スバル車を作る外国人労働者の労働環境が最悪?

なんか凄いニュースを見ました。

特別リポート:「スバル」快走の陰で軽視される外国人労働者

長い記事です。内容としては、スバルの製造工場、もしくはその下請け会社の工場で働く外国人労働者の労働環境や賃金が劣悪だが、スバル(または関連会社側)は「人材派遣会社との契約だから、派遣元会社と労働者がどういう契約になっているかまでタッチできない」と言っています。確かに法律上はそうですが、違法でないから何をやっても良いというのは一企業としては意識に欠けるところです。そしてこういったことは度々批判されます。

現代の工業製品や食品製造ではこういった劣悪な労働環境の中安い賃金で働いている人たちの上に成り立っているということは少なからずあります。搾取されているコーヒー豆農場の労働者に還元できるよう正しい価格でコーヒーを販売する、みたいな活動を聞いたことがありますし、ユニクロの中国生産工場における劣悪な労働環境が問題になったというのも記憶に新しいですね。

どの程度劣悪か、記事内容をいくつか引用してみると…

群馬県太田市。同社や部品サプライヤーなどスバル車の主要生産拠点で働く彼らの多くは短期契約の作業員で、賃金の35%程度は彼らを派遣した業者が受け取る。バングラデシュ、ネパール、マリ、中国など様々な国からやってきた彼らは、フォレスターの革製シートなどの部品の多くを作っており、大半の場合、厳しい労働環境に置かれている。

よろしくないですね。

ラカン・リジャル氏(34)は、同社向け車座席を製造する会社で作業中に腰を負傷し、その後に解雇を言い渡されたと話した。他の労働者たちからは、通常シフトの2倍の時間を働くよう圧力を受けた、事前通告無しに即時解雇された、保険をかけてもらえなかった、などの訴えがあった。

アカンですね。

家賃や光熱費、本国の送り出し機関に支払う手数料を差し引くと、残る手取り額は毎月平均でおよそ9万円、時給にして約409円にとどまっていた。

タコ部屋じゃないすか。

起床時に激しい腰の痛みと右足のしびれに襲われた。ニッパツを紹介した派遣業者から、仕事に行けないならクビ、という最終通告を受けたという。動くこともままならず、職を失った。病院のカルテによると、リジャル氏は椎間板ヘルニアで3月12日に手術を受けている。現在、地元病院の治療費とネパールにいる仲介業者への支払いで約9000ドルの借金があるという。「ネパールにいる妻とスカイプで話すときは3分で切り上げる」と9歳の娘をもつ同氏は話す。「妻の泣き声を聞くのはもう堪えられない」

アカンじゃないですか。

富士重工は不法移民を雇っておらず、下請けメーカーでもそうした作業員は確認できないとしている。太田市の下請けメーカーはトヨタ(7203.T)や日産(7201.T)、ホンダ(7267.T)など他の自動車大手にも部品を供給している。トヨタも日産も難民申請者を雇っていないと述べたが、下請けメーカーによる難民申請者の雇用についてはコメントしなかった。日産は約50人の技能実習生を雇っていると答えた。ホンダはコメントを拒否した。

結局下請けが勝手なことをやってるからなんて言い訳は近年では通用しないですね。

スバルと下請けメーカーが、技能実習生という名の下に数百人の労働者を雇っている。この制度は通常3年間の予定で労働者を送り込むが、スバルの矢島工場でフォレスターの製造作業をしているほとんどの中国人技能実習生は1年更新の契約しかしていないという。ロイターの計算によると、富士重工は中国人実習生を雇うことで、約4億6600万円を節約できたと見られる。これについて、同社はコメントを控えている。

この制度は、2008年に経験したような米国市場の落ち込みが再び起きた場合の保険になる、と子会社のスバル興産の長川光弘氏は話す。「3年と決めると、その途中で景気の下振れがあっても3年の契約を守らなくてはならない。1年の契約であれば途中で下振れが起きても安全。リスクをとらずにすむ」。

スバルは自動車製造業の中でも利益率が高い企業であるとよく言われますが、こういう事をやっていたのでは「実習生を酷使して製造コストを下げてるから利益率が高い」と思われてもしょうがないですね。いや、実際はこういうことをしても利益率を改善する大きなファクターではないかもしれませんよ。しれませんけど、こういうニュースが報じられたら誰だってそう思うでしょう。

富士重工は「取引先の労働環境管理は基本的に各取引先の責任で行っており、当社が直接的に関与することはない」との立場をとっている。

そんな言い訳は通用しないと誰しもが思うところでしょう。

インド人のモハメッド・シャフィール・カライ氏(28)は難民申請者だが、昨年8月、スバルやホンダに自動車部品を納める池田製作所の工場でベルトコンベヤーに左手薬指の先が巻き込まれる事故にあった。

カライ氏によると、指が切断されるほどの事故だったにもかかわらず、池田製作所のマネジャーは事故後、救急車を呼ばなかった。代わりに、製作所側は派遣業者を呼び、カライ氏は病院に連れて行かれるまで、およそ30分待たされたという。

同社の総務部総務課係長だった中嶋郁夫氏は「我々は止血をし、傷口を抑えるように言った」と話す。八木貞雄総務部長は、同社が斡旋業者に連絡したことは認めたが、救急車を呼ばなかったのは緊急医療事故に該当すると思わなかったからだと説明する。その業者の到着や治療にかかった時間はわからないという。

同社によると、カライ氏の事故が起きたのは、ベルトコンベヤーについている安全ガードが何らかの理由で外れ落ちてしまったため。この事故後、同社は製造ラインの安全性を確実にする方策を講じたとしている。

カライ氏は「すごい量の血が流れ、私は『痛くてたまらない。病院に行きたい、誰かと一緒に行きたい』と伝えたが、彼らは『私たちには関係ない』というばかりだった」と話す。

地獄としか言いようがないですね。

国連と米国務省は日本の技能実習制度について、今年の報告で、一部の研修生が「いまなお強制労働の状況にある」と厳しく指摘した。

結局、これなんですよ。これは自動車製造業に限った話ではなく、良く聞くのは農業ですね。古い記事ですが以下などが参考になります。

日本の農業を支えているのは劣悪環境に耐え忍ぶ外国人研修生

まず、ある外国人研修生の給与明細の内容を見ていただきたい。毎月の基本賃金は11万2000円だが、そこから家賃(5万5000円)や光熱費を引かれるばかりでなく、さまざまな費用が引かれている。リース代として、布団(6000円)、洗濯機(1500円)、テレビ(1800円)、流し台(500円)、調理器具(1000円)、ガス器具(1000円)、電気炊飯器(800円)、掃除機(1000円)、ファンヒーター(1000円)、そして浄化槽管理費(1000円)などの費用が引かれていく。給与明細の下の欄を見ると、1カ月働いた結果、研修生はかえって会社に2万円ほどの借金を作ってしまったことになる。

田舎のぼろアパートの一室に4〜5人が一緒に住んでいるのに、一人あたり5万円以上もの家賃を負担しなければならないとは驚きだ。流し台などのリース代の借金分は、結局研修生が身を削って残業して返すしかない。月に230時間もの残業をする研修生もいる。

まさにタコ部屋としか言いようがないですね。残念ながらこういったことは日本国内においてよくあるようです。「外国人実習生 奴隷」「外国人実習生 訴訟」あたりで検索すると山のように同様の事例がヒットします。

話しをスバルに戻しましょう。おそらく、スバル(富士重工)に限らずその他の自動車メーカーもこういう事は程度の差こそあれやっているかも知れません。実際、ロイターの記事にはトヨタ、日産、ホンダの名前も挙がっています。もしかしたらこういう企業も同様に「法的には問題ないが誠実には見えない」ギリギリのラインのことをやっているのかもしれません。そもそも日本の自動車製造業は外国人労働者に完全に依存しているのかもしれません。それは私はその方面に明るくないので分かりません。ですが、もしそうであったとしてもスバルが「みんなやってるから許される」と言うわけでは無いです。

スバル車は最近北米での売り上げが好調(主にフォレスター)ですが、それは企業イメージ戦略によって成り立っているという面もあります。スバルは北米市場で家族愛を訴えるCMを作ったり、寄付活動に取り組んだりなどして企業イメージの向上に取り組み、それがうまく行った結果であります。「富士重工は素晴らしい会社だ」と思っているユーザーにインド人労働者が指を飛ばしても病院に連れて行くことすら拒む、そういった環境で作られた車だと言う事実を知ったらどうでしょうか?ほとんどの人はショックを受けるでしょう。

もちろんこれは感情論です。社会に対して良い影響、悪い影響をどれだけ及ぼしているかを定量的に調べれば、富士重工と言う会社よりももっとあくどい会社があるかもしれません。スバルは全体から見れば非常に良い影響を社会に及ぼす優良企業かもしれません。しかし感情論は定量的ではないので、「インド人が指を飛ばす」「泣く妻の姿が耐えられないとスカイプを切る」というエピソードの方がよっぽど重要です。スバルが全社を挙げて寄付や社会貢献活動に取り組んできたのが一瞬で崩れ去るかもしれない、それがイメージや信用というものです。

現代的な大企業に今最も求められているのはコンプライアンスを順守する以上のCSRを果たすことやインテグリティの追求だというのはもはや当たり前と言っていいと思いますが、それは実利的な理由からだと私は思います。つまり、定量的でない感情論がビジネスに大きな影響を及ぼすと言う事実を受け止めたうえで積極的に干渉していかなければならないのです。

ですから富士重工にとっては、今回のロイター記事のようなニュースが報じられるのは絶対避けたいところであったでしょう。しかし、その内容は前述したとおりなかなか衝撃的でしたが、「感情論」も湧きあがってきそうな感じですが今のところネット上の反応はほとんどありません。

今、国内においても労働法規の順守や労働時間の削減というのはホットなトピックです。たとえば、不買運動がおこるとかいうほどひどい事にはならないような気がしますが、何らかの否定的な意見はもっと発せられて良いのでは…という気もします。