【質問#4】ITで転職する場合の会社の見分け方について

質問・悩み相談の回答です。

質問

はじめまして、いつもブログ・Twitterを楽しみに拝見しております。

withpopさんが考えるよい会社(IT業界で)の見分け方とはどういったものでしょうか。

私は現在SIerに勤務しており、社内で技術的なキャリアパスがないことや社内の他のメンバーが技術的に無頓着なため、転職を検討しています。
(たぶんブログで拝見するwithpopさんの職場よりもはるかにレベルが低いです)

転職活動を行い内定も何社か頂きましたが、転職活動を通じて意外と今の会社が「会社としては」悪くないのではないかと感じました。(主に待遇面)

自身の求めるものが(私の場合は周りの技術者のレベルや開発の手法等)本当にその会社にあるかどうかwithpopさんならどのように判断しますか?

私は入ってみないとわからないという結論に達しかけているのですが、現在の待遇を蹴ってまで求めるものが有るかどうかわからない環境に飛び込む勇気が出ません。

回答

私自身のことのように錯覚してしまいました。私もほぼ一字一句そのままのことを今現在悩んでいるからです。一緒の境遇にいるもの同士、大いに悩んでみようではありませんか。

まず現在の状況を整理しますと、転職の理由は、

  • 技術を追い求めていけるキャリアパスがない(つまりいずれ向き不向きにかかわらずマネジメントに取り組んで行かなければ昇進できなくなる)
  • 他のメンバーが技術的に無頓着である(であるがために最新の技術を追い続けて技術力を保てないことに危機感を感ずる)

ということですね。

そして、転職活動を実際に始めてみた結果、

  • 自社の待遇がそこまで悪くない(逆に言えば転職すると待遇が悪くなる傾向がある)
  • 自分の求める技術者のレベルや開発手法が本当にその会社に備わっているか不明

という事実に気が付き、その結果、今の環境を棄ててまで新しい会社に飛び込むべきなのか悩んでおられるということですね。(カッコ内は私の推測ですが、概ね間違っていないと信じています)

この悩みをシンプルに考えれば、「悪くなった待遇の分のマイナスを、技術力や開発手法の点でプラスまで持っていけるか」ということでしょう。そして、マイナスの見積もりはわかりやすい(待遇は年収や福利厚生の制度というわかりやすい形で見える)にしても、プラスの分(技術力や開発手法)の見積もりが難しい。なぜならば、本当に技術力があるのかどうか、また、職場の雰囲気、どのようなチームに配属されてどのようなスタイルで仕事をするのか、ということを内定承諾前の段階で完全に知ることはこれ、不可能であるからです。つまり私も入ってみないとわからないという意見に同意です。何か根拠があるわけではありませんが、その会社の社風や文化、スタイルを完全に知るためには数ヶ月〜半年程度の時間がかかるのでは、と感じています。

ですので結論としては「今の会社にとどまるべきか、新たな会社に進むべきか、どちらが良いか完全な情報で判断することは不可能」ということになります。ただ、完全には無理にしても、なるべく多くの情報を取り込んで確度の高い推論から判断したいものです。質問された方の意図はそういうことだと私は思います。ですので、以降では参考になるかどうかわかりませんが、私がご質問の部分(自身の求めることがその会社に備わっているかどうかどう判断するか)や、その他参考になりそうなことを列挙してみたいと思います。

変化に柔軟に対応できるかどうか
本項は私の個人的な見解ですが、参考までに記しておきます。

私は「良い会社」の必要条件として世の中の変化に柔軟であることが重要であると考えています。絶えず新しい技術を取り込み、良いものは残し、変化に追従していける会社に所属することで、従業員自身が今後の社会の変化に追従していくためにたくさんの事を得ることが出来ると思います。

ここで、「変化に追従できるかどうか」を判断するために以下技術を採用しているという実績が参考になると考えています。

  • 近代的な言語やフレームワークの採用
    RESTful API、Scala、Node.js、Python(機械学習やデータマイニングとして)、Springboot、Java8、MVVM/MVW、HTML5、AltJS/ECMAScript6、Swiftあたり。

  • CIツール
    Jenkins、TravisCI、CircleCIなど。※CIを採用していないと言うのは個人的に論外

  • コミュニケーション/コラボ/タスク管理ツール
    Slack、ChatWork、Backlogなど

  • インフラ系ツール/サービス
    AWS、Docker、Chefなど

  • 開発スタイル
    小さいサイクルのウォーターフォール、アジャイル、スクラムなど

  • ハードウェア、環境
    十分なメモリのPC、Mac OS/Linuxを開発環境として選択できること、プロクシを経由せずインターネットに接続できること、リモートワーク環境の整備など(つまり管理者層のソフトウェア開発に対する理解と支援があるかどうか)

上記に書いた項目は、ソフトウェア開発を行う上で最低限必要と思われることや、実績やノウハウが十分に蓄積し普及期に入りつつある有用な技術と私は思っています。上記は全て満たされている必要があるという主張ではありませんし、分野によっては当てはまらないケースもあると思います。しかし、一つの指標としてこれらの普及期にある技術をいくつか採用しているということは「変化に柔軟である」ということを示すマーカーとして有用と考えています。

最も、Web系の企業はおおむね変化に柔軟で、かつ、上記のようなツールを採用している企業が殆どなのですが…。

使用している言語や技術、フレームワークをもう一度確認
前項では特に柔軟性に着目しましたが、採用している技術から得られる情報は大きいです。この世界(Web界隈)では使用している技術や言語がその会社の文化や開発スタイルを雄弁に語ります。特に技術面で現職に不満を持つ人の転職活動において、その会社が使用している言語や技術が最大の情報であることは確実ですので、既に調べたとしても念には念を入れてもう一度調べてみるくらいはやって損は無いかもしれないと思います。

事業内容を良く考える
特にプログラミングが大好き!とにかくコードを打ちたい!というタイプの人は使われている技術や開発環境ばかりに目が行き、そもそものビジネスの内容を軽視してしまいがちな傾向があるように思います。私がそうですし、転職活動で出会った技術者の方もほとんどがビジネスに興味があるという印象を私は持ちませんでした。

しかしながら企業の本質は社会に貢献すること(富を創出すること)と、それを通じて利益を生み出すことであり、そのための方法がビジネスであり、技術はビジネスを回すための道具であります。テクノロジードリブンだとか、アカデミックな領域からビジネスを生み出すとか、そういう発想もありますが基本はビジネスが企業活動の中心であり、テクノロジーはその道具であるという関係が基本と私は思います。良い道具を使えば良いものが出来るというのは当たり前のことですが、だからと言って道具ばかりに注目して本質がおろそかになっては本末転倒です。

その企業が取り組んでいるビジネスの内容と、そのビジネスがどの様な方針で決まり、変わっていくのかを調べることは非常に重要です。ビジネスの内容を精査せずに入社すると後でミスマッチに気がつくかもしれません。

分かりやすい例は、モバゲーやソーシャルゲームでしょう。これらは私の記憶が正しければ2010年ごろは新しい技術を積極的に採用し、また、マネタイズの方法としても日本人がやったにしては非常にうまく行っている分野だともてはやされてきましたが、昨今ではレッドオーシャン化しているとあちこちで言われています。もし技術だけにフォーカスして「ソーシャルゲーでは最新の技術が使われている」とその方面に進めば苦労するかもしれません。(ただし流行り物好きな人にとってはむしろ向いているとも言えます)

その一方で、現在はゲームが主力事業であるが、収益が望めなくなってきたため他のビジネスに急速にシフトしている、かつ、過去にもそのような実績があり、現在も多種のサービスを展開している…という会社であれば、その時代時代で稼げるビジネスの波にうまく乗っていると言えるかもしれません(ハイリスクだとは思いますが)。

そのほか、そのビジネスの領域で競合他社にはどのような企業があるか、そのビジネスはいつまで存続するのか、というあたりを経営者の視点で考えてみるのも良いと思います。

経営状態を見る
特に新卒入社ではなく転職活動の場合には、今現在現職に何らかの不満や課題があり、それを解決するために転職を行う訳ですからその不満や課題にフォーカスしがちです。しかしながら会社選びというのは「やりたいことを出来るか」だけでなく、その会社自体が健全な経営状態を保っているかというのも重要なファクターになります。

もし上場企業であれば、Yahooファイナンス等から決算情報などに一度目を通しておいて損はありません。売上高の遷移や自己資本比率、ROE、ROAなどを同業種の競合他社や現在お勤めの会社、内定をもらった会社などで比較してみると経営状態が大まかに判断できるでしょう。

あとは私がよくやるのが従業員一人あたりの売上を計算することです。ソフトウェア開発を行う企業の中央値は大体1000万円程度であると思います。これが極端に多い場合は大手SIerのように外注比率が高いとか、もしくはパッケージ製品を開発している場合には売り上げが好調そうだなどと判断することができます。売り上げと粗利の比率と一緒に比較してみても、何か類推できることはあるはずです。その会社の業務に依存するので一概にどうとは言いにくいですが。

面接官と面接を思い出す
日本は企業の解雇要件が厳しいという事情もあるために採用はどこの会社も慎重に行うのが普通です。そもそも自社の戦力となる人材を選ぶという重要な場面が採用です。このためにどんな会社でも、面接官にボンクラ社員を寄越したりしません。ですから、面接官はその会社における優秀な社員が担当する(もしくは面接官の一人として含む)のが一般的です。

つまり、面接官はその会社での「優秀な社員像」に近いと言えます。その面接官と一緒に働くことを想像してみることは、入社後の雰囲気を知る大きな手掛かりになります。また、面接で聞かれた質問はその企業が社員に期待していることの裏返しとも言えます。これもその企業に自分がマッチするかどうか判断するための一助となります。

最後は階層化分析などで決める
色々書いてみましたが、結局は冒頭に書いたとおり「入ってみないと分からない」という結論に変わりはありません。いろいろ考えてみたところで完全な情報が手に入るわけではありません。最後は得られた情報を下に一般的な意思決定手法で決めてしまえば、一応は論理的な方法を経由するので納得がいくかもしれません。私はよく階層化分析とか、評価項目、ウェイトを記した単純なマトリクスを作ってそれぞれの選択肢のスコアを導き出して決めたりします。

以降は、会社選びで参考になるというか、心構え的なことで私が最近感じている事です。

転職を重ねるか、一社に勤め続けるか
欧米では転職を繰り返すのが一般的と聞きます。日本でも納得のいく職場を求めて転職を繰り返す人は数多います。つまり、皆納得のいく職場に勤めるために何度か失敗するのが普通ということです。

もちろん、転職一回目で理想の職場に勤めることができるというのが最良ではありますが、「ダメだったら次に期待しよう」という考えでも良いのではないでしょうか。

別の言い方をすると、

  • 今の環境に根を張り、我慢と改善を続ける
  • 新天地を求めて外の世界に飛び出すことを始める

のどちらかを選択しているのが今この瞬間だ、とも言えると思います。

一社にとどまることのリスク
現在の待遇に満足しているし、その気になればずっと勤められるという状態をもって「安定している」とは言えないのが現代です。シャープ、マクドナルド、東芝の例にあるように、名だたる企業でもある日突然傾くということはままあります。

人は一つの組織に勤めると、そのシステム上にどんどん最適化されていきます。最適化された人材は最適化された分、他のシステムでうまく立ち回ることが難しくなります。一方で数々の職場を経験した人は、どの様な企業でも普遍的に役立つスキル(つぶしが効くスキル)を得ることが出来ます。その点ではむしろ転職を積極的にした方がリスク分散になると言えます。

とは言っても、転職は良い会社に転職するにしろそうでないにしろ大きなストレスが伴うのですが…。

どこかでマネジメントは必要になる
現在の職場環境で「技術者として食っていくためのキャリアパスが無い」ということを転職の一つの理由として挙げていらっしゃいます。私自身、同じような不満を持っています。

しかしながらその一方で、組織の中での活動を重ねていきスキルや経験を蓄積していくと、どこかでマネジメントや教育、指導が必要になることが殆どです。なぜならば、優秀な社員一人に仕事をさせるよりも、後継者を多数育てたり、複数の人間をかかえて仕事をさせたほうが労働力は上がるからです。というか、そもそも労働力云々以前に会社が持続的に活動していくためには後継者を育てるということが必須です。また、その教育の過程で複数の部下をマネジメントしていくことは程度の差こそあれ必ず必要になってくるでしょう。

ちなみに、この優秀な人材に後継者を育てさせるという点がうまく行かなかったのが旧日本帝国陸海軍の航空機搭乗員でした。

これも余談ですが私が大好きなドラマ(原作はドキュメンタリー小説)に第二次世界大戦での欧州戦線で活躍した空挺師団を描くバンドオブブラザースという作品があり、この中にリチャード・ウィンターズ少佐という実在の人物が出てきます。彼は率先して危険を冒して部下を率い、また新兵にも丁寧に指導しつづけ、管理職になってからもつねに現場の部下の事を思って行動した結果、部下から非常に慕われ、戦争終結後も多くの部下と会ったり、手紙のやり取りをされていたそうです。戦後は化学肥料を取り扱う会社に入社し、アメリカの畜産業界にも多大な貢献をしたとのこと。

私はそんな彼の記録を読み進むにつれ、「マネジメントも悪くない」と思うようになりました。結局、人間が集まれば組織的な行動をします。するとマネジメントは職務によって程度の差こそあれ必ず必要になります。中でも教育は次世代を担う人材を生み出すという点で必要不可欠で、やりがいのある業務と私は思います。純粋なマネジメントだけを切り取って考えても、そのマネジメントの苦々しさを現場社員として知っているからこそ、真に働きやすい職場にするために活動してくというのもまたやりがいのある仕事と思うようになりました。まあ、これらは単なる余談である以上の意味はありません。

以上、長々と今現在考えていることを書いてみました。中には「そんなことは当然考えたor確認したよ!」と感じられる項目もあると思われますが、そこは読者一般の方々へのメッセージという事でご理解ください。参考になりましたら幸いです。