2016年10月版 ミニバン・ファミリーカー徹底まとめ&解説&比較(1)

そろそろ書いたほうが良いかな、と思ってきたので書きます。…が、書き続けたら6万文字くらいの大作になってしまいました。いくつかの記事に分けて公開していきます。

取り上げる車種

従来、ミニバン、それも中~小型に限定して記事を書いてきましたが、書くことも無くなってきたので幅を広げて「ファミリー層が買いそうな車種」にしてみました。より具体的には、「荷物が積める」「多人数が乗れる」「なんとなくファミリーっぽい」などといった基準により私が独断で取り上げる車種を決めています。

想定する読者

車にはあんまり興味が無いが、家族が増えたので車を買いたいor買い替えたいと思っている人、昔から車が好きで、独身時代は車高調を入れてマフラーも替えてホイールはインチアップしてバリバリ伝説だったけど、子供が出来てからはファミリーカーを買うのもやむなしという風潮が夫婦間に満ちており車好きとしては世界が暗い、という人などを想定しています。後者の人に対しては冗長と思われる説明も多いかもしれませんが、そこは読み飛ばしてください。

また、普段から当ブログをご覧になっている方におかれましては「まーたコイツ同じこと言ってるよ」と思う箇所も多いかと思いますが、そこもご容赦ください。

作者の主観

この記事は作者の主観が大いに含まれています(個人ブログなんてみんなそんなもんです)。これは、中立で無難な記事を書くよりは、筆者の思いを伝えたほうが面白いと思ったからです。

では、これで前置きを終えます。以降からが本題です。

タイプ

そもそもファミリー向けとされる車にはどのようなタイプがあるのでしょうか。まずはそこから考えていきたいと思います。

ミニバン

7~8人が乗れて高さがあり、スライドドアを装備した車種です。なぜ「ミニ」なのかというと、北米などで売られていた大型の「バン」よりは小さいからです。3世代の家族で暮らしているとか、子だくさんだとかで5人以上が乗る機会が多いという人はまず選択肢がミニバンに限られてきます。また、家族は5人以下であるがキャンプや旅行に行く機会が多く、荷物をたくさん積める車種が良いという人にもお勧めです。

室内が広く、視点も高いので運転していても開放感があります。また、特に5ナンバーミニバン以下の車種では見た目ほど運転が難しくはなかったりします。

欠点は他のタイプの車と比べると走行性能に難があるという点です。箱型で重心の高いミニバンはそれだけ不安定になりますし、車内の容積に重点を置いた車種が多いので、そのような車種では車のフレーム剛性も弱く、また重量もあるので、ハンドリングや加減速、すべてについて応答に遅れが生じます。つまり、ハンドルを切ったりブレーキを踏んだりしてもワンテンポ遅れた反応になってしまうということです。

しかしながら、ミニバンは基本的に飛ばしたり走りを楽しむようなコンセプトで作られてはいないので、そこは妥協する必要があります。カタログを眺めると「走りにもこだわった」とは書いてあったりしますが、しょせんは営業トークなのであまり期待しない方が良いでしょう。重さと大きさと重心の高さという物理的な制限はどうにもなりません。

また、安全性の面でもミニバンはその構造から難があります。スペースを優先した箱型という形が衝撃を受け流すようなフレーム配置を採りずらいですし、ノーズ部分(ボンネット部分)が短いので衝突時に潰れて衝撃を吸収する効果が弱いと言われます。また、後部座席がリアハッチに近く、リアハッチも平面的であるために追突された時に乗員が負傷しやすいという指摘もあります。さらには、先に述べたように重心が高いために、側面衝突時に横転してしまうような車種が多いと言われます(詳しくはJNCAPを参照してください)。

色々デメリットばかり書いてしまいましたが、各メーカーはそのデメリットを何とか軽減・解消させようと日々頑張って商品開発をしているという状況で、昔よりはこれらのデメリットもマシにはなってきているはずです。ともかく、ミニバンとは数々の犠牲と引き換えに圧倒的な車内の広さと乗員人数を確保した車です。

SUV

オフロード走行を意識したような見た目で、車高が高く、ヒンジ式ドア(普通のドア)を装備した車です。5人乗りが標準的ですが、7人乗車可能な車種もあります。昔はRV車と言われていました。

SUVは世界的に売れ筋のタイプであるため、各メーカーともに力を入れている車種が多く、どの車も完成度が高いです。荷室が大きい車種が多いですが、容積で言えばミニバンには負けます。また、現在のSUVと呼ばれている車種のほとんどは、見た目こそオフロード(or悪路)走行に適したような感じになっていますが、実際には前輪駆動であったりデフロックなどの機能が無かったりと、普通の車と大差なかったりします。

SUVはミニバンに比べると走りの点では優れる車種が多いです。足回り(サスペンション等)をしっかりと作っている車種が多かったり、ミニバンほど車内の広さを追求していないのでその分、フレーム剛性の向上などに力を入れたりしていることが理由です。

また、ミニバンと同じく視点が高いため、運転のしやすさを感じると思います。ミニバンに比べると全長が短い車種が多いので、バックで駐車するようなシーンは同じ最小回転半径であったとしてもSUVの方が小回りが利くように感じるでしょう。

本記事では、SUVは3ナンバー以上でそれなりに大きな荷室容積(だいたい500L以上)を持った車種のみ取り上げます(ファミリー向けというのがメインテーマのため)。

ワゴン

ハッチバックの後部荷室を延長したような見た目の車です。以前は選択肢も広かったですが、最近はミニバンやSUVに需要を食われてめっきり数が少なくなりました。ただ、外車だとそれなりに選択肢があります。乗車人数はほとんどの車種で5人までです。

走行性能やロングドライブ時の快適さにこだわった車種が多いです。走行性能で比較すれば、ワゴン>SUV>ミニバンといった傾向(あくまでも傾向)があります。

荷室は広く、SUVと同等かそれ以上のスペースがあります。

スライドドアの利点と欠点

スライドドアは子供の乗降りが圧倒的に楽になるという大きなメリットがありますが、欠点もあります。

まず、スライドドアは開口面積が大きいので、ヒンジ式ドアと比較すると車体剛性の確保という点で難があると言われています。また、構造も複雑になるので重量は増加しますし、電動スライドドアの場合はさらに重くなります。重量が重くなると、加減速や燃費すべてに悪影響を及ぼします。

さらに、電動スライドドアは両側を電動にする場合はオプションで追加料金(数万円~10万円以下程度)がかかったりします。電動でない場合は、子供がドアを開閉させるのは力が要るので難しくなるでしょう。

スライドドアが必要かどうか、というのはみなさん悩まれているようですが、個人的には要らないと思っています(ので私はSUVに乗っています)。あくまでも私の経験ですが、スライドドアが無いと乗降り出来ない駐車場というのはほとんど出会う事がありません。私の生活圏は多摩地域ですが、例を挙げるとすれば京王八王子SCの駐車場、立川ルミネの一番近い駐車場、国分寺の山水が入っている駅ビル(名前忘れた)くらいでしょうか。最近になってできたショッピングセンターなどは余裕を持って駐車場を区切っていますし、益々要らないような気がします。

5ナンバーと3ナンバー

ミニバンでは「5ナンバー車」と呼ばれるものに人気が集まっています。

日本国内では、車のナンバーの3ケタ数字部分の頭の数字は車両のサイズ(と排気量)によって区分が決まっています。エンジン排気量が2000cc以下、全長4700mm以下、全幅1700mm以下、全高2000mm以下の基準を満たした普通自動車は「5ナンバー」となり、3ケタ部分が「500」「530」など5から始まります。この基準値よりも大きい車は「3ナンバー」となり、「300」「330」などのナンバーになります。

特に販売されている車種で5ナンバーと3ナンバーの違いを生じさせやすいのは「全幅1700mm以下」という基準です。全幅とは車両を前もしくは後ろから見た際の幅です。

従来、日本では道路や駐車場が狭いというお国柄に合わせて5ナンバー以下の車が多かったですが、最近は自動車メーカーもグローバル販売を見越して大きいサイズで設計せざるを得ないという理由もあり、3ナンバーの車が増えてきています。

5ナンバーミニバンが人気である一つの理由は、全幅が小さいために運転(駐車)しやすいというものがあります。幅が広い車よりは狭い車のほうが運転しやすそうですよね?ただでさえ巨大なミニバンが狭い道ですれ違うとしたら…。運転が苦手な人は考えただけで嫌になるでしょう。

しかしながら、思い出してください。前述したように、ミニバンはどうしても重心が高くなりがちで、それが走行安定性を悪くしたり側面衝突時に横転を発生させたりします。全幅が狭ければそれだけ横転したり、カーブを走行中により傾きやすい(不安定になりがち)ということに繋がります。強風にあおられた時に傾きやすいという点もありますね。

それに、運転のしやすさは全幅のサイズだけで決まりません。ハンドルの軽さ、全長、最小回転半径、視点の高さ、視界、そういったものが複合的に合わさって「運転しやすい」「運転しにくい」という印象が決まります。

ですから、個人的には5ナンバーである車は「狭い駐車場にも対応している」というくらいの意味であると捉えたほうが良いと思っています。ぜひ、5ナンバーや3ナンバーという枠にとらわれずに検討を進めてください。ただ、ミニバンだと逆に3ナンバーの車種がほとんど無いので選択肢もかなり限定されてくるのですが…。

ちなみに、3ナンバーだからといって税金が高いということはありません。車にかかる税金は重量税、自動車税、取得税、消費税です。これらはそれぞれ、車両重量、排気量、軽/普通自動車区分、車体価格によって差がでてきますので3ナンバーは5ナンバーよりも税金が高いと言い切ることはできません。このあたり、勘違いしている人をたまに見ます。

経済的な車とは何か

家族が居ると何かとお金がかかりますよね。車だけにお金をつぎ込むわけにもいかないですよね。なるべく経済的な車を選びたいと思っている人は多いでしょう。そこで目につくのは…燃費ではありませんか?

でも、計算すると分かりますが最近のエコカーで燃料費の節約分を持ってして車体価格の差分をペイできる車種・走行条件はかなり限られてきます。このあたりは下記記事なども参照してください。

どちらが安い車なのかざっくり判断する
ハイブリッドカーはお得じゃない

簡単に言えば、車のトータルコスト(購入費用+ランニングコスト)を収めようと思ったらなるべく安い車種を買ったほうが良いです。高いお金をかけてクリーンディーゼル車やハイブリッド車を買っても、車体価格の上昇分をペイするためには年間2万kmくらいは走らないといけなかったりします。具体的な金額は車種によっても違いますが、「くるまくん」でだいたいの年間ガソリン代を計算できるのでつかってみてください。

ハイブリッド・ディーゼルは本当に経済的か

以降、本記事では何度もハイブリッドカー・クリーンディーゼルについて経済的ではないと指摘しますので、このあたりを実例を挙げつつ細かに説明しておきます。

例1:トヨタ ノアの場合

ハイブリッド車の場合、だいたい40~50万円程度車体価格が高くなってしまうようです。ノアの下位グレードを例にすると、

  • HYBRID X 2,996,509円 燃費: 23.8km/L
  • X 2,480,073円 燃費: 16.0km/L

となり、51万円の差があります。ここで書いた燃費はカタログ燃費ですが、特にハイブリッドの場合はこんなに走りません。実燃費はもっと下です。記事執筆時点でe燃費.comに投稿された実燃費データを引用すると、次のような値になりました。

  • HYBRID X 2,996,509円 燃費: 17.16km/L
  • X 2,480,073円 燃費: 10.69km/L

ここで、ガソリンを115円/Lとして燃料費の差額をいくつかの走行距離で計算します。下表の「車体価格ペイ年数」とは、ハイブリッド車になって高くなったぶんの費用を(浮いたガソリン代で)何年で回収できるかという意味です。

年間走行距離(km) 燃料費(HYBRID) 燃料費(非HYBRID) 燃料費差 車体価格ペイ年数
5,000 ¥33,508 ¥53,789 ¥20,280 25.5
8,000 ¥53,613 ¥86,062 ¥32,449 15.9
10,000 ¥67,016 ¥107,577 ¥40,561 12.7
15,000 ¥100,524 ¥161,366 ¥60,841 8.5
20,000 ¥134,033 ¥215,154 ¥81,122 6.4
25,000 ¥167,541 ¥268,943 ¥101,402 5.1
30,000 ¥201,049 ¥322,732 ¥121,683 4.2

ガソリン代が高くなったときはどうでしょうか。一時期、160円近くまで上がったときはハイブリッドカーが人気になりましたね。160円で計算してみましょう。

年間走行距離(km) 燃料費(HYBRID) 燃料費(非HYBRID) 燃料費差 車体価格ペイ年数
5,000 ¥46,620 ¥74,836 ¥28,216 18.3
8,000 ¥74,592 ¥119,738 ¥45,146 11.4
10,000 ¥93,240 ¥149,673 ¥56,432 9.2
15,000 ¥139,860 ¥224,509 ¥84,649 6.1
20,000 ¥186,480 ¥299,345 ¥112,865 4.6
25,000 ¥233,100 ¥374,181 ¥141,081 3.7
30,000 ¥279,720 ¥449,018 ¥169,297 3.1

日本での自家用車の平均走行距離は10575kmらしい(by 国交省 自動車の使用実態)ので、だいたい車体価格差の元をとるのに10年以上もかかってしまうことになります。大事に乗る人ならば10年以上乗るでしょうが、そうすると今度はバッテリーの劣化に伴う燃費性能の悪化や、バッテリ交換に伴う追加費用が掛かってしまいます。もし車を所有している時にバッテリ交換が発生したら数十万オーダーの費用が掛かりますので、またそれをペイするのに距離を走らないといけません。

一方で、「自分は年間2万kmくらいは走る」という人もいるでしょう。しかしながら、そのような人は高速に乗って遠くまで出かける機会が頻繁にあるというような使い方ではないでしょうか?高速道路になるとちょっと条件が変わってきます。

細かい話は省きますが、ハイブリッド車の燃費がガソリン車と比較してより良くなるのは市街地走行シーンです。高速走行中ではハイブリッド車とガソリン車の実燃費は接近します(条件が良ければガソリン車の方が良い燃費性能を発揮したとしてもおかしくありません)。つまり、上記表の「燃料費差」の部分が小さくなってしまいますので、実際の車体価格をペイする年数は上記表よりも長くなってしまいます。

ということで、なるべくハイブリッド車で経済性を生かそうと思ったら、市街地をたくさん走るというタクシーのような使い方をするのがベストです。市街地のみで年間3万kmくらい走行するような人は、上記表のとおり3~4年で車体コスト差を燃費向上分で元を取れるのでお得と言えそうです。しかしながら、自家用車でそのような使い方をする人が果たしてどのくらいいるでしょうか?

例2:マツダ CX-5の場合

クリーンディーゼルはどうでしょうか。ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも燃費が良く、さらに日本の税制上の都合から軽油はガソリンよりもだいぶ安いので魅力と感じる人も多いでしょう。CX-5を例にして計算してみます。

  • XD(ディーゼル) 2,835,000円 (カタログ燃費:18.4km/L, e燃費:13.89km/L)
  • 20S(2.0Lガソリン) 2,446,200円 (カタログ燃費:16.4km/L, e燃費:11.34km/L)
  • 25S(2.5Lガソリン) 2,673,000円 (カタログ燃費:14.6km/L, e燃費:9.86lm/L)

ガソリン価格が115円/L、軽油価格が95円/Lとして計算してみます。まずは、20SとXDを比較した場合です。

年間走行距離(km) 燃料費(ディーゼル) 燃料費(ガソリン) 燃料費差 車体価格ペイ年数
5,000 ¥34,197 ¥50,705 ¥16,508 31.3
8,000 ¥54,716 ¥81,129 ¥26,413 19.6
10,000 ¥68,395 ¥101,411 ¥33,016 15.6
15,000 ¥102,592 ¥152,116 ¥49,525 10.4
20,000 ¥136,789 ¥202,822 ¥66,033 7.8
25,000 ¥170,986 ¥253,527 ¥82,541 6.3
30,000 ¥205,184 ¥304,233 ¥99,049 5.2

次に、25SとXDを比較した場合です。

年間走行距離(km) 燃料費(ディーゼル) 燃料費(ガソリン) 燃料費差 車体価格ペイ年数
5,000 ¥34,197 ¥58,316 ¥24,119 21.4
8,000 ¥54,716 ¥93,306 ¥38,591 13.4
10,000 ¥68,395 ¥116,633 ¥48,238 10.7
15,000 ¥102,592 ¥174,949 ¥72,357 7.1
20,000 ¥136,789 ¥233,266 ¥96,477 5.4
25,000 ¥170,986 ¥291,582 ¥120,596 4.3
30,000 ¥205,184 ¥349,899 ¥144,715 3.6

これもまた、1万km程度の走行量であれば回収までに10年くらいかかってしまいそうです。

しかしながらディーゼル車はハイブリッドと異なり、高速燃費でガソリン車との燃費が接近するという傾向はありません。もし、年間走行距離が2万km以上になるような人はディーゼルを買って長く乗った方がお得と言えそうです。

ただ、ファミリーカー向けの車種だとそもそもディーゼルを選べるような車種がほとんど無いので、上記の議論はあんまり意味がなかったりします。

ハイブリッドかターボかディーゼルかNAか

最近はパワートレイン(車の動力源)もかなり選択肢が増えてきました。良く聞くのはハイブリッドですね。モーターとエンジンの二つで走る車です。減速時に本来捨てるエネルギーを回収できることと、エンジンの負荷をなるべく効率の良いところで回すという二つの方法によって燃費を削減します。しかしながら、ハイブリッドシステム自体が高価で重いという欠点もあります。

ハイブリッドの中には「マイクロハイブリッド」「マイルドハイブリッド」と呼ばれるようなものもあります。これは、ハイブリッドシステム自体をより簡素なものにして、コストや重量を軽減しつつ、かつ、燃費向上効果も限定的というものです。スズキのエネチャージや日産のS-HYBRIDが該当します。

また、ハイブリッドは燃費性能に優れるという利点のほか、低速から大トルクが発揮されるので速い(加速度を感じやすい)とも言われます。確かにそのとおりではありますが、特にトヨタのハイブリッドシステムではエンジン回転数と走行速度が一致しないために、「滑っている」ような違和感を運転者に与えます。アクセルを踏んだ時に得られる加速度もリニアではなく、車との一体感を感じにくくなっています。「ハイブリッドは低速からトルクがあるので走りも楽しいだろう」と期待している人は、試乗するときにそのあたりを注意して感じ取っていただければ良いかと思います。走りの楽しさは速さや加速度とはあまり関係がなく、操作に対する応答がリニアかどうか、つまり、運転者が意図した分のレスポンスが過不足無く得られるかが重要になります。

また、ここ数年でダウンサイジングターボという言葉も良く聞くようになってきました。もともとはVW(ワーゲン)がよく使用していた技術ですが、最近は国産車でもホンダや日産、スバルなどが導入を始めています。排気量の小さいエンジンを積み、サイズを小さくした分で機械抵抗などを軽減しつつ、ターボを導入してパワーも維持するという思想です。ターボは効き始めるまで若干のラグがあり、効くと急激なトルクの立ち上がりを発揮するので運転すると「この車は速い、パワーがある」という感想をもち易いです(実際に速いかどうかは別問題)。ターボの加速感が好きな人にはおすすめです。

クリーンディーゼルもここ数年で注目を集めたエンジンでしょう。従来のディーゼルエンジンは臭くてうるさく、排気ガスも汚いものでしたが、それらの欠点を解消したエンジンです。もともと、ガソリンエンジンと比較するとディーゼルエンジンの方が技術的には後発で効率も良いエンジンです。現代のクリーンディーゼルは厳しい規制に対処するためにパッと見では分からない最新技術がふんだんに投入され、先進的なデバイスに包まれた高価なシステムになっています。また、メンテナンス費用もガソリン車よりは高くなる傾向にあります。このために、ハイブリッド車とおなじく燃費向上効果で車体価格の向上分をペイするためにはそれなりの距離を走行する必要があります。

クリーンディーゼルやターボも低速(低回転数)でのトルクが大きいので、加速感を感じやすく、運転も楽しいと期待される方が多いと思います。ただ、繰り返しになりますが、運転の楽しさは加速度の大きさや速さとはあまり関連がありません。試乗するときはアクセルの踏み具合に対して得られる加速度が線形であるか(均等に変化しているか)を注意深くテストしてみてください。いきなり急加速を始めるようなセッティングになっていると運転が難しくなるだけです(速さを強調するためにこういうセッティングになっている車もあります)。

NA(Natural Aspiration)とは、ターボが付いていない自然吸気エンジンのことです。つまり、フツーのエンジンです。パワートレインの中での私のお勧めはNAエンジンです。

営業的には「ハイブリッド」「ダウンサイジングターボ」「ディーゼル」という分かりやすいキーワードが付随したほうが「だからこの車は燃費が良いんだ」「だからこの車はパワーがあるんだ」と消費者を納得させやすいのですが、その陰で着実に技術革新を続けてきているのが、ガソリンNAエンジンです。

利点としてはまず構造がシンプルなので価格が抑えられるという点が挙げられます。また、燃費面に関しても近年のミラーサイクルやEGR、アイドリングストップと充電電流制御といった技術を積極的に導入して低燃費性能がかなり向上しています。エンジンによっては、ディーゼルエンジンとそん色ないレベルに達しているものも存在します。

また、NAエンジンの応答は素直で良く回り、運転していて車との一体感を感じやすいというメリットもあります。車との一体感を感じるうえで重要なのは応答の線形性です。つまり、アクセルを踏んだら踏んだ分だけ過不足なくエンジンが回ってくれるという特性が重要です。ハイブリッドでは動力源が二つあるのでこの線形性を引き出すのは難しいですし、ディーゼルエンジンやターボでは過給器が効き始めるまでのタイムラグがどうしても発生します。

ただ、ミニバンの場合はパワートレインに多少こだわったとしても前述した重心の高さや剛性、重さなどもそもそも不利ですし、運転の気持ちよさはパワートレインの仕組みだけで決まるものでもないですから、最終的には人の好みで納得できるものを選んだ方が気持ちは良いとも思います。ハイブリッドやディーゼル、ターボという技術そのものが好きなのであれば、それは十分に購入する動機としては健全です。

用語集

以降の記事で使用する用語を簡単に説明します。理解を優先してあまり正確ではない表現をしているので注意してください。

馬力(ps): エンジンやモーターの仕事率です。仕事率が何かは高校物理の教科書を見てください。ざっくり言えば、馬力のある車の方が加速性能に優れます(必ずしも運転者が早いと感じるかどうかはまた別)。今はkwに統一されましたが、馬力表示もまだ残っています。
トルク(N・m): ある中心に対して作用するモーメントの大きさ。モーメントが何かは高校物理の教科書を見てください。ざっくり言えば車輪を回転させる力で、この値が大きいほど運転者は「速い」と感ずる傾向が強くなります。
パワーウェイトレシオ(PWR): 車両重量を馬力で割った値(kg/ps)です。
ターボ: 排気タービンを付加したエンジンを指す。無理やり空気を送り込んで実質的な排気量を一時的に向上させる仕組み。
ガソリン車: 本記事ではガソリン車を「ディーゼルやハイブリッドでない車」という意味で使います(ハイブリッド車もガソリンで走ります)。
ディーゼル: トラックなどに良く採用されている、「ガラガラガラガラ」という音が特徴的なエンジン。軽油という、ガソリンよりもちょっと安い燃料で走る。
サスペンション: 車の振動を吸収する、バネとダンパー(ショックアブソーバー)のセット。
ストラット: サスペンションの一方式。多くの車の前輪に採用されている。
トーションビーム: サスペンションの一方式。ミニバンやコンパクトカーの後輪によく採用されている。スペース効率とコストに秀でると言われる。
ダブルウィッシュボーン: サスペンションの一方式。高価格帯の車に採用される。スペース効率とコストはトーションビームに負けるが、乗り心地の点で優れるといわれる。
ミッション(トランスミッション):動力を車輪に伝える間に存在する伝達機構。変速を行う。自転車のギアみたいなもの。
CVT: ミッションの一方式。多くの車種に採用される。市街地走行では他方式と比較して燃費が向上するが、高速巡航燃費は他方式と比較して悪化する傾向がある。
MT: ミッションの一分類。マニュアル。
AT: ミッションの一分類。オートマ。本記事でATと書いた時は以降のステップATを示すと思ってください。
ステップAT: ミッションの一方式。最近のステップATはロックアップ付トルコンと遊星ギアを組み合わせたものが主流。
デュアルクラッチ: ミッションの一方式。マニュアルに限りなく近い特性を持つ。
ADAS: 先進安全装備。いわゆる自動ブレーキや車線逸脱監視/抑制、車両接近警告などの機能が含まれる。
オートクルーズ: アクセルを踏まなくてもセットした速度を維持し続ける機能。高速道路走行時に足が疲れない。
速度追従型オートクルーズ: アクセルを踏まなくてもセットした速度を維持し続け、前の車の速度にも追従する。高速道路走行時に足が疲れない。
荷室: 後部座席後ろの荷物を置くところ。セダンで言うトランク。
荷室容積: 荷室の容積。ここではVDA法という基準で測定した値を紹介している。
最小回転半径: ハンドルを目いっぱい切ったときに車が描く円の半径。小さいほど小回りが利く。
FF: 前輪駆動。前のタイヤにエンジンの力が伝わる。後ろのタイヤは前輪に引きずられていて転がっているだけ。4WDに比べて燃費性能に優れる。
4WD(AWD)  四輪駆動。全てのタイヤにエンジンの力が伝わる(そうでないものもある)。FFに比べて悪路走破性に優れる。たとえば、雪が積もった道などで有利。

次の記事では実際の車種を解説していきます。