トヨタのハイブリッドとホンダのハイブリッドの加速比較

ようやくここまでたどり着きました。

今回はトヨタとホンダのいくつかのハイブリッド車種における最大加速時の速度変化をシミュレーションで求めました。

一連の加速比較記事を始めた動機は、私が次に買う車を選定する上で最低限プリウス程度の加速力があってほしいと感じたことでした。トルコンATやMT、CVTのガソリン車はそれほどシミュレーションを行うのも難しくないのですが、ハイブリッド車はそれなりに複雑です。中でもプリウスに搭載されるTHS-2システムは特に複雑です。が、今回なんとかモデルを組み立ててそれらしい結果が出たのでまあ大幅には間違っていないだろうと判断し公開します。

比較車種は、プリウスSグレードにTHS搭載ミニバン(ノア、ヴォクシー、エスクァイアのハイブリッド車)3車種、グレイス、フィット、CX-5 20S、CX-5 25S L Package、フォレスター 2.0i-Sです。なぜCX-5やフォレスターが入っているかというと私の乗り換え検討車種だからという完全なる個人的な理由です。THS搭載ミニバンは代表してノアのデータを使用していますが、スペックが変わらないため全て同じ結果になります。

結果

結果から書きます。

車種 0-100km/hタイム[秒]
THS2ミニバン 11.44
プリウス 1.8 S 9.28
フィット 1.5 ハイブリッド 7.62
グレイス HYBRID DX 8.25
CX-5 2.0 20S PROACTIVE 8.69
CX-5 2.5 25S L Package 7.6
フォレスター 2.0i-S EyeSight 9.51

 

車種 0-400mタイム[秒]
THS2ミニバン 18.12
プリウス 1.8 S 16.95
フィット 1.5 ハイブリッド 15.49
グレイス HYBRID DX 15.95
CX-5 2.0 20S PROACTIVE 16.38
CX-5 2.5 25S L Package 15.61
フォレスター 2.0i-S EyeSight 17.16

 

所感

今回私が所有するプリウスのシミュレーションをようやく出来ましたが、実際に私が運転している感覚とも上記グラフは一致しているような印象を受けます。60km/hあたりまではそれなりに加速度を感じるのですが、高速領域では加速がかなり鈍いです。(フォレスターと比べてみるとわかりやすいと思います)

ミニバン系車種についてはやはり遅いですね。ノア・VOXYにハイブリッドが組み込まれた時、プリウスと同じシステムでは力不足だろうと述べましたが、やはりそのような印象を受けます。ただ、他車種と比べると遅いというだけで実用的に困るほどの遅さではないように思えます。加速にこだわるユーザー向けではないが、実用上は十分といったところでしょうか。もっとも、加速性能にこだわる人がミニバンには乗らないと思いますが。

繰り返し述べますが、これはただのシミュレーションであって現実の世界でこのタイムが出るというわけではありません。実車の速度計にはかなりの誤差がありますし、環境その他の要因もあれば、シミュレーションで考慮できていない要素というのもたくさんあります。が、シミュレーション結果同士の比較ならばある程度公平です。それでも参考程度ですが。

計算方法

以下、誤りが有りましたらシミュレーション精度向上のために是非ご指摘いただけたら幸いです。

まずエンジンとモーターに対してトルクカーブを表す関数Te(ωc)、Tm(ωm)を定義します。ここでωc ωmはそれぞれエンジンとモーターの回転数(角速度)です。今回はマツダSKYACTIV-G 2.0Lエンジンのカーブをプリウスのエンジンの仕様にフィットする様縮めて使用しました。Tmに関しては初速から最大トルクが発生し、最高出力達成後は常に最高出力を維持する様トルクが減少していくような式としました。すなわち、

Tm(ωm) = min(Pmmax / ωm, Tmmax)

という式です。ここで、minは左項と右項のうち、小さい方を返却する関数、PmmaxとTmmaxはそれぞれモーターの最高出力、最大トルクです。

プリウスは遊星ギア機構のアウターギアにカウンターギアが装着され、続いてファイナルギアに接続されています。動力用モーターはモーター専用の固定比減速ギアを通じて出力軸につながり、その後ファイナルギアに接続されています。アウターギアから見た総合減速比ioとモーターから見た総合減速比imは以下になります。ここで、icg, ifg, imgはそれぞれカウンターギア、ファイナルギア、モーター用減速ギアのギア比です。

io = icg * ifg

im = img * ifg

ある速度vで走行しているとき、モーターの回転数ωmは次式で表すことができます。

ωm = v * im / 2πr

ここで、rはタイヤ半径です。ωmがわかればトルクカーブTmから発生トルクが分かります。モーター側から最終的に路面に伝わるトルクTrmは、

Trm = Tm(ωm) * im / 2πr …①

になります。ここまでは普通の車と大差ないのですが、難しいのはここからです。

遊星ギアには以下の関係が成り立ちます。

Ns*ωs+Na*ωa = (Ns+Na)ωc

ここで、Ns、Naはサンギア、アウターギアの歯数、ωs、ωa、ωcはサンギア、アウターギア、プラネタリーキャリアの回転数です。プリウスの場合は、サンギアに発電機、プラネタリーキャリアにエンジン、アウターギアに出力軸と動力用モーターが接続されています。

ある速度vで走行している時のエンジンの回転数ωcを求めれば、エンジンから伝わるトルクが計算できます。しかし、走行速度からωaは求まる(ωa = v * io / 2πr)としても発電機の回転数ωsとエンジンの回転数ωcが同時決定できるわけではありません。それを決めるのは発電機の充電負荷がいくらになっているか、です。充電不可を制御することでここの回転数を変更することができます。

今回は全開で走行するという状況なので、最も大きい出力がアウターギアに伝わるような制約を考えました。もっとも大きい出力がアウターギアに伝わるのは発電機が最大定格値Pgmaxで発電している状態です。遊星ギアの関係式をωsについて解くと、

ωs = {(Ns+Na)ωc-Na * ωa} / Ns

となります。また、エンジンからプラネタリーキャリアを通じてサンギアとアウターギアに分配されたトルクのうち、サンギア(発電機)に伝わるトルクTsは、回転数*トルクが一定であることから、

Ts=Te(ωc) * ωa / (ωa + ωs)

  = Te(ωc) * ωa / (ωa + {(Ns+Na)ωc-Na * ωa} / Ns)

となります。発電機の出力Pgは

Pg = Ts * ωs

です。このとき、ωcを変化させ、Pg=Pgmaxが成り立つ回転数を探します。で、その回転数でエンジンが回転しているものとし、Te(ωc)からエンジントルクを求めます。アウターギアに伝わるトルクTaは

Ta = Te(ωc) * ωs / (ωs + ωa)

です。で、エンジンから路面に伝わるトルクTreは結局

Tre = Ta * im / 2πr …②

となり、路面に伝わるトルクの合計は①+②となります。

シミュレーションするときは初速をゼロとして路面に伝わるトルクから加速度を計算し、単位時間経過後の速度を計算し、速度からエンジン&モーターの回転数を計算し、そこからトルクを求め…ということを繰り返します。また、駆動用モーターは常に最大出力で動作し、電池切れが無いものとしています。

力学とか機械とかすごく苦手なのですが、なんとか自分なりに解いてみました。これでそれっぽい値が出たのでもし間違ってたとしてももういいかな…と個人的には思っています。すっごく疲れた。