【質問#85】親会社への出向について

質問・悩み相談の回答です。

質問

anopara様 ブログ楽しく読ませていただいております。質問や文章の論理的な構成と、たまに見える仕事関係の黒い発言が好きです。

質問は親会社への出向についてです。

前職は通信系子会社でサーバーエンジニアをしておりました。現職は、A社傘下のグループ会社で、中小企業にありがちな営業と社内SEを担当している状況です。先日、A社のシステムの見直しに伴い私の名前が上がったようで、数年間に渡る親会社への出向の打診がありました。

正直なところ、自分はこの話に乗り気ではありません。というのも現職場で昇進の内示が出ておりましたが、出向の場合は白紙に戻る可能性がある点、また親会社はanoparaさんの「職場の愚痴」記事通りの体質であります。ITリテラシーも低く、未だに会社のPCにゲームを入れたり、迷惑メールの踏み台になって大騒ぎするような会社なのです。さらに私が配属されるであろう部署の上司は、明らかにシステムが分からない人間であり気分が重いです。

一番の希望は円満にお断りして、今の仕事を続けたいのですが、何か良い方法はありますでしょうか?それが難しいようならば、出向の際の交渉条件についてのアドバイスがいただければ幸いです。

まとまらない文面で申し訳ありませんが、お時間あるときに回答をお願いします。

回答

うーん、これは…なかなか…。

「ITリテラシーが低い」という属性を持った「本社」というキーワードがかなりパンチ効いてますね。経験のある人なら良くわかると思いますが、ITリテラシーの低い大きな組織ほど面倒くさくてフラストレーションがたまる職場は無いです。私もそういう組織を幾つか見てきました。

私の経験上での話になりますが、こういう組織では対象の技術やシステムの理解に乏しいため「必要だから使うしかないがリスクを見積もれないしセキュリティも語れないのでルールでがんじがらめにする」みたいな対応をすることが多く、USBメモリは使ったらだめ、クラウドサービスも使ったらだめ、あれもだめ、これもだめ、じゃあどうやって仕事しろって言うんじゃ!みたいなケースをよく見ました。

システムのことが理解できない上司の下で働くというのも、これもまたストレスが大きいことが予想されます。なんだかよくわからないですが、政治力なのか運なのか、全然システムやソフトウェアのことが分からないのに要職に就いてしまうというケースは本当によく見てきました。こういう人は自分が理解できないのは相手の説明が下手だからだと思っている節があったり、90年台Windows95あたりの知識で現役バリバリで戦えると信じながらでしゃばってくるので本当下の人間としては働くのに苦労したりします。

また、システム開発に関してもいまだにコードのステップ数や人月計算という、1980年台にすでに批判されていたようなメトリックで見積もってプロジェクト管理をしているような組織が多く、そういう組織だからこそ「人的リソースが足りない」と安易に考え、これからやろうとしているプロジェクトことに対してどういうスキルセットを持った人が何人必要かという計画も無いままに「とりあえずさー、人寄越してくんない?」的なテキトーさで人集めてから考えることにすっか、みたいなことを思ってるんじゃないでしょうか。

なんというかどこを向いても地雷原、硫黄島の洞窟で米軍の砲撃を耐えていた将兵たちはこういう感じの絶望を感じていたんだろうなと思います。

言い過ぎですかね。

ともかく、そのような組織には行きたくないと思う質問者様の気持ちは痛いほど分かります。じゃあどうしたら良いのでしょうか。

エドワード・ヨードンは著書「デスマーチ」で上手く行かないプロジェクトは大体うまく行かないことが容易に想像付き、そしてもしあなたがそのプロジェクトに取り込まれそうになって、どれだけ反論しても聞き入られないときは会社を辞めるしか無い。という趣旨のことを書いていたと記憶しています。

転職が容易な国であればそれもひとつの選択肢でしょうけど、日本ではそうもいきません。なんとか穏便に済む道を探したいところです。

私は同じような状況になったことが無いのであまり良いアドバイスは出来ないのですが、私ならばこうするというのを考えてみます。

まず、現職場で昇進の内示が出ているが、出向の場合は白紙に戻る可能性があるとのこと。これは質問者様にとって大きな不利益であります。出向の内示を取り消して条件の悪いところに異動させるのはどう考えても納得が行きません。これを盾に交渉するというのがひとつ方法としてはありうると思います。

そして具体的な解決には、質問者様のマネージャー(出向する人員をピックアップする権限のある人の意、以下単にマネージャーと記載)に「こいつを出向させるのは面倒くさそうだor不利益が大きい」と思わせれば良くて、そして簡単なのはどちらかというと「面倒くさそうだ」と思わせることですね。

おそらく、マネージャーは質問者様を出向させたいのではなくて、本社(もしくは上部組織)の指示を受けて人員をピックアップするという作業をしているに過ぎないのでしょう。

以上を踏まえ、私ならばまずマネージャーに直接正攻法で嫌だということを伝えますね。

  • 昇進が白紙撤回になる可能性を無条件に受け入れよという指示は納得がいかない
  • 本社はITリテラシーが低い人が多いと判断しており、そのような環境で働くのは自分にとってははっきりとストレスである
  • その他、本社だと通勤に時間がかかるから嫌だ、現在のプロジェクトを放置して出向という無責任なことはしたくないなどなどの理由があればそれを展開
  • それでも出向を指示するのであれば、昇進および昇給を確約させるなどの絶対折れたくない条件を提示・約束させ、さらに正式な書面に残す
  • 「絶対折れたくない条件」は最初過大と思える程度のものを提示して調整する

という感じのプロセスをとります。

この、書面に残させるというのが私は効果的だと思います。殆どの管理職は正式な書面として約束を残すのを嫌がります。書面として残すともう自分と当事者だけの約束にとどめておけず、自分ではコントロールできない部分が生まれてしまうからです。たとえば、出向後に自身が質問者様のマネージャーで無かった場合は、後任への引き継ぎが発生しますから負荷を与えることが出来ます。さらに、従業員のキャリアに重要な意味を与える約束を書面で残せというのは当然の要求であるから断る理由を見出すのは難しいです。すると、マネージャーは「こいつを出向させるのは面倒だ」と思うでしょう。すると検討対象から外れる可能性があります。

この件に限らず、仕事では「頼みごとをしやすい」と思われることは不利なことが多く(質問者様がそうであると言いたいわけではない)、そう思われないためには普段から要所要所で何かの意見に反論しておいたり、頼まれごとを渋る素振りを見せたりなどといった行動をしておくのが重要と思います。いじめっ子にいじめられないためには舐められないことが重要、というのと似ていますね。威厳は本人の能力によらず
普段の行動で作れるものと思います。

ただ、これが上手く行ったとしても他の誰かが犠牲になったり、マネージャーとの関係が悪くなったりということはあるかもしれません。が、そのあたりを管理するのも避けられないことではあります。これも「デスマーチ」からの引用ですが、エンジニアがどれだけ政治を嫌っても人が集まれば政治が生まれるから、政治とは付き合っていかなければならない、ということらしいです。