企業と学生の考え方の違い

ネットで以下のような記事を見た。

ある学生が商社の新卒入社面接を受けたとき、以下のような会話があったそうで、それに学生は憤慨しているとのことであった。(仔細とか言葉づかいとかは適当)

面接官「わが社で発揮できそうな事はなんですか」

学生「コンビニバイトに打ち込みました」

面接官「それの何が活かせるの」

学生「チームワークとかコミュニケーション能力とか」

面接官「それってどこの業界でも同じだよねえ…。わかってる?うちはBtoBなんだよね。コンビニやスーパーとはちょっと違うんだよねえ。本当に企業研究してんのかな。まじでうちに入りたいの?」

学生「すんません・・・」

これに対して、学生は「何がイカンのだ。入ったときからコイツ嫌いっていうオーラがむんむん出てたし、ほんと就活って運ゲーだわ」「学生時代に身についたBtoBで活かせる経験ってなんだよ」と憤慨している。

以下、私が思ったこと。

「何がイカンのか」と言われれば、質問の意図を理解していないからとしか言いようがない。この面接官は商社である弊社で働くにあたって役に立つ能力を何か持ってんのか?と質問しているのに対して、「コンビニバイトに打ち込みました」では質問に対する答えになっていない。「活かせる能力は何か」と問うてるのに「学生時代頑張ったこと」を言うのでは答えにならない。

ただ、言わんとしているのはなんとなくわかる。「バイトに打ち込んだからコミュニケーション能力とかチームワークとかがあるんだよ」と言いたいんだろうな、というのは分かる。ただ、そう言いたいのだとすると、(これも面接官の言うとおりで)「コミュニケーション能力とかチームワーク」はどんな職業でも大体必要とされる基礎能力であるが、面接官は「わが社で」と限定して言っているのであるから、最低でも商社というジャンルの会社であると歓迎されるスキルや特性を言うべきであろう。

確かに面接官の言い方は悪いかもしれない(私は悪いとは思わないけど)が、ここまでは運ゲーでもなんでもなく、学生が質問の意味を理解していなかったという事に尽きる。

なので、私は「何がイカンのか」という気持ちになることが理解できない。本当に上記のようなことが分からないのだろうか?そんなはずはないと思う。このくらいの国語力も無くてセンター試験解けるわけないじゃん。

ここからは私の予想であるが、「何がイカンのか」と思ってしまう理由の根底には「みんな同じ方法でやっててなぜ俺が怒られるのか」という気持ちがあるからではないだろうか。バイト経験を引き合いに出してコミュニケーション能力をアピールするとは良く聞く話で半ば定石のように語られているように思う。その定石の何がアカンのか。同じことをやって怒る面接官もいれば、いいですねーと言ってくれる面接官も居る。運ゲーではないか。という気持ちがあるのではないだろうか。

しかしながらすでに述べたように、面接では質問に応じて適切な回答をしなければならないから、画一的にこう喋っときゃいいというものは無い。「運ゲーである」という言葉は裏を返せば何か統一的な基準が合ってしかるべきという気持ちが見え隠れしている。同一の方法で通用する場合もあれば通用しない場合もある。運ではないか。そういう気持ちだろう。でも今回の話の流れでは質問に対する答えが言えなかったからダメなの。だから運ゲーでない。

加えて言えば「バイト頑張りました」で、それがアドバンテージだと感ずる面接官は居ないだろう。ここら辺が社会と学生の間でのギャップであると思う。

学生はこれまで、小中高校を経験し、大学に進学してみなと画一的な方法で評価されてきた。皆と同じことを同じ方法でやることが正だと教え込まれてきた。それは「教育内容を理解する」という点において正しい。が、社会に出ればそれぞれの会社がそれぞれの業務を行っているので画一的な方法論で評価されるということはない。

であるから、私だったらたとえばああ聞かれてどうしたかと言うと、「学生時代は単身で言葉の通じない国々に飛び込んでいき色々な経験をしました。さすがに何度か危ない目にあったこともありましたが、なんとか自分一人で切り抜けました。身振り手振りでも何とか通じるものだなと思いました。そういうふうに、未知のところに飛び込んで行って何とかするという度胸は能力は人一倍あると自負しています。そういう能力は新たな事業領域を開拓するうえでも役に立ったりすると思うのですが、どうでしょうか」くらい言っておけばいいと思うのだがどうだろうか。商社を目指したことが無いので良くわからんけど、少なくとも質問の答えになっているとは思う。

で、こう書くと「それは海外渡航経験がある人だから言えるのだろう。俺は行ったことない。バンバン海外旅行できる金があるとか金持ちの子供だけだろう。ずるい。格差社会だ」みたいなことを言われそうだが、とんでもない。

就職とはウィンドウショッピングのように並べられた商品のうちから一つを選ぶ作業ではない。その人のこれまでの人生経験の延長線である。今まで旅客機の事を何も知らなかった人が次の日からパイロットになれるわけではないのだ。就活が始まってから「どこの業界にしようかな~。業界研究始めちゃおうっかな~」などと言ってるのでは遅い。

程度の差こそあれ、これはどんな業界でも共通する。未経験でも全然OK!なんてことを言っているのは従業員がすぐ辞めるからとにかく人を補充したい会社だけである。まともな会社だったら多少の専門知識や素質は無いと困ると思っているだろう。

本当に商社に行きたいと思っているのならばもっと学生のうちから海外に目を向けていないといけない。国際ニュースを読み、外国人の友達を持ち、外国に旅行しに行き、いろんなものをみて知見を広め、そのうえで日本にはどんな商社があり、それぞれでどんなプロジェクトが進んでいるのかというのは基礎知識として知っておくべきだろう。そういう行為をしていないのに「商社に入りたいんです」と言っても気持ちが全然伝わってこない。

じゃあ海外旅行に行けるような人でないと商社には入れないのか…と言われるかもしれないが、そういうわけでもない。面接で嘘を言ってはいけないがある程度の誇張は許されるだろう。LCCのクソ安い弾丸ツアーみたいなものを3つ4つ行っておけばそれでいいのではないか。それくらいの経験があれば、先に述べた「言葉の通じない国々に~」というアピールくらい述べても嘘にはならないだろうと思う。

そして必ずしも海外志向をアピールする必要もない。私は商社の事を熟知しているわけではないので手っ取り早く海外経験を挙げただけで、その職業のことをもっと調べれば他にも良いアピールは山のようにあるだろう。

そういうことを調べるのすら嫌だというのであれば、たぶんそういう人は商社には向いていない。

このあたりの話は「ゲーム系専門学校職員氏が良いこと言ってる」に書いた話とも大いに重複するので、こちらも興味があれば読んでいただきたい。