投資信託を始めてから1年くらい経ちました。
大ざっぱなところが分かってきたので基礎をまとめたいと思います。ただ私も初心者なので誤りもあるかとおもいます(でもそこまで大きな誤りはないと思います)。熟練者が説明するのとは違って初心者ならではの視点から解説することにはそれなりに意味があると思ったので書きました。
投資信託とは何か
「投資信託(ファンド)」とは、一言でいえば「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品で、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品」です。
もうすこし具体的なところを説明すると、
- 投資家がファンドにお金を渡す
- ファンドがそれを基に株・債権・不動産などに投資をする
- 得た利益を投資家に還元する
- ファンドは申し込み手数料を取ったり利益から報酬(信託報酬)を抜き出して儲ける
といったところです。
個人で株や債券を買う場合と比較した際のメリットは、少額でも分散投資できることや、運用をプロに任せることができるというあたりです。
なぜ投資信託をするのか
第一に「通貨は現金(預金)で保有していても価値が下がる」という事実があります。私の母は「昔は10円でパンと牛乳が買えた」などと言っていましたが、今はパンと牛乳を買ったら少なくとも200円くらいはするでしょう。つまり、私の母の幼少期と比べて20倍くらいは通貨価値が安くなっているということです(それだけが原因ではないですが)。これはバラッサ・サミュエルソン効果といい、理論的なモデルもあります。
つまりお金をお金のまま保管しておくと、その価値は減じてしまいます。この資産をお金でなくて株式や不動産として保有していると景気に連動して価値が上下しますから、価値が一方的に下がるという事はありません。
第二に我々はたいてい素人であるという事実があります。第一の事実により余らしておく金がある(例えば老後に備えた預貯金など)のであれば運用した方が良いのですが、株を始めるにも不動産投資するにも債権を買うにも我々は素人です。素人が出来ることには限界があるので、幾分かの手数料を払ってでもプロにお願いしたほうが安心ではあります(※ただし、投資信託商品の性格や買い方次第です。プロにお願いすることもできる、というのがより正確な表現かと思います)。
第三に嫌でも始める必要があるという事実があります。何を言っているのかというと、それは確定拠出型年金(日本版401K)のことです。確定拠出年金は2%の年利で運用している年金の運用を受給する本人にゆだねてしまう制度です。ここで2%の年利で運用できなければ年金は減るということです。つまり、元本保証されている定期預金や保険商品のみで運用すれば本来もらえたはずの年金よりも少ない年金しかもらえません。
第四に現金で金を余らせとくなら少しでも運用した方が良いという考え方があります。これまでの記述とも幾分か重複しますが、現在の預金・定期預金の金利はほぼゼロに等しいです。そのまま保管しておいても一切増えません。であれば多少のリスクを負った上でもう少し高い利率が得られるよう運用した方がよいという考えもできます。そして重要なことは、投資信託をうまく活用すればハイリスクハイリターンからローリスクローリターンまで柔軟に好みのポイントを自分で設定できるという事です。「運用したいけど大きなリスクは背負いたくない」という人でも納得できるポイントを自分で設定できます。
具体的な投資信託にはどのようなものがあるか
ではここで具体的な投資信託を見てみましょう。
SBI日本株トリプル・ブルベア、DIAM新興市場日本株ファンド、グローバルリートインデックス・・・・などなど、色々なものが並んでいますね。これ等一つ一つが投資信託の商品です。「投資信託をする/買う」とはこれらのうちから一つを買うということになります。
どうやって買うのか、いくらで買えるのか
買うには証券会社(もしくは普通の銀行)を通じて買います。買うには口座が必要です。今はネットで手続きして口座引き落としが普通ですかね。店頭でも買えますが、大体その証券会社や銀行でやっている商品を買わそうとしてきます。それが良いか悪いかまでは言いませんが。
ではその商品(投資信託)は幾らで買えるのか。というのは「何口買うか」「基準価額がいくらか」というものによって決まります。
株式に単位があるように投資信託にも単位があります。投資信託の単位は「口」です。ほぼ全ての投資信託が1万口あたり1万円、つまり1口1円からスタートします。その後、運用成績によって価格が上下します。「基準価額」というのは1万口あたりの値段のことです。最初は1万口あたり1万円でしたので、基準価額も1万円です。
1万円あれば基準価額が1万円の投資信託を1万口買う事が出来ます。基準価額が5千円であれば、1万円で2万口買う事が出来ます。指定の仕方は口数もしくは金額で行います。大体1万円から1口単位という場合が多いような気がしますが、もっと安い単位で買う事が出来るものもあります。これは証券会社(銀行)によって異なります。
いつ売れるのか、どうやって売るのか、分配金はいつどうやってもらうのか
投資信託を売る(解約する)条件はそれぞれの商品によって異なりますが、だいたいいつでも自由に売れます。売買には多少時間がかかります。条件があるパターンとしては、「運用成績がN%を超えたら自動解約」「最低N年は解約不可」「N年で自動解約」などがあります。
解約するときに手数料が取られる場合もあります。これも商品によりけりです。また、解約時には税金がかかります。これは「源泉徴収あり」の口座だと勝手に引かれますが、「源泉徴収なし」の口座だと自分で源泉徴収する必要があります。
投資信託によっては分配金がもらえるものもあります。分配金とは定期的に1万口あたりいくらといった形で貰える利益です。これは再投資に回すかそのまま受け取るか選べます。周期は1か月単位だったり年単位だったり半年単位だったしります。もしくは、一切ない(常に分配金ゼロ)という商品もあります。毎月分配金がもらえるとお得に思えますが、チマチマ税金を払っているのと同義なので個人的にはあまり分配金に魅力は感じません。でも人気ランキングなどを見ると、分配金があるタイプのものは比較的人気なようですね。
投資信託の分類は
大ざっぱに分けて、投資先と運用方法に応じて2つの軸があります。
投資先での分類
- 国内株式
- 海外株式
- 国内債券
- 海外債券
- バランス
- 国内不動産(REIT)
- 海外不動産(REIT)
ここで、バランス型というのはその名の通り、株式や債券など様々な分野で分散投資するような投資信託のことです。その他は書いてある通りです。たとえば国内株式であれば、投資家から集めたお金で国内企業の株を買って運用するということです。
投資先の分類には上記に挙げたもののほか、特定の分野(エネルギー関連など)に限って投資するものや、海外の中でも新興国に限って投資するものなのがあります。
運用方法での分類
- アクティブ
- パッシブ(インデックス)
パッシブ(インデックス)というのは、その名の通り基準価額が何らかのインデックス(例えば株ならばTOPIX、日経平均、ダウなど)と同じような値動きになるように運用を行う方式です。パッシブの場合はターゲットのインデックスと基準価額が一致するような運用をしているファンド(商品)が良いファンド(商品)です。
アクティブというのは、インデックスを基にさらなる利益を得ようとファンドが独自の戦略で運用を行い、利益の最大化を目指す運用です。アクティブの場合は上げた利益が大きいファンドほど良いファンドです。
ただ、ネットを見ると「アクティブファンドがパッシブよりも運用成績が良かった年は過去X回しかない」「世の中のX割のアクティブファンドはパッシブよりも運用成績が悪い」などという否定的な意見が並んでいます。(実際どうなのかは運用実績をみて判断してみてください)
また、アクティブファンドの場合はパッシブに比べて信託報酬を多く取ります。手をかけてるのだから当然と言えば当然ですね。
リスク、シャープレシオとは何か
投資におけるリスクとは値動きの振幅のことを意味します。変動する利率[%]の±1σをリスクと表すことが多いです。σは標準偏差です。標準偏差とは何か?は統計の教科書を見れば大体書いてますのでそっちを見てください。
各資産(国内/海外の債権/株式など)は利率(リターン)[%]とリスク[%]というパラメータで大雑把にその特性を表現しようとする方法が長らく行われてきています。国内株式の利率は3%、リスクは12%、みたいな表現をします。
ここで、リスクに対してリターンが見合っているかどうかを見積もるためにシャープレシオという指標を導入します。シャープレシオは
シャープレシオ = (リターン - ノーリスク資産のリターン) / リスク
で計算されます。ノーリスクな資産とは元本が保証された資産のことです。投資信託の場合はここをゼロで計算する(どんな資産であれリスクはある)ことが多いため、シャープレシオはリターンとリスクの比という素朴な値になります。
リスク分散とはなにか
投資信託ではリスクを最小化するために資産を分散投資します。よく「単一の資産だけ保有するとその資産の価値が落ちた時に損をする。複数の資産に分散していれば価値が下がっても他の資産で補填がきく」のような説明がされることが有りますが、個人的にはこの説明は不十分だと思っていて、重要なのは値動きに関連が無い資産の間で分散投資しなければリスクは低くなりません。
例えば、トヨタ株を沢山保有しているが、これをリスク分散するためにトヨタ株を売却してホンダ株を買うのはリスク分散の効果は非常に小さいです。何故ならば両者の企業は非常に関連性が高いです。関連性が高い企業(資産)の値動きは当然似通ってきますので、片方が下がった場合はもう一方も下がる可能性が高いです。片方が下がった場合に片方が変わらないor上がるような、相関性の低い or 相関性が負である資産を組み合わせて分散投資しないと意味がありません。
バランスのとれた4資産
分散投資する上でバランスが取れているのは
- 国内株式
- 海外株式
- 国内債権
- 海外債権
の4資産とよく言われます。ハイリスクハイリターン、ローリスクローリターン、相関性の低い組み合わせ(国内と海外)が揃っているからです。
ポートフォリオとは何か
以上の説明より資産は分散投資しないといけませんが、何の資産をどの程度保有するかという保有資産・比率の関係をポートフォリオと呼びます。
ポートフォリオによく組み込まれるのは前述した4資産になります。資産の種類数に関して特別な決まりがあるわけではないですが、リスクの分散を狙ったら最低上記に上げた4資産、最低でもそのうちから一つを除いた3資産くらいは必要な気がします。
で、これらの保有比率を決めるわけですが、では最適なポートフォリオとは何の資産をどの程度保有するのか。それは簡単には答えが出ません。「最適」が曖昧だからです。リターン、シャープレシオ、リスクのどれを最大化(最小化)することを意味するのか、その中間なのか。逆に言えばそこが決まれば最適解というのはある程度定まります。
どのようにしてポートフォリオを決定するか
すでに資産はリターンとその標準偏差であるリスクとして記述する方法を説明しました。また、相関性が低い(時に負の相関)資産に分散投資することでリスクを低くすることができるというのも説明しました。
という事は、各資産のリスクとリターン、またそれぞれの相関係数が分かった上で、最適なポートフォリオの厳密な定義が決まったら計算で最適解が見つかると思いませんか?思いますよね?
で、我々一般ピープルが思いつくようなことは先人の方々がとっくに実行していて、かつ、便利なツールを提供してくれています。
効率的フロンティア計算シート | タロットのポートフォリオ理論[ココログ分室]
また、過去データからの各資産のリスク、リターンの平均値は以下などで算出した結果が提供されています。
ネットで入手可能な、期待リターンとリスク、相関係数データ(2014年7月)
過去の投信全銘柄の実績データベースみたいなものが公開されていれば自分で計算できるのですが、ありませんでした。
この2つと、あとは何を持って最適とするかを自身で定義してもらえればポートフォリオの(ほぼ)最適解は求まります。
リバランス
最適解が決まって運用を続けていると資産額に偏りが出てきます。その偏りを本来理想的な保有比率に戻してあげるのがリバランスです。アセットリロケーションとかアセットリアロケーションなどとも言われます。具体的には理想より多く保有している資産を売って理想より少なく保有している資産を買うという事を行います。
バランス型投信
で、上記のような作業は私はそれほど難しくはないと思うのですが、中には面倒でやりたくないと思っている人も多いことでしょう。
そういう人におすすめ(と証券会社の人は言っている)なのがバランス型の投信です。これは上記のような理論に基づいて色々な資産に分散投資を行い、しかるべきタイミングでリバランスしてくれるようなものです(ただし、そうでないものもありますので個々の投信の投資先や運用方針をよく読んでください)。
資産運用のプロがここまで説明したことを全部やってくれているのあれば、わざわざ自分で計算して運用する必要は無いんじゃないか…とお思いになる方も居るでしょう。それはおおむね正しいのではないかと私は思います。そのうえで自分で運用する理由を挙げるとすれば、以下のようなあたりになると思います。
信託報酬が高め
バランス型は運用会社の手間がかかるため信託報酬も高めにとってあります。自分で同等の運用ができればその信託報酬分は自分の利益になります。
自分でリスク/リターンを設定したい
運用を任せるという事は、どの程度のリスクでどの程度のリターンを狙うかという戦略をも運用会社にゆだねることになります。なので、各投信がターゲットとしているリスク/リターンと自分が望むリスク/リターンが折り合わないということもあり得ます。その場合は自分で運用するしかありません。
あと、個人的に疑問なのがバランス型では単純に資産保有率をn分割したり、資産XをY%という固定比率で運用したりという商品が多い事です。上記に書いたようにリスクを最小化するのか、リターンを最大化するのか、シャープレシオを最大化するのか、もしくはそれらの中間なのか、というあたりで最適な保有比率というのは決まってきますが、その比率は綺麗な比率になることは少ないです。
つまり資産保有率をn分割するような運用方法にする理由が理解不能なのですが、どうなんでしょう。保有比率を最適化し始めた段階でそれはアクティブファンドになるので単純に定義の範疇外であるということなのかもしれません。ここら辺、良くわかっていませんがともかく疑問ではあります。
まとめ
投信の基礎の基礎を書いてみたつもりです。
要点としては、
- 大量の資金を現金の形で持っておくことにあまり意味はない
- 投信の戦略は保有資産の保有率で決まる
- めんどくさい人はバランス型
というあたりでしょうか。