会社にいる困った社員

会社の愚痴が人気だったので、会社でみた変な人も書いてみる。
私の会社はそれなりに大きな会社なので極小数の変な人が目につくのか、それともわが社にそういう人が多いのか、どちらかは定かではないが、変な人はけっこういる。

風呂に入らない人

そのおじさんは顎がめっちゃシャクレていて、喋るときには「あ、あの。あのあのあのあの。」と吃音っぽくしゃべる人だった。吃音っぽいのであって吃音では無い。「あの」を連呼することが口癖になっているという感じだ。話すときはがに股になり、少し左右にゆっくりと揺れながら話すのが特徴的だった。

この人は風呂に入らなかった。夏場はとてつもない悪臭を放出していた。はっきり言うとホームレスの人特有の匂いである。きっつかった。皆が顔をしかめた。しかし「風呂に入れよ」と指摘する人は居なかった。関わりたくないのだろう。私も席がかなり離れていたので常日頃から困らなかったということもあり、指摘はしなかったし。でもたまに廊下やトイレなどですれ違う際には、こっそり息を止めていた。

そして良くない行為だとは思うのだが、そのおじさんの周囲にあからさまに消臭剤を多数配置するという嫌がらせをやっていた人がいた。誰がやっていたのかは知らない。しかしおじさんは鉄の心を持っているのでびくともしなかった。依然として風呂に入らないし、悪臭を放出し続けていた。もしかしたら単に消臭剤にも気づいていなかったのかもしれない。

そういう状況に見かねた部長が、「お前風呂に入れ」とついに命令したそうだ。就業時間での指令なので業務命令と言っても良いかもしれない。風呂に入れ、という業務命令。なかなか見ることが無い命令だ。しかし実際問題皆が迷惑しているのを正すのだから、正当な命令だと私は思う。

しかし、そのおじさんはなぜか激昂。ものすごいやり取りが展開されていたらしい。私はその場に居なかったのでどういう反論を主張したのか不明だが、しかし「お前臭いから風呂に入れ」という事実に基づく改善命令に対して一体どのような反論ができるのか想像がつかない。おじさんの主張をぜひ聞いてみたかった。

結果、おじさんの方が折れて「風呂に入るのもやむなし」となり、悪臭は収まった。しかしながらそれと時を同じくして、おじさんは居なくなった。話を聞くと、どうもおじさんは仕事も全然できなかったらしく、郵便物などを各所に配達するという雑務が割り当てられたらしい。もしかしたらそれはパワハラなのかもしれない。しかし何も仕事が出来ない人は確かに居るのであって、そういう人に最前線の重要なプロジェクトを担当させるわけにもいかないので仕方ないのかな、とは思う。

ちなみにこないだ久しぶりにそのおじさんを見かけたが、臭気が復活していた。

何もできない人

なぜか本当に不思議なのだけど、本当に何もできない人が社員の中にはいる。わが社はソフトウェア開発をメインに行っているが、まずコードが書けない。マネジメントができるかというとそれもだめ。じゃあ何かスキルはあるのかというと、「Windowsが触れる」「インターネットができる」くらいだったりする。

しかしながら、個人的には良くないと思っているのだけど、日本の労基法や判例は仕事が出来ないからといって安易に解雇しづらいようになっており、そういう人たちにもお給料を払わないといけない。だから管理者は何か、何でも良いから仕事をさせようとする。

なので、本当に誰でも出来るような仕事、たとえば「ここにあるパソコン一台一台に設備管理用のタグを貼って資産管理システムに登録しておくれよ」みたいなものを与える。ちなみに、資産管理システムへの登録、というのは、Webブラウザからシステムのページを開き、決められたことを入力してOKを押すという単純作業だ。しかし、これもできないらしい。

具体的には、「このページで『新規登録』をクリックして『資産番号』にタグと同じコードを入力して、『品名』はパソコンを選んで『OK』を押すんだよ」などと教えるのだが、これも数時間経つと忘れるか、違う事をやっているらしい。違う事をやっている時は何をやっているのかと問うと、「この一連の作業を効率化するためにExcel VBAで一括入力できるツールを作る」などと言っている。

しかし、そういった工夫のために費やす時間が、結果的に短縮された時間でペイできないからこそ人力作業になっているのであり、その人力作業は誰でも出来るのであり、ならば稼働率を上げるために何もできない君にやらせているのだよ、というマネージャーの意図が想像できないらしい。でもそれを指摘すると怒り始めるので、あきれつつ見守るのだが、それも途中でやめ、何も言わずに帰ってしまい、次の日には仕事を頼まれたという事実すら忘れてネットでゲームかなにかの情報を集めている。

私はこの人は発達障害か何かだと推察している。発達障害について文献などを調べると出てくるような症状に似た行動がみられるからだ。そして、そのような人は社内に何人かいる。発達障害だという診断がついて、たとえば障碍者手帳がもらえればその人にとっても会社に取ってもプラスになるはずだ。

だから、私としては一度診断を受けてみては、と言いたいのだけど言えない。言えるわけがない。「あなたは頭が変なので病院で診てもらった方が良いですよ」と言って、言われた側はなんと思うだろうか?大体怒るだろう。「人を精神病扱いしやがって」「人を馬鹿にしている」などと怒るだろう。

しかしながら私に言わせれば「あなたは精神病もしくは発達障害じゃないですか?」と言われて怒るという事実そのものがそれ偏見であると思う。なぜならば怒るという背景には、「精神病もしくは発達障害は良くない事」という思い込みがあるからだ。精神病や発達障害は脳の病気(障害)であって、本来、「あなたは精神病もしくは発達障害じゃないですか?」というセリフは「あなたは風邪ひいてるんじゃないですか?」と同等のもののはずだ。でも人は前者に対しては怒るという反応をみせ、後者に対しては「うーん、そうかもね、咳も出てるし熱っぽい」などと言う。これはアカンと思う。

アカンと思うが、私はいちいちそのような道徳や差別、偏見に関する講釈をするつもりもないし、こんなことは小学校で習うかもしくは日常生活の中で気付くべきことだと思っている。

すると、「あなたは精神病もしくは発達障害じゃないですか?」と指摘してしかるべき病院を受診するのは本人にとって(基本的には)良い事だと思うのだけど、「人を精神病扱いしやがって」「人を馬鹿にしている」と言われる可能性がある以上、わたしは言いたくない。それに、その人にとってはプラスになるかもしれないけど私にとってはプラスが無い。プラスが無いのにリスクがある。こんなことを正義感や老婆心に任せて一々指摘していたらきりがないし、私が変だと思われる。だから言わない。

おそらくこういう問題はどこの組織にでもあると思うのだが、本当難しい問題だと思う。

ちなみに、何もできない人ではなく、何もしない人というのもいる。

私が入社した時の庶務が「お局」みたいな感じの人で、本当に困った。冠婚葬祭の電報を会社名で打つ、退職するときの何とか共済会の手続きを代行するなどといった仕事のほとんどを新人である私が担当していた。いくら新入社員と言えども「これって本来庶務の仕事だよな」と気づかないほどに何も知らなかったわけでもないのだが、あのお局みたいな人にはむかったら絶対面倒なことになると思っておとなしくしていた。

血を吐く人

これは本当にびっくりした。その人はSさんというおじいちゃんだった。いや、正確に言うとまだ50代なのだけど、見た目は完全に80代のおじいちゃんだった。本人もそれを自覚しているらしく、「俺も先が短い年寄だからね」などと反応しづらい自虐ネタを連発してきていた。

SさんはC言語が得意だった。オブジェクト指向という言葉も名前しか知らないし、自宅にパソコンが無い、スマートフォンも持っていないという人だったが、関数ポインタと構造体を組み合わせてオブジェクト指向の多態性を表現したりするテクニックを持っていたりした(そこまでするならC++で組めよ、と言われそうだが、顧客の指定は絶対C言語で揺るがなかった)。Sさんの書いたコードは可読性も高いしバグもほとんど無かった。今の会社で尊敬する人の一人である。

また、Sさんはなぜか女性と仲良くなるのがすごく得意で、よく「どういうつながりで仲良くなってんの!?」という人と親しげに喋っているのをよく見かけた。

そんなSさんだったが、昔から「持病がある」「体調が悪い」などとよく言っていた。会社を休むことはほとんど無かったが、口癖のようにどこかが痛い、気分が悪い、などと言っていた。あれかな、老人特有の構ってほしくてぶつくさ独り言のように文句を言うアレかな、などと思っていたのだが。

ある日。Sさんが本当に具合が悪そうな雰囲気で、「ちょっと来てもらっていいかな」などというので、大丈夫ですか?なんか手伝いますか?と付いていったところ、トイレの手洗い場まで連れてこられ、「そこで見ていて」と言われる。何を?と聞こうとした矢先、「ボゲェー!!!」みたいな声を上げて1L位の血液を吐いた。私は驚愕した。誰だって「見てて」とか言われて目の前の人がいきなりボゲー!と真っ赤な血を吐き出した、なんて状況はビビるよな。

というか、出血量が半端ない。これはあれではないか。食道のところにある動脈が破れたのでは。聞いたことがあるぞ。ドクターKで見たんだったかな。ゴムパイプみたいなものを食道に入れてやって膨らませて止血するんだよな。緊急時だから自転車のタイヤチューブで代用した、みたいなエピソードだった気がする。えっ、というか動脈破れたんだったら、救急車じゃないか?というか動脈破れてなくても1Lも血を吐いたら救急車案件なのでは。

などと考えていたとこSさんは「だ…大丈夫…。胃潰瘍で…。胃に血がたまるんだよね…」などと言っていた。「マジで救急車呼んだほうが良くないですか?」と言っても、「いや、いい。今日は早退する」などと言い、ふらふらと帰って行った。次の日普通に出社して普通に仕事していた。

今でも疑問に思う。「見てて」って何だったんだろう。私に何を期待していたのだろう、Sさんは…。

ちなみに、過去形で書いているのは部署が変わってかかわりが無くなったから。死んだという訳ではない。今も普通に働いている…はず。