【質問#77】ハイブリッド車特有の危険性?について

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質問・悩み相談の回答です。

質問

こんばんは。以前質問#24で質問させていただいた者です。とても興味深いご回答でこういう考え方もありだなぁと納得しました。それとwithpopさんがミニバン嫌いと書いてしまってすみません。よく考えずになんとなく書いてしまっただけです。

さて質問なのですが、プリウスなどに代表されるハイブリッド車はそうでない普通のガソリン車と比較して感電などの危険性はないのでしょうか?「ハイブリッド 感電」で検索すると沢山ヒットしますが、正直なところピンとくる回答が見つからなかったので質問した次第です。

トヨタのレスキューマニュアルでは、ハイブリッド車は高電圧機器などの位置を表示しているので普通のガソリン車よりは危険な個所は多いと思います。また、レスキューにかかわる人もそのような訓練(切断してはいけない場所や絶縁保護具の装備など)を受けたと聞きました(聞いた話なのでソースはないですが)。その一方で実際に事故で感電という話は(報道しないだけかもしれませんが)聞いたことはないですし、もちろんメーカーもそんなことは十分対策をしていると思います。というわけで、ハイブリッド車は多少の事故では問題ないものの救出に車体の切断などが必要な大事故になると感電の可能性が出てくるかなというのが自分の認識です。これが真であれば、自分がガソリン車でもハイブリッド車との事故に巻き込まれれば感電の可能性は否定できないことにもなります。確率は相当低いと思いますが…。正直電気系の話には疎くてさっぱりなこともあり、withpopさんのお考えをきかせていただければと思います。

回答

それとwithpopさんがミニバン嫌いと書いてしまってすみません。よく考えずになんとなく書いてしまっただけです。

いえいえ、とんでもないです。私は評価が二転三転する一貫性のないおっさんですから、何かあっても「また変なこと言ってるなあ」と適当に流してくだされば幸いです。

さて、ハイブリッド車の危険性という点では私もあんまり知識がありません。なのでググりつつ、ググッて得た情報をさも私が以前から熟知していたかのように偉そうに語ってごまかすという手法を取ろうと思います。よろしくお願いいたします。

まず前提として、エネルギーを一箇所に集めれば(エネルギー密度が高くなれば)爆発の危険性は高くなります。ガソリンなどの化学的エネルギーであれ、二次電池であれ、燃料電池であれ、なんでもそうです。サムスンのタブレットが爆発して飛行機が遅れた、車が燃えた、などというニュースは記憶に新しいですが、すべての電池に限らず「何らかのエネルギー源」は本質的に爆発する危険がありますし、そこから取り出したエネルギー(つまり電気)に触れれば人体によろしくない影響が発生します。

感電などの危険性は無いのでしょうか

という問いに関しては、ご質問の中で半分答えが出ていますが、「感電のリスクはあります」が答えになります。仰るとおり、電気が流れている時にケーブルを切断すれば感電する危険性はあります。ですので、レスキュー隊が車両を切断する際には絶縁手袋などの装備をつけたり、ケーブルの位置を把握しておいたりする必要があります。その他にも、事故の衝撃により何処かで回路が短絡して発火する危険もあるでしょうし、電池が破損して電池自体から発火したり、有害な電解液が漏出したりするという危険性もあるでしょう。さらにやっかいなのは、ガソリンは目視や臭いで漏えいを確認できますが、漏電の場合は専用の道具が必要になるということです。

漏電の検査は下記記事などが参考になりそうです。

【JNCAP2013】実際の事故現場ではどのように漏電検出を行うのか

ですからメーカーも最大限安全側に傾倒した設計を行っているはずです。具体的にまずぱっと思いつくので危険そうなのはハイブリッドモーター用のバッテリからモーターに至るまでの配線ですね。この配線が切断されれば感電(漏電)の危険があります。特にプリウスに関して言えば、車両後部にバッテリが存在して前部にモーターが設置されています。後ろから前と配線長が長くなるほど事故時に感電の危険性は高くなります。一方で、たしかホンダのフィットだったかJADEだったか、センターコンソールの下部にバッテリを設置した車種もあったような気がします。

素人考えでは事故の衝撃を感知してリレー(や電磁開閉器)でバッテリからの送電を止める、という仕組みも出来るような気がします。そうすれば電線が切断されようと漏電には至りません。

…と思って検索してみた所、以下のような資料が見つかりました。

HV・EV技術解説 構造と整備(サンプル部分)

これを読むと、主要な安全対策として

  • 動力用電池のアースはボディーに落とさない(電池から独立したマイナス電源ラインを引く)
  • 電池にプラス側、マイナス側双方にリレーを設置する

という処置がなされているそうです。

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image from HV・EV技術解説 構造と整備(公論出版) P-13

さすがにボディーアースを取るような設計をしないのは当たり前にしても、素人が思いつくことは当然やっていますね。特に、プラス側、マイナス側双方にリレーを設置するというのは回路的にはどちらかが正常ならば電流を遮断することが出来るという安全側に傾倒した処置なのだと思います。…というか、良く考えたら、走行していないときにも常にケーブルを活線状態にしておくのもむやみに危険性を増してるようなものなので、特別な安全対策というよりは通常の常識的な処置に近い気がします。

で、このような構造により、

意識して感電事故を起こさない限り、なかなか事故は起きるものではない。逆に、事故が起きない設計としてある。

と記されています。「逆に」の意味が分かりませんが、私も漏電事故は非常に起きにくい構成であると思います。

ちなみに、水没したとしても人体に害を及ぼすほどの電流が漏電する可能性はほぼ無いと思います。実験してみないと正確な値は分かりませんが、直流200V程度ではたとえ比較的導電性の高い海水であっても感電するほどの電流は流れない気がします。たとえば下記の論文では、漏電電流が5~10ItA(海水)程度と記載されています。

自動車用リチウムイオン電池の水没時の挙動

ItAは定格容量で正規化した電流値なので具体的に何アンペアか、というのが導けないのが難しいのですが、そもそもこの実験では破裂や発火、発生ガスなどに注目して実験しているようなので、業界的にはやはり水没での感電というのは検討しなくても良い程度の電流しか流れないという結論になっているんじゃないかという気がします。実際、プリウスのレスキューマニュアルなどを見ても、「水没した場合は高電圧がかかっている可能性は無い」と断言しています。

さらに付け加えると、東日本大震災でも漏電事故は一件も無かったという話はネット上でも良く書かれています1

ここまでの話を踏まえ、もしハイブリッド車特有(感電など)の事故が起こるとすれば、電池そのものが破損するか、リレーが導通状態のまま固着し(たまたま事故の衝撃でリレー接点がくっつくような絶妙な角度で衝撃が伝わったとか)、その上さらに動力用電源ラインが破断するほどの衝撃が伝わり、その断面を触った場合などでしょう。現代の車でそのような事故が起こる可能性は非常に低い気がします。

以上を踏まえると、たしかにハイブリッド車にはそれ特有の危険性は存在するものの、我々一般市民が特別気にしなければならないほどのリスクであるとは言えないということになると思います。

救出に車体の切断などが必要な大事故になると感電の可能性が出てくるかな

車体の切断時には電源ケーブルも切断する危険性があるので、もちろん感電の可能性は高まります。しかしその際に感電事故が発生するようなケースは、

  • ハイブリッドシステム(車両電源)をOFFにしていない
  • サービスプラグも外していない
  • 絶縁手袋もしていない
  • 電源ケーブルの位置を確認せず切断した

という、訓練を積んだレスキュー隊員であればあるまじきミスを何重にも重ねた場合です。そして最悪感電に至っても、直流200Vであれば死亡には至らないと思われます。

自分がガソリン車でもハイブリッド車との事故に巻き込まれれば感電の可能性は否定できない

その通りですが、おっしゃる通り、可能性は非常に低いです。感電するためには+と-のバッテリ端子の間に人の体が回路の一部として組み込まれるような回路を形成しないといけませんが、事故によってそのようなことが起きる状態は想像がつきません。一般的には無視してよいレベルのリスクと考えます。


  1. ただし、これは肝心のソースが見つかりませんでした。どうも国沢氏のブログが発端のように見えるのですが、もしそれが正しいとすると、氏は関係者から聞いた話を「これは業界では当然のことですよ」みたいな感じでソースも明示せず書く癖があるように感ずるので、信憑性は「メーカーや保険会社の一人がそういっていた」程度かもしれません。とはいっても、もし感電事故例があったならばアンチプリウス派が大喜びで騒ぎ立てるはずなので、やはり「無かった(報告されていない)」可能性のほうがずっと高いのかな、と思っています。