すぐに会社を辞める新入社員はアカンのか

ちょっと思ったので書いた。

坂上忍「会社辞める若者」に激怒 「理想とのギャップ」感じて退職はいけないことなのか

新卒3年目までに会社を辞めた経験のある627人から投稿された「退職理由」のコメントをもとに分析したものだ。ランキングの1位には「キャリア成長が望めない」(25.5%)、3位には「仕事内容とのミスマッチ」(19.8%)があがった。長い下積みよりも、早く次のステップに進みたいという気持ちが感じられる。(中略)

坂上忍さんやIKKOさんは、発表される退職理由に驚きを隠せない様子だ。1位の「キャリア成長が望めない」が発表されると、すかさず、

「3年で何が分かるんですか!」(坂上さん)
「自分で見て覚えるの!」(IKKOさん)

と一斉に非難。「残業・拘束時間の長さ」への不満にも、「3年だったらクソまで働け! もう!」と吐き捨てた。坂上さんが一番納得のいかなかったのは「仕事内容のミスマッチ」のようで、

「こんなの、最初から分かってないとダメですよ」

と意見した。

以下、私が思ったこと。

放送を見てないので上記の記述だけを見た限りだが、私は彼ら(IKKOや坂上忍)の意見には到底賛同できない。まず彼らの言動からは「すぐ会社を辞める人は忍耐力が足りない。新人は何もできないんだからもう少し我慢して仕事ができるようになってからものを言え」という考えが見え隠れする。

私が思うに3年も仕事を続けていてようやくその社内の風土や文化、内部事情が分かるような人間はアホであるとおもう。普通、1年も働いていたら十分その会社がどういうところかというのはだいたい分かるだろう。その「だいたい」の時点で既に会社が重視する価値観が自分のそれと大きく乖離していると判断できるならば十分に辞めて良い理由になると思う。

そして1位の理由をよく読んでもらいたいのだが、「キャリア成長が望めない」という理由なのである。この意味もよく考えてほしい。

例えばソフトウェア開発業界では会社によって「成長できるか」に天と地ほどの差がある。それなりの知識を持った人であれば、たとえ社会の事を知らないペーペーであったとしても、自分の働く会社が良い(成長できる)か悪いかなんて1年経たずともすぐに分かるだろう。いや、開発環境をひと通り聞いただけである程度は想像がつくかもしれない。そして、成長できない職場に身をおいたところで将来困るのは自分なのだから皆さっさと転職したいと思うはずだ。そこへ、門外漢が「うるせえ新人、我慢しろ」みたいな物言いをされたら「ソフトの事何も知らんくせに口出しすんなアホ」って言いたくなるね。私だったら。

私はソフトウェア開発しか知らないが、その他の業界でも多分「社会の事を知らなくても、その分野に対するある程度の知識があれば、会社が良いか悪いかくらいは判断できる」という仕事はあるはずで、そういう例を認めず一律で「忍耐力が無いからだ、我慢して働け」みたいな物言いはどうなんかなあ?

一方で、彼らが言うように「3年未満でやめる忍耐がなさすぎる」という指摘が正しいとしても、やめた方が良い。日本は解雇要件が厳しすぎてダメな社員を切り捨てることが難しい。忍耐力が無く、常日頃から辞めたいと思っているようなモチベーションの低い社員なのであれば会社としては自分から辞めると言っているのだからこれほどありがたいことはなく、二つ返事でどうぞやめてください、というところではないだろうか。もしそうなれば辞めたいと思う本人にとっても、後腐れなくやめられてありがたいことだろう。

ただし、ここで「それでは何時までたっても人間が成長しないではないか。会社にしっかりと勤めて根性を付けさせるべき」という指摘は間違っていると思う。会社は営利を上げることを目的とした集団であって、根性を社員に付けさせることを第一目的とはしていないからである。もちろん、社員教育の一環としてそういうことはあるだろうが、あくまでもそれは社員の能力を高めて利益に結びつけるというのが主目的である。人間の能力向上を主目的にするのは社会にでる前までの各種学校でやることである。もっと具体的に言えば根性などというのは、学校での部活動や受験戦争を勝ち残るという過程で身につけているべきものだと思う。学校と会社の役割を混同してはいけない。言い換えれば、義務教育を終え(場合によっては高校も大学も出て)た段階で最低限の根性すら付いていない人間はその後何をやってもたぶんダメで、何かのきっかけで自発的に意識改革するしかない。しかしその役割は再三述べたように会社が負担するものではない。

そして、この話題で真に問題として取り上げるべきは、

なぜこのような「理想と現実のギャップ」が大きくなっているのか。ブラック企業アナリストの新田龍氏は、自社を実態よりも良く見せようとする会社や就活サイトにも問題はあると語っている。

「新入社員を被害者として考えるなら、自社の実力で学生を集めたり、採用できない企業が、就職情報メディアの営業と提案を受けて、実態から乖離した『理想の職場』のイメージを植え付け、それを信じた学生が入社後にギャップを感じて辞める、という構図が考えられます」

この点だと思う。まあ、どんなダメな会社でも「うちの会社はダメですよ。労基法守ってないし、サビ残もいっぱい有りますよ。職場では毎日罵倒する声がすごい響いてますよ。数字を挙げれない社員は身銭切って会社商品を購入していますね」なんて事を言うわけがなく、「うちの会社はハートフルでみんな優しいし、成果を上げれば綺麗なお姉さんがいい子いい子してくれますよ」みたいに書くわけですよ。ソフト業界の求人を見て下さいよ。絶対どの会社も女の子の写真を載せていますから。でもソフト業界に女性ってそんなに多くないはずなんですよ。それをわざわざ女の子を持ってくる。なぜか。分かるよな?ということである。

だから、上記の問題を問題として啓発すると言っても、「鵜呑みにはするなよ」という程度しか一般的にはいないのが悩ましいところだ。社会人として一定の経験があるのであれば、採用担当者に根掘り葉掘り聞いて「ヤバイにおい」を嗅ぎわけるということも可能であると思うが、そのプロセスは経験や分野に大きく依存するのでとても一般化はできない。であるからこそ、就職してみて「失敗した!」ということはある意味しょうがない。

「こんなの、最初から分かってないとダメですよ」

と意見した。若手社会人に、辛いことは最初から分かっていることだから簡単に辞めるなと問いかけているようであった。

「理想の職場」のイメージ植えつける企業側にも問題ないか? 坂上さんは「最初から分かってないとダメ」と言ったが、会社に入ってみなければ分からないことも実際には多い。どんな仕事が振られるか、どんな環境でどのくらいの時間を働くか、どんな上司や先輩と一緒に働くかも、入ってみなければ分からない。

記事にもこう書いてあったが、そのとおりである。会社に入ってみなければわからないことも多い。特にどんな上司と働くかというのは運によって決まることも多い。

以上のような背景を鑑みた上で、それでも「3年未満で辞めるのは甘え」と言うのであれば、もう私とは思考が全く違うんだな、としか言えない。