【質問#8】刑罰について

質問・悩み相談の回答です。

質問

はじめまして。いつも楽しく拝見しています。

私は日本の刑務所(禁錮・懲役)はもっと厳しくするべきと考えているのですが、withpopさんはいかお考えですか?

そもそも「刑務所に行きたかった。」という動機で窃盗事件を起こすニュースがたまにあること自体が、刑務所本来の機能からすると破綻していると思いませんか?刑務所というくらいですから、もう二度と行きたくないと思えるようでないといけないと思いません?
以前withpopさんが奨学金の記事で指摘したとおり、刑務所も税金を投入している以上、(出所者の受け入れ態勢が整っていないという問題なあるにせよ)何回も刑務所に入ってくるようでは困ると思うのですが…

回答

再犯率を低下させるために刑務所の生活をより厳しくすることが適切かどうか。難しい質問です。そして私は犯罪心理学や警察その他機関に関する一切の専門的な知識は持っていません。専門的な知識の無い人が難しい質問へ回答するのですから、当てにならないとは思いますが、回答を書いてみました。

ちなみに、「厳罰化」という言葉を本記事では使いますが、これは「再犯率を低下させるために刑務所の生活をより厳しくすること」という意味でとらえてください。「量刑を重くすべき」という意味ではありません。

論理的な回答

そもそも現状のやり方が問題かどうか調べてみる必要があります。出所受刑者が再度入所する率を調べてみましょう。

平成27年版 犯罪白書 2 出所受刑者の再入所状況

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これを見ると再入率は年々減少傾向にあります。ということは、今の刑務所のやり方は一定の効果が表れているとも言えると思います。ここで、刑務所を厳しくするとさらに減少するかも知れませんが、今の段階でうまく行っているので下手にやり方を変えない方が良いかもしれません。ここは誰にも判断できないでしょう。

もう一点、そもそもなぜ人は出所後再度犯罪を犯すのかというと、その背景には社会復帰がうまく行っておらず、刑務所が最後のセーフティーネットになっているからという指摘もあります。

【コレって、どうなの?】 Vol.35『出所者の再犯率42%も頷ける、「最後のセーフティネット」と化した刑務所の実情』

上記記事では、「2010年の刑務所再入所者の約73%が無職」であったとの記載があります。毎年、年末近くになると「年越しを温かい場所で過ごしたかった」と犯罪を犯す人のニュースをよく見ますし、「お金が無いけど正月だから良いものを食べたかった」などと万引きする人のニュースも良く見ます。つまり貧困と再犯率にも強い相関があります。これは「貧困状態よりも刑務所の方が良い暮らしだから」という事実でもありますが、逆に言えば「貧困状態を解消すれば刑務所にはいかなくても良い」という事になります。

ということは再犯率を下げるためには、前科者に対する社会の許容と職業訓練が重要という事もできると思います。

また、厳罰化で再犯率が下がるかと言うと必ずしもそうではなく、逆に開放的な刑務所とする試みもあるようです。

再犯率の最も少ない国の刑務所

上記記事ではノルウェーの「自由と平等に基づいた開放的刑務所」の例が挙げられています。ここでは受刑者が職業訓練を受けながら自分で食事を作ったり海辺を散歩したりしながら過ごしているそうです。殆どの事が受刑者の自己管理に任せられているため、運営コストも小さくなっているとのこと。ノルウェーの再犯率は16%程度と(日本は再犯者率47.1%、上記犯罪白書より)低いみたいです。ただし、この方法でノルウェーの低い再犯率が実現できているというわけではありませんので、あくまでも一例としての紹介です。

そして、ちょっと考えて頂きたいのですが「刑務所はマジ地獄だった。家が無くても、飢えても、刑務所に入るよりだったら川べりの段ボールハウスに住んでいた方がマシ」と思える程度厳しい環境を刑務所に作ってしまったら道徳的な問題が生じてくるように思いませんか。家が無く、飢えたほうがマシと思えるほどの環境に晒されるというのは、それ以下の環境を作るという事です。すると、「健康で文化的な最低限度の生活」を規定する憲法25条に違反してしまうような気がします。

上記までに厳罰化とは真逆の事を書いてきました。ただし、再度述べますように結論は「分からない」が最も正確な回答と思います。そもそも再犯を犯す人のすべてが生活に困窮したひとではありません。

また、出所者の再犯率が高いのであれば厳罰化すべきという議論は自然と思いますし、その方法で効果が出るということも十分に考えられます。しかしながら、厳罰化と復帰支援の充実とどちらが重要かというのは十分なデータが無いので判断が付きません。やってみないと誰にもわからないでしょう。

個人的には、現在の方法でうまくいっている(再入所率が下がっている)のですから、専門外である我々はそっと見守るべきと考えています。ただし、その考えが正しいとは思っていませんし、他の人も同様に考えてほしいとも思っていません。

感情的な回答

たとえ極刑が待ちうけていても「死刑になりたいから人を殺した」などと常人には理解できない事を言う人も居るくらいです。人間も生き物でバラつきがありますから、どんな施策をやっても何度も刑務所に入る困ったちゃんは出てくるでしょう。時にはあきらめも肝心と思います。