷え切った状況から最大負荷で運転させても、6〜7時間は寒いですね。そこから何とか我慢できるかな、という状態になってきます。

ただ、一条の場合はエアコンが一つ必ず設置されますし、他の部屋も結局冷房は必要なのでエアコンを設置することになります。なので実質的には普通の家と同じですね。逆に、「普通の家ってこんなに寒かったのか…」と再認識する良い機会かもしれません。

我が家の場合は年末年始に帰省する際に完全に床暖房をオフにしていましたが、するとあまりに寒いので、長期で家を空けるときも設定温度を低めにしてONにしたまま外出するようになりました。

じゃがいもがすぐダメになる

冬場ってじゃがいもが長持ちするはずなんですが、常時暖かいのですぐ芽が出てきます。じゃがいも的には春を感じてるんでしょうね。馬鹿だなー、かわいいやつめ。

まとめ

床暖については色々な記事がありますが、まず、全館床暖房とそうでない床暖房は基本的に別物であるということをよくご理解頂いた上で記事を見たり、ハウスメーカー営業の話を聞いたほうが良いと思います。経験上、特にハウスメーカーの営業はテキトーなことを言ってくる人が多いです。鵜呑みにせず、自らよく考えて決断しましょう。

ちなみに私は「寒い・暑いが大嫌い」という人には激しく全館床暖房と高気密高断熱住宅をおすすめしますが、「寒けりゃ着込むし、暑けりゃ全裸で過ごすから余裕だよ」というワイルドな方にはおすすめしません。