【質問#60】 MAZDAがわからない。

質問・悩み相談の回答です。

質問

はじめましてwithpop様 いつもブログを楽しく読ませていただいております。
普通の40代サラリーマン、aporo13と申します。
MAZDAとそれを取り巻く環境がどうしても理解不能なので、質問というか意見をいただきたいと思い投稿しました。(*)MAZDAのネガティブキャンペーンではありません。
MAZDAの経営方針を見ますと要約するとオーソドックスに株主還元、利益販売拡大です。
これに対してメーカーがどうしてそんなことをするのか?しかし消費者がどうしてそのように反応するのか?
分からないことが下記の事項です。

①.9月1日にスカイアクティブ1.5Lディーゼルのリコールが発表になりました。数ヶ月前からデミオ、CX-3のノッキング問題が取上げられていました、6月28日に株主総会でこの件に関して調査中と回答をしました。
7月15日にアクセラは15XDを発売しました。2ヶ月たたないうちにリコールです。何故2ヶ月発売を延期しなかったのでしょうか?
⇒MC後アクセラは自動車HPでも絶賛されており、販売は好調で目標の3倍、40%はディーゼルとのこと。?

②.マツダコネクト、withpop様のブログでも取上げられていますが、未だ満足度が低い装置です。
米国ではこの装置が原因でMAZDAは魅力度、初期不具合では日本車最低ランクです。何故何年も改善しないのでしょうか?
http://super.asurada.com/cars/mazda/2016/29504/
⇒中国では7月、大幅に販売台数30%増。

③.ロータリー復活?①で2ヶ月でもアクセラ15Dを売りたかったのであれば、ほぼ採算が見込めないロータリー車を何故復活させようとしているのでしょうか?
④.販売時の値引きなしの方針を何故固執するのでしょうか?
  (ブランドイメージ?BMWでも値引きはいたします。)
⑤.毎年、年次改良の実施します。新しい技術をすぐに採用するとしておりますが、ユーザーには理解しがたいのではないでしょうか?マイナーチェレンジを実施してコストを下げたほうがのよいのではないでしょうか?

ここまで書きましたが、私がMAZDAの経営について語る資格なんて全くありません。
ただキャッチフレーズの「お客さまとの間に特別な絆を持ったブランドになることを目指していく」とい言葉に対して他の自動車会社と違い支離滅裂、理解不能なのです。
http://super.asurada.com/cars/mazda/2016/30020/

MAZDA車に乗っておられるwithpop様は上記の項目どのように思われますか?
また次期新型CX-5を購入希望ですか?

回答

今回のご質問を拝見しまして思ったのが、私は最近マツダにそこまで興味が無くなってきた理由についてです。私自身、はっきりとその理由を説明できないのですが、その背景には今回のご質問にありますような漠然とした不信感といいますか、ガッカリ感があるように思えます。

さて、ご質問にお応えしたいと思います。ただ、私も普通のサラリーマンなので、諸々の知識はそんなにあるわけでもないです。とりあえず思ったことを回答してみたいと思います。

①.7月15日にアクセラは15XDを発売しました。2ヶ月たたないうちにリコールです。何故2ヶ月発売を延期しなかったのでしょうか?

私は製造や流通を止めたくなかったからだと思います。

自動車の製造では在庫をなるべく持たないために厳格に管理されたサプライチェーンを構築しています。つまり、末端の部品製造工場から最終的に組み立てる工程まで必要なものが無駄なく滞りなく製造・配送することが重要です。

安易に製造ラインや完成した製品の流通を止めてしまうことは経営に多大なインパクトを及ぼします。部品の調達から全ての製造工程・流通にいたるまでのスケジュールが全て見直しになってしまう訳です。だから、事象として不具合を認識していたとしても、どの様な改修方法になるか分からないまま「とりあえず原因が分かるまでは停止させるか」という判断を下すのは難しいでしょう。

製造ラインは止めなくても、販売開始日だけ伸ばせば良いのでは?と思われるかもしれませんが、完成車の流通や完成車を保管しておく場所などもサプライチェーンの一つと考えられますから、あまり違いはありません。もう少しわかりやすく言うと、2か月分の完成車を保管しておくキャパシティに余裕を持たせることは経営資源の無駄だということです。

また、製造工場やその関連施設では車両の生産に適した設備はあっても修理に適した設備は整っていないと考えられます。であれば、修理の設備が整っている全国のディーラーに修理作業を依頼するほうが理にかなっているとも言えます。

ただいずれもこれはメーカーの都合の話であって、ユーザー側からしてみたら「ちゃんと対策してから売りだせよ」と思うのは当然のことと思います。ここらへんはメーカーがどれだけ顧客のことを思っているかと経営上の都合を天秤にかけているということになると思います。そのあたりの事情は外部からは推測することしか出来ませんが…。

一方で、ユーザーの死亡事故につながりかねないような問題があれば、そのときはさすがに損失を受け入れて発売日を延期するとは思いますが。

②.マツダコネクト、withpop様のブログでも取上げられていますが、未だ満足度が低い装置です。
米国ではこの装置が原因でMAZDAは魅力度、初期不具合では日本車最低ランクです。何故何年も改善しないのでしょうか?

単純に、カーエンターテイメント・インフォメーションシステムの商品開発を担当する部門にやる気が無いからだとおもいます。

この項は特に私の憶測が強い回答になります。マツダに限ったことでは無いのですが、日本のメーカー(車に限らず)はおしなべてソフトウェアを軽視しているか、ソフトウェア開発を重視していても間違った方向にベクトルが向いています(グローバルスタンダードを無視してガラパゴス化に突進するなど)。私の会社でもそうですが、「ソフトウェアはハードウェアのオマケみたいなもの」「ソフトウェア開発なんて馬鹿でもできる」のような考えを持っているエンジニア・管理職が結構な数いますし、同業他社の話しを聞いても似たり寄ったりなようです。比較的マシなのはソニーと感じていますが、それでも「マシ」です。逆にとても優れていると感じたのは台湾Synology社(NASを製造)でした。

ともかく、ソフトウェア軽視の傾向があるメーカーは製品開発後の対応がひどく、自社製品もソフトとハードは一体で構成されている「箱モノ」の工業製品だと認識しているので、ソフトウェアの柔軟性を生かして製品発売後も継続的にアップデートを重ねて機能向上させてあらたなユーザーを獲得するという発想が全然ありません。すでに出荷した製品に搭載されるソフトウェアの改修は「保守コスト」とみなしてむしろ低減させることが良いと考えているんじゃないでしょうか。

マツダに関しても「カーエンターテイメント・インフォメーションシステム」というソフトウェアの力で商品性が大きく左右される部分を軽視していたのが原因と私は考えています。その背景には、前述のようにソフトウェアを軽視するような文化があったからなのではないでしょうか。

なぜ軽視していると判断したかと言うと、こだわりを全く感じないからです。マツダコネクトはOpenCarという開発フレームワークで構成されています。少し専門的な話になりますが、OpenCarはJavaScriptとHTML5というWebで良く使われる標準的な技術でアプリケーションの実装を行えるということが一番のウリです。技術者を確保しやすく、開発スピードも早くできるようなフレームワークを採用しておきながら、実装された機能は音楽再生と車両設定程度で、あたかも「最初についてきたサンプルアプリをマツダ風にモディファイしてみました」的な出来で、全くこだわりを感じません。私が同様の環境を与えられたらもっともっと色々なアプリケーションを作りたくてたまらないと感じますが、そういった意欲も感じません。だいたい、「コネクト」を標ぼうしているくせに今日の天気すら表示できないんですよ。そのあたりは全部「インターネットラジオを聞いてね」という思想です。ラジオを聞いて天気を知るとかいつの時代なんでしょう。なめてるのでしょうか。そもそも対応しているインターネットラジオ局であるAha自体が、日本人向けのコンテンツに乏しく、純粋に音楽を聞くという利用方法に限っても不満が残る始末です。

また、中身のソースコードを見てみたこともあるのですが、そのコードの品質もとても高いようなものには思えませんでした。担当部署にコードがバリバリ読める&書ける&モダンな技術への理解がある人が居ないままオフショアに出しました、みたいなコードでした(←完全に憶測です)。

もっとも、マツダはトヨタやホンダと違って自社標準のナビゲーションシステムを開発した(外注した)経験もないでしょうから、完璧なものを求めるのは酷だとは思いますが、それでももうちょっと何とかならんのかといちユーザーとしては思います。

ここ10年くらいのマツダの成功パターンというのは、SKYACTIVEや鼓動デザインといった、外観を含む車そのものの性能・魅力がベースとなっていましたので、インフォテイメントシステムというのを軽視している傾向もあったというのがその背景なんじゃないでしょうか。マツダコネクトが登場するまでは社外ナビをオプションでつけるという対応でしたから、その間はユーザーに不満が芽生えることもありませんでした。つまり、マツダはインフォテイメントシステムに関する技術を外部から「買っていた」とみなすことができるのですが、その実質的な負担は車を買った顧客が負うので、マツダはいわばインフォテイメントシステムについては「タダ飯」を食うことが出来ました。そういう状況を正しく認識できていなかったんじゃないかと思いますね。ずっとタダ飯食らってたやつがいきなり次の日から皆を満足させる飯を作ることは出来ないでしょう。完全に想像ですが。

また、ネットではAndroid AutoやApple Car Playへの対応が計画されているとの情報も良く流れています。これが真実であれば、これらを導入していい加減ケリを付けたいと注力しているのかもしれません。

まとめると、

  • 当初からやる気が無いので保守もやる気が無い
  • 今までの成功の要因が車そのものの基本性能や走りに関わる部分だったのでその他の要素を軽視している
  • すべてを諦めてAndroid Auto & Car Play対応で終わらそうとしている

というのがマツダコネクトを改良しない理由なんだと思います。

③.ロータリー復活?①で2ヶ月でもアクセラ15Dを売りたかったのであれば、ほぼ採算が見込めないロータリー車を何故復活させようとしているのでしょうか?

ロータリーの復活は何度もネット上の記事で取りざたされていますが、私は、ロータリーエンジン搭載車が再び登場する可能性は低いと思っています。以下のような記事がありますが、この内容に同意します。

【論説】ロータリー・ファンには申し訳ないが、マツダ「RX-VISION」は実現しないだろう

ロータリーエンジンは乗り越えなければならない技術的・社会的障壁が大きすぎます。採算の取れるラインにまで載せるのは至難の業であることをマツダ自身が認めています。

それでもなぜ開発を進めるのか?というご質問なわけですが、私もよく分かりません。少なくとも経営的に見れば、貴重な開発リソースを採算が見込めそうにもない商品開発に投入しているわけですから、私が株主だったらそんなことは止めろと言います。というか、そう思っている人は多いと思います。

一つ考えられる理由としては、唯一マツダだけが商品化出来た自動車用ロータリーエンジンはマツダを象徴するアイコンの一つだからという考えが内部には根強いから…というありきたりな回答が思い浮かびます。そして、ロータリーの復活と言うストーリーを経て、マツダというブランドそのものの価値向上を狙っているのでは。

ただこれが正しかったとしても、私が思うにロータリーの復活はイメージ戦略という面でも大した効果が無いように思います。今のマツダ車のユーザーというのはSKYACTIV開発以降にマツダのファンになったユーザー層が多いですし、当時ロータリーエンジンを乗っていたような層も年を食ってますから、果たしてスポーティーな車に乗りたいと思うユーザーがどれだけ残っているでしょうか。

もっとも、マツダがSKYACTIVE以降で成功したのはそうして全体のユーザーの満足度が向上するのを狙った最大公約数的な車づくりを止めて、車が本当に好きなコア層を狙ったことが基礎になっているという背景もあります。ただ、SKYACTIVが車の基本性能を向上させることを論理的に追及しているから結果として多くのユーザーが魅力的と感じる車に仕上がったのだと私は思います。それに対して、そもそものロータリーエンジンのメリットとは容積/出力比が小さいというどう生かしてよいか良くわからない特長ですから、同じようにヒットするとは思えません。

というわけで、採算性は見込めず、ブランドイメージ向上という点でも効果が疑問なものに経営資源を投入し続けるのはやっぱり不可解で、私も意義が分かりません。

一方で NSXのようなスーパーカーを作るというのはある程度意義があるように思います。1000万円前後するようなロータリースーパーカーをもし作れば、将来の顧客を育てるという観点では効果があるように思います。もっとも、費用対効果の観点では完全に悪手だと思いますが。

④.販売時の値引きなしの方針を何故固執するのでしょうか?

今回のご質問にも限らず、ネットでは「値引きをしなくなった」という報告をよく目にしますが、正確には「値引きが渋くなった」じゃないのかな?と考えています。私がCX-5を購入した時は「鬼値引きは健在なのでは」と思う程値引きしてくれましたし、知人がマツダ車を買った時も値引きしてくれたと言っていました。価格.comの値引き報告を見ても、ある程度は値引きしてくれるみたいです。ともかく、現在でもちょっとは値引きしてくれるというのが正しい気がします。販売店によって違うのかもしれませんが…。

ただ、傾向としては高くなっていることは紛れもない事実です。以下はマツダの個人投資家向け説明資料の一部です。個人的には、こんなもん堂々と見せびらかす資料じゃなくて、もうちょっと遠回しに表現してもらいたいと思うのですが。まあそれはさておき。明らかに高くなっていますね。軸に値を書かないのはマツダに限らず自動車メーカーのお家芸ですが、しかし、もし前後のグラフで軸が同じだとしたら相当な高価格化のように思えます。

mazdacost

さて、マツダは「正価販売」と称してブランドの確立とともに販売価格を高めてきました。今まで不当に安く売ってしまったのでそれを改めたいという理由です。これは納得のできる説明のように思えます。私はマツダ車は値段の割に作りが良いと3代目デミオが発売されたあたりから感じていましたが、それは言い換えれば「商品の質に比べて価格が安い」ということです。ですから、値引きが渋くなったことは残念ではありますが、まあ仕方ないのかなと思います。ただこれが「値段相応」から「ちょっと高い」になった瞬間にユーザーは離れていくと思いますが。

「価格相応」から「車の本来の価値よりも高い値段設定」になっても製品が売れるという状況はブランドやネームバリューで売っているという状況と言って良いと思います。マツダはよく「ブランドの確立」みたいなことを言っていますが、私が一番危惧しているのはここです。マツダは「価格相応」を目指そうとしているのでしょうか。それとも、高級外車のように「車の本来の価値よりも高い値段設定」を目指そうとしているのでしょうか。後者ならば、少なくとも私は二度とマツダを買いませんし、日本国内では同様の考えの人は多いでしょう。海外はよくわかりませんが。

⑤.毎年、年次改良の実施します。新しい技術をすぐに採用するとしておりますが、ユーザーには理解しがたいのではないでしょうか?マイナーチェレンジを実施してコストを下げたほうがのよいのではないでしょうか?

度重なる技術革新によって、ライフサイクルが長い自動車でも技術は日進月歩で進み、新技術をタイムリーにリリースするための素地も整ってきています。現場営業の視点からも、ユーザーにとって分かりやすい優位点や売り文句があった方がありがたいですから、そこを追い求めてしまうのではないでしょうか。他社が先行して競合する優れた技術を採用した車種を発売したら、追従して対抗せざるを得ないという事情があると考えられます。

もちろん、ご指摘のように他社に対抗するポイントがコストダウンであっても良いはずですが、マツダはその方向に向かって「マツダ地獄」を形成してしまったわけですから、そのような判断を下すのにはかなり抵抗がある(つまり、マツダ地獄に対する一種のアレルギーのようなものがある)のではないでしょうか。たぶん…。

また次期新型CX-5を購入希望ですか?

CX-5をまた買うかどうかは分かりませんが、高い確率で買わないと思います。商品に不満があるわけでは無く、下記のような理由があるためです。

A.マツダはブランド化を進めて価格が高くなっていく傾向にあるため。私が買った時、CX-5 20Sは値段の割に機能が優れた良い車でした。私の車を選定する基準でもっとも重視するのが「コストパフォーマンス」です。良いものを買える収入があるから良いものを買う、などという考えでいたら、どれだけあっても金が足りず、資産形成もできないでしょう。

B.今のCX-5を私は10年くらいは乗るつもりでいるため。これは前述のとおり経済的側面もありますが、車の走行性能は今後劇的には良くならないと考えているためです。90年台の車種と2010年台の車種を比べると、何だかんだでかなり進歩しました。昔の車は速度を上げると不安定さが増してアクセルを踏み続けるのが怖くなるような車が多かったですが、今の車は高速走行時も安定しています。

ADASや自動運転技術は日進月歩で進化していますが、中途半端な自動運転技術はむしろ危険と個人的には考えているため、人間がスタンバイ系としても不要になる完全な自動運転を実現できるような車種が出てこない限りは(自動運転という視点では)買い替えの動機になりません。このあたり、思うことが色々あるので別途記事にしたいと思います。

C.マツダがそこまで好きじゃないため。私は3代目デミオ~SKYACTIV第一世代が出そろうあたりの、コストパフォーマンスに優れたマツダの商品群が良いと思っていますが、その後もマツダというネームバリューでマツダの商品を買い続けるほどファンではないです。ですから、今乗っている車の後継だからという理由で次期CX-5(や後継車種)を買うことも無いと思います。

というわけで、一言で言えば「そこまでマツダにこだわりが無い」ということになります。いや、「無くなった」のかもしれませんが…。

「お客さまとの間に特別な絆を持ったブランドになることを目指していく」とい言葉に対して他の自動車会社と違い支離滅裂、理解不能なのです。

私はこの点に心から同意します。マツダの言う「特別な絆」「ブランド」とは何なんでしょう。はっきり言えば、SKYACTIVEと鼓動デザインからなるフルモデルチェンジ戦略で車が売れたことによって天狗になってんじゃないでしょうか。マツダが描く顧客との関係はどういうものなのか、もうちょっとはっきり示してもらいたいですね。