【質問#47】スライドドアのSUV

質問・悩み相談の回答です。

質問

以前にCX-4の回で、ミニバンがなくなるマツダに見切りをつけるかどうか質問させていただいたものです。
折角の大変に貴重なご回答を得たにも関わらずまだくすぶっています。つまり、走りとパッと見を重視する私とファミリーに対しての実用性しか見ない嫁の妥協点が見いだせず、平行線を辿っているからです。私がCX-5を押しすぎて、最近はマツダへの拒否反応も出てきたようです。このため、嫁は最近マツダでないミニバンを条件にしてくる有り様です。モデルチェンジが近いから値引きも大きいよ、という話などにも当然聞く耳を持ちません。
さて、質問です。世の中に私と嫁の妥協点があるとするなら、それはマツダでないスライドドアのSUVという選択肢しかないように思います。技術的なことに全く通じていない私からすれば、なぜそんな車がないのか不思議でなりません。普通のハッチバックには無理だとは分かります。しかし、ある程度の大きさがあれば可能なのではないでしょうか。ネットなど見ていると、それはもはやSUVではない、コンセプトが違う、需要がない、技術的に無理、いろいろ書かれているのを見かけました。しかし納得できません。
世の中にごまんといるであろうお父さんの悩みを解決する車をどこか造ってくれないものでしょうか。または、技術的に、んなもん無理にきまってんだろーが、と私に引導を渡していただけましたら覚悟を決めてミニバンの検討に入りますので、どうかご教示ください。

回答

マツダでないスライドドアのSUVという選択肢しかないように思います。技術的なことに全く通じていない私からすれば、なぜそんな車がないのか不思議でなりません。

機械系の知識は私にもあんまりないのですが、私もある程度の大きさがあれば可能と思います。スライドドアを装着することでヒンジ式ドアより機構が複雑になり重量も増しますが、ある程度の容積的余裕がある大きさの車であれば装着することは不可能ではないと思います。

ネットなど見ていると、それはもはやSUVではない、コンセプトが違う、需要が無い

SUVではない、という点については私は同意しかねます。そもそもSUVはSports Utility Vehicleの略で、「スポーツ用多目的車」と日本語では略されていますが、直訳すればスポーツ用の乗り物、です。スキーやスノーボード、キャンプ用品、自転車などを積むスペースや装備を有していれば本来なんでもSUVといってよいはずです。じゃあなぜ「車高が高くてドアがヒンジ式で見た目がゴツゴツしていてオフロードも走れるような車」をSUVと呼ぶのかと言えば、日本での車種の呼称の変遷が理由でしょう。以下、一般的な説明として記述します。

もともと、クロスカントリー車というタイプの車がありました。ランドクルーザーやビッグホーンのようないかにも「オフロードバリバリ走りまっせ」みたいな見た目の車で、かつ、実際にオフロード走行をこなすための低速からトルクのあるエンジン、低速ギアが備わったミッション、頑丈な足回り、4輪駆動とセンターデフの切替機構(ロック・オープン)といった装備をそなえていました。そういう車で山に行って急勾配や不整地を走って楽しむような層が今も昔も一定数います。

しかしながら「キャンプに行くから河原を少しだけ走行したいんだけど」みたいなライトユーザーにとってはそれらの装備は当然もてあますので「RV車」という名前が流行り始めました。RV車、recreational vehicleという奴ですね。その名の通り楽しむための車で、この呼称はちょっとスキーやスノーボード、キャンプに行く程度のライトユースにはピッタリで、日常使用でも普通の車とほとんど変わらず維持費もかからないというコンセプトの車でした。トヨタのRAV4なんかがまさに「Recreational Active Vehicle 4-wheel drive」の略なのでRV車に該当しますし、90年台当時はRV車の代表的車種だったと記憶しております。もっとも、今ではSUVと呼ばれていますが…。

で、肝心のSUVは言葉から察するにRV車と定義はほぼ等しいと思っています。じゃあなぜSUVという名前が出来たのかは、おそらく下記二つの理由が考えられます。

  • アメリカでRV車は日本で言うキャンピングカーを意味する言葉なので紛らわしかった
  • SUVという新たなジャンルが出来たように思わせるメーカーの営業的戦略

そして、その後SUVはそのアウトドア的、アクティブな雰囲気が受けて世界的にヒット、もはやスポーツ向け、レジャー用という定義すら曖昧になり、日常ユースのみで使うような人にも好んで使用されるに至りました。メーカーもそのようなユーザー需要を受け、「クロスオーバーSUV」つまり普通の乗用車とSUVの合いの子、その実は既存のモデルの車高をちょっと上げて外装をSUVっぽくしただけの代物、をたくさん作ったりなどして今に至ります。

現代のSUVにはもはやオフロード走行に適した機能はその車高くらいしかないのではないかと思えてくるほどです。かくいう私のCX-5もFFですし。まあクロカンに近いSUVももちろんありますが…。

そういう経緯で現代のSUVというジャンルが成り立っていますので、車高が高けりゃスライドドアがあろうと無かろうとSUVを名乗って良いのではと思います。「SUVではない、コンセプトが違う」とおっしゃる人はそういった経緯を知ってるがために、スポーツ用途やオフロード走行にスライドドアは不要という考えからなのではないでしょうか。しかし繰り返しますが、現代のSUVはもはやスポーツ・レジャー用途とか悪路走破性とかあんまり関係ないのでスライドドアが装備された車種がSUVというカテゴリにあっても何ら違和感はないと私は思います。

現に、三菱 デリカD:5はスライドドアをそなえたSUVと言ってよいと思います。高い車高、ゴツゴツした見た目、4WD、センターデフの切り替え機構に加えて低回転からトルクのあるディーゼルエンジンもラインナップに入っています。スライドドアを装備するSUVは「コンセプトが違う」などという人も納得せざるを得ない装備の充実度です。

その一方で、需要が無いという意見には私もすこし同意するところがあります。現に、デリカ D:5は三菱自動車の中では売れ筋の車種と思いますが、全メーカーの車種を並べたときに売れ筋のSUVか(ミニバンか)と問われればそうでもないです。多人数乗車可能でスライドドア装備というタイプの車に関しては、国内ではやはり通常のミニバンに一極集中しています。もし本当に需要があればデリカはもっと売れて良い、評価されて良い車種なのではないでしょうか。

じゃあなんで完全に同意ではなくて「すこし同意」なのかと言いますと、ここは質問者様とおそらく共通の念があると思うのですが、表面に出てこない潜在的な需要は掘り起こせばまだまだあると考えているからです。

まず、ミニバンを買うような層は子育て世代が多いです。子育て世代であれば子供をキャンプや部活、スキーやスノーボード、海や山や川に連れて行くことは多いでしょう。そうなった時にアウトドアなテイストを取り入れたミニバンがあっても良いというか、あったら売れると私は思っているのですがどうでしょうか。具体的には、車高を高くして外装を角ばった感じに変更、シートを防水防汚コートして荷室も汚れても大丈夫な樹脂製フロアマットのようなものを装着すればいい感じになるんじゃないでしょうか。

街に出て見かけるのは、ノア・VOXY・エスクァイア・アルファード・ヴェルファイア・ステップワゴンがほとんどで、そこにセレナ続き、その他ミニバンは少数って感じに私は思えます。そして、トヨタのミニバンは兄弟車なので実質的には2種類しかないようなもんですから、世の中のミニバンはほとんど同じ車種と言ってもいいんじゃないかと私は思ってるほどです。そんな中で、トヨタあたりが既存車種をまたちょっと変更してVOXYクロスオーバーみたいな名前で売り出せば絶対売れるとおもうのですがいかがでしょうか。だってエスクァイアだって似たような理由で「マイルドヤンキー層」あたりに作られた車種でしょ。

それに、スライドドアでSUVというほぼ唯一の選択肢であるデリカD:5は価格帯が高めであります。最下位グレードを除けば300万円オーバー。この点で諦める人も多いのではと思います。つまり、需要はあるが、売上として反映されていないという意見です。

…と以上のように思うのですが、じゃあなぜ各メーカーの商品企画部はそれをやらないのか、と言いますと、たぶん背が高くて重心も高くなりがちなミニバンでさらに車高を上げるのは厳しいという理由があるんじゃないかと私は思っています。デリカD:5は最初からSUV的なミニバンという位置づけで設計したからその障壁が小さかったものの、既存車種のモディファイでは対応できないと、こういう予想です。

なので、ミニバンとSUVのクロスオーバーな車種が中々発売されないというのも、そのあたりに理由があるんじゃないかと思います。なので、言い方によって技術的な問題というのも間違いではないのかもしれませんね。

上記予想が全て正しい、つまり、「ほとんどのメーカーはミニバンとSUVのクロスオーバーというジャンルの潜在的需要を認識してはいるが、商品開発となると基礎からの設計なのでコストがかかりすぎるし、国内に限って言えばミニバンの方が多人数乗車SUVよりも人気なので対応が後手になっている」という状況なのであれば、今後発売される可能性はあります。しかしながら具体的な話も無い状態でありますので、速くとも年単位のスパンで待たされることになると思われます。そしてその時代にトレンドがSUVから移行していれば永遠に発売されない可能性もあります。

ですので、質問者様におかれましては、やはり残念ながら今ある車種の中から選ぶというのが現実的な選択ではないでしょうか。

恐らくすでに検討されたとおもいますが、候補となりうるのは先に述べたデリカD:5が第一候補になるかなと思います。何かと話題の尽きない三菱自動車ですが、デリカD:5に関しては熱心なファンも多く、完成度の高い車のように私は思えます。そして、スライドドアでSUVというおそらく唯一の選択肢かと思います。業績も悪化している三菱自動車ですので、値引きも頑張ってくれないかな…とちょっと期待もできます。

次の選択肢では、スバルのクロスオーバー7となるのではないでしょうか。こちらはスライドドアではないものの、7人乗りです。また、EyeSightもVer.2とすこし古いです。しかしながら基本性能に不足は無く、定評のあるスバルのAWDシステムが載っているという点での強みもあると思います。

どちらも走りという点では重量がかなりあるのでそこまで期待は出来ませんが、ここはひとつ、どこまで妥協できるかということを考えたほうが建設的と思います。

マツダでまだ売られているミニバンに関しては、奥様が拒否反応を示しているという点からやはり避けたほうが良いのではないでしょうか。ここでマツダ車を買っても後々に響きます。車は移動するときだけ接する乗り物ですが、家族はずっと接している人たちです。奥様の事を知らずに言うのも大変失礼ですが、大体女って生き物は決断は躊躇するわりに決めた後は「やっぱりあの時こちらを選んでいれば…」などとたらたら文句を言う生き物です。もっとも、そうでない人もたくさんいると思いますが。

余談ですが、女性は買うときの雰囲気や自分の気持ちを重要視するような気がします。商品そのものはそこまで重要でないのです。たとえば銀座にあるすごくオシャレなお店でオシャレな器に吉野家の牛丼がオシャレな盛り付けて出てくれば喜んで食べるでしょう。何か月か経った後も「また行きたいねー」って言うはずです。反対に、作業服を着たオッサンがひしめき合う店内で何年この皿使ってんだよって感じのぼろい皿に手ぬぐいをかけた店の親父が豪快に中華用お玉で盛り付ける世界で一番旨いチャーハンを食ったとしても、もう二度とその店には行きたくないと言うでしょう。

そういうこともあるので、もっとディーラーはお店の雰囲気づくりを頑張って頂きたいと思うのですがいかがでしょうか。発言権や財布のひもを握ってる実態は奥さんにあるというのは良く聞く話です。商品がどんだけ良くても女性には響きません(と言ったら失礼ですが)。雰囲気づくりをぜひとも頑張って頂きたい。それが結果として車好きな世の父親を救うことにもなる、と思うのですがいかがでしょうか。