マツダやスズキはトヨタに飲まれてしまうのか

なんかこうなることは大体想像ついてたけど、案の定そうなりました。下記の記事。

「らしさなくさないで」トヨタ提携のマツダサイトに殺到

内容は「10%の熱狂的なファンのためのクルマを作り続けて」「悪い意味でトヨタっぽくならないことを祈る」などが多い。「日本の自動車業界の新しい展開」という期待もあるが、マツダが最大手のトヨタに「のみこまれる」ことを心配する声が目立っている。

「らしさ」が何なのか良くわかりませんが、つまり、提携後も一貫した走りへのこだわりを保ちつつ、これまでのマツダファンに好まれるような車づくりをしてほしいという事でしょう。

なぜあのマツダとトヨタの発表を聞いてそのような考え(マツダがトヨタに飲み込まれてしまうのではないかと言う危惧)に至るのか全然わかりません。もう一度記事をちゃんと読んでみましょうか。

トヨタとマツダ、業務提携強化に向け基本合意

「両社で組織する検討委員会を立ち上げ、環境技術、先進安全技術といった分野をはじめとする、互いの強みを活かせる具体的な業務提携の内容の合意を目指して」いくという。

つまり、トヨタは燃料電池車(FCV)やプラグイン・ハイブリッド(PHV)の技術を、マツダはSKYACTIV テクノロジーよるガソリンおよびディーゼル・エンジンのノウハウをそれぞれ提供することになると思われる。

環境技術をめぐるこの動きは、双方にとって好都合であろう。

「両社で組織する検討委員会を立ち上げ、環境技術、先進安全技術といった分野をはじめとする、互いの強みを活かせる具体的な業務提携の内容の合意を目指して」とあります。つまりまだ合意にすら至っていない話であるが、具体的には環境技術、先進安全技術といった分野であると述べています。

その発表内容を基に、トヨタはFCVやPHVの技術をマツダに提供し、マツダはSKYACTIVテクノロジーによるガソリン・ディーゼルエンジンのノウハウを提供するということが推察されます。

ここまでの話に、互いの具体的な車種設計にまで踏み込んで何かするなどという話は一切ありません。会見でもすべて「未定だ」と述べています。

いやいや、会見でそこまで言わないだけでどうせトヨタはマツダの車づくりに茶々入れてくるから…と主張する人も居ると思われますが、しかし合意に至るまでの長期的な背景を考えてみても、トヨタがマツダを呑み込んでマツダらしさが失われるなどという結論には至りません。

…マツダがZEV規制の対象となる見通しとなったため、PHVやFCV、EVなどの車種を開発する必要が出てきた。しかし自社技術は無い。開発には金と時間がかかる。どこからか提供してもらうのが手っ取り早い。ならばトヨタしかない。トヨタからはすでにTHS2の提供を受けているから、現場レベルでも交流がすでにできている。

メキシコ工場を立ち上げるときに出資を受けているし、その見返りとしてトヨタはMazda 2(デミオ)ベースのサイオン iAを提供してもらった。トヨタの弱点は若年層にアピールできる車種があんまりないところで、その点、若年層からの支持が厚いマツダが何かをOEM提供するということはトヨタのメリットになった。…

今回の発表はそれの流れをもっと深化させようという流れだと考えるのが自然です。もっと言えばiAの例からも明らかなように、トヨタは若年層や車好きの層にアピールできるマツダの「走りの楽しさ」「格好よさ」をむしろ欲しているのですから、それを潰すようなことをするわけがありません。

また、トヨタが強いハイブリッド市場、国内ミニバン市場なんかではマツダは全くと言っていいほど競合しません。ですから競合する部分を力でつぶすようなこともする必要がありません。

マツダにトヨタ車のような設計思想、デザインを押し付けてトヨタがなにか利益を得るということは考えにくいです。普通、そういう事をするのは「自社製品が凄い売れているが生産能力が不足している」という場合でしょう。

そして、マツダの小飼社長自身がこの合意を受けて記者会見まで開いているということそのものが、「マツダがトヨタに飲み込まれるようなことは無い」と私が判断する一番の理由でもあります。簡単な話です。合意内容や、そこから類推される将来の流れがマツダにとって受け入れがたいものであれば突っぱねれば良いだけの話です。

以前の記事でも書きましたが、今回の合意は記者会見で述べたとおりのことに偽りはないと思われます。つまり、両社は今後も生き残るためにお互いの良いとこどりをしようという事です。そして、今回の記事で述べたとおり、トヨタがマツダのデザインを取り込んだりするようなことはありえないと思います。

そして今度はスズキがトヨタによって買収されるかもしれないという話が出てきました。

スズキ、揺らぐ独立 トヨタによる買収、現実味高まる

スズキがVWと提携したのは、HV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)などエコカーの技術開発で取り残されるのではないかという恐怖感からだった。だが、現時点ではHVやEVは自動車の主流になっていない。
スズキが主戦場としている新興国市場では、安いエンジン車をどう売るかで勝負が決まる。スズキは自前の高性能なエンジンの設計技術を使って、競合に負けないクルマづくりができるようになった。小型車の「スイフト」は、他社の追随を許さない低燃費を達成した。
一方のVWは、スズキの低コストでつくれる小型車開発のノウハウが欲しかったが、今や自前でコストを引き下げて、いいクルマをつくれるようになった。両社は、お互いに利用するメリットが薄らいできたのである。

VWがスズキと提携したのは12年ですが、提携以来なにか両社によって大きなプラスがあったわけではありませんでした。そして提携解消と同時にスズキは新たな提携先を探さなければならなない。そこで、トヨタの名前が挙がってきたという事です。

もしVWの主張通りに、同社によるスズキ株式の継続保有を認める裁定が下されれば、スズキは防衛策を講じる必要が出てくる。友好的な買収先となる“ホワイトナイト(白馬の騎士)”の最有力候補はトヨタ自動車だろう。トヨタも成長が期待できるインド市場に魅力を感じているからだ。

トヨタはインドでの販路が欲しいため、スズキを買収することにも意義があるということです。インドの街中でスズキを見る率はものすごく高いです。まずずば抜けてスズキ、特にSwiftが走っています。その次にホンダ、ヒュンダイあたりでしょうか。同じくらいの規模でMahindra、TATAが走っていて、トヨタ車はたまに見るな~と言った印象でした。トヨタ車で見かけたのはInnovaという昔のエスティマみたいな車種が殆どで、1~2回ランクルを見かけたくらいでした。トヨタよりもベンツを見かける率のほうが高い気がします。目立つからかもしれませんが…。

実際のシェアは以下のような感じらしいです。

自動車販売台数速報 インド 2014年

マルチ・スズキ 37.7%
タタ 14.5%
現代 12.5%
マヒンドラ 11.7%
ホンダ 5.5%
トヨタ 4.5%

意外にホンダが少ないですね。そしてトヨタは上記のように苦戦しています。これからは新興国がメインのターゲットになってきますから、インド市場でスズキの強力な販路・サービスを活用できるというのはトヨタにとってとても良い話になるでしょう。

もし、トヨタとスズキが提携したとしても、トヨタがやりたいことというのはインドで売り上げを伸ばしたいという事であって、スイフトスポーツを潰してヴィッツを売るという事ではないでしょう。そんなことはありえないと思います。

まとめ

自動車業界は協業の動きがどんどん活発になってきています。最終的に自動車メーカーは4社になるという話もあるくらいです。異なるメーカーが提携してうまくやっていくためにはお互いのメリットを生かせるような関係であることが望ましいです。ですから、そういう関係を築けるメーカーを皆探します。それがビジネス上の利益になるからです。そうやって完成した複合企業ではそれぞれの良さが発揮されて今よりももっと優れた商品が完成されることでしょう。

最後に。日産のゴーン社長がトヨタとマツダの提携拡大に関して以下のように述べています。

トヨタとマツダが環境・安全技術で提携拡大

「まったく驚きはない。まったくもってロジカルだ」との印象を述べ、「今後も技術を軸とした合従連衡の動きは広がる」との見方を示した。

そうです。全くロジカルなのです。このような流れは必然とも言えます。そして、マツダの人気商品をわざわざ潰してしまうような非論理的な決定があるわけがないのです。