【質問#75】「私はなぜCVTを嫌うに至ったのか」へのコメント

cvt_vs_sky

質問・悩み相談の回答です。

質問

相談ではないですが一番簡単なコメントの仕方かと思いましたので。

CVTの記事(私はなぜCVTを嫌うに至ったのか)を拝読しましたが、同一トルクではなく同一出力の際の比較が問題ではないでしょうか。
つまり、出力対回転数のグラフを用意してステップATで回転数が上がることでどれだけBSFCが悪化するか考察する必要があると思います。

※まだ続きがありましたが、誤りであったと連絡があったので削除しました。

回答

これ、最初ご質問を読んだ時は「出力で比較しなければならない」というのが良くわからなかったのですが、

cvt_vs_sky

original image from Air Flow Optimization and Calibration in High-CompressionRatio Naturally Aspirated SI Engines with Cooled-EGR

一番燃費が良い領域は206[g/kWh]ですから(めちゃくちゃ燃費いいぞこのエンジン?)、7%の悪化でだいたい220[g/kWh]となり、このラインをステップATが外していないとCVTを採用する意味はありません。すると、このように1700rpm~3000rpmあたりを外さないように変速すれば良いわけです。昔の3速や4速のATならまだしも、最近の5~7速に多段化されたステップATがこれを外すとは思えず、するとCVTを採用する理由そのものに疑問が生じます。

この部分ですか?

つまり、同トルクであってもCVTは同一回転数、ステップATは回転数が変動する。すると両者の出力は異なってくる。ということは両者の発揮しているエネルギーが違う。なのに[g/kwh]という単位で比較したらアカンのではないか。「kW」という次元を取らないといけないのではないか。そういうことですね?

なるほど。良くわかりました。しかしながらこれはスーパースペシャルMEGA-MAX面倒なのでやりたくありません。朝の出社と同等の面倒臭さです。BSFCマップの縦軸をkW/hに変換しなければならいからです。このBSFCマップの生データがあればPythonとNumpyとPandasというデータサイエンティスト三種の神器みたいなツールを使ってちょちょいのチョイーという感じで変換出来るのですが、画像データしかありません。しかもこれは二次元マップです。ますます値を拾うのが面倒です。だからやりたくありません。どうしてもと言うのならデータをください。

以上、ご査収ください。

…では、あまりにも不誠実だと思うので、面倒なりにも多少ごまかしつつ検討してみました。

縦軸を変換するのは面倒ですが、同一出力のラインを書くのはそこまで大変ではありません。マップを座標変換するのではなくて書き足す線のほうを変換してしまおうという発想です。

CVTの場合、140Nm/3100rpmで加速するとしましょう。すると45.4kWになりますから、このラインを引いて確かめれば良いわけです。

cd2

original image from Air Flow Optimization and Calibration in High-CompressionRatio Naturally Aspirated SI Engines with Cooled-EGR

するとこういう移動になります。

というわけで、2800 rpm ~ 3600 rpm辺りから外れないようにステップATが加速できれば、CVTを選ぶメリットは無いという結果になりました。これは前の見積もりからするとかなり狭まりました。計算してないですが、ステップATだと7速以上無いと無理かな?

ただこの見積もりはあまり現実的でないような気がします。加速するシーンにおいてステップATの車は回転数が上がるごとにスロットルを絞っていくような制御をするでしょうか?少なくともCX-5はそういう運転をしていませんでした(OBD-2コネクタの表示で確認)。

ECUがどういう制御をしているのか分からないのではっきりとは言えませんが、燃費を優先しながら加速していく場合は

cd3
original image from Air Flow Optimization and Calibration in High-CompressionRatio Naturally Aspirated SI Engines with Cooled-EGR

こういうラインを辿っていくのが普通なのではないでしょうか(参考:「【10/21更新】SKYACTIV-G 2.0のBSFCマップ。 (by もげ.様)」)。

そもそもCVTは出力と回転数、2自由度があるのに対してステップATでは出力方向への1自由度しか持っていないので、全く同じ条件の比較はできません。だから何をもって公平とするかという難しさがあります。

今回の方式(出力ベース)ですと、出力(仕事率)がおなじという点で公平ですが、ステップAT側がわざわざ燃費が良いゾーンを逸らすように制御しているという不公平さがあります。

前回の方式(トルクベース)ですと、ステップATは実際の制御に近いという公平さがありますが、両者の出力が一致していないという不公平さがあります。

ただ、トルクベースで計算したほうがより公平ではないかと個人的には思っています(感覚の問題です)。トルク一定ならば出力は回転数に線形比例することになります。すると積分したら(仕事=kWhを求める)均されてCVTとステップATは大体同じエネルギーを発揮するんじゃないかと思ってます。

…とは言っても、

  • やっぱり実際にどのような出力制御をしているか本当のところは分からない
  • 燃費がエンジン効率だけに依存するような仮定を置いている
  • そもそもCVT車にはCVTで運転するのに特化した特性のエンジンをのせるからBSFCマップは全然違うものになる
  • 同じエンジンを載せたとしてもCVT車はCVTに特化したセッティング(減速比、エンジン負荷制御)になり、ステップAT車はステップATに特化したセッティングになる
  • 本当に公平なのはその最適化が終わった状態で実車比較することではないか

というあたりのことを思います。これはあくまでもどんぶり勘定です。実車で変速機を二種類用意して比較するの難しいにしても、シミュレーションモデルを作って計算するということくらいは出来そうです。

今回、BSFCマップを手に入れたのでシミュレーションモデルも作れないことも無いのですが…。が…。が…。面倒なので…。気が向いたらやるかもしれません。

以上、解答になっているかどうかちょっと不安ですが、ご査収ください。