首を締めて人を殺す夢

そういう夢を見たので書いてみる。今回の夢はスマホに保存したメモが消えてしまったのでうろ覚えの部分が多い。

私は実家近くの道の駅に寝泊まりしており、たまに車で買い物に出かけるという生活をしている。その夢の中では国家が崩壊していて無政府状態になっており、警察があまり有効に機能していないような状態であった。町の単位で小さな自治組織が構築されているものの、基本的には自分の身は自分で守らなければならないという状態だった。

私も車の中には自動小銃と拳銃が保管されていて、いざとなったら自衛できるような準備をしている。そして自分はただの市民ではなくして、別の都市から送り込まれたスパイである。この町の情勢を逐一報告する任務を与えられている。

そして自分には相棒が居る。背の低い女で、我々はカップルを装っている。その方が目立たないためだ。自衛には過剰と思われる装備(自動小銃)を所有する理由にもなっているとのことだけど、もちろん銃器のたぐいは人に見せたことはなかった。

私はある日久しぶりに古い友人と会い、世間話のような感じでこの街の状況に探りを入れた。話していることは日常の範疇であるが、古い友人を騙すような感じがしてひどい罪悪感を感じた。

それでまた道の駅に戻り、ねぐらとしている倉庫に入ったところでそれは起きた。ぱっと明かりが消えて銃を持った男が3人突撃してきた。おそらく、電線をカットしたのだろう。我々はすぐに応戦し、一人を射殺、一人を取り逃してしまったが最後の一人は捉えることができた。その一人に尋問を加えると、「お前たちは二重スパイなのだろう。その証拠に、俺は見たぞ。お前たちがこの町の住人と内通していた」と言う。どうも、その古い友人と会話していたことを指しているようだ。

ここで我々はいくつかの取りうるオプションがある。ひとつは二重スパイであるという誤解を解くということであるが、これはまず難しいだろう。すでに一人を射殺してしまっているし、逃げたもう一人が応戦したと上層部に報告しているだろう。この時点で我々は同胞を殺したことに違いはない。そもそも明かりを消して突入してくるということはすでに射殺命令が下っていることは確実で、この状態から誤解を解くのは容易ではない。それに、我々には思い当たる節があった。我々の上司にあたる某は思い込みの激しい性格であって、時折、敵性組織との内通者であると仲間を疑っては粛清を繰り返すという困ったちゃんであった。

もうひとつは我々が所属する町を去り、別の町、たとえば今滞在している都市に助けを求めるという方法もある。しかしこれも上手く行かないだろう。そもそも我々が銃撃戦を繰り広げたという事実はすでに他にも知れるだろう(道の駅には多数の人が出入りしていた)。そのとき、銃撃戦が発生した合理的理由を説明するのは不可能だ。皆、疑心暗鬼になっている。疑わしきは射殺するのが最善の世である。

最後の一つは全く別の街、追手が及ばない遠く離れた場所に逃げることである。これは包囲網をかいくぐるというリスクがあるものの、成功すれば比較的安全な暮らしを送ることができる。

私は相棒の目を見て、彼女もそれを一瞬で察知したようだった。「こいつは殺す」とあっさり相棒は尋問していた相手を射殺。ハーグ陸戦条約は誰も守っていない。

それですぐに荷物をまとめて倉庫の裏口から出た時だった。逃げていった一人がまた戻ってきて、何かを喚きながら銃を乱射している。しかしながら、照明を落としたことがあだとなって我々とはまったく別の方向を銃撃している。そればかりかアホのようにオーバーアクションで銃を振り回すので月明かりでも位置がまるわかりであった。相手は興奮していてこちらの位置がほとんどわかっていない。この隙に逃げるべしと二人でその場所を後にした。

代掻きの終わった田んぼを抜けて用水路のなかを身をかがめて通り、空が白んできたころに我々はまた往来に出て歩き始めた。市街地に入ると朝早いにもかかわらず人でごった返していた。そこを通り抜けたあたりで相棒が「つけられている」と言った。どうも尾行者がいるらしいが、キョロキョロと見回すわけにもいかない。「この先に廃墟があるので、そこに入ったところで殺そう」というので了承。

あちこちをぐるぐると周り、さらには細くて人通りが少ない道に入るが、一定距離を保ってノコノコとそいつは追ってくる。あからさまに「私は尾行してますよ」という態度がにじみ出ている。アホなのだろうか。我々は予定通り廃墟に入り、息をひそめた。案の定、そのアホは我々を追ってビクビクしながら廃墟に入ってきた。女であった。年は20代後半くらいで、髪の毛は肩くらいまでの長さ、化粧が薄くて前髪を真ん中で分けていた。くっきりしとした二重で鼻が高く、美形であった。

むやみに目立つのを避けるため、銃は使わないこととした。部屋に入った瞬間に二人がかりで抑えこみ、ナイフで首を掻き切る予定だった。しかしその女、そのバレバレの尾行をしていた姿からは想像もつかないような身のこなしで、二人がかりでもなかなか捉える事が出来ない。もともと、相棒はちびっこい女なので格闘戦ではあまり頼りにもしていないのだけど。ようやく床に押し倒した時にはもうナイフはどこか遠くに行ってしまっていて、私は首を締めるしかなかったが気が引けた。

近くにあった拳を二つ合わせたくらいのコンクリの破片を掴み、思い切り頭を殴るが、女は血を流しつつもあまり表情に変化がない。というか、その表情もとても命の危機が迫っているという感じではなくて、どこか平然としている。スタバの店員と目を合わさずに「カフェモカのグランデ」とひとりごとのように呟いてる時、みたいな顔だ。しかし、鈍器で頭を思いきり殴ってもいきなり失神したりはしないのだな、漫画やドラマのようには行かないな。とも思った。

私はその女に馬乗りになり、首に手をかけて思い切り締めた。首の内部を通っている食道と気道と頸動脈、そして名前はよくわからないけど肩甲骨あたりに繋がる腱の感触がありありと感じられた。解剖学的に人体に触れている。そういうふうに人のからだを触ったことはなかったし、それが女であるということがまた更に気色が悪い。女はカエルみたいな声を出している。

それでも女はなかなか死ななくて、あまり感情が感じられない表情をしながらもやはり苦しいらしく、必死に抵抗するので首を締める手が緩んでしまった。その瞬間、頸動脈が一瞬で脳に血流を流し込み酸素を供給してしまう。

「躊躇なく頭を堅い物体に打ち付けるか、首の骨を折りましょう。手加減すると無用な苦しみを与えてしまいます」という説明を思い出した。鶏をしめるのと一緒だ。心臓があって、血流があって、女は、鶏と一緒だ。こいつがどのような人生を送ってきたとか、家族はどうだとか、そんなのは関係ない。中学校では女バスだったかも。そういや、こいつ、同級生の「タマゴ」というあだ名だった女に似てる。タマゴはシュートするときに必ず左足を立ててた。いや、考えるな。鶏だ。しかし首を締めるその感触は生々しい。人間のそれだった。その感触が手にこびりついて離れない。しばらく首を締め付けていると、女はぷっつりと動かなくなった。顔はカフェモカのままだった。

相棒は女の両手を抱きかかえるように押さえつけていた。私は相棒と目を合わせた。どろどろした疲れが二人を飲み込んでいく。