マツダとトヨタが提携強化

というニュースをここ数日よく見るが、なぜ今さら話題になるのか良くわからない。国内のみならず海外でも話題になっている(NewsNowのランキングで24時間トップになっている)。内容はマツダがディーゼルやSKYACTIV技術を提供し、トヨタがPHVやFCV技術を提供するとの事。

似たようなニュースは結構前から報じられていたが、今回のほど各所で話題になることは無かったように思う。

元々マツダとトヨタの結びつきは強い。マツダのメキシコ工場にトヨタが出資したり。ディーゼルエンジン供与などもそうで、今になって始まった話ではなく、去年からそういうニュースは報じられていたはずだ。HV技術はすでにアクセラで供給を受けているし、トヨタ自身、「FCV普及に日本メーカー(特にホンダ)さんにご協力いただきたい」と言っている通り、FCV関連技術の供与も当然推測できる流れだ。というか、FCV普及のために数多の特許について無償提供を決めたという報道もあったくらいだし、何も驚くようなことではない。そういやサイオン iAをマツダメキシコ工場で生産というニュースも最近あった。

ちなみにスバルもトヨタに接近しており、2007年からスバル北米工場でトヨタのカムリを生産している。もうすぐ終了するそうだが。

と、いうようにトヨタは昔から特にインフラ面ではスバルやマツダとの協業を進めていた。普段、私はトヨタ車を貶すような記事を多数書いているが、スバルやマツダといった自動車製造では中規模のメーカーが海外進出するときには積極的に投資したり協業を進めたりと、こういう懐の深さというのはさすがはトヨタというべきところだと思う(単にトヨタにメリットがあったから、というだけかもしれないが、それでも日系企業が海外で協力してビジネスを進める光景は見ていて頼もしく感じる)。

という感じで私はこれらのニュースをずっと好意的にとらえてきた。ただ、「走りを重視するマツダやスバルが(トヨタの横やりによって)EVやHVに積極的になるのだろうか(そういうメーカーになってほしくない)」という事を言っている人がいたのでちょっと気になってこの記事を書いた。

EVやPHVの普及は自動車メーカーに定められた義務である。CSRである。持続的に地球環境に大きな悪影響を与えることなく発展するという人類の共通目標の延長線である。運転が面白いとかつまらないとか、動力性能がどうとか、コストがどうとかいう問題ではないのである。自動車の最終的なあるべき姿というのは、ゼロエミッションで自動運転である、というのは世界的なコンセンサスとして形成されつつあるというのが現状と言っても良いと私は思っている

※私個人としては地球温暖化における二酸化炭素悪玉論は疑問で、半ばビジネス的&政治的と思っているくらいなのだけど、自動車の排ガスにはNOx, SOx, PMも含まれているし排ガスが出なくてクリーンな車が実現できるのであればそれがいいと思う。ただ、CO2を排出する発電所からの電源供給によって充電するのをゼロエミッションと言えるのか?という問題はあるが…。発電所で燃料を燃やして電力を作り、それを送電し、蓄電池に充電、最終的にモーターを回す…ということをやるのであれば発電所で燃やす燃料を車で燃やした方が高効率ではないだろうか。

まあそれは置いといて、現実的に自動車メーカーが直面する問題というのは米国カリフォルニア州のZEV規制になる。古くは1990年から検討されていた法規制である。ZEVとはzero emission vehicleの略で、新車販売台数比で決められた割合のEV、PHEVを販売しなければならないというものだ。これらはカリフォルニア州で年6万台以上販売するメーカー6社(クライスラー、フォード、GM、ホンダ、日産、トヨタ)が対象となっていたが、2018年型以降、販売台数が中規模のメーカー6社(BMW、ダイムラー、現代、起亜、マツダ、フォルクスワーゲン)も対象に加わる見通しとなっている

なので、マツダやスバルにとってトヨタからFCVやEV関連技術の供与を受けることは義務だのCSRだの云々抜きで、単純にビジネス上大いにメリットになる事なのである。トヨタにとっては弱点である高効率エンジンやクリーンディーゼル技術を得られるのでトヨタにとってもメリットになる。

…と、言われているが、私はトヨタのエンジンがそこまで悪いとも思えない。トヨタとしてはハイブリッド車を第一に売り出していく方針なので必然的に内燃機関そのもののアピールがしづらいという背景や、昔のトヨタはエンジンが作れずヤマハに作ってもらっていたとか、そういう歴史的な側面からの印象も絡んでいると思う。最近の例で言えばプリウスの2ZR-FXEエンジンも当時のレベルで言えば十分に先進的なエンジンだし、実際にハイブリッドシステムの恩恵が作用しにくい高速を走らせてみても、通常のガソリン車よりはずっと燃費が良い。SKYACTIVが評価されこういったエンジンが埋もれてしまうのはトヨタにとって不幸と言えるだろう。本来であれば高効率エンジンを前面に宣伝して良いレベルだと思われる。

ディーゼルに関しても、国内でトヨタ製ディーゼル車種が無いだけで海外では広く展開している。BMW miniがトヨタのディーゼルエンジンを採用していることも一定の技術力がある証になるだろう(もっとも、評判はよろしくなく逆にディーゼルエンジンの提供を受けてるほうが多いと思われるが)。いずれにせよ、トヨタのように資本も開発リソースも大量に持っている会社がちょっと本気になれば自前で高効率エンジンなり、クリーンディーゼル用の触媒なりは作れるはずで、トヨタがマツダ製エンジン、もしくはその技術を得ることによるメリットというのは、その開発期間なりコストなりを削減することだろう。

であるから、この提携というのはむしろマツダにとってのメリットの方が大きいのではないかと私は考えている。その背景にはやはりFCVの普及という大目標があるからだろう。そのあたりも含め、改めてトヨタという企業の偉大さを感じる所だ。

私の予想では、遅かれ早かれスバルも同様にトヨタからEV/PHVの技術提供を受けるだろうと思っている。

日本は資源小国で、特に震災以降はエネルギーセキュリティの面で大きな問題を抱えている。水素エネルギーはそれを解決してくれる魔法の特効薬ではないが、クリーンでリチウムイオン二次電池と比べると桁が違うエネルギー密度を有し、数多くの生成方法がある水素は今後利用機会が増えるだろう。だからこそ、国内電機メーカーも積極的に取り組み始めている。

トヨタとマツダ、スバルの提携というのはそういった大きな流れの中にある半ば必然的とも言うべきものであって、今回の提携に関する報道を見て両社の車づくりがどう変わるか、とそこだけピンポイントで議論するのは大局が見えていないと思うのだがいかがだろうか。というか、そもそもこの記事で長々と書いたようなことは元の記事にも書いているのだけど。

トヨタ・マツダ提携拡大で調整 燃料電池車やエンジン技術 相互に活用

世界的に環境規制が強化され、競争も激しくなる中、お互いの得意分野を活用し、生き残りを図る。

今回の記事を一言で言えば、上記のとおり。以上。

ただ特に燃料電池に対して一言言わせてもらうと、私は水素エネルギーの普及に懐疑的だ。水素は貯蔵したり運搬したりするのが難しい。液体水素にすると冷やすのにまたエネルギーを使ってしまうし、金属に吸着させると重量エネルギー密度が下がってしまう。水素分子は小さいので格納容器に入り込み金属を脆化させる。これらを解決できるブレイクスルーはあるのか。インフラを整備する金はどこから出てくるのか。FCV普及とインフラ整備は「卵が先かニワトリが先か」の問題になる(だからこそトヨタが関連特許を無償提供すると言っているのも理解しているが)。そういった背景を考えるとFCV普及に乗り出すのは見切り発車すぎないか…という気持ちになる。それでも、だからと言って「見込みがないので研究も普及の努力もしませーん」ではお話にならないので、他の二次電池と同じように技術開発を進めるという方針に反対はしない。

というか、私が上記のように考える程度のことは各メーカーも重々承知したうえで、というか何倍も理解した上で、こういう状況(EVの推進)になっているのだろう。だから私はその判断を重く受け止めるべきだと思う。