MR. ROBOTの技術的内容を解説する(S1E2)

以下、ネタバレを多く含みます。

Season 1 Epsode 2 eps1.1_ones-and-zer0es.mpeg - 「1かゼロか」

さて、今回から一気に専門的内容は薄れてキチガイの世界へと徐々に踏み込んでいくことになる。

タイトルの「1か0か」というのは、知っている人も多いと思うがデジタルの世界を表している。デジタルデータは基本的に0と1の列で表現される。音楽データも、写真も、映像データも、テキストも、インターネット上のWebサイトも、元をたどればすべて0と1で表現されている。

本編で最初に印象に残ったのは、エリオットがタイレルについて調査を行い、「まさか、ハッキングされることを予期して予め手を打っておいているのか?」と気づいた直後、ためらうこと無くPCやSIMカードを破壊し始めるシーン。これはアクセス者の特定を恐れ、対処したものだと思われる。確かに、物理的なデバイス(部品)に振られた固有のIDがネットワークを通じて相手方に伝わることはあるにはあるが、そのIDから相手がどこの誰かを判別するというのは非常に難しく、むしろIPアドレスから相手を割り出すのが正攻法だろう。だから、エリオットの対応はいささか過剰反応のようにも思える。これも演出の一つだろう。

続いてはMR.ROBOTがスティール・マウンテンと呼ばれるデータセンターを爆破するという計画を説明するシーン。MR.ROBOTはPLCをハッキングして工場のガス圧力をあげて爆発させると言っている。PLCというのはパソコンよりもずっとシンプルで、工場やプラントの制御に使われるような単純な仕組みのコンピュータの一種だ。
MR.ROBOTは簡単にハッキングしろと言っているが、これは容易ではない。まず、こういった類の制御システムはインターネットに接続されていない。接続する必要が無いからだ。だからハッキングは現場に侵入して行う必要がある。また、プログラミングをおこなう言語もマイナーだったりメーカー独自の仕様が含まれていたりということがよくあるから、インターネットのサイバーセキュリティエンジニアであってもすぐに理解できる代物だとは思えない。なによりも、プラントの構造をよく知っていなければ「圧力を上げて爆破させる」なんてことは不可能で、化学か建築の専門知識も必要になってくるだろう。だから、限りなく非現実的なプランだと思うが、まあこれも演出の一種だろう。

続いてはオリーがもらったCDが再生できないと文句を言っているシーン。実はこのCDはウィルスが含まれており、シスコ(CDを押し付けてきたラッパー)がパソコンに設置されたWebカメラを通じて盗撮をしている。ちなみに、シスコ(Cisco)というあだ名はネットワーク機器メーカーの名前。

Windowsはたいへんおせっかいなことに、PCに挿入したUSBメモリやCD-ROMの内容を走査して勝手にプログラムを開く機能がある。これは、購入したパッケージソフトなどのインストールの手間を省くために搭載された機能だが、これを悪用してUSBメモリを差し込んだ瞬間に実行されるようなウィルスが一時期かなり流行った。現在でもよく見るウィルスの形態の一つである。近年のバージョンのWindowsではさすがに勝手にプログラムを実行するようなことはなくなり、確認のウィンドウを表示するようになったが、一部のユーザーは従来通りの操作を求めて自動実行を許可したり、出てきたウィンドウを確かめもせずクリックする人も居たりして未だに引っかかる人は多い。シスコのウイルスもそのパターンの一つだ。

なんとか実行させてしまえばあとは簡単だ。Webカメラを読み取って映像を盗み取るようなプログラムは簡単に作ることができる。…と書くと恐怖心を抱くユーザーも多いと思う。これを見ているユーザーの何割かは、目の前にWebカメラが存在しているだろう。そんなときはWebカメラのレンズの近くにあるLEDランプを確認してほしい。これが光っていればWebカメラが撮影中であることを示している。これを消灯したまま撮影を行うことは私が知る限り、不可能である。一部の製品ではそういうことが出来てしまうかもしれないが…。

第二話はこんな感じで終わり。一気に説明が減った。