【質問#91】4WDの直進安定性について

質問・悩み相談の回答です。

質問

いつも楽しく読ませていただいております。
『FFのCX-5で雪道走行~四輪駆動は必要か、雪道を安全に走るには』を読ませて頂きましたが、触れられていないもう1つのメリットに今興味がありますのでご意見聞かせていただければと思います。

雪道でもFFで十分、それは同意見ですが、それでは直進安定性はどうなのでしょうか?
雪が多い地域では風が強い地域であることもおおく、特に高速道路では横風の煽りを受けてハンドルの舵角調整が必要となります。これはVSCは介入してくれません。
4WDでは後輪からのトルクにより直進安定性が生まれると聞きましたが、舵角調整の量が減れば長距離移動での運転が楽になるのではないかと期待しております。また同乗者の快適性にも繋がるでしょう。
マツダのGVCもFFでありながら無意識下に舵角調整を減らしてくれるようなので近い効果が期待できるのならば車重の軽い方で良いのでは?とも考えております。
今の生活は雪道走行よりも高速走行が多いので直進安定性という観点からご意見を伺いたいです。
どうぞ宜しくお願いいたします。

回答

「高速道路で風にあおられるような場合に安定して直進できるか(舵角修正をいかに少なく出来るか)」という点に関しては、色々な要素がからんでくると思われます。

直線を走行中の車に進行方向に対して直角で真横から風が吹いてくると、車は風にあおられて風下に向かう力が発生します。この時に車に対して風下方向に発生する力によって発生する風下方向への加速度が小さいほど舵角修正も小さくて済みます。この時車に働く力は、直進方向への車自体の推進力(タイヤが地面に伝える推進力 - 空気抵抗)と、風が伝える風下方向への力の合力になります。

一定速度で走行している時は風下方向の力だけ考えれば良いです。ここで関わってくる大きな要素は、

  • 車の形状(横方向の空気抵抗)
  • 横から見たときの車の投影面積
  • 車両重量
  • タイヤアライメント

と考えられます。まず、横から吹いてきた風が車に与える力は、横からの投影面積に横方向の空気抵抗係数(Cd値)を乗じた値になります。横方向のCd値というのはおそらくメーカーも設計時から特に考慮していないんじゃないかと思うので、車の概形によって大体同じになるような気がします。支配的なのは横方向の投影面積でしょう。つまり、ミニバンやトラックなどは不利になるということですね。これは感覚的にも明らかだと思います。

次に、車両重量は加わった力からどの程度の加速度が発生するかに関わってきます。F=maから明らかなように、車重が重いほど加速度は小さくなるので、軽自動車よりは高級車のほうがマシになるということになります。

タイヤアライメントは、特にトー角が直進安定性(ハンドルを切ったときの曲がりにくさ)に関わってきます。ほとんどの車種は直進安定性を重視してトーインな設定になっていると思われるので、車種間の差はそこまで大きくは無いと思います。ただアライメントが狂っていたり、あえて旋回性を重視風が均一に吹いていると仮定すればしてトーインにしていなかったりした場合は、風に煽られた時の舵角修正角度が大きくなったり修正回数が増えたりすると思われます。

また、上記に加えて、

  • 重心位置
  • トレッド

も関与してくると思われます。トップヘビーでトレッドが短いほど車両は傾きやすく、心理的な恐怖感に影響します。ドライバーは傾いた側へハンドルを切りたくなりますので、結果として舵角修正回数も増えると思われます。また、自動車のダイナミクスについては私は正直あまり詳しくないのですが、風上側のタイヤのグリップ力に影響するほど車両が傾いた時は、車の挙動にも物理的に影響してくるはずです。(経験的にもそう感じる)

で、ここから分かるのは、高速走行時で風が吹いている時でも安定して走れそうな車種は、車重が重くて車高が低くて重心位置も低そうな車、つまりセダンの高級車のような車種であることが分かります。

よく高速道路を走っていると、お調子者がBMWとかベンツとかで「法定速度ってなあに?」みたいな速度で車を走らせてますが、あれは一応理にかなってるという事ですね。それを影から微笑ましく見つめる高速道路警察隊も大体クラウンとかレガシィB4とかスカイラインとかに乗ってますけど、あれも理にかなっているという事ですね。

駆動方式の差は上記で挙げた要素よりは小さい影響しか及ぼさないと思います。もう少しはっきり言えば、4WDであること自体は舵角修正回数の低減にはたぶん寄与しないとおもいます。寄与する面があるとすれば、4WDの機構自体が重いのでその車重増分だけ安定するといった感じでしょうか。

ここまでは一定速度で走行中という前提で考えました。加速時はどうでしょうか。一定速度走行時と加速時で違うのは前方へ引っ張る推進力の有無ですが、直角方向に交わるのであれば風によって煽られた力を打ち消すことが出来ないので、この点では変化はありません。

違いがあるとすれば、駆動輪のスリップのしやすさと考えられます。駆動輪にエンジンからのトルクが掛かっている場合、駆動輪はスリップしやすくなります。タイヤグリップの限界付近で加速していて、そのうえで強風が吹いた場合はFFやFRだと不安定な挙動になる可能性は考えられます。具体的なシーンを想像しますと、たとえば加速車線で風にあおられたとかいう場面ですかね。

ただ、風でトラックが横転したとかいう事故はよく目にするものの、風で煽られてスピンしたという事例は少なくとも私は聞いたことがないので、強風でもタイヤのグリップ限界に至る程度の力は加わらないんじゃないかな?という気もします。

また、4WDと一口に言っても、その方式と制御方法はさまざまです。4WDは直進安定性があるか否かは一概には言えず、もうちょっと条件を限定しないと論じることは出来ないのではないかと思います。

4WDでは後輪からのトルクにより直進安定性が生まれる

という点に関しては、これは例えばFFベースの4WDなどで前輪にトラクションがよくかかる車でもともとFF的なアンダーステア傾向があるのに加えてさらに後輪の直進方向へのトルクが加わるのでよりアンダーステアになるといいう点を説明していると思います。この特性は横風に対して強いかどうかには残念ながらあまり寄与しないと思います。

続いてマツダのG-ベクタリングコントロールについてです。このシステムが調整するのはエンジン出力です。エンジンからのトルクを弱めたり強めたりする(スロットル調整で)ことで前後の荷重を多少変化させるという類のものです。このシステムが解決してくれる問題はカーブを抜けるときの不適切なアクセルワークです。前後荷重を適性に保つ仕組みは今回のように高速道路走行中の安定性にはほとんど寄与しないのではないかと考えられます(もちろん、首都高のようにカーブが連続するような道路だったりIC/JCTを走行中だったりするのであれば、違いはあると思いますが)。

高速道路を中心に走るとか、高速道路での安定性を重視したいというのであれば、やはり重いセダンを選ぶべきだと思います。そこで具体的な車種を検討していて、4WDなセダンが良さそうならば4WDを買えばよいと思います。4WDの方が重いですし。

風に煽られたくなければどっしりした車に乗れ、というのは至極原始的な解決方法であって、技術で何とかしてやろうという気概が何ら感じられないのであまり面白くないのですが、まあ物理法則は面白いとか面白くないとか考慮してくれないものなので仕方ないですね。

また、ここまで風に煽られた場合を述べてきました。風が煽られていない場合であっても、たとえば轍を踏んで車が少しずつ曲がっていってしまったり、もしくは左右どちらかに寄っていきやすかったりということはあります。こういう場合でも、舵角修正の頻度を下げるためには車両重量、タイヤアライメント、トレッド、ホイールやタイヤ扁平率といった要素の方が駆動方式よりも大きく関わってくると考えられます。つまり定期的にタイヤアライメントを測定・調整して、純正サイズのホイールを履いた重いセダンがもっとも高速道路では楽に走れると私は思います。やっぱり高速道路警察隊が乗ってるような車が最強ということですね。

以上、ご参考になりましたら幸いです。