FFのCX-5で雪道走行~四輪駆動は必要か、雪道を安全に走るには

なんかたくさんのことを詰め込み過ぎた記事になってしまいましたが、書いてみます。

CX-5 20S Proactive (FF)にiceGuard SUVを装着

という構成で雪道を走ってきました。路面の状態は圧雪路と、湿分が多くて重い雪の2パターンです。

写真は湿分が多くて重い雪のパターンですね。路面に雪があるのとないのとまばらになっているような状況でした。

年末年始の帰省で雪道を走りましたが、累計で10台くらいの交通事故を目撃しました。かなりシビアなコンディションだったと思います。

iceGuard SUVを装着した記事はこちらから。

こいつは実質Geolandarの後継のタイヤとなっており、昨年発売の新型タイヤです。また、去年は帰省しなかったのでCX-5を運転しての初めての雪道走行にもなります。今回はiceGuardやCX-5のVSC性能を試したくて、多少無茶をした運転をしてみました。どの程度の無茶であるかはご想像にお任せします。また、テストしたところは車の来ない私道で行いました。

iceGuardについて

うーん、効くとも効かないとも。すげー普通といった感想。圧雪路で強めのブレーキをかけてABSを作動させましたが、制動距離はまあ普通のスタッドレスといった感じ。上り坂でアクセルを踏み込むと普通に空転しながら登っていきます。どれもこれも普通のスタッドレス、もっと具体的に言うと従来のヨコハマタイヤのスタッドレスと同程度の性能といった感じで、特に進化は感じませんでした。進化を感じたのは先の記事にも書いたとおり、ドライ路面での静粛性です。

まあ値段相応の働きはしてくれているんじゃないかという印象です。

CX-5 FFについて

ややオーバースピードで滑りそうなカーブに差し掛かり、フロントが滑り始めるとすぐにVSCが働くとともに、安全に速度が落ちていきます。VSCやABSの動作するタイミングや制御量はまあ普通の車といった感じ。特に良いとも悪いとも思わない。あとは、ハンドルの感触から「もうちょっとで滑りそう」「今滑ってる」「全然グリップしてない」みたいな情報も普通に感じ取れるので、車両側の機能/性能としてはごくごく普通で十分といった感想。以前乗っていたプリウスもVSCとCX-5も同程度に優秀と感じました。

あまり詳しくないのですが、VSCやABSは各メーカーが独自開発しているわけではなくて、最近はデンソーとかが開発したものを各社が採用しているんじゃないかと思っており、結果としてあんまり大差ないんじゃないかなと。想像ですけど。

雪道走行で4WDは必要か

私は計5年間の雪道運転経験と、それ以降は毎年の帰省での雪道運転経験があります。FF、FR、4WDすべてで雪道走行を経験しましたが、その結論は「雪道走行はFFで十分」です。特に4WDである必要は無く、むしろ車高の高さが重要かと感じています。

まず4WDが一番効力を発揮するのは発進・加速時です。4輪に分散してトラクションをかけれるので加速時に空転しにくいです。この特長はスタック(車両が泥や雪にはまって動けなくなること)したとき(しそうなとき)にも有効です。より大きな力で車両を動かせたり、駆動輪が浮いてしまっているという状況を避けれるからです。

その一方で、減速時には駆動方式に関わらず4輪に制動力をかけれるので4WDであるメリットはありません。

旋回時に関しては、前輪もしくは後輪がスリップし始めた際、4WDでは前後の動力配分を調整してスリップしていない方にトラクションをかけるということができますが、これは後述するようにVSCでも似たようなことが可能です。

また、車高が重要という点に関しては、私の経験上、雪道でスタックした場合は車両が雪に乗り上げて駆動輪が浮いてしまっているというパターンが多かったためです。ならば、車高が高ければ車に乗り上げる可能性が減ります。雪道では車高の低い車によって雪が削られていくので、SUVやクロスオーバーであればほとんど雪が車両の腹につっかえるという事態が無いのでは、という気がします。

本当に4WDが雪道で有効なのか考える

そもそも雪道で4WDが強いというのはどこから発生した評価なのでしょうか。伝聞では良く聞きますが、理論的で定量的な考察を見たことはありません。色々探した結果、参考になりそうなのは以下の資料くらいでした。

平成26年度 国土交通省 受託調査 「雪道走行時の不安全挙動」につながるおそれがある タイヤの不適切使用に関する調査

VSC(車両安定性制御システム) -クラウンマジェスタ-

前者は、駆動輪だけにスタッドレスタイヤを履くという不適切使用においてどの程度の危険なのかを実走行で試験したものです。結果から、先に述べたように「4WDは発進でタイヤが空転しにくいものの、制動距離は特にFF/FRに比べて優れていない」という結果が読み取れます。

旋回時については、後者の資料が参考になりそうです。大変楽しそうな資料でじっくり読みたいのですが、時間が無いのでざっくりと読み要約しますと、旋回時のスリップではエンジン出力を適切なラインまで絞ると同時にタイヤ4輪のブレーキを別個に制御することで旋回モーメントを発生させ、運転者が意図したライン(舵角や速度センサから読み取る)に近づけるという制御を行っているようです。

この仕組みに加えて4WDという機構があるとどのようなプラスがあるのかというのは、

クラウンマジェスタi-Fourでは、車両上大量に応じて4WSやサスペンション制御との協調制御を行い、車両全体で高レベルの車両安定性を可能としている

という抽象的な表現にとどまっています。

個人的には、4WDであることは雪道における旋回時の走行安定性にはあんまり寄与しないんじゃないかという気がします。旋回モーメントを発生させるという点では4輪にかかる力を独立して制御する(少なくとも左右に分ける)必要があります。前述したようなVSCによるブレーキ制御がそれにあたりますが、4WDのトラクションを4輪それぞれに任意の量で分配させるという仕組みは私が知る限りありません(NSXなど左右両輪に対応するモーターがそれぞれ設置されている場合は別)。

4WDでは前後の動力分配を行う仕組みは広く実装されていますので、先に述べたように前輪もしくは後輪が滑り始めた場合に動力分配することは可能でありますが、これはVSCによっても同じことが可能です。ここでのVSCによる制御と4WDにおける制御の違いは、VSCが車両速度を減ずる方向に制御するのに対して4WDはそうでないという点です。ですから、コンマ何秒を争うようなレースでは4WDを採用する(もしくは、VSCと4WDを併用する)メリットがあるのだと思いますが、一般車両ではどうなのか…。

また、よく「4WDでは4輪がスリップした場合にリカバーできないから雪道で4WDは逆に危険」という主張が昔からあります。ただこれは昔のフルタイム4WDで動力分配比率が固定な車の場合であって、現代のVSCと強調して制御されるような4WDであれば、VSCの装備されたFF/FR車とそう変わりは無いと考えています。

今回、ネットで検索してみると「4WDは発進と加速が有利なので速度が出過ぎてしまうから4WDは逆に危険」という主張もいくつかありましたが、これは単に乗っている人が馬鹿だというだけです。どんな車・路面状態であっても速度超過は危険です。

一番重要なのは経験

色々述べましたが、それでも雪道を安全に走るには経験が最重要かな、と思います。VSCも万全ではありません。明らかにスリップし始めているのにTRCもVSCも効いていない(ブザーやランプで通知されない)というケースは沢山ありますし、VSCで復帰可能な限界点を超えるような運転をすれば事故ります。VSCがやってくれることというのは、車両の速度や舵角などからドライバーの意図を読み取り、それに近づけてあげるよう制御することです。なので、ドライバーが無茶苦茶な運転をすればVSCが装備されていようと4WDであろうと事故ります。

雪道を走っていて「あそこ滑りそうだから避けたほうが良い」「今滑り始めた」「滑ってる」「グリップが戻りつつある」みたいな感覚が掴めると、危険を予知できたりどのくらいの速度から危険になるのかが理解できたりするのですが、日常的に雪道を運転した経験が無いと難しいのかなという気がします。これは雪道を歩くのにも通ずるものがあり、東京が雪が降るとしょっちゅうけが人が出るのを見たりしていると、こう、雪国の人とそうでない人とは何か決定的な差があるかもと思います。

では、経験の無い人が雪道を運転する場合、どうすればよいのか?というのは、また別の記事で書いてみたいと思います。

まとめ

雪道で4WDがあると良いというケースは、極端に路面状態が悪い(除雪されていない)とか、急な坂道で頻繁に停止するとかいう場合に限られます。

雪国を日常的に運転していてもこういう場面に出くわすケースはあまり無いです。立体駐車場のような急斜面は融雪剤がしつこく撒かれていたり、温水を常時流していたりします。ほとんどの路面は除雪が行き届いています。一部の駐車場や私道で路面状態が悪くスタックしそうになることはありましたが、それでも何だかんだで私はFF車で切り抜けてきました。

その最後の「4WDだから安心」という保険が欲しい人は4WDを買うのだと思いますが、私は費用対効果の点で疑問を感じます。ましてや、日ごろ雪道や不整地を走行する場面が無いのに4WDを買うのは「4WDな車に乗っている」という満足感以外にメリットは殆どないと思います(さりげなくスバリストをdisる)。

ただ、従来言われていた「雪道で4WDは逆に危険」という主張は少なくとも私は現代のVSC装備な車には当てはまらないはず、と信じているので、4WDが付いているに越したことはないとも思います。