だいぶ発売から時間がたってしまいましたが、書きます。
突然現れてショックを受けたのが、スズキのエスクード。
私の中でスズキというのはイコールSwiftの会社というイメージでした。個人的に軽にはあんまり興味が無いし、Swiftの評判のよさと新興国(というかインド)でのSwiftの強さはよく感じていたので…。国内向け普通車はSwift以外になんか見るべき車種あんの?と完全に舐めてました。
一応普通車のラインナップは…
- Swift
- ソリオ
- ジムニー
- エスクード
- エスクード2.4
- ランディSX4
という感じです。元々自分はSUV/クロスカントリーにはそれほど興味が無いし、ランディはセレナのOEMです。自分の家族構成でSwiftを買うということもあり得ないので、スズキにはほとんど興味を持っていませんでした。そんな中で、今回のエスクードはかなり好印象を持っています。
サイズと重量
まず驚いたのが重量です。以下、小型SUV(と私が乗ってるCX-5)のサイズと重量をまとめた表です。
全長 | 全幅 | 全高 | 室内全長 | 室内全幅 | 室内全高 | 重量 | |
エスクード 2WD | 4175 | 1775 | 1610 | 1960 | 1480 | 1265 | 1140 |
エスクード 4WD | 4175 | 1775 | 1610 | 1960 | 1480 | 1265 | 1210 |
SX4 FF | 4300 | 1765 | 1575 | 1995 | 1475 | 1250 | 1140 |
SX4 4WD | 4300 | 1765 | 1575 | 1995 | 1475 | 1250 | 1210 |
XV 2.0i EyeSight | 4450 | 1780 | 1550 | 2005 | 1490 | 1205 | 1665 |
ヴェゼル HYBRID FF | 4295 | 1770 | 1605 | 1930 | 1485 | 1265 | 1270 |
ヴェゼル HYBRID 4WD | 4295 | 1770 | 1605 | 1930 | 1485 | 1265 | 1350 |
ジューク 15RS | 4135 | 1765 | 1565 | 1835 | 1470 | 1215 | 1200 |
ジューク 16GT FOUR | 4135 | 1765 | 1565 | 1835 | 1470 | 1215 | 1390 |
CX-3 XD 2WD AT | 4275 | 1765 | 1550 | 1810 | 1435 | 1210 | 1260 |
CX-3 XD 4WD AT | 4275 | 1765 | 1550 | 1810 | 1435 | 1210 | 1330 |
CX-5 20S | 4540 | 1840 | 1705 | 1910 | 1530 | 1280 | 1470 |
エスクード(SX4)は1140kg、4WDでも1210kgと競合車種と比べて驚異的に軽量です。車にとって重量は非常に重要な要素です。重量は加速・減速・燃費・コーナリングあらゆる場面で大きなウェイトを持ちます。車の軽量化の意義については、メーカー的にはマツダが一番重視して取り組んでいるような印象がありましたので、これには驚きです。
ちなみに、逆に軽量化によって犠牲になるのが静粛性と外乱への強さ、衝突安全性です。
静粛性に関して言えば、音も空気の振動という運動エネルギーによって伝わるわけですから、遮蔽する材料が重ければ重いほど音をより強力に遮断できます。ただし、車のように気密性が低い空間においては遮音材・吸音材にこだわるよりも気密性を高める方が効果が高いと推測されますから、軽量化と静粛性の両立と言うのも不可能ではないでしょう(ただし完璧な遮音を目指すにはやはりある程度重量が必要だと思われます)。一応、CarWatchのレビュー(下記)では遮音性の高さは「クラスレベル以上だ」と書かれています。
外乱への強さとはつまり、坂道で急激に減速してしまったり、高速で風にあおられたりという場面がそれに当たります。これは基本的な物理なのでしょうがない部分ではあります。
衝突安全性に関しては、重くて強い鋼材よりも軽くて強い鋼材を作る方が難しいという基本的な物性の問題が絡んでいます。エコカーブームによる軽量化や衝突安全性要求への高まりを受けて、各メーカーではコンピュータシミュレーションによってボディ形状を工夫したり、軽量で強い新材料を開発・採用したりして対応している所だと思います。エスクードに関しても1500MPaの高張力鋼を多く採用したことで軽くても衝突安全性を確保したとあります。
ADAS装備と価格
これも個人的には非常に高く評価したいところです。全グレードにミリ波レーダーによる自動ブレーキ(衝突回避・軽減ブレーキ)を搭載しています。さらに40km/h~100km/hまでの速度追従型オートクルーズまで装備されています。エスクードの価格帯で速度追従なオートクルーズを装備している車種は他に無いのではないでしょうか。これだけ入ってエスクードは2WDモデルで212万円、4WDモデルで234万円という価格設定であることは非常に驚きです。
所感
再三再四述べているように私は工業製品を買うときにはコストパフォーマンスを最重要視します。その一方でブランド価値というのは大嫌いです。ブランド価値というのは市場によって創られた価値であって、何らかの物理的な指標・特性によって裏打ちのある価値ではないです。なんとなく、BMWだから良いだろう、ベンツだから良いだろう、という漠然とした一般ピープルの価値観によって裏付けされ、逆に言えば(純粋な「ブランド」のみに絞って言えば)それのみの価値です。だからBMWは誰が見てもBMWと分かる車しか作らないし、レクサスは誰が見てもレクサスと分かる車しか作らないですし、ベンツは誰が見てもベンツと分かる車しか作らないです。ファッションブランドでも基本はそうでしょう。
そういう価値を「付加価値」「ブランド」などと称します。別にそういう物の売り方が駄目、と言うつもりは無いです。ブランド価値を作り、守ることによって粗利を稼ぐことが出来るならば従業員は幸せでしょう。でも私は嫌いです。
車界で私の思想に合致していたのは、2007~2013年あたりのマツダでした。マツダは安い割には良い車をたくさん生み出している、それが私の印象でした。先代デミオやアクセラが好例です。あの価格であのパフォーマンスを実現できていたのは国内市場ではマツダだけだったと私は思っています。マツダが「Zoom-zoom」を掲げて走る喜びにフォーカスし始めたのはフォードのフィールズ氏の発案と聞いていますが、最近、フォードがマツダ株を全て手放していたということが明らかになりました。なんだか一つの時代が終わったかのような気分になります。
マツダは新たにブランド価値の向上を掲げ、「マツダの鬼値引き」「マツダスパイラル&マツダ地獄」からの脱却を目指しました。それはそれで企業戦略としては良いと思います。企業としてはブランド価値が向上したほうが粗利率を稼げます。それが従業員満足度に繋がればマツダが今後も存続していく礎となり、また新たに魅力的な商品を投入するためのモチベーションになるでしょう。そのこと自体はユーザーにとっても良いと思います。
しかし、市場は自由競争の世界であってユーザーにも選択肢はあります。正直、CX-5を検討していたときにエスクードがあったらこっちを選んでいた可能性は高いように思います。
いや・・・でもオルガンペダルじゃないし・・・。うーん、やっぱりどうだろう・・・。