乗って分かるSKYACTIV-Gの低燃費技術

色々思うところがあったので書いてみます。

発電と充電

最近の車は充電制御を行うような車がほとんどのようです(スペック表を見ると、「燃料消費軽減技術」みたいな欄に「充電制御」という項目が付いているはずです)。私はOBD-2コネクタから車両センサ情報を取得して表示するようなデバイスを付けて観察しているのですが、面白いことが分かりました。

まず、加速中・巡航中に電圧が12.4~12.7Vくらいを示すことがたまにあります。これはつまりオルタネーターが発電していないのでしょう。オルタネータが発電しているときの電圧は14.0V前後だと言われます。オルタネーターが積極的に動作するのはブレーキを踏んでいる時です。シフトダウンしてエンジンブレーキをかけている時はあまり積極的にオルタネーターが回っていない印象を受けます。アクセルオフでエンブレを効かせているときもオルタネータは回して良いと思うのですが…。

また、電圧も13.0V付近、14.0V付近、14.7V付近の3パターンを示すことが多く、もしかしたら何らかの方法で負荷だけでなく電圧も制御している?のかもしれません。いや、もともと回転数変動によってオルタネータはこのくらい電圧変動してしまうのかもしれませんが。でも流石に1.7Vの幅は大きい感じがします。しかし測定方法もあまり信頼性が無いようなものに頼ってるので、まあ当てずっぽうに近いです。

自動車に搭載されているのは鉛蓄電池ですが、鉛蓄電池はこのように充電電流/電圧がころころ変わったり、減速時に一気に充電するといった方法には向いていません。向いていないのに鉛蓄電池がいまだに搭載されている理由は、おそらくコストやメンテナンス性の為だろうと考えられます。リチウムイオン電池は電池自体のコストが高いですし、充電制御回路も追加する必要があります。また、鉛蓄電池は細かく規格化されているので交換も用意ですが、リチウムイオン電池だと現段階では専用品を作るしか無く、バッテリ上がり時や交換時に面倒なことになります。ちなみに、プリウスも補機作動用に通常の鉛蓄電池を装備しています。

一番良さそうなのは「外部からは鉛蓄電池として使用できる鉛蓄電池のパッケージに制御回路ごと収められたリチウムイオン電池」を搭載するという方式な気がします。BOSCHあたりがそういうバッテリーの商品化を検討しているという記事を以前見かけたのですが、続報を聞かないので頓挫してしまったのかもしれません。

以前にも書きましたが、バッテリの酷使による早期のバッテリ交換によってアイドリングストップによる燃費向上分が吸い取られてしまうということは大いにありうる話で、このあたりはもうちょっとメーカーも何か対策を練ってほしいところですね。

シフトアップ/ダウンタイミングと負荷領域とバルブ開度

私が住んでいる八王子市は坂が多いです。八王子市というか、多摩地域は坂が多いです。もともと山だったところを切り開いて道路を通したり住宅地を作ったりして平成狸合戦ぽんぽことかいうアニメが出来るくらいに開発が進んだ結果ですね。ちなみに自宅の前で狸が走っているのを見たことがあります。

で、上り坂を走ると2.0L NAエンジンで1.5t弱の車体を引っ張るのはちょっとしんどいというシーンがたまにあります。「ダウンサイジングターボとSKYACTIV-Gを比較してみた」という記事にも書いたのですが、私はアクセルペダルの踏み代を一定で維持した状態であれば、多少の坂ならばシフトダウンせずにスロットル開度を開く様に制御して乗り切ってほしいと考えていました。なぜならばそのほうがエンジン効率は高い(スロットルが開くのでポンピングロスが減る)と思っていたからです。

しかしながら、アクセルペダルが電子スロットルの場合であれば、そこまでアクセルペダルを踏み込んでいない場合のドライバーの意図は「加速では無くて速度維持」であると見なすべきです。つまり、上り坂でアクセルペダルを一定に踏み込んだ状態を維持しているというのは低燃費運転を行うべきシーンであるにも関わらず、シフトダウンしてスロットルバルブを閉める方向に制御するということに違和感を感じていました。

ためしに、いつも通る坂で同じ速度を維持するようにアクセルを踏み込み、シフトはマニュアルモードにして3速、4速、5速あたりを使って走行した場合の瞬間燃費を比べてみました。すると、やはりより高いギアを使ったほうが瞬間燃費計は良い値を示します。つまり、先の制御方法とは矛盾する結果になります。

このあたりで私は「ハイギアでアクセルを踏み込む」のと「速度・勾配相応のギアで中負荷走行を心がける」のとどちらが良いのかよくわからなくなってしまいました。

…ということを考えつつ毎朝幼稚園・保育園へ子供を送っていたのですが、こないだTwitterでコメントを頂きました。それは、「現行販売車種の実用エンジンでは高負荷の方が燃費が良いということは当てはまらない」ということです。その理由は、ミラーサイクル・EGRの導入によって中高負荷時の効率が改善されているからということでした。私の感覚ではミラーサイクルやEGRはいまだ特殊なエンジンという感じがするのですが、確かに最近の販売車種のスペック表を眺めてももはやほとんどの車種に搭載されている当たり前の技術です。

で、現代の自動車用ミラーサイクル採用エンジンでは、ミラーサイクル(圧縮比<膨張比)で運転している領域は軽(~中)負荷領域で高負荷領域ではオットーサイクル(圧縮比=膨張比)で運転しています。ミラーサイクルは吸気バルブの遅閉じで実現しているので、ミラーサイクル運転を行っている領域では実質的な排気量は小さくなってしまいます。これでは「排気量の割に力が無い」と思われてしまうので、高負荷領域ではオットーサイクルを行い最大出力を確保する…という設計思想になっています(そのはず)。ちなみに、全域ミラーサイクルを行うエンジンもいくつか存在しており、有名なところでは先代デミオの1.3Lモデルとプリウス初めとするトヨタのTHS搭載シリーズですね。

で、私は下記のグラフ

image from 内燃機関の将来展望

を見て、「高負荷領域ではリッチもしくはリタードしてるから燃費が悪いのかも」と書きましたが、この点についても「そもそも現代の実用エンジンでは中高負荷領域の方が燃費が良いので高負荷領域が燃費が悪いのが普通」というコメントを頂きました。私はあのグラフを見て「高負荷領域で燃費が悪化している」と思ったのですが、正しくは「中高負荷領域で燃費が改善されている」という事だったわけですね。

「【アクセラ開発者への10の質問】Q6.スカイアクティブGが低燃費高出力を実現できた理由とは?」という記事を改めて読み直すと、「高負荷領域では圧縮比13のオットーサイクル運転でストイキ(理論空燃比)燃焼させている」と書いています。ですから、言わばSKYACTIV-Gの高負荷領域が本来の2.0Lエンジンの効率なわけで(それでも圧縮比(=膨張比)が従来のエンジンより高いのでその分の効率向上はある)、この領域で燃費が悪化しているわけではないという事ですか。そして、高負荷領域での圧縮比13でのストイキ燃焼を実現させるために、4-2-1排気を導入して掃気効率を上げ、ノッキングを対策したと。

また、他社の特性と比較してもそこまで変な形(高負荷領域で他と比べて顕著に燃費が悪化するような形)の曲線にはなっていないことも分かります。

2016-09-25-06-57-51

image from SKYACTIVエンジン開発

まとめると、やっぱりCX-5のシフトチェンジ制御は燃費の観点からいっても正しかったということですね。前の記事でも、グラフを見れば高負荷よりも中高負荷あたりの方が燃費が良いのは明らかなのですが、マツダに限らず自動車メーカーはグラフの軸をいじったり数値を書かなかったりするのが常態化してるのと、実際に高いギアで走行したときのほうが低いギアで走行していたときよりも瞬間燃費計の値は良かったという経験からあまり信じていませんでした。

じゃあ、高いギアで走行したときのほうが低いギアで走行していたときよりも瞬間燃費計の値は良かったという実体験は何なのかということになるのですが、これに関してはそもそも計測方法にかなり難がある(エンジン出力が同一であるという担保を感覚に頼っている、走行条件を完全に同一にはできない、など)ので、そもそもあまり信用に足る値ではなかったのだと思います。おそらく、ギアを上げたことで得られる加速度(=エネルギーの時間当たりの投入量)が減っただけというオチな気がします。

結論

色々考えましたが、やっぱり低燃費運転を心がけるならば下手なことはせず、ATを信じつつアクセルをそーっと踏むのが良さそうです。