【質問#20】転職先の探し方について

質問・悩み相談の回答です。

質問

はじめまして。いつも楽しくブログを拝見しております。

相談内容は「転職先の探し方」についてです。

私は現在20代後半で、SIerに勤めています。
今の環境への不満から転職を考えております。

転職の理由としては、過去の相談者さん【#4,#10】やwithpopさんが日々ブログに書かれているようなことと同じで
所謂典型的なSIer業界に嫌気がさしたためです。

今回の相談としては、転職活動を進めるにあたって具体的にどのように企業を探すのがよいか、withpopさんにお聞きしたいです。

一般的な転職の場合ですと、転職エージェントの利用が多いのかなと思いましたが
転職エージェントを利用したとして、たとえば
「開発環境や開発フローが整っている、技術を軽視しない企業」
のような条件を伝えたとして、IT技術者でないエージェントの方にそれが伝わるか?というのが疑問です。

現在働いている企業には、新卒で入社しましたが、就職活動時は
SIerの選択肢が多かったため、あまり悩むことはありませんでした。

ユーザ系、独立系、メーカ系などで分類できますし、メーカ系に絞っても
かなりの企業数があります。

ですが、今回の転職では、SIerはまず選択肢からはずそうと考えており
そうしたときの選択肢の絞込みが難しいと思い、相談させていただきました。

お忙しいところ恐れ入りますが、回答いただけると幸いです。

回答

最近、転職についてのご質問をよくいただきます。しかしながら私は絶賛転職中で、かつこれが初めての転職経験なので、果たして私が人様に教えられることなどあるのだろうか…とふと考えましたが、特に気にせず偉そうに回答してみます。よろしくお願いします。

転職活動を進めるにあたって具体的にどのように企業を探すのがよいか

これが主となり質問かと思いますが、その前に、

IT技術者でないエージェントの方にそれが伝わるか?というのが疑問です。

について回答します。伝わります、が回答になります。

転職エージェントは当然のことながら企業と転職希望者のマッチングを見つけ出すのがミッションですので、双方の要望を良く知っていないと業務が出来ません。双方の言っていることが理解できないのであればお話になりません。ですから、どの分野でもその道に対して専門知識を持っているような人がエージェントとして活動しています。推測ですが、IT系の場合はIT系の職業についていた人がなることが多いのではないでしょうか?

もちろん、これは一般論(たぶん)なのでそうでないエージェント、つまり技術的なことが分からないのに転職エージェントをやっている人は居ると思います。頼れるエージェントかそうではないかは、一度話してみれば大体分かるでしょう。技術的な用語を伝えてみて意味を理解できていないようでしたら、その人は所望する分野には疎いということですので、他のエージェントにあたってみるのが良いと思います。

私が実際に転職活動してみての経験からですが、エージェントは利用したほうがいいと思います。私は最初エージェントを使いませんでしたが、間に誰か入った方が転職活動はスムーズに進みます。双方が直接言いにくいようなことも間に入ってうまいことやってくれます。

ここからはさらに憶測と噂の話になりますが、エージェントの成功報酬は求職者の想定年収の30%~35%だそうです。となると、たとえば年収500万の求職者をマッチングできたとしたら企業はエージェントに対して150万程度の報酬を支払うことになります。

一方で、たとえば企業がWebサイトの採用情報ページに採用情報を掲載して求職者が応募してくるという場合に掛かるコストには下記のようなものが挙げられます。

  1. 採用情報ページの製作コスト
  2. 応募してきた採用を取捨選択するコスト(書類選考のコスト)
  3. 面接を行うコスト

1.は場合によりけりですが、せいぜい数十万、高くても百万前後のオーダーのコストではないでしょうか。それでいてかつ採用者集2. 3.は人件費です。2.の大きさは想像するしかありません。3.も想像するしかありません。また、エージェントを使おうと自社で採用を行うにせよ3.は等しくかかるコストのように思われます。

しかしながら、転職エージェントは受かる見込みのない人ばかり送り込んでも「あのエージェントはレベルの低い人材しか紹介しない」とクライアント企業から文句をいわれてしまうことになりますので、一定程度のレベルに達したと判断した限りに紹介しているはずです。つまり、実質的に転職エージェントが1次面接(もしくは書類選考)を行っている分、クライアントの企業は3.のコストを低減できるということです。

というわけで、

エージェントに支払う報酬 - 面接コストの低減分 < (採用情報ページの製作コスト/採用者数) + 書類選考コスト

という傾向があるから企業は転職エージェントを利用していると思われます。ここで、右辺第一項はエージェントに支払う報酬に比べたら微々たるものと予想されますので、つまり最も大きな動機は書類選考コストを削減したいのではないかと私は考えています。

それが正しければ、企業は大量の応募書類から応募者を取捨選択しないといけないわけで、すると自然にそれぞれの応募者についてしっかりとは考えてくれなくなるでしょう。たとえば、学歴や経験年数、年齢などから一律で排除条件を決めている会社も当然あると思われます。これは応募者にとっては不幸なことです。一方でエージェントが紹介する場合にはそのようなことはありません。ですから、エージェントを使うことで選考そのものが有利になるという効果もあるのでは、と推測しています。

また、上記とは全く別に、単に会社の知名度が無いので応募者が集まらず、転職エージェントを利用している企業も多いかと思われます。この場合は、転職エージェントを使ったとしても直接応募でも選考フローが有利に進むか否かという違いは無いと思います。しかしながらどうせ転職エージェントの報酬は求職者が支払う物でもないので、どちらにしてもエージェントは利用しておいた方が良いと考えることが出来ます。

さて、ようやく本題に入ります。

転職活動を進めるにあたって具体的にどのように企業を探すのがよいか

この質問は漠然としているのでお答えするのはなかなか難しいです。文面通りにとらえるならば「求人サイトやハローワーク、転職エージェントを利用しましょう」になりますがそういう事を質問されているのではないでしょう。

キーになるのは、

私は現在20代後半で、SIerに勤めています。
今の環境への不満から転職を考えております。

現在働いている企業には、新卒で入社しましたが、就職活動時は
SIerの選択肢が多かったため、あまり悩むことはありませんでした。

ですが、今回の転職では、SIerはまず選択肢からはずそうと考えており
そうしたときの選択肢の絞込みが難しいと思い、相談させていただきました。

このあたりの記載かと思います。

で、何度も読み返してみたのですが、「選択肢の絞込みが難しいと思い」という部分が良く理解できませんでした。新卒入社の場合は選択肢が多かったから悩むことがなかった。今回はSIerを選択肢から外す。すると選択肢の絞り込みが難しくなる…というのはなぜでしょうか。選択肢が多いほど絞り込みが難しく、SIerを除外したら選択肢が少なくなるので絞り込みが(以前と比べて)簡単になるのでは…と思ったのですが、なにか読み間違えてますでしょうか。

それとも、新卒の時はSIerに限定していたのであまり悩む必要は無かった(SIerに入るのが目標で、それ以外はあまり考慮していなかった)のだけれども、今回はSIer以外を希望している。すると途端に選択肢が多く、かつ、SIer以外の会社についてはそこまで詳しくないのでどこから調べれば良いか分からなくなってしまう…ということでしょうか。

とりあえず後者であるとして回答してみたいと思います。もし私の解釈が盛大に間違っている場合は適当に読み流して忘れるか、または気分が向けばまた再度質問して頂けますでしょうか。

さて、この場合は質問#9にも書きましたが、「まずは自分のやりたいことを整理してはどうか」というアドバイスが出来るかと思います。この点に対してより詳しく掘り下げたいと思います。

転職したいと思っている人は現職について何らかの不満を持っていることがほとんどです。ですから、その不満を解消することに強くフォーカスしてしまい、その他の点についてはあまり考えないようになってしまうという傾向があるように思います(私自身もそうでした)。

今回の質問者の方については、「過去の質問や当ブログの記事に書かれているような、いわゆる典型的なSIer業界に嫌気がさした」と書かれています。ちなみに、過去の質問や記事で挙げ(られ)たSIerの問題点としては…

  • 人売りのスキルしか身につかない
  • 社内で技術的なキャリアパスがない
  • 社内の他のメンバーが技術的に無頓着
  • 受諾開発では顧客に振り回されがちになる
  • 営業が開発と分離しているため無茶なスケジュールになりがち
  • 長い残業時間、時にサービス残業
  • 定期的なデスマーチ

というあたりでしょうか。誤解の無いように書いておきますが、もちろん、全部のSIerがこうだとはいうつもりはありません。しかしながら、やっぱりこういう会社は多いと思っています。

これ等の問題は大きく分けて労働環境の悪さと技術力の欠如(成長できない、モチベーションが低いなどを含む)という二つに分けられると思います。すると、質問者の方はおそらくこの二つにフォーカスし、職場を変えることによってこれを改善したいと希望しているのではないでしょうか。そのこと自体は重要で決して妥協すべきものではありませんが、しかしもっと欲張っても良いと思います。

もっと他に希望は無いでしょうか?労働環境やエンジニアとしての成長性以外に希望はありませんでしょうか?このあたりが文面では現れていないと思います。そして、このあたりが明確に決まっていれば自ずと答えが見えてくる気がします。

まずは自分どういう仕事をしたいのかというのを整理してみてはいかがでしょうか。ソフトウェアに関係する職と限っても選択肢は膨大です。たとえば、私がぱっと思いつく限りでは、以下のようなことです。

  • 職種
    • SE、プログラマ、企画、営業、マネジメント、コンサル、教育、ユーザーサポート、…
  • 業種
    • 医療、流通、製造、交通、広告、情報(ゲーム、自社Webサービス、パッケージ製品、サイバーセキュリティ…)、human resource / development、出版、小売、…
    • B2B or B2C
  • 事業ドメインや戦略
    • ブルーオーシャン、成熟市場と高いシェア
    • 地場産業
    • ニッチ市場の開拓
  • ビジネスの形態
    • 受託開発、自社開発
    • パッケージ販売、マーケットアプリ、PaaS、SaaS
    • 自社プラットフォームの無償提供とそのサポート
  • 開発環境
    • IDE
    • 使っているライブラリ・フレームワーク・サポートツール等
    • PC、モニタ、ネットワーク環境
  • 開発対象
    • 組込み or 汎用
    • ミドルウェア、インフラ、アプリケーション(スマホ、Winクライアント)
  • 特殊なスキル
    • ドメイン特有のもの…医療、法律、発電、交通、アカデミックな領域
    • 独立性が高い技術…分散処理、機械学習、統計処理、MATLAB、WebGL、シェーダプログラミング
    • 上記二つのコンビネーション
  • 言語
    • プログラミング言語(C, C++, C#, Java, Scala, JS, Python, Kotlin, PHP, Ruby, R, ...)
    • 自然言語(英語、日本語、その他)(←ここでいいのか?)
  • 労働環境
    • 給与体系(年俸、月収、賞与の有無)
    • 勤務体系(フレックス、リモート、有給、労働時間)
  • 企業文化
    • Trompenaars' four diversity cultures
      • Incubator (fulfilment-oriented)
      • Guided Missile (project-oriented)
      • Family (power-oriented)
      • Effel Tower (role-oriented)
    • 規則正しい or ゆるい
    • 成果主義 or 年功序列
    • 和気あいあい or 競争社会
    • 会社の存続にフォーカス or 会社の成長にフォーカス
  • 組織運営
    • フラット or 縦割り
    • トップダウン or ボトムアップ
    • 横のつながりが強い/弱い
    • 現場側管理職の権力
    • 他会社とのつながり(子会社、提携先企業)
  • キャリア
    • 年功序列、若いうちから責任のある職務を与える
    • キャリアパス
      • マネジメントと技術の関係性
    • 定年まで勤める人が多い or 独立する人が多い
  • 経営情報
    • 従業員数、資本金
    • 自己資本比率、ROA、ROE、売上、営業利益
    • 株価(上場している場合)
    • 四季報、プレスリリース、IR情報
    • 資本や業務の提携、主要株主
  • 同僚
    • 既婚か独身かの傾向
    • 年齢の階級分布
    • 価値観
    • 男女比

ざっと思いつく限りの会社の特性とか分類、見るべきポイントみたいなものを挙げてみました。

上記に上げたものについて、それぞれどのようなものを好むか選んでいけば自ずと選択肢は狭まってくるはずです。そのうえで、転職エージェント等に相談に行けば、自分がどうなりたいか、どういう環境でどのような仕事をしたいか、という話しをベースに具体的なアクションを決められるので良いのでは、と思います。