湖の上に住む人たち、金の無心

二点見た夢を書きます。

湖の上に住む人たち

私は友人Sと遊んでいた。彼とは幼稚園から中学まで一緒であった。地元の友達であった。

最近はほとんど会っておらず、最後に会ったのは4年前くらいだったか。ちょくちょく電話はかかってくるが、お互い遠方に住んでいることもあり、Sは帰省もしないので会う機会が無い。そうやって夢の中でしか会わない友達が何人も増えてくる。

Sは昔から無茶苦茶なところがあって、罰ゲームと称して「チビT短パンで裏山に上って頂上からロケット花火を発射させる」「同級生の女の子に告白させる」「普通のろうそくのロウを垂らす」などという無茶苦茶をはたらいてきたし、酔うと暴言・暴力を振るうということもあった。今は無いけど。いきなり自転車で全国を旅するなどと言って事実そうしたし、かと思えば東日本大震災のボランティアをやりつづけたりした。

何を考えているのか分からないが、なんとなくわかる気がする。無茶苦茶な時期もあったけど縁は続いている。そういうあたりは地元の友達の特徴ではないかと思う。Trainspottingのベグビーみたいな感じだろうか。まあSはベグビーほどめちゃくちゃではないけど。

夢の中でSと私は真夏の炎天下の下、実家近くの貯水池にいた。夢の中の貯水池は現実のそれとは大きく違っていて、非常に広大な面積であってまるでダムのようだった。水がゆっくりと流れていて、非常に透明度が高い。水面から底を覗くと水中に階段が続いている。どうやらもともとは何かの施設が存在していたようだが、それが水の中に沈んでしまっているようだ。

Sは貯水池の水面に飛び降りた。何をしているんだと一瞬焦ったが、Sは水面に着地して小さな水しぶきが飛んだだけだった。よくよくみると、底から水面のギリギリまで近くまでコンクリートでできた何らかの構造物が張り出していて、そこにSは着地したのであった。その構造物は通路のように伸びていて、水中に没した建物へと続いていた。

「早く来いよ」とSに言われたが私は躊躇した。私はまず、高い透明度の湖の底に何かが没しているという光景がとても恐ろしい。高所であることを錯覚させて生物の本能的に恐ろしいのと、深い湖底というあたりが窒息や溺死というシーンを連想させて恐ろしいのと、ふたつがミックスした恐ろしさがある。私は泳げないわけではなく、むしろ泳ぎは得意なほうで、実家に住んでいた時はよく川で泳いでいた。で、あるからこそ、逆に構造物によって形作られた複雑な水の流れなどを見るに危険だという事が一目で判断でき、ますます怖い。

無理だ、行けないと言うが「うるせえ、早く来い」と言うばかりだ。私は意を決して湖に飛び込み、駆け出した。

湖の真ん中には構造物が水上まで伸びているところがあり、そこにたどり着いてようやく私は一安心した。湖は非常に不気味だ。水の流れがほとんどなさそうに見えるが、水面をよく観察すると湖底から大量の水が湧き出してきているかのような波紋がうつっていて、また恐ろしくなる。なぜ大量の湧き出しがあるのか。大量の地下水がめぐっているのか、それとも人工的な構造物から水が噴出しているのか。その巨大な機械は何の目的で沈められたのか…。そういう一つ一つを考えるのが恐ろしい。嫌でも考えてしまう。

Sは続けて「あそこに行こう」と指をさした。その先には湖の対岸があり、その対岸は崖になっている。その崖から太い角材が何本も伸びており複雑に絡み合っていて、その上には屋根があった。崖に住んでいる人々が居る。私はなぜか知っていた。そいつらは山賊の末裔で、一族以外の人間は見つけ次第誰であろうと襲い掛かる。男は殺した上で所持品を奪い、女は強姦した上で湖に捨てる。時には殺害した人間の人肉を食らうという噂もあったくらいだ。そんなところに行くなんてSはついにおかしくなってしまったのだろうか。

Sは「大丈夫だ、良く見てみろ。あいつらは昼飯を食ったばかりだからみんな眠っているよ」という。目を凝らしていると、確かにぼろきれのような布をまとった人間が横になっているような姿も見える。私は嫌だったが、結局はそこに向かっていた。所詮は夢だから合理的な判断などできやしない。

縦横にジャングルジムのように渡された角材に足をかけ、気付かれないように息を殺して登っている。水面からの高さは20mはあるだろうか。非常に高い。相変わらず湖底に沈んだ建物が見えている。恐ろしい。行くも地獄、落ちるも地獄だ。その状況とは対照的に、空は雲一つない青空で、風もなく平穏であった。トンビが上空をぐるぐるとまわっている。

と、話し声と何かを叩く音が聞こえたので角材の影に身をひそめて前方をうかがうと、例の山賊が2, 3人、何か談笑しながら包丁で何かを打ちつけるように切っている。赤黒い何かの元の姿はなんだったのかは考えないようにした。というか、やつらは全然眠ってなどいないではないか。どうしてくれるんだ。Sに目でそれを訴えようとしたが、Sはごく日常の一時であるかのように、まるで子猫が水鳥を捕まえようと草むらから様子をうかがっているかのような、好奇心にあふれた顔で山賊を見ていた。

そして私には一瞥もくれず、どんどん先に行ってしまうので私は付いていくのがやっとだった。

崖に据え付けられた山賊の棲家を横断してようやく地面にたどり着いた。湖面でもない、角材でもないまともな地面である。しかし安心ができないのは、ここからどうやって帰ろうかという悩み。Sはすでにどこかに行ってしまった。私は湖畔にたたずみ、対岸をうらやましそうに見つめる。日が暮れてきている。

ここで記憶が途切れる。次に覚えているのはパイプが敷き詰められている機械室だった。そこで私は「なんで部外者がここにいるのだ」と作業服を着たオッサンに怒られている。私は安心した。なぜならば山賊に殺されるよりは知らないオッサンに怒られた方がずっとマシだからである。

どうもこの施設は貯水池(もしくはダム、湖)に併設された発電所か、もしくはダムの水位をコントロールするためのものらしい。オッサンはとりあえず施設から私を追い出そうと出口へと案内を始めた。私にとっては願ったりかなったりだ。

リベットが打ち付けられた鉄のドアを開けると、大きな水路とその両脇に設置された狭い通路が続いていた。通路は定期的に水没するらしく、水の流れた跡やコケが付着している。オッサンは「4時になったら水門が開くから、そこまでにここを通り抜けなきゃなんねえ」と言っている。時計を見るとあと10分かそこらだった。それで十分な時間なのかどうか分からない。しかし、オッサンは悠長に「あ、どうせ出口行くなら工具もってこう」などと言い、「ちょっと待ってな」と私を置いてどこかへ行ってしまった。

一人残された私は不安。1秒が10倍にも感じられる。私は我慢できず、走り始めた。ここで目が覚めた。

金の無心

妙な街を歩いていた。その光景は不思議だ。ハワイとインドと私の地元が混ざったような街だった。インド人、日本人、白人、中国人がごったになって街を歩いている。非常に騒がしい。国道からすこし奥に行くと海岸に出る。国道の形や交差点の場所を見る限りは地元の町と完全に一致しているが、地元に海は無いし外人もいない。

その海岸はワイキキがベースになっているらしく、近くに背の高いホテルが立ち並んでいる。しかしそのホテルはインドらしさが漂う。外壁はぼろいし、全体的には綺麗なものの細かいところを見ると汚れが目立つ。

そんな街で私は先輩に金を貸してくれとしつこく頼まれていた。私に金は無い。断っても断ってもしつこく頼み込んでくる先輩に耐えかねて私は逃げた。逃げた先は自分のマンションだった。20階くらいに私の部屋があり、窓からは弓なりの海岸線の向こうまで見渡すことができる。私の見る夢では何故か見晴らしの良いマンションに住んでいるパターンが非常に多い。

外は天気が良く、汚い街が眼下に並んでいる。ゴチャゴチャした無計画な交差点が並んでおり、その間を縫って車が走っている。部屋の中は薄暗く、ここもまたゴチャゴチャしており、段ボールや家電製品が入っていた箱などが積み重ねられており、いつか掃除せねばならぬなと思うのだけれども、思うだけで掃除しないからこういうことになってる。

そしてまたふと窓の外に目を向けると、先輩が歩いているのが見えた。キョロキョロとあたりを見回し、私を探している。そしてふと目が合ってしまった。まさか。こんなに離れているのに気づくわけがないと自分に言い聞かせるが、その思いむなしく先輩はこちらに向けて一直線に走ってきた。

まずい、いや、しかし建物が分かったとしてもこの距離ではどの部屋かまでは分からない筈だ。表札もないし、私は留守を決め込めばよいと考えていたが、その思いも届かずすぐにドアを思い切りたたく音が鳴り始めた。うわっ、マジか、いやでも無視すれば、しかし近所迷惑かと一瞬悩んでいるうちにすぐに「なんだよ!うるせーな」とドアが開け放たれる音。のぞき窓から様子を伺うと隣の部屋に間違って突入したようだ。何やら話す声が聞こえたと思ったら、こんどは、「金貸してくれ!」と部屋の中のドアを開けて先輩がこちらの部屋に突入。えっ、どうなってんの?その後ろにはニコニコ顔で地元の友達が立っている。どういうこと?意味が分からない。

結局、こういうことだった。私は今まで気づいていなかったが、なんと偶然にも私の隣の部屋には地元の友達が住んでいたのだった。しかもこれもまた私は知らなかったのだが、両方の部屋には行き来できる扉が存在しており、その扉を通って地元の友達と先輩は私の家に突入してきたとの事だった。これ不法侵入だろと思ったがそれよりも懐かしい知り合いに会ったことの方が嬉しく、久しぶりー、えっ、こっちで何してんの?などという話に花が咲いた。先輩はニコニコ顔でそれを一通り聞いた後、「じゃあ旧友との再会も済んだところで…。金かしてくれ!」とまた始めた。そこで目が覚めた。オチはない。終わり。