MR. ROBOTの技術的内容を解説する(S1E8〜10)

以降、ネタバレを含むので、気にする人は読まないでください。

Season1 Episode8 eps1.7_wh1ter0se.m4v - ホワイトローズ

本エピソード以降は技術的な内容をほとんど含まないのでサクサク書き進めたい。

今回のエピソードで技術的な会話があるのはまず、ギデオンとタイレルが会話するシーン。ギデオンはネットワークにハニーポットを仕掛けたという。ハニーポットというのはその後の説明でも触れられているように、囮として用いるサーバーのことである。何か価値がありそうな、ハッキングしやすそうなサーバーをネットワーク上に置き、そのサーバへのアクセスを監視するという仕掛けだ。今回はハッキングを受けたCS30という名前のサーバーをハニーポットに仕立てあげたという。

それを聞いたタイレルは自分のPCで端末を開き、何かを打ち始める。最初に打ったのはsshというコマンドで、これはリモート(遠隔地)のサーバーに接続を行うコマンドだ。ユーザー名は「tyrell」となっている。次に打っているコマンドはfindというコマンド。これはその名の通りファイルやディレクトリ(フォルダ)を探す。コマンドが途中で途切れているのではっきりとは言えないが、ここでは「tyrell」のユーザー権限でアクセスできないディレクトリのみを抽出したいようだ。厳密にはディレクトリを探し、通常出力を消去しエラー出力のみを抽出するようなコマンドを書いているっぽい。こうすると、アクセスエラーになった項目だけが列挙される。

するとその中に「fdinfo」というディレクトリによく似た「fd1nfo」というファイルを見つける。それに違和感を感じたタイレルは続けて「fd1nfo」の中身を見ようとする。先ほどアクセス権限が無いとエラーになったディレクトリを閲覧できるのはおかしいと思うのだが、ここではなぜか見れてしまう。違うユーザーでアクセスしているのかと思ったが、プロンプト(端末左側にある文字列)には「tyrell」のユーザー名が書かれている。ここは単純な制作ミスなのか、そこまで厳密にこだわってはいないのか。

そして、「fd1nfo」の中に「fsociety」というファイルがあるのを発見する。このファイルはエリオットが自分のユーザーのみが閲覧できるよう権限を変更していたはずだが、表示されているユーザー名は「root」だ。所有者を「ESXXXXX」みたいな、従業員番号的なユーザー名に変更してた気がするんだけどな…。次にタイレルは「fsociety」の詳細情報を確認する「ls -l」を実行するが、これはなんか変だ。これを実行しても表示されるのは先ほどと同等の内容で意味がないように思える。

たぶん、「fsociety」はファイルではなくてディレクトリを意図しているのだと思われる。「fsociety」がディレクトリならば、これに対して「ls -l」を実行すれば内容が表示されるので辻褄があう。実際、「fsociety」の詳細情報を表示させた画面にはファイルサイズが4096と表示されているが、これはディレクトリの場合に表示される容量に等しい。ただ、ディレクトリであるという「d」フラグが左側に表示されていないからやっぱり通常のファイルのはずだ。これは間違いなのか、もしくはもしかしたら私が知らないだけでディレクトリを通常のファイルのように偽装できるような方法が何かあるのかもしれない。

ともかく、ここでやっているのはエピソード1で受けたクラッキングの痕跡を探している作業となる。操作ログなどを調べれば、ここからエリオットにたどり着く事も可能だろう。

続いての技術的なシーンはエリオットが自分の過去を調べようとラベルが書かれていないCD-Rを読み込ませたところ。LinuxからWindows仮想マシン(別のコンピュータを模倣する仕組み)を立ち上げ、DeepSoundを立ち上げた。これで、episode 1で解説した内容がはっきり判明する。DeepSoundとは通常のオーディオCDに偽装したCDの内部に暗号化したデータを保存するためのソフトウェアだ。その内部にはMR.ROBOT、つまりエリオットの父親の写真が沢山保存されており、エリオットはついに自分の正体を思い出す。

Season1 Episode9 eps1.8_m1rr0r1ng.qt - コピー

タイトルのミラーリングという語句には、(技術的な用語としては)私が知る限り二つの意味がある。ひとつはRAID1ミラーリングのこと。二つのストレージ(普通はハードディスク)に同じデータを書き込み、冗長性を高める。片方が壊れてももう片方は生きていればデータを救出できるという技術だ。工学一般にこうしてバックアップを用意しておくことを冗長化という。

もうひとつの意味は単にデータを別の場所に全く同じ構成でコピーすること。ネットワーク越しにコピーしたり、あるCD-ROMを新しいCD-Rにコピーしたりするシーンで使われる。このとき、単にコピーするというよりは「正確にコピーする」「定期的に同じ状態を保つ操作をする」という意味が込められている。

冒頭ではエリオットの父(MR.ROBOT)が自分のPCショップで電話を受けるところから始まる。「ペンティアムがお勧めで、800MBのハードドライブも付いている」という言葉から察するに、windows 95が発売されたかされないか、1995年前後の話ではないかと思う。(余談だが、この当時は私も劇中の子供時代のエリオットと同じくらいの年だったので、つまりエリオットの年齢設定は私と同じくらいなわけか…)

以降、この回ではタイレルがブチ切れたり落ち込んだりする楽しいシーンが続き、ついにエリオットと接触する。fsocierty、サーバー、コルビー、オールセーフ、すべての共通点はエリオットだという。確かにタイレルはエピソード1の会議で封筒を差し替える不自然なエリオットを見て疑ってかかっているから、その状態で状況を分析すればエリオットが黒幕の一人だという結論にたどり着くのは自然だろう。

そしてついにエリオットはタイレルに計画を打ち明ける。

見返して気づいたが、計画ではE Corpの取引履歴を暗号化した後に復号化のためのキーを捨ててしまうと言っている。私は綺麗さっぱり消してしまうものだと思っていたが、そうではないらしい。これは何を意味するかというと、暗号化されたデータはデカいコンピューターで時間をかければ元に戻せるという可能性を含んでいる。後々の伏線なのかもしれない。

仲間は居るのかと聞かれたエリオットは、仲間を守るためなのか、自分一人でやっていると応える。それを聞いたタイレルは「これからは二人だ。一緒に居るべきだと言っただろう?」という。タイレル好きの私からするとこのシーンはシーズン1で最も感動的なシーンだった。

Season1 Episode10 eps1.9_zer0-day.avi - 決行

タイトルのゼロ・デイとは一般的には邦題のとおり決行日を意味する。技術的には、ゼロデイ攻撃を連想させる言葉だ。ゼロデイ攻撃とは、ソフトウェアの脆弱性が発覚した際に、それを修正するパッチを適用するまえの隙を突いてハッキングを行う手法のことである。

今回のエピソードは解説が必要そうなシーンは一切ない。計画の実行の瞬間という重要な記憶を失ったエリオットが何が起こったのか知るためもがくシーンが続く。最後はドアがノックされるシーンで終わる。ドアをノックしているのが誰かというのは、シーズン2の終盤にまで持ち越される。